ありふれた職業で世界最強 ~魔王と雷帝~   作:さまようトト

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LEVEL.41 託される想い

 

 

戦いが終わり、オレ達はその場に座り込んでいた。

 

 

「シア、さっきは助かった。良い動きだったぞ」

 

 

オレ達は先程の戦いでゴーレムにとどめを刺すという大金星をあげたシアを称賛していた。

 

 

「やるじゃねえか、シア。最後の一撃は、中々良かったと思うぜ」

 

「ん、良く頑張ってた」

 

 

ハジメとユエも、最後の一撃を決めたシアを褒めている。

 

 

「み、皆さん……!! うぅ……嬉しくて涙が出そうですぅ」

 

 

疲労から息を切らしながらも、シアは嬉しそうに微笑んだ。

 

 

オレ達が試練を突破していることを喜んでいると、突如倒したはずのゴーレムが動き出した。

 

 

「何……!? まだ動けるのか……!!」

 

 

オレ達が慌てて戦闘態勢を取ろうとすると、ゴーレムから慌てた様な声がした。

 

 

『わーっ、ストップ、ストップ!! もう戦うつもりはないよぉ』

 

 

ゴーレムはボロボロの体で上半身をゆっくりと起き上がらせると、こちらを見つめてくる。

 

 

『……合格だよ。キミ達は、試練を突破した。だから私は迷宮の守護者として、キミ達に私が遺した『神代魔法』を授けることにするよ』

 

 

ゴーレムがそう言うと、地面に散らばっていた大小様々な立方体が集まっていき、一つの台座を作り出す。

 

 

『これに乗りなよ。私の隠れ家に案内してあげる』

 

 

そう言うと同時、オレ達がいる部屋の天井が開き、穴が開いた。

 

どうやら、あの先に隠れ家とやらがあるらしい。

 

 

 

「……お前は来ないのか?」

 

 

オレ達全員が台座に乗っても動き出さないゴーレムに尋ねると、少し寂しそうな声が聞こえた。

 

 

『……もう、あまり力が残っていなくてね。でも大丈夫、キミ達を送り届けることくらいはできるから』

 

 

そう言うと、ゴーレムは小さく腕を動かす。

 

すると、オレ達が乗った台座がゆっくりと上に持ち上がり始めた。

 

 

『最後に……キミ達のこれからが、自由な意思の下にあらんことを』

 

 

ゴーレムはその言葉を最後に沈黙してしまったが、オレ達の乗った台座は上へ上へと昇り続ける。

 

少ししんみりとした雰囲気の中、オレ達は遂に天井の先へと辿り着く。

 

 

するとそこには――。

 

 

「やっほー、さっきぶり!! 皆大好きミレディちゃんだよ!!」

 

 

先程倒した、ゴーレムがいた。

 

いや、サイズは一メートル半程度に縮んではいるのだが……。

 

 

あれだけ最後の力を振り絞って、といった感じで別れたのに、数分後にはこれである。

 

 

「……生きてたのか」

 

 

「え? 誰も死んだなんて言ってないよね? あ、もしかして悲しかった? んもー、寂しがりなんだからっ♪」

 

 

そして、どうやら煽り性能も健在の様である。

 

 

「……よし、壊すか」

 

「「「異議なし」」」

 

 

「ちょ、ちょっと待ってー!? このボディは壊されたらほんとにマズいからぁ!?」

 

 

オレ達はミニゴーレムを袋叩きにし、最終的に土下座させることで溜飲を下げるのだった。

 

 

 

◆◇◆

 

 

 

「……それで? 結局、お前は何者なんだ?」

 

 

オレ達はミニゴーレムを痛めつけた後、有耶無耶になっていたコイツの正体について、改めて質問していた。

 

 

「うぅ……、乱暴だなぁ。……それで、私の正体だっけ? さっきも言った通り、私はミレディ・ライセン本人だよ」

 

 

「嘘じゃなかったのか……」

 

 

どうやら、ミレディ・ライセンは生前、このゴーレムに魂を定着させたというのだ。『ラーくん』なる人物に手伝ってもらったと言っていたが、それが誰かは分からない。

 

 

「魂の移動と定着……。そんなことも可能なのか、神代魔法というのは」

 

 

どうやら、神代魔法とはオレ達が思っていた以上に凄まじい力らしい。

 

 

「それはそれとして……おい、ミレディ。さっさと迷宮攻略の証を渡せ」

 

 

ハジメがミレディに催促する。

 

もはや、遠慮など欠片もない。

 

 

「もぉ、せっかちだなぁ。こっちは久しぶりに人と会話出来て喜んでるっていうのに……」

 

 

ぶちぶちと文句を言いながらも、ミレディは懐から一つの指輪を取り出した。

 

オスカー・オルクスのものと似たその指輪は、上下の楕円を一本の杭が貫いている様な紋章が描かれている。

 

 

ミレディが指輪を渡すと、ハジメはもうこんな所に用はないと言わんばかりに、帰ろうとする。

 

 

「ちょ、ちょーっと待ったぁ!? せっかくなんだから、もう少しお話ししようよぉ!?」

 

 

地面に転がって駄々をこねるミレディ。

 

その姿は、とても数千年生きてきたとは思えない程に見苦しい。

 

 

ミレディに根負けしたオレ達は、改めて自己紹介から始めることになった。

 

 

「ふむふむ……南雲ハジメくんに、ユエちゃんとシアちゃん、そしてゼオン・ベルくんだねぇ。……よし、覚えた!!」

 

 

額に人差し指を当て、おどけた様に言葉を発するミレディ。

 

 

「それじゃあキミ達には、今から私の神代魔法を渡すねー」

 

 

軽い感じでそう言うと、ミレディは足元の魔法陣に魔力を込めた。

 

魔法陣が輝くと、オスカーの時と同様に、頭の中に何かが刻まれるような感覚がした。

 

 

どうやら、ミレディの神代魔法は《重力魔法》というらしい。

 

だが、残念ながらオレ達はユエ以外まともに適性がないとのことだった。

 

 

「まぁ、完全に使えないわけじゃないから、そこは上手くやってよ。そもそも、ユエちゃん以外は《重力魔法》をメインに使う必要ないくらいスタイルが確立してるからねー」

 

 

ミレディはそう言うと、オレ達を見回す。

 

 

「それにしても……『錬成士』と美少女魔法使い、亜人族に、銀髪……。何だか、昔を思い出すなぁー」

 

 

懐かしそうに声を発するミレディ。

 

 

 

オレはそんな彼女に、聞いておきたいことがあったのを思い出した。

 

 

 

「ミレディ、『サーシャ』という人物について、知っていることを教えてほしい」

 

 

 

オレが発した言葉に、ミレディは一瞬固まった。

 

ゆっくりとこちらを見る彼女からは、困惑の感情が伝わってくる。

 

 

「な、何でキミがサーちゃんのことを……? まさか、キミは……」

 

 

信じられないものを見たかのように驚いているミレディ。オレは、彼女の言葉を引き継いで口にした。

 

 

「あぁ。オレは元々、魔界の魔物だ。この世界に来たのは、恐らく偶然だがな」

 

「…………」

 

 

オレの言葉に、ミレディは暫く黙ったのち、言葉を発した。

 

 

「そうか……、こんな事ってあるんだね。まさか、サーちゃんと同郷の人に逢えるなんて」

 

 

静かなその言葉には、万感の思いが詰まっていた。

 

沢山の思い出があるのだろう。ミレディはゆっくりとサーシャの事を語り出した。

 

 

 

――魚が好きだったこと。

 

 

――普段は無表情だが、オスカーが新しい発明をするのを見ているときは少し笑顔になっていたこと。

 

 

――そして、最期は解放者たちの目の前で、創生神エヒトに殺された事。

 

 

 

「……待て、エヒトが自分で手を下したのか? 神の使途にやらせたのではなく?」

 

 

「うん。……サーちゃんは、特別強い力を持っていたから。神の使途には勝てないと判断したんだと思う」

 

 

「……特別な力? ……それは、一体何だ?」

 

 

 

ミレディは僅かに押し黙ると、再び言葉を発した。

 

 

 

「――『創造』と『破壊』。それが、サーちゃんの持つ力だった。……エヒトは、その強力な力を欲していた」

 

 

 

苛立たし気に、ミレディの拳が握られる。

 

 

「……サーちゃんは、死体すら残さずに消されたんだ。あのカス共は、平気でそこまでする奴らなんだよ……!!」

 

 

ミレディの声には、強い後悔の念が現れていた。

 

 

「――だから、私はキミに忠告しないといけない」

 

 

ミレディがこちらを真っ直ぐ見つめてくる。

 

 

「あのカス共がキミの存在に気付いたら、間違いなく狙ってくる。きっと奴らは、そのためなら何でも(・・・)するだろうね」

 

 

「私から言えることは一つだけ。――気を付けて。奴らの目は、どこにあるか分からない。……どうか、私たちの二の舞にはならないでね」

 

 

「……分かった」

 

 

ミレディの言葉に、短く返事をする。

 

それを聞いたミレディは、ふっと笑うと、優しく言葉を発した。

 

 

「でも、何故だろうね。キミ達なら、大丈夫な気がするんだ。……ただの勘だけどね!!」

 

 

最後に明るくそう言うと、ミレディは再び魔法陣に魔力を込めた。

 

 

「それじゃあね。――キミ達のこれからが、自由な意思の下にあらんことを」

 

 

 

直後、オレ達の視界は白く塗りつぶされるのだった。

 

 

 

◆◇◆

 

 

 

オレ達は、気が付くと迷宮の入口に転移していた。

 

外はすっかり明るくなっている。……思いがけず、徹夜をしてしまった。

 

 

「何はともあれ、これで二つ目の迷宮攻略完了だな」

 

 

ハジメの言葉に、オレ達は頷く。

 

 

「随分と長い事迷宮に居たらしいな……。一度、ブルックの町に戻って休もう」

 

 

オレの提案に皆異論はないようで、そそくさと帰り支度を始める。

 

 

「…………ん?」

 

 

ふと視線を感じてオレは上を見上げる。

 

しかし、そこには青い空に白い雲がゆっくりと流れているだけだった。

 

 

「ゼオンさーん!! どうかしましたかー?」

 

 

先に準備を終えたシアが、オレに催促してくる。

 

 

「……いや、何でもない。……さぁ、帰るか」

 

 

 

こうして、オレ達は魔力駆動二輪へと跨がり、ライセン大峡谷を後にするのだった。

 

 

 

◆◇◆

 

 

 

「…………」

 

 

ゼオン達が去った後、空間が歪んで一つの人影が姿を現す。

 

 

それは美しい女性だった。

 

長い銀髪を携え、背中から翼を生やしたその女性は、暫くゼオン達が去った方向を見つめている。

 

しかし、次の瞬間にはその姿が立ち消え、まるでそこには初めから誰もいなかったかのような静寂が広がるのだった。

 

 

 

◆◇◆

 

 

 

一面に広がる、真っ白な世界。

 

 

そこは『神域』という、神々が住まう聖域である。

 

 

そこに、二つの人影が存在した。

 

 

一方は頭から足の先までが光によって構成されている奇妙な姿の存在。

 

もう一方は、美しい顔立ちと背中に一対の翼を広げる『天使』のような女性。

 

 

女性は、光で構成された存在――創生神エヒトへと傅き、口を開いた。

 

 

「――主よ、ご報告致します。以前仰せつかった、オルクスの迷宮を攻略した存在について、調べが付きました」

 

 

光でできた人型は、何も言わずに続きを促す。

 

 

「ナグモ・ハジメ、そしてゼオン・ベル。この二体がオルクスの迷宮を攻略したものと思われます」

 

 

『……ふむ、そいつらは何者だ?』

 

 

人型の光が僅かに瞬き、言葉を発する。

 

女性は、それに対して淡々と答えていく。

 

 

「先日召喚された勇者の内の二体であると調べが付いております。迷宮の中で死亡したと思われていましたが、先程姿を確認できましたので生き延びていたと思われます」

 

 

『ほう、あのオルクスの迷宮をな……面白い』

 

 

人型の光が発する声には、愉悦の色が含まれていた。

 

 

「……それと、少々気になることが」

 

 

珍しく女性は躊躇する様に一瞬沈黙し、人型の光に向かって口を開く。

 

 

例の魔本(・・・・)が、ハイリヒ王国から持ち出されたようです」

 

 

『……何?』

 

 

先程までとは全く違う冷たい声が辺りに響く。

 

真っ白の空間に威圧感が満ちる。しかし、続く女性の声を聞くとそれは収まった。

 

 

「王国内で調べたところ、先程のゼオン・ベルが魔本の封印を解除し、持ち出した可能性が高いです」

 

 

『――封印を解いただと? まさか、そいつは……』

 

 

人型の光は小さく呟く。

 

女性はそれに反応はせず、傅いたまま主の言葉を待っていた。

 

 

『……そのゼオン・ベルとやらを、我の元に連れてこい。――良いか、絶対に殺さずに捕らえよ』

 

 

人型の光が発したその声は、僅かに焦りが含まれていた。

 

 

 

「了解致しました。――全ては、主の御心のままに」

 

 

 

その言葉を最後に、女性の姿が消え失せる。

 

 

 

『……まさか、本当にまた魔物が現れたのか? ……もし、そうであるならば……』

 

 

一人残された真っ白な空間で、人型の光は呟く。

 

 

 

『――今度こそ、我が望みが叶うかもしれん』

 

 

 

その声は、歓喜の色に溢れていた。

 

 

 

 




読んで頂いてありがとうございます。

とりあえず毎日投稿を続けたまま、一区切りできました。
次回からは幕間のお話を二話ほど挟もうと思います。


では、次話もよろしくお願いします。
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