ありふれた職業で世界最強 ~魔王と雷帝~   作:さまようトト

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遅くなりました。
今回、独自解釈、独自設定多めです。苦手な方はご注意ください。


LEVEL.5 災禍の魔本

 

 

メルド団長に連れられ、城の宝物庫に辿り着いたオレ達は、そこに保管されていた数々の煌びやかな武器や防具に目を奪われていた。

 

 

「――よし、全員居るな? ここが、我らがハイリヒ王国の宝物庫だ。アーティファクトの類いもあるから、武器を選んだ者は必ず俺か、近くの兵士に伝えろ。……良いか、勝手に触るんじゃないぞ? お前達を下らん事故で失う訳にはいかないからな」

 

 

メルド団長が注意事項を伝えた後、各々自分の武器を選ぶこととなった。

 

剣や槍、杖など、見た目から強力そうな武器が壁や棚に並んでいる。

 

 

「ゼオンは何の武器を選ぶの?」

 

 

オレの隣で一緒に武器を選んでいたハジメが聞いてくる。

 

 

「そうだな……。やはり、剣にしておくか。技能に剣術もあることだしな」

 

 

そう言って剣が並んでいる区画を見るが、どうやら剣は大人気のようで、大勢の男子生徒達が群がっていた。中には天之河も居るようだ。

 

……剣を選ぶのは後にするか。今行っても面倒事になる予感しかしない。

 

先にハジメの装備を見に行くことにしよう。

 

 

「ハジメ、使いたい武器は決まっているのか?」

 

「うーん、僕はステータス的に前衛は厳しそうだし、魔法とかで後衛からサポートする方面で役に立つ武器がいいと思ってるんだけど……」

 

 

そう言って考え込むハジメ。

どうやら、何の武器を使いたいかではなく、どうすれば戦いに貢献できるかを考えているようだ。

 

現実を見据え、自分に出来ることを模索しているその姿を見て、オレは嬉しく思った。

 

 

「そうか。魔法の補助となると……、杖になるのか?」

 

「ゲームとかだとそれがテンプレなんだけどね。この世界ではどうなんだろう」

 

 

そう言って、ハジメは武器を選ぶ生徒達を見ていたメルド団長に質問しに行く。

 

 

「――魔法の補助か。確かに、魔法使いは杖で魔法の威力を高めたりもする」

 

 

どうやら、ハジメが言ったように、魔法を使うのであれば杖を選んで問題ないらしい。嬉しそうにするハジメだが、次のメルド団長の言葉に固まった。

 

 

「しかし、魔法を使うには、適性が必要だ。適性がない者でも魔法は使えるんだが、効率がすこぶる悪くなるため、実戦では使えないことが多い」

 

 

以前見たハジメのステータスには、技能欄に魔法適正が記載されていなかった。本当に使えないのかはまだ分からないが、メルド団長の言葉を信じるのであれば、魔法使いとして戦うのも厳しいという事になる。

 

少し落ち込んでいたハジメだが、すぐに顔を上げてメルド団長に尋ねた。

 

 

「メルドさん、錬成を補助する道具とかってありますか?」

 

「……なに? あるとは思うが……。実戦では錬成をしている暇などないぞ」

 

「そこは、これから色々試していきたいと思います。それに、僕には錬成しかありませんから、それを伸ばしてみたいんです」

 

 

ハジメの意見を聞き、メルド団長は少し驚いたが、すぐに頷いた。

 

 

「……分かった、その道具の場所に案内する。着いてきてくれ」

 

「ありがとうございます。ゼオン、ちょっと待ってて」

 

「あぁ。行ってこい」

 

 

オレは、ハジメの後ろ姿を見ながら、再び嬉しさに顔が綻びそうになるのだった。

 

 

 

◆◇◆

 

 

 

ハジメを待っている間、オレは近くの武器や防具を見て回っていた。

 

だが、どれもピンとくるものはない。

 

 

(やはり、最初の予定通り剣にするか)

 

 

ハジメが戻ってきたら、剣の区画に行って武器を選ぼう。

そう考えていたオレは、宝物庫の隅にポツンと置かれた棚に目がいった。

 

棚の上には、小さな鉄格子のようなものが置かれており、何だかその周辺だけあまり手入れがされていないようだった。

 

気になったオレは棚に近づき、鉄格子の中身を覗き込んだ。

 

 

 

そこには、一冊の白い本が置かれていた。

 

こちらを向いている表紙には、上の方にタイトルらしき文字が書いてある。そして、文字の下に円が等間隔に五つ並び、それぞれを直線で結んだような紋章が描かれていた。

 

 

「――ぐっ……!?」

 

 

ズキリ、と頭が一瞬強く痛んだ。

 

そして、湧き上がる懐かしいという感情。

 

……オレは、この本を知っている……?

 

 

「ゼオン、お待たせ。僕はこの錬成を補助する指輪にしたよ」

 

 

唖然と本を見つめるオレの背後から、装備を選んで戻ってきたハジメが話しかける。

 

 

「……? どうしたの、ゼオン?」

 

「……いや、何でもない」

 

 

そう言いながらも、オレは目の前の本から目が離せなかった。

 

 

「おい、坊主。嬉しいのは分かるが、あまり走るなよ? 危ないからな」

 

 

ハジメの後ろから、メルド団長が苦笑しながら歩いてきた。

 

そうだ、メルド団長であれば、この本について何か知っているかもしれない。

 

 

「メルド団長。この本について、何かご存知ですか?」

 

「……なに?」

 

 

オレの言葉に、鉄格子に入った本を見たメルド団長は一瞬険しい顔をしたが、この本について教えてくれた。

 

 

「……それは、『災禍の魔本』と呼ばれているものだ。俺も詳しいことは知らんが、1000年以上前から存在するアーティファクトらしい」

 

「1000年以上も前から? ていうことは相当貴重な物だろうに、何でこんな雑に扱われてるんですか?」

 

 

メルド団長の説明に、ハジメは疑問を口にする。

確かに、この本が置かれている一画だけ、殆ど手入れがされていないのは、積もっている埃の量からして明らかだ。

 

ハジメの問い掛けに対して、メルド団長は声のボリュームを抑えて口を開いた。

 

 

「……これは、あまり大きな声では言えんが。大昔にあった戦争で、この国と聖教教会に大きな被害を出した兵器であるという記録を見たことがある」

 

「えっ……この本が、ですか? もしかして、危険な内容が書いてあるとか?」

 

「それは分からん。……だが、過去の記録ではこの本が回収された後、この国の研究者や学者達がこぞって調べたが、何も分からなかったらしい」

 

 

この世界にも、アーティファクトなど、未知の物を研究する学者等がいることは聞いていた。だが、地球程発達していなかったとしても、大勢の知識人が集まって『何も分からなかった』なんてことはあるのだろうか?

 

 

「分からなかった、って……。実際に戦争では使われていたんですよね?」

 

「元の使用者については、どうなったか不明だ。ただ、残されたその本は誰にも読めなかった(・・・・・・・・・)。単語や文法などについて、法則性を見つけることすら出来なかったらしい」

 

 

(――『読めない本』、という訳か)

 

 

オレは、再度魔本を見る。

 

すると、やはり胸がざわつき、心に何かを訴えかけてくる。この本に、何かがあるのは間違いない。直感でそう思ったオレは、メルド団長に頼みごとをするため、口を開く。

 

 

「メルド団長、この本、手に取って見てもいいでしょうか」

 

「……ゼオン。悪いことは言わん、これに関わるのはやめておけ。焦る気持ちは分かるが、お前には《剣術》もある。上等な剣ならまだあるから、そっちを選んでみないか?」

 

 

メルド団長が渋い顔でオレに提案してきた。

どうやら、オレがこの魔本を武器に選んだと思っているようだ。

 

 

「いえ、少し気になる事があるので、確認したいだけです。武器に使おうとは思っていませんので、安心して下さい」

 

 

真っ直ぐメルド団長の目を見てそう言うと、彼はしばらく目を合わせ、根負けしたように溜息を吐いた。

 

 

「はぁ、分かった。ただし、俺が先に安全を確認する。万が一にも、お前達に何かあってはいかんからな」

 

「……ありがとうございます」

 

 

気にするな、とひらひら手を振りながら、メルド団長は本を保管している小さな檻に近づく。

そして、鍵束から一本の鍵を取り出して檻を開け、慎重に魔本を取り出した。

 

メルド団長は険しい顔で魔本を開き、一枚一枚ページをめくっていく。

やがて最後のページまで辿り着くと、彼は大きく息を吐いた。

 

 

「よし、特におかしなところはなかったし、魔力の痕跡もない。危険はなさそうだ。」

 

 

そう言って、メルド団長はこちらに魔本を手渡した。

 

 

「ほら、見るだけだからな? ……大丈夫だと思うが、何か起きたらすぐに俺を呼ぶんだぞ」

 

「はい、ありがとうございます」

 

 

礼を言って本を見始めようとすると、遠くから他の生徒がメルド団長を呼ぶ声が聞こえた。

 

 

「……すまんな、俺はあっちを見てくる。終わったらまた呼んでくれ」

 

 

そう言ってメルド団長は他の生徒の元に歩いて行った。

 

 

オレは、さっそく魔本を開いて中身を見ていく。

 

 

「どう? 何か見つかった?」

 

「いや……。やはり、読めない文字列が並んでいるだけだ」

 

 

先程メルド団長が言ったように、本には読めない文字がびっしりと書かれていたが、意味が理解できるものは存在しなかった。

 

オレは、黙々とページをめくっていく。

もうそろそろ最後のページに辿り着きそうというところで、一か所だけ、他とは文字の色が違う部分が出てきた。

 

 

(……なに?)

 

 

そして、色が違う部分は、他と同様に読めない筈なのに、なぜか意味が理解できた。

 

 

『ここに希望を託す。汝がもしこの魔本を読めし者であれば、文字に触れよ』

 

 

その文字を認識した時には、既にオレの指が文字に触れていた。

 

その瞬間、魔本が爆発的な光を放ち、オレの視界は白く塗り潰されるのだった。

 

 

 

◆◇◆

 

 

 

気が付くと、オレは真っ白な空間に居た。

 

突然のことに驚いたのも束の間、いつの間にかオレの目の前に先程の魔本が浮いていた。

 

魔本は淡く輝きながらオレの顔の高さ程まで浮き上がり、独りでにページがめくられる。

 

 

『こんにちは。会えて嬉しいよ、魔物の子』

 

 

めくられたページには、先程見た謎の文字で書かれた文章が存在したが、今回は文章全ての意味が理解できる。

 

 

『2000年ぶりくらいかな? もう、出会うことはできないと思っていた。君の様に純粋な魔物が残っているという事は、魔界は滅びなかったんだね』

 

 

ぺらり、ぺらりとページがめくられ、次々と文字で話しかけてくる魔本。だが、その内容はオレに理解できるものではなかった。

 

 

「オレが、魔物だと? ……それに、魔界とは何のことだ」

 

 

問いかけるオレに対し、魔本はしばし静止すると、再びページをめくった。

 

 

『君から魔力を感じない。――なるほど、奪われた(・・・・)のか。それに、記憶にも()が掛けられているみたいだね』

 

 

そして、オレにとっては到底聞き捨てならないことを言った。

 

 

「記憶、だと……? 答えろ!! お前は、オレの何を知っている!?」

 

『今、私が伝えたところで意味はないよ。君を封じている枷は、とても強力だ。ここで私が君の存在について教えても、思い出せないようになっている』

 

 

静かにページをめくり、魔本がオレに伝えたのは、残酷で認められない現実だった。こいつの言う事が本当だとは限らない筈なのに、オレはなぜか魔本が嘘を付いていないことを確信していた。

 

 

『でも、方法が無いわけじゃない』

 

 

絶望しかけていたオレに、魔本は再びページをめくり、言葉を続ける。

 

 

『君のそれは、奴ら(・・)の仕業だ。でも、『術』だけでなく記憶も封じるだなんて、それだけ君を警戒しているという事さ』

 

『君の『術』は奪われた。それでも、君の中の『可能性』は、まだ失われていない』

 

 

まるで興奮しているかのように、魔本のページがめくられる速度が上がる。そして、魔本は『契約』を持ち掛けてきた。

 

 

『私が君の『枷』を破る手助けをしよう。その代わり、君は力と記憶を取り戻し、『奴ら』との戦いに打ち勝つんだ』

 

「待て、奴らとは何だ? オレに何と戦えと言うんだ!?」

 

 

突然の要求に困惑するオレに、魔本は更に続ける。

 

 

『今は多くを理解しなくても良い。今重要なのは、たとえ辛い目にあったとしても、君が『奪われた』ものを取り返す覚悟があるかどうか、それだけさ』

 

『――さぁ、どうする?君にはその覚悟があるのかな?』

 

 

そう言ったきり、魔本はオレの回答を待つように静止した。

 

……色々と、言いたいことはある。こいつが何者なのかとか、オレのことだとか、『奴ら』とは何なのかとか。

 

それでも、オレの心はもう決まっていた。

 

 

「覚悟なら、十年前から決めている。オレは、必ず記憶を取り戻す」

 

 

魔本を強く見据えて宣言すると、再びページがめくられた。

 

 

『――契約成立だ。よろしく頼むよ、ゼオン・ベル』

 

 

その瞬間、魔本が強く輝き、光の粒子となってオレに降りかかる。

 

バキン、とオレの中で何かが砕ける音が聞こえた気がした。

 

 

 

◆◇◆

 

 

 

「――ゼオン、大丈夫!?」

 

 

ゼオンが曰く付きの魔本を触り、その本が一瞬光ったことで警戒した僕は、慌ててゼオンに駆け寄った。

 

 

「……ハジメか?」

 

「えっ? う、うん、そうだけど……」

 

 

返事をしたゼオンは、どこか上の空だった。僕は、その様子に違和感を覚える。何か、さっきまでのゼオンと違うような……?

というか、いつの間にか魔本が消えている。

 

その時、ゼオンがいつの間にか持っていたステータスプレートが激しく輝いた。光は一瞬で収まり、ゼオンはプレートを一瞥する。

 

 

(……え?)

 

 

一瞬見えたプレートに書かれた文字列を見て、僕は思わずゼオンに問いかけた。

 

 

「ね、ねぇ。ゼオン、それって……」

 

 

「――おぉ~? 無能二人が隅っこで何やってんだぁ? 良い武器は選べたのかよ?」

 

 

その時、やたら宝飾でゴテゴテした槍を抱えた檜山がこちらへ歩いてきた。

 

どうやら彼はあの槍を選んだらしい。悪趣味というか何というか……。

 

 

「どうだよ? この槍!! マジで強そうだろ?」

 

 

どうやら、自分のものになった槍を見せびらかすためにこちらへ来たらしい。

 

 

「そうだ!! お前らで試し切りしてやるよ!! この後の戦闘訓練で俺と模擬戦しろよ、遊んでやるからよぉ!!」

 

(うわぁ……)

 

 

どこのチンピラだ、こいつは。ヒャッハーしすぎだろ。思わずそんなことを考えていると、隣から凛とした声が響く。

 

 

「いいだろう。受けて立つ」

 

「――えっ!?」

 

 

ゼオンが檜山の挑発に乗った。いつものゼオンなら、目で黙らせるか、関わるだけ無駄だと無視するのに。

 

 

「おいおい、マジかよ!! まさかオレに勝てるとか思ってんのか? 天職もないくせによぉ!!」

 

「御託はいい。やるのか、やらないのか、さっさと決めろ」

 

「チッ。ほんとウゼーわお前!! やるに決まってんだろ!! ボロボロにしてやるよ!!」

 

 

そう言い捨て、檜山は去って行った。先に訓練場に向かったようだ。

 

 

「ハジメ、オレ達も戻るぞ」

 

「あ、うん……。そうだね」

 

 

先を歩くゼオンの背中を見ながら、僕は先ほど見たゼオンのステータスを思い出していた。

 

 

======================

ゼオン・ベル 17歳 男 レベル:1

 

天職:雷帝

筋力:200

体力:200

耐性:200

敏捷:200

魔力:500

魔耐:400

技能:雷属性耐性・物理耐性・毒耐性・麻痺耐性・剣術・体術・槍術・杖術・魔力操作・先読・高速魔力回復・気配感知・魔力感知・気配遮断・威圧・言語理解

 

《使用可能呪文》

第一の術 ザケル

 

======================

 

 

少し前とは全く別物のステータスだ。

 

レベルと天職が表示されていて、各項目の数値が倍以上に増えている。技能については一瞬だったので見きれなかったが、10個以上はあっただろう。

 

 

――そして、技能の下辺りに読めない文字(・・・・・・)が追加されている。

 

そこまで考えて、あまりのステータスに、自分だけが取り残されたかのような気持ちになる。

 

 

(――いや、そうじゃないだろう。しっかりしろ、南雲ハジメ!)

 

 

落ち込みかけた気持ちを奮い立たせる。

 

 

(そうだ、ゼオンがどれだけ強くなっても、僕のやることは変わらない)

 

 

強くなるんだ。いつか、ゼオンの隣に胸を張って立てるように。

 

僕は、先を歩くゼオンに追い付くために走り出した。

 

 

 




読んで頂いてありがとうございます。

はい、というわけで『金色のガッシュ!!』では外せない存在である、魔本さんの登場回でした。原作でもまだ謎の部分が多いので、そのあたりは独自解釈で勝手に設定を考えてます。

ちなみに、覚醒後のゼオンくんのステータスは、これでもかなり抑えてます。
(原作のゼオンくんを見ながら)

次話は初の戦闘描写になると思います。かっこよく表現できるように頑張ります。

では、次話もよろしくお願いします。
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