ありふれた職業で世界最強 ~魔王と雷帝~   作:さまようトト

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LEVEL.44 北の山脈地帯

 

 

翌日の早朝、オレ達は北の山脈地帯へと向かうために『水妖精の宿』を出発する。

 

 

だが、町から出ようと門を潜ろうとした時、オレ達は町の外に数人の人影がいるのに気が付いた。

 

 

「……何の用だ?」

 

 

ハジメがうんざりとした様子で、オレ達を待ち伏せしていた人物――畑山先生と生徒達に尋ねる。

 

気不味そうに視線を彷徨わせる生徒達の中から、畑山先生が一歩前に出て口を開く。

 

 

「行方不明者の捜索に行くんですよね? なら、私達も一緒に行きます。人数は多いほうが良いでしょう?」

 

 

真っ直ぐハジメの目を見て答える畑山先生に、ハジメはため息をついて返答する。

 

 

「――断る。どうしても行きたいなら、俺達とは別行動するんだな」

 

 

彼女達の傍には、何頭か馬が待機していた。

 

確かに、あれで北の山脈地帯まで行くとすると、丸一日はかかるだろう。その点、オレ達が使用する魔力駆動二輪であれば、三時間程度で到着できる筈だ。

 

 

捜索する冒険者達の生存はもはや絶望的とはいえ、向かうのは早い方が良い。

 

彼女たちと一緒に行動するとなると、かなり遅れが出てしまうのだ。

 

 

「ちょっと、そんな言い方しなくても良いでしょ? 南雲が私達のこと気に入らないからって、愛ちゃん先生にまで当たらないでよ」

 

 

ふと、そんな声が生徒達から発された。

 

視線を向けると、そこには一人の女子生徒がいた。

 

 

(――確か、名前は……園部(そのべ)優花(ゆうか)だったか)

 

 

オレは、記憶の中から女子生徒の名前を思い出す。

 

 

ハジメは園部の言葉を受けて、無言で魔力駆動二輪を取り出した。

 

 

いきなり現れた大型のバイクに、畑山先生と生徒達は驚いているようだ。

 

 

「……分かったか? 俺達とお前等じゃ、移動速度が違うんだよ。それに、今回の依頼は行方不明になった冒険者達の捜索と、可能なら救出することだ。お前等に合わせてチンタラ進んでいる暇はない」

 

 

生徒達は、ハジメの言葉に押し黙る。

 

 

それでも、畑山先生だけは諦めずにハジメへと声を掛けてきた。

 

 

「……南雲君、私には貴方がどれだけ大変な目に逢ったのか、想像することしかできません。だから、教えてください。……どうして、皆の所に帰ろうとしないのですか?」

 

 

真っ直ぐ目を合わせて話し掛ける畑山先生にハジメは一瞬沈黙するも、直ぐに口を開いた。

 

 

「どうしても何も、――自分のことを殺そうとした奴がいる集団に、戻りたい奴がいるわけないだろう」

 

 

「――えっ?」

 

 

ザワリ、と畑山先生と生徒達の間に動揺が広がる。

 

 

(……まさか、()の所業はまだ発覚していないのか?)

 

 

オレのその懸念は当たっていたようで、畑山先生は信じられないとばかりの顔で口を開いた。

 

 

「南雲君、何を言って……? 貴方達が奈落という所に落ちたのは、魔法の誤爆(・・・・・)が原因じゃ、ないんですか?」

 

 

畑山先生の言葉に、オレとハジメは大体の事情を察した。

 

 

(――成程、王国ではそういう事(・・・・・)になっている訳か)

 

 

「そうだ、誤爆なんかじゃない。あれは、意図的に俺を落とす様に調整された魔法だった」

 

 

突如明かされた衝撃の事実に、彼女達は考えが追い付かないようだ。畑山先生も、顔を真っ青にして黙り込んでしまった。

 

 

 

……ここまでだな。

 

 

オレ達は、彼らを置いて出発しようと歩み始める。

 

 

「――な、南雲君!! 白崎さんは、まだ貴方の事を諦めていませんでしたよ!!」

 

 

背後から掛けられた畑山先生の呼びかけに、ハジメの足が止まる。

 

すると、畑山先生はオレの方にも視線を向けてきた。

 

 

「貴方もですよ、ゼオン君。八重樫(やえがし)さんも、貴方を探すために必死でした……!!」

 

 

「…………」

 

 

畑山先生の言葉を聞いて、オレの頭に親しい友人の顔が思い浮かんだ。

 

 

(――そうか、雫には悪いことをしたな……)

 

 

だが、今のオレ達には七大迷宮を攻略するという目的がある。

 

そのことを知ったとしても、今すぐ王国に戻るわけにはいかない。

 

 

 

「……あの、ゼオンさん。八重樫さんというのは、ゼオンさんの恋人なんですか……?」

 

 

何故か、先程まで空気を読んで静かにしていたシアが、不安そうな表情でオレに尋ねてきた。

 

 

「いや、恋人ではないな。親しくしていた友人だ」

 

 

オレがそう言った瞬間、ザワッと生徒達が驚いているのが分かった。

 

……何だか、先程ハジメが話していた時よりも騒いでいないか?

 

 

「そ、そうなんですね……!! ……良かったですぅ」

 

 

ホッ、と安堵の息を漏らすシア。

 

だがそんな中、生徒達はひそひそと小声で何やら言い合っていた。

 

 

「……マジか、ゼオンの奴」

 

「あんなに好意をアピールされてたのに、付き合ってないのかよ……?」

 

「八重樫さん、可哀想……」

 

 

……何故だか知らんが、非難するような視線を向けられている。何なんだ、一体……。

 

 

 

その後、畑山先生は諦めずにオレ達への説得を続けてきたため、面倒になったオレ達は彼女達を連れて行くことにした。

 

 

「――はぁ、仕方ない。……ほらお前等、これに乗れ。座席に乗れなかった奴は荷台な」

 

 

ハジメは魔力駆動四輪を取り出すと、畑山先生達に向き直って言葉を発した。

 

 

驚きながらも、次々と乗り込んでいく生徒達。

 

 

因みに、オレとシアは当初の予定通りに魔力駆動二輪で向かうことになった。

 

流石に、オレ達全員と畑山先生、生徒六名を合わせた合計十一名を乗せるには狭いので仕方ない。

 

 

 

こうして、オレ達は想定外の同行者を連れて、北の山脈地帯へと車を走らせるのだった。

 

 

 

◆◇◆

 

 

 

三時間くらい魔力駆動車を走らせ、オレ達は北の山脈地帯に辿り着いた。

 

 

山の麓で魔力駆動車を降りた後、オレは《気配感知》と《魔力感知》を発動する。

 

 

生きている人間がいないかと反応を探すが、近場にはそれらしき存在は見つからなかった。

 

《広域感知》によってどんどん感知範囲を広げていくと、二つの気になる反応が引っかかった。

 

 

一つは、恐らく人間であろう反応。

 

反応は一か所から動いていないが、魔力反応もあるため生きてはいるのだろう。

 

 

そしてもう一つの反応は、強大な気配と魔力を感じさせた。

 

下手をすると、奈落の底に居た魔物に匹敵するかもしれない程の強い気配だ。

 

流石に、かつて戦ったヒュドラ程ではないが、ユエとシアでは勝てないかもしれない。

 

 

今はその反応はオレ達の遠くに居るため、見つからない様に一つ目の反応に向かうのが良いだろう。

 

 

「ここから三キロメートルくらい北東で《気配感知》に反応があった。強い魔物がいるようだから、山を登りながら迂回して向かおう」

 

 

オレは皆に感知した気配について共有した。

 

ハジメ達は頷くと、早速山を登るべく歩き始める。

 

 

「さ、三キロ? 《気配感知》ってそんなに広い範囲で使えたっけ……?」

 

「派生技能じゃないか? 多分……」

 

 

後ろから生徒達の困惑する声が聞こえたが、一応付いてきてはいる様だ。

 

 

 

それから一時間程山を登り、今オレ達は山の六合目辺りに到達していた。

 

 

感知していた反応の場所にもうすぐ辿り着くといったところで、オレ達は後ろを振り返る。

 

そこには、息を切らせてぐったりとしている畑山先生と生徒達がいた。

 

 

「――はぁ、はぁ……。きゅ、休憩ですか……?」

 

「ぜぇ、ぜぇ……。大丈夫ですか、愛ちゃん先生……」

 

「もう、着いたのか……? もう、休んで良いか……?」

 

 

オレとハジメは困った様に顔を見合わせる。

 

 

そこまで飛ばしたつもりはなかったが、彼女達には厳しいペースだったらしい。

 

何だかんだ文句を言いながらもオレ達に付いて来れていたので、あまり気にしていなかったのだ。

 

 

 

息も絶え絶えな先生達を休憩させながら、オレ達は周囲を調査する。

 

 

今オレ達の近くには川が流れており、どうやら気配の元はその下流にいるらしい。

 

川に沿って辺りを調べていると、幾つも散らばった装備と乾いた血痕、巨大な足跡を発見した。

 

 

明らかに魔物に襲われたらしいその痕跡を見て、オレ達に付いてきていた畑山先生は悲痛な顔を浮かべる。

 

 

「――これは……。……調査を依頼された冒険者さんでしょうか……?」

 

 

「恐らくは、そうでしょう。ただ、この足跡は……」

 

 

オレは、改めて装備の近くに残っている足跡を見る。

 

余りにも大きい。足跡の大きさは二メートル近くあるだろう。

 

 

北の山脈地帯にこれほど巨大な魔物が生息しているなど、聞いたことがない。

 

つまり、この魔物は他所からこの山脈地帯に移動してきたか、今まで隠れていたのに突然暴れ出したかのどちらかだろうか。

 

 

そんなことを考えていると、生徒達も何とか息を整え終わったらしい。

 

 

 

オレ達は再び気配の元に向かって歩き始めるのだった。

 

 

 

◆◇◆

 

 

 

「――着いたぞ、ここだ」

 

 

数分後、オレ達は川の下流である滝壺に辿り着いた。

 

 

探していた反応は、目の前にある滝壺の奥から発されている。

 

相変わらず、反応の対象は動く気配がない。死んではいない筈だが、怪我をして動けないのかもしれない。

 

 

「この奥か……。ユエ、頼む」

 

「……ん。――《波城》、《風壁》」

 

 

ハジメの言葉に頷いたユエが魔法を発動すると、滝と滝壺の水が割れて奥から洞窟が露わになる。

 

 

姿を現した洞窟へと入り、奥へと進んで行くと、一人の男性が横たわっているのが見えた。

 

 

近付いてみると、男性は眠っていた。

 

どおりで反応の位置が動かないわけである。

 

 

男の肩を揺すって起こしてみると、やはり彼が捜索対象となっていた冒険者パーティの一人であることが分かった。

 

話を聞くと、どうやら彼以外のパーティメンバーは全員魔物にやられてしまったらしい。

 

 

どんな魔物だったかを確認すると、彼らを襲ったのは巨大な漆黒の竜とのことだった。

 

 

オレは、ここまでの道中に見かけた巨大な足跡を思い出す。

 

あれが黒竜の足跡だったとすると、体長は十メートル近いサイズになるだろう。

 

 

彼らが襲われたのは五日前だと言うので、どうやら黒竜はこの山脈に住み着いてしまったらしい。

 

 

何はともあれ、目的は達成した。

 

他のパーティメンバーは残念だったが、これ以上この土地に留まる理由は無い。黒竜がいると分かったことだし、早々に立ち去るのが良いだろう。

 

 

オレ達が救出した男性を連れて洞窟を出ると、急速にこちらへと近付いてくる反応が現れた。

 

 

「――これは……!? 皆、戦闘準備をしろ!!」

 

 

オレの言葉に、ハジメとユエ、シアは即座に武器を取り出して警戒する。

 

 

しかし、畑山先生と生徒達は困惑するばかりで動けていない。

 

 

そんなことをしていると、オレ達を巨大な影が覆った。

 

 

上を見上げると、そこには翼を羽ばたかせながらこちらを睨む巨大な竜がいた。

 

漆黒の鱗に包まれたその体躯は大きく、事前の想定通り体長は十メートルはあるだろう。

 

 

「――ギュルァアア!!」

 

 

黒竜はオレ達に向かって咆哮すると、襲い掛かってくる。

 

 

オレ達は突如襲ってきた黒竜に向けて、武器を構えるのだった。

 

 

 

 




読んで頂いてありがとうございます。

今週は忙しくなりそうなので、毎日投稿は厳しいかもしれないです。
なるべく頑張りますが……。


では、次話もよろしくお願いします。
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