ありふれた職業で世界最強 ~魔王と雷帝~   作:さまようトト

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明けましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。

投稿が遅くなりすみません。
正月休みに浮かれてサボってました……。


LEVEL.47 天使強襲

 

 

――ギャリッ!!

 

 

突如現れた銀髪の女性が振るった剣戟を、オレは咄嗟に受け流した。

 

互いの剣が擦れ合い、火花が散って消えて行く。

 

 

オレは直剣を構え直し、銀髪の女性に向かって問い掛ける。

 

 

「……いきなり随分な挨拶だな。貴様は一体何者だ?」

 

 

銀髪の女性はその言葉を聞いて、再び空中に浮かび上がると無表情のまま口を開いた。

 

 

「――神の使途、ノイントと申します。主の命により、貴方を連行します」

 

 

銀髪の女性――ノイントは短く名乗りを上げると、再び双剣を構えてこちらへ切り掛かってくる。

 

 

オレは再び振るわれた一撃を直剣で弾くが、相手の武器は双剣。

 

攻撃が防がれると、直後にもう片方の剣がこちらを狙ってくる。

 

 

オレが剣を振るった後の隙を狙った二連撃を体を逸らすことで避け、オレは一旦距離を取る。

 

ノイントは尚も無表情でこちらを見つめており、再び双剣を構え直した。

 

 

(……マズいな、想像以上の強敵だ)

 

 

思わず、心の中でそう呟く。

 

今のやり取りで、手を抜いて勝てる相手ではないという事がはっきりと分かった。

 

恐らくステータス上ではオレやハジメ程ではないが、魔力強化をしたユエやシア以上の身体能力はあるだろう。

 

 

「――グギャオオ!!」

 

 

そこまで考えたところで、背後から一体の魔物が襲い掛かってきた。

 

 

オレは振り向き様に直剣を振るい、魔物を両断する。

 

しかし、その隙を狙ってノイントが再び攻撃を仕掛けてきた。

 

 

「――余所見をするなど、余裕ですね想定外(イレギュラー)

 

「――チッ!! 面倒な……!!」

 

 

再び攻撃を防ぎながら悪態を吐く。

 

今のオレは、ノイントばかりに構っていられない状況なのだ。

 

この瞬間にも、およそ数万体の魔物がウルの町を目掛けて行進しているため、そちらを放っておく訳にはいかない。

 

 

『――ハジメ、緊急事態だ。しばらく魔物の処理を頼めるか?』

 

 

オレはノイントの攻撃を受け流しながら、ハジメに《念話》を繋げる。

 

幸いにも、ハジメは直ぐに応答してくれた。

 

 

『ああ、問題ない。緊急事態ってのは、その天使みたいな奴が原因だな?』

 

 

どうやら、ハジメの方でもノイントの事を視認できているらしい。

 

 

『そうだ。奴は自身を『神の使途』だと名乗った。オスカーやミレディが言っていた、エヒト神の眷属だろう』

 

『……何だと? ゼオン、加勢は必要か?』

 

 

ハジメがオレに問い掛けてくる。

 

こちらを気遣う言葉をありがたく思いつつも、オレは即座に答えた。

 

 

『いや、オレ一人で大丈夫だ。ハジメ達は魔物の方の対処を頼む』

 

『……分かった。気を付けろよ、ゼオン』

 

 

その言葉を最後に、《念話》の接続が切れた。

 

 

これで良い。

 

ハジメがいれば、ウルの町が魔物に蹂躙されることは無いだろう。

 

あとはオレが、目の前にいる神の使途を倒せば良いだけだ。

 

 

オレは直剣に魔力を込め、横薙ぎに振るうことで衝撃波を放つ。

 

 

「――ッ!?」

 

 

ノイントは衝撃波を双剣で防ぐが、大きく吹き飛ばされ、オレとの距離が開いた。

 

 

オレはその隙に、《縮地》を使って更にノイントとの距離を離していく。

 

 

「逃走するつもりですか? そうはさせません」

 

 

ノイントが空中を飛翔し、オレへと迫る。

 

そのスピードは凄まじく、《縮地》を使っているオレと同等の速度でぴったりと付いてきていた。

 

 

(――よし、予想通り付いてきたな)

 

 

オレは計画通りに事が進んだことに安堵した。

 

先程、ノイントはこう言った。『主の命により、貴方を連行します』、と。

 

その時、オレはミレディの言葉を思い出したのだ。

 

 

『――あのカス共がキミの存在に気付いたら、間違いなく狙ってくる』

 

 

その言葉は、どうやら正しかったらしい。

 

やはり奴の目的は、オレをエヒト神の元へと連れて行くこと。それ以外の優先度は低いのだろう。

 

 

エヒト神が何故オレを求めるのか等の疑問はあるが、今は考える必要もない。

 

 

 

しばらくノイントに追いかけられながら、オレは魔物達の群れから離れ、町の東にある森林地帯へと飛び込んだ。

 

 

オレは振り返ってノイントを見上げる。

 

彼女は相変わらず無表情のまま、オレを見つめて口を開いた。

 

 

「……成程、貴方が先程逃走したのは、私をここに誘導するためだったということですか」

 

 

どうやら狙いがバレたようだが、別に構わない。

 

既に魔物の大群とウルの町からはかなり離れているため、ここならハジメの邪魔になることは無いだろう。

 

 

「――さて、始めるか」

 

 

オレは直剣を構えると、神の使途ノイントへと向かって駆け出すのだった。

 

 

 

◆◇◆

 

 

 

ゼオンがノイントと遭遇し、戦線を離脱した頃、ハジメはウルの町へと迫る魔物達を殲滅するべく、町を囲む外壁の下へと移動していた。

 

 

「ハジメさん、ゼオンさんに何かあったんですか?」

 

 

ハジメにそう尋ねるのは、ドリュッケンを肩に担いだシアである。

 

彼女はハジメと同様に、不測の事態があった時のために町で待機していたのだが、今回ハジメが招集をかけたことで戦闘準備を整えて駆け付けたのである。

 

他にも、ずっとハジメの傍に居たユエや、今回の件に責任を感じているティオも集まっていた。

 

 

「神の使途がゼオンを狙って襲ってきたらしい。そのせいで残りの魔物はオレ達が相手する必要がある」

 

 

ハジメは簡潔に情報共有を済ませると、集まった皆に指示を出していく。

 

 

「ユエとティオは魔法で魔物の数を減らしてくれ。なるべく広範囲を巻き込むやつで頼むぞ」

 

 

ハジメの言葉に、二人は頷いた。

 

 

「魔力が尽きそうになったら、魔晶石で回復しろ。ユエにはもう渡してあるから、ティオはこれを使え」

 

 

そう言うと、ハジメは紫色の宝石が埋め込まれている指輪を取り出し、ティオに手渡した。

 

 

「む、この魔力は……。もしかして、ゼオン殿の魔力かのぅ?」

 

 

指輪を受け取ったティオは、魔石に込められた膨大な魔力に身震いしながら尋ねる。

 

 

「ああ、ゼオンには事前に魔力を込めてもらっていた。それがあれば、上級魔法を十発は撃てる筈だ」

 

「……なんと、それはまた規格外じゃのう。では、ありがたく頂戴させてもらおう」

 

 

嬉しそうに指輪を嵌めて、ティオは気合を入れた。

 

ユエも、以前ハジメにもらったアクセサリーを撫で、迫る魔物の大群を前にして張り切っている。

 

 

「あのぅ、ハジメさん。私はどうすれば……?」

 

 

一人残されたシアがおずおずと質問する。

 

すると、ハジメは宝物庫から一本の筒のようなものを取り出し、シアに手渡した。

 

 

「シア、お前にはこいつを預ける。魔物が固まっているところを狙って撃ちまくれ」

 

 

ハジメがシアに渡したのは、地球でいうRPG――いわゆるロケットランチャーだ。

 

ちなみに名前は『オルカン』である。

 

 

今回は遠距離から魔物を殲滅する予定なので、接近戦特化のシアには代わりの武器を持たせたのだった。

 

 

 

最後に、ハジメが六砲身ガトリング砲のメツェライを魔物の群れへと向け、号令をかける。

 

 

「――そんじゃ、お前等、さっさと片付けてゼオンの加勢に行くぞ!!」

 

 

「んっ!!」

 

 

「うむ、任せい」

 

 

「はいですぅ!!」

 

 

ハジメの声に対し皆一様に返事をして、魔物へと攻撃を向けるのだった。

 

 

 

◆◇◆

 

 

 

「――ザケルガ!!」

 

 

俺の掌から放たれた雷撃がノイントに迫る。

 

ノイントは片手に持った剣でその攻撃を逸らしながら、こちらへと滑空してくる。

 

 

しかし、周囲の木々に邪魔されて平野にいた時よりもスピードが出せないでいる。

 

 

オレは突進と共に振るわれた剣を弾き返し、ノイントに掌を向ける。

 

 

「ザグルゼム!!」

 

 

放たれた光球を、ノイントは先程と同様に剣で切り払う。しかし、それはオレの狙い通りの行動だった。

 

 

光球に触れたことで、淡く光を放ち始めた自身の剣を見て、ノイントは僅かに眉を顰めた。

 

 

「これは……。何を企んでいるのです、想定外(イレギュラー)

 

 

「……さてな。正直に教えると思うか? ザグルゼム!!」

 

 

俺の挑発に対して、ノイントは無表情のままオレから距離を取って二発目のザグルゼムを躱す。

 

避けられたザグルゼムは、背後にあった木々の中へと消えていった。

 

 

流石に、易々とこちらの思い通りには動いてくれないらしい。

 

 

「貴方が何を企んでいようと、私は主の命令を遂行するだけです。――《天灼(てんしゃく)》」

 

 

ノイントは片手の剣を天へとかざすと、莫大な雷が天から降り注ぎ、辺り一帯を焼き払った。

 

 

オレは咄嗟にマントへと魔力を流し、自身を囲むようにして防御する。

 

数秒間の衝撃に耐え、オレがマントを解くと、周囲の木々が全て消し炭になり、円状の空間が出来上がっていた。

 

 

「……まさか、この攻撃でも無傷とは。少々貴方を侮っていたようですね」

 

 

そう言うと、再び魔力を集中させるノイント。

 

すると、彼女の周囲に複数の魔方陣が展開される。

 

 

そして次の瞬間、それぞれの魔方陣から銀色の魔力で構成された光線が連続で射出された。

 

 

オレは再び林へと飛び込み、光線の嵐を避け続ける。

 

放たれ続ける光線は、周囲の木々を消し飛ばしながら次々と襲い掛かる。

 

 

オレは《縮地》を使って一瞬だけ光線の弾幕を抜けると、一際背の高い木の幹を蹴って登り、ノイントの頭上へと躍り出る。

 

 

「――ジャウロ・ザケルガ!!」

 

 

 

月明かりが照らす森林の中、空に雷の円環が現れる。

 

ノイントが円環から距離を取ったと同時、円環から何本もの雷の槍が降り注いだ。

 

 

同時に多方向から襲い掛かるザケルガの弾幕。

 

先程までとは逆の展開となり、今度はノイントが雷の槍を避け続ける。

 

 

空中の三次元的な高速移動により、次々と放たれるザケルガを避けていくノイント。

 

 

やがて全てのザケルガを避けきった彼女は、頭上にいる俺へと視線を向けた。

 

 

「――もう終わりですか。今ので貴方も相当の魔力を消費した筈。大人しく諦めなさい」

 

 

勝ちを確信したのか、ノイントがオレに降伏を促してくる。

 

 

確かに、先程の攻撃によってオレに残された魔力はかなり少なくなっていた。

 

それに対してノイントは、何故か一向に魔力が減っていない。何か仕組みがあるのだろう。

 

 

「悪いが、そう簡単には諦められない質でな。最後まで足掻かせてもらう」

 

「……愚かな。もう決着はついたも同然でしょう。このまま戦っても、貴方に勝ち目は――」

 

 

次の瞬間、ノイントは突如背後から迫った雷(・・・・・・・・)に貫かれた。

 

 

「――ッ!? 何故……!? 先程の攻撃は、全て躱した筈……!?」

 

 

片方の翼と片腕、そして双剣の片割れを貫かれながら、ノイントは地面へと墜ちていく。

 

驚愕したその表情は、尚もオレを見据えている。

 

 

「ああ、確かに全て躱された。……オレが直接放った攻撃はな」

 

 

あの時、オレは躱されたジャウロ・ザケルガを、『事前にザグルゼムを当てていた木』に当てたのだ。

 

 

それによって、ザグルゼムの効果である『電撃の連鎖反応』が発動し、ザケルガはノイントが持っていた双剣の片割れに向かって跳ね返ってきたという訳だ。

 

 

「……これで、終わりはしません。主の命令は、絶対――」

 

 

オレは止めを刺すべく、墜落しているノイントへと掌を向ける。

 

 

すると、ノイントの周囲の空間が歪み、一瞬でその姿が掻き消えた。

 

 

 

「……逃げられたか。あれが、神の使途……」

 

 

 

オレは、これからの旅に向けて、現れた強敵を記憶に刻むのだった。

 

 

 

 




読んで頂いてありがとうございます。

今年こそ完結に向けてこまめに投稿していきたいですね。
今のところの見込みでは、全150話くらいになるのではと思ってますが……。

では、次話もよろしくお願いします。
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