ありふれた職業で世界最強 ~魔王と雷帝~   作:さまようトト

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お待たせしました。
生贄……もとい檜山くんには、ゼオンくんと私の戦闘描写の実験台になってもらいます。


LEVEL.6 第一の術 ザケル

 

 

オレは訓練場へと行く前に、メルド団長の元に向かった。後ろからハジメも付いてきている。

 

事故とはいえ、あの魔本が消えてしまった以上、事情を報告しなくてはならないだろう。

 

 

メルド団長は、だいぶ人が少なくなった宝物庫の中で、残った数名の生徒の近くにいた。

 

 

「メルド団長、お話したいことがあるのですが、今大丈夫でしょうか」

 

「おぉ、ゼオンか。どうした? あの本はもういいのか?」

 

 

メルド団長はこちらを向いて、オレに尋ねてきた。

 

 

「そのことで少し、報告しておかなくてはと思いまして」

 

「ふむ……? 分かった、あっちで話そう。……おーい、お前たち!! もうすぐ戦闘訓練だからな、そろそろ装備を決めておけ。俺が戻ってくるまでに決めておけよー!!」

 

 

残った生徒達にそう言うと、メルド団長はこちらに歩いてくる。

オレは、ハジメとメルド団長を連れて近くに人が居ない場所まで移動すると、先程あった出来事をメルド団長に説明した。

 

当然、魔本が意思を持っていた事と、オレの『正体』については伏せて話したが。

 

 

オレの説明が終わると、メルド団長は難しい顔をして口を開く。

 

 

「――なるほどな、そんな事があったのか。……すまなかったな、俺の確認が足りなかった」

 

「いえ、こちらこそ、貴重なアーティファクトを失うことになってしまい、申し訳ありません」

 

 

オレが頭を下げると、メルド団長は僅かに眉をひそめて口を開いた。

 

 

「バカ野郎、そんな事はいい。体の方は大丈夫なのか?」

 

「……えぇ。今のところ、悪影響は出ていません」

 

 

怒るどころか、こちらの体を気遣ってくれるメルド団長に、オレは驚きながらも回答する。

 

 

「そうか、それを聞いて安心したぞ。今後何か違和感を感じたら、すぐに言ってくれ。……それとすまんが、内容が変化したというステータスを見せてもらえるか?」

 

「はい、元々そのつもりでした。……これがオレのステータスです」

 

 

そう言って、オレは自分のステータスプレートをメルド団長に渡す。しばらくプレートを見ていたメルド団長は、驚いた顔をしながら口を開く。

 

 

「これは……、とんでもないステータスだな。レベル1なのに、魔力に関しては既に俺を超えている」

 

「それにこの天職、『雷帝』というのも見たことがない。技能の数も多いし、現時点では間違いなく、お前達の中で最強だな」

 

 

メルド団長はそう言って、オレにプレートを返そうとするが、直前で手が止まる。

 

 

「これは……。ゼオン、この《魔力操作》という技能については知っているか?」

 

「……? いいえ、知りません。名前からして、魔力の操作ができる、という事だと予想していますが」

 

 

オレの回答を聞いたメルド団長は、険しい顔をして話を続けた。

 

 

「その通りだ。しかし、この世界の人間族は魔力を直接操ることはできないと言われているんだ。魔法を使う際は、詠唱と魔法陣が必要になる」

 

「――だが、例外が一つ存在する。それは『魔物』だ。奴らは詠唱を必要とせずに、魔力を直接操作して魔法を行使できる」

 

 

その言葉を聞き、オレは魔本の発言を思い出していた。

 

 

――『こんにちは。会えて嬉しいよ、魔物の子』

 

 

……なるほど、オレが本当に『魔物』であれば、この技能があるのは当然という事か。

 

そんなことを考えていると、メルド団長がこちらに忠告してくる。

 

 

「……ゼオン、俺たちにとって『魔物』は敵だ。この技能が知られてしまえば、お前はあらぬ疑いを掛けられることになる。……だから、今後は不用意にステータスを見せない様に注意するんだ。俺もこの事は見なかったことにする」

 

 

そう言って、ステータスプレートを渡してきたメルド団長にオレは驚いた。

 

 

「……いいのですか?」

 

「心配するな。魔本の件も含めて、このことは俺が上手く言っておく。お前はこれからの訓練に集中してくれ。お前には俺達とこの世界を救ってもらわにゃならんからな!!」

 

 

そう言ってこちらに屈託のない笑顔を向ける男を見て、オレはこの世界で初めて信用できる人に出会えたと思った。

 

 

 

◆◇◆

 

 

 

メルド団長への報告が終わり、オレとハジメは訓練場に戻って来ていた。

 

周りには、クラスメイト達も揃っている。これから多くの者が心待ちにしていた戦闘訓練が始まるのだ。

 

 

「よし、全員揃ったな!! これから、お前達の戦闘訓練を行う。……まぁ、初日だからな。今日は各自の天職や技能から、自分の戦闘スタイルを把握するところから始めようと思う!!」

 

 

オレ達の前に立って、メルド団長がこれから行う訓練の説明をしている。

 

一通り説明が終わると、オレ達は数人ごとのグループに分かれ、武器や魔法の使い方をメルド団長や騎士団の方々に教えてもらうことになった。

 

当然、オレとハジメは二人組である。

 

 

今は、オレが剣の使い方を騎士団員に教えてもらっているところだ。

 

 

「そう、その構えです。腕だけでなく、体全体を使って……。いやぁ、筋が良いですよ。以前から剣を使用されていた経験があるのですか?」

 

「えぇ。五年程、剣術の道場に通っていました」

 

 

たまに会話を挟みながらも、オレは剣を振るう。

 

結局、宝物庫で武器を選んでいないことに気付いたオレは、メルド団長の勧めもあり、今振るっている直剣を選んだ。

 

飾り気は無いが、とにかく頑丈で壊れにくい品であるとの事。

 

 

一通りの指導が終わり、ハジメと交代する。

初めて持つ剣の重さにふらつきながらも、真剣に指導を受けているハジメ。

 

その姿を見ながら、オレは思考に耽る。

 

先程、宝物庫で出会った魔本。あれが光の粒子となってオレに降りかかった時、自身の中にあった『何か』が目覚めたのだと、オレは理解していた。

 

その後、ステータスプレートに追加された、『第一の術 ザケル』という記述。

 

魔本が言っていたことから察するに、これはオレの『失っていたもの』の一部なのだろう。

 

 

正直なところ、オレの記憶はまだ戻っていない。

だが、あの魔本が言う事が事実であるならば、これから『力』を取り戻していけば、オレの『記憶』も戻っていくのだろう。

 

それに、何一つ思い出せなかった訳ではない。

魔本の光がオレに降りかかった時、記憶の断片らしきものが見えたのだ。

 

 

――思い出すのは、身の凍えそうな一面吹雪の雪景色と、真っ赤な炎。

 

そこで向かい合う、二人の人物。

 

――『お前……、その本を読んでみろ』

 

 

片方の人物については思い出せないが、もう一人は間違いなくオレ自身であると確信していた。

 

きっと、これは大切な記憶だ。

思い出さなくてはならない記憶の一つ。

 

オレは、必ず全てを思い出すと改めて誓う。

 

 

そこまで考えたところで、ハジメの指導が終わったようだ。

 

 

「はぁ、はぁ……。ありがとう、ございました」

 

 

騎士団員に礼を言ったハジメは、こちらに歩いてくる。

そして、オレの隣に座り込んだ。

 

 

「お疲れ様、ハジメ。どうだ?初めての剣術は」

 

「中々、キツイね……。でも、こんなに体を動かしたの、久しぶりだから、少し気持ちいいかも」

 

「ふふふ、そうか」

 

 

そんなことを語りながら、オレ達は訓練を続けるのだった。

 

 

 

◆◇◆

 

 

 

今日予定していた一通りの訓練が終わり、今は休憩時間となっていた。

周りには、息を切らした生徒達が座り込んでいるが、皆まだ少しは余裕が有りそうであった。

 

しかし、オレの隣にいるハジメはというと、地面に倒れ込んだまま起き上がれない状態だった。

 

 

「……ハジメ、大丈夫か?」

 

「……う、うん。なんとか……。でも、ゴメン、もう少し、休ませて……」

 

 

息も絶え絶えにそう言ったハジメ。

どうやら限界のようだ。

 

 

あれから、オレとハジメは剣術以外に魔法の訓練も行った。

しかし、二人とも技能に魔法の適性がないためか、あまり良い結果にはならなかった。

 

トータスにおける魔法は、体内の魔力を詠唱により魔法陣に注ぎ込み、魔法陣に組み込まれた式通りの魔法を発動するというものである。普通の人間は魔力を直接操作することはできないため、どのような効果の魔法を使うかによって、魔法陣を構築しなければならない。

 

そして、詠唱の長さに比例して流し込める魔力は多くなり、魔力量に比例して威力や効果も上がっていくらしい。また、効果の複雑さや規模に比例して魔法陣に書き込む式も多くなり、魔法陣自体も大きくなっていくようだ。

 

しかし、適性がある人物であれば、魔法陣に書き込む式を省略できるらしく、より小さい魔法陣で早く魔法を発動できるのである。

 

そういう訳で、オレとハジメの場合、全く適性がないことから、基本属性に加えて、魔法の速度や弾道、拡散率、収束率など事細かに式を書かなければならなかった。

 

つまりどうなるかというと、初歩的な魔法である《火球》を一発放つのにも、直径二メートル近い魔法陣を必要とするため、実戦ではとても使える代物ではなかったのだ。

 

 

(宝物庫でメルド団長が言っていたことは正しかったな)

 

 

一応、オレは詠唱しなくても魔法陣に直接魔力を流し込めそうだったが、メルド団長の忠告もあり、まだ試していない。

 

 

そんなことを考えながら、数分休憩していると、メルド団長が声を上げた。

 

 

「よーし!! 今日の訓練はここまでだ!! 各自、自分の武器を倉庫に預けてから解散してくれ!!」

 

 

そう言って訓練の終わりを告げたメルド団長であったが、それを遮る者がいた。

 

当然、檜山だ。宝物庫で言っていた模擬戦について、今からやる気なのだろう。

 

 

「――待って下さい、メルドさん!! 今日の訓練で武器の使い方も分かったし、最後に模擬戦をして終わりませんか!!」

 

 

そう言った檜山は、防具に多少の土こそ付いているものの、あまり疲れを見せていなかった。

 

どうやら、この模擬戦のために体力を温存していたらしい。

 

 

「む……。しかしだな、お前達は初めての訓練で疲労が溜まっているだろう。そんな状態で模擬戦をしても危ないだけだ」

 

「大丈夫ですよ!! 俺はまだまだやれます!! ……じゃあ、こうしましょう。希望者だけで模擬戦をやるってことで!! これなら、疲れてる奴はケガしなくてすむでしょう?」

 

 

渋るメルド団長に、檜山がしつこく頼み込む。

 

やがて、あまりのしつこさに折れたメルド団長は条件付きで模擬戦を許可した。

 

 

「……はぁ、分かった分かった。ただし、模擬戦をやるのは一組ずつにしろ。それと、試合には俺が立ち合う。万が一の事故が起きないようにな。これでいいか?」

 

「全然オッケーっす!! じゃあ、さっそく俺からいいですか?」

 

 

そう言って、檜山はオレを指差して大きな声で宣言する。

 

 

「おい!! ゼオンよぉ!! 俺と一対一のタイマンだ!! 当然逃げねぇよなぁ?」

 

 

その発言に、ざわざわと生徒達が騒ぎ出す。

さらに、メルド団長が厳しい声で檜山に詰め寄る。

 

 

「おい、檜山。特定の誰かを傷つけたいなどという理由でこの提案をしたのであれば、即刻中止にするぞ」

 

「いやいや、違うんですよ!! 俺とゼオンの間で元々決めてたことなんです。……そうだよなぁ?」

 

「何……? 本当か、ゼオン?」

 

 

メルド団長がこちらを向いて確認してくる。

 

 

「えぇ、その通りです。すみません、連絡が出来ていませんでした」

 

 

オレの言葉に、メルド団長は少し困惑した様子だったが、一つ溜息を吐いて納得した。

 

 

「……そうか。であれば、俺から言う事はない。ただし、お互い相手に大怪我をさせないように配慮するんだぞ!!」

 

「へっへっへ。了解でーす」

 

 

ヘラヘラ笑いながら返事をする檜山を複雑そうに見て、メルド団長は訓練場の中央に向かう。

 

檜山とオレもそれに続き、他のクラスメイト達も観戦するためか付いてくる。

 

その途中、檜山はオレにだけ聞こえる様に話しかけてきた。

 

 

「よぉ、逃げなかったことは褒めてやるよ。まぁ、宣言通りボロボロにしてやるから、覚悟しとけよ?」

 

 

そう言って先に行く檜山。

 

その背中に向かって、オレは呟く。

 

 

「あぁ、よろしく頼む。……色々と試させてもらうぞ」

 

 

そうして、オレと檜山の模擬戦に向けて準備が進められていくのだった。

 

 

 

◆◇◆

 

 

 

広い訓練場の中央付近、オレと檜山は十メートル程離れた位置に立ち、向き合っていた。

 

その周りを少し離れて取り囲むクラスメイト達。その中に、ハジメや雫の姿があった。特に雫はこちらを心配そうな表情で見つめている。一方でハジメはというと、『やりすぎないようにね』とでも言うかのようにこちらを見ていた。

 

その視線に思わず笑いそうになるが、堪えて前を向く。

 

 

そして、オレと檜山の中間辺りにメルド団長が立ち、口を開く。

 

 

「――では、模擬戦を始める。先程も言ったが、危険な場面が有れば俺が止めるからな。お互いに相手を配慮した攻撃を心掛ける様に。以上だ」

 

 

そう言って、メルド団長が腕を持ち上げる。

 

それを見たオレと檜山がそれぞれの武器を構え、開始の合図を待つ。

 

 

「では……始め!!」

 

 

メルド団長が腕を振り下ろすと同時に、檜山がこちらに突っ込んできた。

 

 

「くらいやがれ!!」

 

 

檜山は宝物庫で見た派手な槍を構えて突き刺してくるが、オレはそれを一歩横に移動して避ける。

 

 

「おら、おら、おらぁ!!」

 

 

続けざまに切り掛かり、叩き付け、薙ぎ払いなど、槍を振り回して攻撃を仕掛けてくる。

 

 

――確かに速い。だが、単調で雑な攻撃だ。

 

オレはそれを一つ一つ避け、自身のステータスに合わせた動きを学んでいく。

あの魔本によってステータスが上がったことで発生していた、感覚の『ズレ』を修正していく。

 

 

徐々に、最低限の動きで檜山の攻撃を避けられるようになっていく。

 

 

「て、めぇ……!! 舐めてんのか!? 避けてばかりいやがって!!」

 

 

避けてばかりで、一向に攻撃しないオレに痺れを切らしたのか、檜山が怒鳴りながら槍を突き出してくる。

 

 

(――ここ(・・)だな)

 

 

力任せに突き出された槍に、直剣を合わせる。

 

檜山の突きが終わるタイミングで、掬い上げるように振るわれたオレの剣が、檜山の槍を弾き飛ばした。

 

 

――カラン、カラン

 

 

唖然としてオレの後ろに転がった槍を見つめる檜山の腹に、蹴りを叩き込む。

 

 

「ぐっはぁ!?」

 

 

数メートル吹き飛び、そのまま地面を滑っていく檜山。

 

奴は蹴られた腹を抑えながら、よろよろと立ち上がる。

 

 

「ぐっ、ちく、しょう……!! 何で……!? あいつは『天職なし』の筈だろ!?」

 

 

こちらを睨みながら、怒鳴る檜山。

 

 

しかし、直後にニヤリと笑ってこちらに腕を伸ばし、掌を向けた。

 

 

「確か、お前は魔法適正も無かったよなぁ!?」

 

 

そう叫ぶと同時、檜山の掌の先に魔法陣が発生する。

赤く輝くその魔法陣を見るに、どうやら火属性の魔法を使用するつもりらしい。

 

 

「おおおおぉぉ!!」

 

 

檜山が構築する魔法陣は、どんどん大きさを増していく。

赤い輝きはどんどん強くなり、もう発射寸前といった様子だ。

 

 

「――なっ、馬鹿者!? これは模擬戦だと言っただろう!! そんなに威力を高めた魔法を使うな!!」

 

 

メルド団長が止めるように声を上げるが、それを無視して檜山は魔法を発動した。

 

 

「ここに焼撃を望む――《火球》!!」

 

 

ドン、と直径二メートル程ある火の玉が檜山から放たれた。

 

それは熱気を放ちながら、オレに向かって進んでくる。

 

 

「くそっ、馬鹿者め!!」

 

 

メルド団長が対処しようとするが、必要ない(・・・・)

 

オレは、迫りくる火球に向けて右手を上げ、掌を向ける。

 

――『使い方』は分かっている。後は、『唱える』だけだ。

 

檜山の暴走に、周囲を囲んでいたクラスメイトから悲鳴が漏れるが、集中したオレの耳には入らなかった。

 

 

「第一の術――」

 

 

火球がオレの目の前にまで到達したその時、オレはその言葉を紡ぐ。

 

 

「――ザケル!!!」

 

 

瞬間、オレの掌から放たれた青白い電撃が、檜山の放った火球を消し飛ばした。

 

 

 

◆◇◆

 

 

 

ゼオンと檜山の模擬戦を観戦していた者達は、驚愕していた。

 

『天職』を持つ檜山が、『天職なし』のゼオンに終始圧倒されている。

 

彼らの目から見ても速かった檜山の攻撃は一度も当たらず、ゼオンはそれをかわし続けた。

 

しかも、徐々に動きが洗練されてきている。

 

 

「凄い……」

 

 

思わずそう言った女子生徒は、周りの視線に口を抑えた。

 

その後、試合はゼオンが檜山を蹴り飛ばしたことで、終わったと殆どの者が思っていた。

しかし、檜山は怒りながら威力を限界まで高めた魔法を発動したのだ。

 

 

あちこちから悲鳴が上がると、メルドが檜山を止めようと動き出す。

 

しかし、メルドは次の瞬間には足を止め、ゼオンの方を凝視した。

 

 

(――なんだ、あの魔力は!?)

 

 

いつの間にか腕を上げ、掌を火球に向けたゼオンから、とてつもなく強い魔力が発せられたからであった。

 

騎士団長として長年戦いに身を置いて居たメルドは、直感で今最も警戒するべきは、ゼオンの方であると感じていた。

 

そんなことを考えている内に、火球がゼオンに直撃するというところまで来ていた。

 

 

(――っ!? しまった!!)

 

 

次の瞬間、ゼオンを助けようと再び駆け出そうとしたメルドと、避難しようとしていたクラスメイト達の耳に、ゼオンの声が響いた。

 

 

「第一の術――ザケル!!!」

 

 

そして、ゼオンの掌から放たれた白銀の電撃は、檜山の《火球》を易々と飲み込み、その先にいた檜山まで届く直前で掻き消えた。

 

 

しばし、唖然としていた一同であったが、いち早く回復したメルドが檜山に駆け寄ったことで、徐々に動き出した。

 

檜山は、白目をむいて気絶していた。体にも、多少の焦げ跡はあるが、命に別状はないだろう。

 

ふう、と一つ息を吐いたメルドは、ゼオンの方を見やる。

 

 

(……とんでもない威力の電撃だった。あのままでは間違いなく檜山に直撃していた筈。だが、実際には服が焦げる程度で、実質ダメージはなかった……。まさか、《火球》だけを狙ったのか? あの威力の魔法を、あんな一瞬で……)

 

 

しばし考え込んでいたメルドであったが、気を取り直すと、ゼオンの傍まで行き、この試合の結果を宣言する。

 

 

「――そこまで!! 勝者、ゼオン!!」

 

 

その宣言に文句をつける存在は、誰一人存在しなかった。

 

 

 




読んで頂いてありがとうございます。

というわけで、初の戦闘回でした。
やっぱり表現が難しいですね。

これからもっと上手く表現できるように頑張ります。

では、次話もよろしくお願いします。
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