ありふれた職業で世界最強 ~魔王と雷帝~   作:さまようトト

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こんばんわ。
本日、二回目の投稿です。
今回シリアス成分強めですので、苦手な方はご注意ください。


LEVEL.9 たとえ何者であっても

 

 

煌びやかな装飾が施された、大広間。

 

 

以前、王城に初めて赴いた際に食事会が開催された場所で、激励会は行われていた。

 

幾つも設置されたテーブルの上には、上等そうな料理がこれでもかと敷き詰められている。

 

今回の食事会は立食パーティーの形式で開催されており、各々好きな料理を食べて良いらしい。

 

 

しかし、今回もただの食事会という訳ではないだろう。

現に、勇者である天之河の周りには、いかにも貴族令嬢ですと言わんばかりの美しいドレスを身に纏った少女達が群がっている。

 

そこに普段から天之河に絡んでいるクラスメイト達も加わるのだから、傍から見ればカオスな状況だ。

 

また、他の男子生徒にもそれぞれ話し掛けている女性が居るところを見るに、これも『餌』の一環なのだろう。

 

 

ちなみに女子生徒達についても、やたら顔が整った貴族らしき男性が話し掛けていた。

皆、満更でもなさそうな表情で会話を楽しんでいる。

 

まぁ、雫や白崎など、一部の女子は迷惑そうにしているが。

 

 

(……というか、白崎に話し掛けているのは、ランデル王子じゃないのか? あれだけあしらわれているのに、よくめげないな)

 

 

白崎に話し掛ける男性の中に見知った金髪の少年の姿を見つけ、オレは思わず哀れんでしまった。

 

 

かくいうオレの元にも、最初は数人の貴族令嬢が話し掛けてきたのだが、「興味がない」と断ったきり、話し掛けてくる者は居なくなった。

 

 

 

そんなこともあり、今オレは会場の隅にあったバルコニーにて夜風に当たっている。

 

 

ふと、懐からステータスプレートを取り出して眺めながら、物思いに耽る。

 

最近は、一人になるとつい考え事をしてしまう。

考えるのは、大抵がオレの『記憶』についてだ。

 

 

あの日、オレが『魔本』と出会った日から二週間が経った。

 

あれから訓練によってオレのレベルは上がり、当初一つだけだった『呪文』も今では五つに増えている。

 

そして、記憶の方についても、『呪文』が増える度に少しずつ戻ってきている。

未だに断片的ではあるが、思い出しているのだ。

 

 

オレは目を閉じ、取り戻した記憶に集中する。

 

 

――1000年に一度行われる、魔界の王を決める戦い。

 

 

――選ばれた100人の魔物の子。

 

 

――魔物の子は、『パートナー』と協力して戦う。

 

 

――『魔本』が燃やされれば、その魔物は王になる資格を失う。

 

 

――最後の一人になるまで戦いは続き、残った一人が『次の王』になる。

 

 

 

これが、オレが思い出した記憶。自身の出自。

 

この記憶と、あの魔本が言っていた事を照らし合わせると、自身の正体は自ずと出る。

 

 

(――オレは、『魔物』だ)

 

 

魔界の王を決める戦いに選ばれた、100人の魔物の子。その内の一人。

 

 

「……親など、どこにも居ない訳だ。初めから、オレは化け物だったのだから」

 

 

思わず、自嘲した笑みが顔に浮かぶ。

 

 

オレが記憶を無くし、南雲家に保護された時点で、魔界の王を決める戦いがどうなっていたのかは分からない。

 

だが、オレの傍に『魔本』が無かったことと、共に戦っていた筈の『パートナー』に出会うこともなかったことから察するに、オレは負けたのだろう。

 

それに……。

 

 

(十年経っても、魔界からの迎えが来ることはなかった。つまりは、そういう事だろう)

 

 

――自分は、『いらない子』なのだと。

 

 

この世界に来る前に見た、自身の幼少期の記憶。

 

厳しい訓練の日々に、顔を見せてくれない親。絶望し、怒りに歪む自身の顔。

 

 

幼少期からずっと、オレの心の中に燻っていた意識。

 

なぜ、オレには実の家族が居ないのか。なぜ、迎えに来てくれないのか。なぜ、なぜ、なぜ……。

 

 

(――下らない事を考えたな)

 

 

沈みかけた気持ちを切って捨てる。

 

記憶が戻り始めてから、時折『怒り』や『憎しみ』の感情が強くなるのを感じる。

これは、『魔物』であるオレの本質が戻ってきている故なのだろうか。

 

 

(己の境遇に駄々をこねるような歳でもない。――それに、もう過去の話だ)

 

 

そうだ。今のオレには、やらなければならない事がある。

 

 

(ハジメを、無事に元の世界へ返す。長年返しきれない恩を受けてきたオレが一番に考えるべきは、これだけだ)

 

 

そんなことを考えていると、背後から近づく気配を感じたため、振り返る。

 

 

「あ、ゼオン、ここに居たんだね。会場に居ないから、探しちゃったよ」

 

 

そこには、ハジメが居た。

こんなオレを『家族』だと言ってくれた、大切な恩人が。

 

 

「ここは静かだからな。ハジメこそ、もう料理は良いのか?」

 

「うん、食べたい料理は一通り食べたかな」

 

 

軽く雑談を交わしながら、ハジメがオレの隣に歩いてくる。

 

 

「ゼオンは、何か考え事してたの?」

 

「……あぁ、明日からの遠征について考えていた」

 

 

オレは、咄嗟に嘘をついてしまった。

先程まで考えていた事を誤魔化す様に。

 

オレの中にある醜い感情を見せたくなかった。

 

 

ハジメは、少しの間オレの事を見て、「……そっか」と呟いた。

 

 

「……ねぇ、ゼオン」

 

 

少しの間、気不味い沈黙が流れ、ハジメが口を開いた。

 

 

「悩みごとがあるなら、いつでも相談に乗るからね」

 

 

顔を上げると、真剣な表情をするハジメと目が合った。

 

 

「……気付いていたのか」

 

「当たり前でしょ。何年一緒にいると思ってるのさ」

 

 

困った様に笑いながら、ハジメは続ける。

 

 

「僕は頼りないと思うけどさ、それでもゼオンの『家族』だから。もっと頼って欲しいな」

 

「……ハジメ」

 

 

まだハジメには、オレの記憶が一部戻った事を話していない。

 

この世界に来てからずっと、ハジメは危うい立場にいる。

 

強い戦闘能力を示していくクラスメイト達。

その中で一人だけ、ありふれた天職に、この世界の人間と変わらないステータス。

 

 

ただでさえ精神的に辛い状況なのだ。

そんな中でオレの秘密を伝えれば、ハジメに要らぬ心配をさせることになると思ったから、オレは……。

 

 

(……いや、ただ逃げていただけ、か)

 

 

オレは恐れていたのだ。

親や帰れる家、自身の記憶……何もなかったオレを『家族』だと、そう言って受け入れてくれた存在が離れていくのが。

 

 

(――覚悟を、決めるか)

 

 

オレは、ハジメに全てを話した。

訓練初日に、宝物庫で魔本と会話したこと。その後、少しずつだが記憶が戻ってきていること。

 

……そして、自分の正体は『魔物』であること。

 

 

ハジメは、黙ってオレの話を最後まで聞いてくれた。

 

 

「そっか……そんな事があったんだね」

 

 

話を聞き終えたハジメが何を言うのか。

 

身構えるオレに、ハジメは……。

 

 

「――良かったね、ゼオン!!」

 

 

嬉しそうに、おめでとう、とそう言った。

 

 

「…………は?」

 

 

「いやー、少しとはいえゼオンの記憶が戻って嬉しいよ。昔から、ずっと悩んでたもんね」

 

「……というか、話を聞くに、ゼオンが使える魔法が増えると記憶が戻るっていう仕組みなのかな? もしかしたら、レベルを上げていくことが、記憶を全部取り戻す近道なのかもしれないね」

 

「じゃあ、明日からの遠征は大チャンスかもね。七大迷宮のオルクス大迷宮なら、レベルが一気に上がるかもしれないし」

 

 

 

「ちょ、ちょっと待て、ハジメ」

 

 

矢継ぎ早に話し続けるハジメに、オレはつい訪ねてしまった。

 

 

「……ハジメ、オレは『魔物』なんだぞ。……人間じゃ、ないんだ」

 

「なぜ、そんなに普通に接することができるんだ」

 

 

オレの言葉に首をかしげたハジメは、当たり前の事を言うように口を開いた。

 

 

「――だって、ゼオンはゼオンだから」

 

 

「……え」

 

 

驚くオレに、ハジメは言葉を続ける。

 

 

「魔物? 人間じゃない? そんなの関係ないよ」

 

 

「――たとえ何者であっても、ゼオンは僕の自慢の『家族』だから」

 

 

――それは、記憶の中のオレがずっと求めていたもの。その言葉には、確かに『愛』があった。

 

 

これは、マズい。

オレはボヤけ始めた視界を隠すように、手で顔を覆う。

 

 

「それに、昔から異世界人に会ってみたいと思ってたんだ。この世界に来て夢が叶ったと思ってたけど、とっくの昔に叶ってたんだね。だってずっと側に居たんだからさ」

 

 

そんなオレに気が付いていないのか、話し続けるハジメ。

 

 

それから、ハジメが話し、それを顔を手で覆ったオレが黙って聞くという、可笑しな時間が過ぎてゆく。

 

 

きっとオレは、これから一生、この夜のことは忘れないだろう。

 

 

 

オレの頬には、手の隙間から零れ落ちた水が、二筋の軌跡を残していた。

 

 

 




読んで頂いてありがとうございます。

というわけで、ゼオンくんのメンタルカウンセリング回でした。

どんなに精神的に強い人でも、長年ずっと探し求めていた自分の出自が『化け物』だったら、自暴自棄になると思うんですよね。
現に、『金色のガッシュ!!』の原作主人公であるあの子も、自身の秘密を知った後は自棄になっていましたからね。

さて、前話の後書きで少し語りましたが、元々8話と9話は合体して投稿する予定でした。
何故止めたかと言うと……まぁ、今話の内容が重すぎたということが一つ。あとは、前話と繋げると、せっかく見所を用意した雫さんの影が薄くなってしまうという。

真のメインヒロインはハジメくんだった……?

それはさておき、次話からはようやくオルクス大迷宮に行きます。
ここまで長かった……。

では、次話もよろしくお願いします。
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