2月15日水曜日
今日から日記を始めようと思う。理由としては私は世間一般的な小学生4年生とは少し違うみたいなので日記を付けて自分を俯瞰して見るためだ。私は完璧美女の幽霊に取り憑かれている。
2月16日木曜日
私が小学4年生であること以外の情報を日記に書かれていないので書いていこうと思う。
私の名前は木原あい。都内の小学校に通うぴちぴちの小学4年生。
見た目はやや薄紫の髪を腰まで伸ばした髪。背丈は一般的な小学4年生より少し小さい位かな?…やっぱ平均以上の身長ってことで。日記での中ぐらい自分を良く見せて自尊心を満たすのは許してくれ。
顔は自分で言うのもあれだが美少女だと思う。
神が全力で造形したとしか思えない黄金比の容姿。紅葉色の瞳に映る星の模様みたいなのが唯一の欠点だが幸い他の人には見えない様子。
性格は自分ではよくわからないがよく大人びていると言われる。
私が幼稚園児の頃は今みたいに大人びた所はなく、精々学校名物「ちょっと男子〜!」というフレーズを幼稚園にて多用してたくらいだ。
その日も必殺「ちょっと男子〜!」を決めて男の子数人泣かせて、ママと一緒に家に帰りパパと一緒にお風呂に入った時だった。
湯船に知らない女の人が居たのだ。
その時はぎゃんぎゃん泣き喚いた。その後もしばらく泣き止むことはなく、興奮しすぎて久し振りに漏らした。
泣き止んだ後にママから泣いた理由を問われたので、私は鼻を啜りながらお風呂に知らない人が居たと伝えた。
理由を聞いたママは、私の横に立っていたパパに何かを確認するようアイコンタクトとると
「あいちゃん?多分それはちょっと男子〜!おばけなのよ」
そう言われ私はお漏らしによる不快感を感じながら
「なにそれー?」
と無邪気に問うた。するとママは
「その昔ちょっと男子〜!を口癖にしてる女の子でその子は交通事故で亡くなっちゃったけど天国でちょっと男子〜!言い過ぎと神様にお説教されて、天国には行けないでお化けとして彷徨ってるのよ。そして夜な夜なちょっと男子〜!を口癖にしてる女の子に近寄って呪っちゃうのよ!」
ママは身振り手振りで私に教えてきて私は怖くなってパパに飛びついた。パパは笑いながら受け止めて
「でもなーあい。そのおばけから逃げる方法があるんだぞ」
と少しおどけながら言ってきたので私は返す刀で
「どうしたらいいのパパ!!」
私は怖がる気持ちをパパに抱きつく形で発散しつつ一刻も早くおばけから逃げたい一身でパパに聞いた。
「それはなーあい。もうちょっと男子〜!って言わない事、それと、他の子に優しくすることだぞ?」
その言葉を聞いて私は、ちょっと男子〜を金輪際使わないことも決めた。ついでに泣かした男の子にも謝ろうと決めた。
その後、色々ありすぎて眠たくなり歯を磨いたあと直ぐに布団に入った。
就寝後何時間か経ったかは今でも覚えてないが下半身の不快感に目を覚ました私はパンツを覗いて見るとさっきの会話中に大をお漏らししたことに気づき夜さっきまで一緒に寝ていたママを起こそうとしたが、パパに人に優しくしなさいと言われたのを思い出し、幸せそうに寝てるママを起こすのを躊躇し、仕方なく自分で履き替える事にした。
幸いさっきまで寝ていたこともあってか夜目はきき、部屋にあるクローゼットのパンツを取り少しおっかなびっくりな歩き方でトイレに着き電化をつけドアを開けたら
さっき湯船にいたちょっと男子〜幽霊がいた。
私は思わず声を大にして泣き喚こうとしたのだが寸前で他の人に迷惑が掛かるかと思い落ちてくる涙を垂れ流しにし、変わりに自分の口元に両手を置き出てくる悲鳴を押し殺していた。
時間にして、数分。もしかしたらそれ以上経っていたかも知れないが体感では数分位だった。
トイレに座っている幽霊と方や声だけ上げないギャン泣き幼稚園児の構図だったが、幽霊がか細い声で
「アクア…ルビー」
と言ったのを聞いた。咄嗟に私は
「なにそれ?ほうせき?」
と聞いてしまった。幽霊は今まで虚空を見つめている感じだったが私の言葉に空ろだった目に光を灯し視線を此方に当て
「私が見えるの?」
少し希望が垣間見えたような表情でこちらに話し掛けてきた。
私は恐怖に慄きながら首をブンブンと擬音が付きそうな位横に振ったが
「答えてるのが見えてる証拠だよ」
クスクスと笑いながらトイレの椅子から立ち上がり私の方へと近寄ってきた。
元々距離にしてもあってないようなものだったのですぐ目と鼻の先まで詰められ幽霊は屈み私の目線に合わせると人懐っこい笑顔で
「初めまして、私は 星野 アイ 別に呪ったりしないから貴方の名前教えて?」
と、此方に話し掛けて来た。
その時不思議とこの幽霊の言う事が信じられると思い自然と口が開き、
「きはらあい」
少し呆然と、しかし何処かしら高揚感を顕にしたような口調で答えた。
「へ〜あいちゃんって言うのか!私と同じ名前だね♪」
言葉尻から伝わる彼女のカリスマ性に似た物に子供心な私はすぐ虜になり、涙は引き、口に当てた手は次第に彼女に触れたいという気持ちを抑えるように後ろに回しぎゅっと握っていた。
「おねえちゃんは何でここいるの?」
「う~ん…正直私も知りたいところだけど君に会えたからそこはどーでもいいかな?」
質問に幽霊は人差し指を口元にあて、考える仕草をした後さっぱりとした笑顔で答えてくれた。
私はいてもたっても居られず幽霊に両手を広げて抱き着き。
「それじゃあお姉ちゃんの事いっぱい教えて!」
「いいよーでも代わりにアイちゃんの事も教えてね♪」
幽霊は笑顔で向かい入れてお互いの鼻が触れ合う距離まで顔を近づけ話し込んだ。
そこまでが私の覚えている記憶で、気が付いたら寝床に戻ってママのけたたましいアラーム音で目を覚ました。私は重い瞼を擦りながらママに幽霊の事聞いたら
「何のこと?それより早く準備しないと幼稚園遅れるよ!」
よくみたらいつも1時間掛けて手入れしているママの髪がほつれていつもの精彩がなく、先に食卓に付いてたパパはおかしな方向に曲がったネクタイに目もくれず、一心不乱に苦いコーヒーと食パンを凄い速度で交互に食べていた。
色々聞きたかったが後でもいいかと思い定位置に座り、食パンとお茶をパパにも負けない速度で口に頬張った。パパの真上で此方に手を振っているアイを見つめながら。
ここまで書いたが一つ私の欠点に気づいた。
「私の子なんだからとーぜんだよねー」
「だからわたしはアイの子じゃないって!」
私の書いた日記を宙をぷかぷか浮きながら覗き込み、笑いながら頬を擦り付けてくるアイを鬱陶しく離し、私は椅子から勢いよく立ち上がりその場で180度ターンをしアイの方を向き
「大体何で私がアイの子供なの私たちって唯単に幽霊とそれが見える関係だけでしょ!」
ここ最近アイは可笑しい。最初の頃は私から話しかけアイが気が向いたら答えてくれるという関係だったが私が小学生になりランドセル姿を見せたあたりからアイの方から話かけてきてた。
「学校楽しい?」「手洗った?」「宿題で解らないことない?」「手洗った?」「アイドル興味ない?」「手洗った?」等々…手洗いの確認しすぎっての!
最初の頃はアイから話しかけてくれて嬉しかったので、喜々として返事してた私だが流石に5年間ともなると最初にあった憧憬の気持ちはどんどん鬱陶しい気持ちに変わり気がついたら立場が逆点していた。
しかもここ最近はあいはアイの子供と言ってくるし!私のママはママだけだっての!
積年の気持ちが言えて気持ちが高揚してきたので少し深呼吸し、瞼を閉じ、改めて徹底抗戦の意味を込めた目線をアイを見つめると。
アイは最初の頃にしていた人懐っこい笑顔ではなく、慈愛に満ち溢れた顔で私の頬に手を置き額と額を合わせながら。
「ううんあいはアイの子だよ。たまたま私のお腹から生まれなかっただけでアイの子」
「…うん」
至近距離で見つめるアイの瞳。私と同じ薄紫の瞳。唯一違うところは私は片目だけ目の中に光彩を放つ星型があるのに対してアイの両目には私以上に光彩を放つ瞳。この目を至近距離で見せつけられると何も言えなくなる。まるで親子のように。逆らっちゃいけない。逆らいたくない。そんな感情にさせる瞳。
私の返答に満足したのか頬に伸ばしていた手を私の後頭部まで回しもう片方の手で頭を撫でてきた。私は無言でアイに体を預け、緩む顔に気を張りながら無表情でされるがままになった。