前回の続きはまた需要があれば書こうかと思いますので…
誤字脱字の報告ありがとうございます!私自身投稿前に確認しているのですが、何分視力が…
貴方に脳破壊の幸があらんことを!(やけくそ)
小学生の朝は早いものだ、例えそれが学校がない日でも。
時間にして午前6時頃、小学2年生の頃に両親に強請り倒し、獲得した一人部屋。
全体の家具、カーテン類も含めピンクで統一されてる部屋のベッドで私は寝ていた。
微睡の中にいた私はふと頭から感じる違和感で意識が覚醒した。
ん-っと声にもならない声をあげ、鉛みたいに重たい瞼を開き仰向けの体制のまま目線だけを横に向けた。
「おはよう、あい」
「…おはよう、アイ」
そこには優しい表情を浮かべたアイが、片手を枕代わりにし、もう片方の手で私を撫でて横になっていた。
私は甘えたくなる気持ちを抑え、布団を勢いよく放り、立ち上がった。
いきなりの私の行動に目をパチクリさせているアイを見おろし、
「同じベットに入らないでっていったよね?」
私が怒り口調で言うと、アイはにししと、悪戯好きな笑みを浮かべ立ち上がり、逆に見おろされる状態になり、しかしアイは直ぐ屈み、顔を私の寸前まで近づけ
「でも一緒に寝ようっていったのはあいの方なんだよー?」
その言葉に私は訝しげな顔を浮かべ、就寝前の記憶を掘り返してみた。
えっと…確かお風呂入って歯を磨いてベットに座った時、
「アイ!今日は一緒に寝るの禁止!」
「いいけど、ちゃんと寝るんだよ?」
「一人で寝れるし!本当は一人で寝れるし!」
「わかったわかった、風邪ひかないように布団かけて寝るのよ~」
…軽くいなされた感はあるが確かに一人で寝るって言ってる。
この時点で私の勝利は完璧なのだが更に完璧なる勝利のためにもう少し掘り返してみる。
その後電気を消し布団に入って目を瞑って早や1時間。
猛烈な睡魔と孤独感に襲われ、寝れないでいた。
少し瞼を上げてみると、宙にふわふわ浮いているアイがずっと笑みを浮かべながらこちらをみていた。まるで私が感じている孤独感をお見通しで、その孤独感はアイでしか解消できないという自信めいた瞳だった。
「…アイ」
私はアイに助けるように呼び掛けたが、アイは笑みを深めるだけで返事をしようとしない。
「……ママ」
「なぁに、あい?」
アイは何故か私にママと呼んでもらいたい節がある。
それは何故かと聞いても
「え、だって自分の娘にママって呼んでもらいたいものでしょ?」
至極当然だという風に返された。
私はちゃんとしたママから生まれたのに、でも後に浮かべた笑みに何も言えなくなりその話題は終了した。
「一緒に寝て?」
「勿論いいよー」
アイは浮いている状態から器用に私の横に着地しそのまま横になった。
私は直ぐにアイに抱き着き顔を埋め、アイはそれに答えるように抱きしめ返し、頭を撫でながら
「お休みなさい、あい」
「お休み、ママ」
そこからは記憶が途切れていた。
「んー、どうしたのあい、目が泳いでるよー?」
私の完璧敗北が決定した今、眼前にいるアイから視線に目だけでも逃がそうとしたら、アイは後ろに組んでた手を前に持っていき、片手で前髪を上げ私の額に額を合わせながらもう片方の手を私の頬に添えて笑顔を更に深めながら此方に語り掛けてきた。
まるで自分の勝利が完璧だと言わんばかりの顔、さっきまで私がしてた顔だ。
「…ごめんなさい」
「えー聞こえないなー、ママ聞こえなかったからもう一度言ってほしいな?」
私は必死に目を右往左往しながら消え入りそうな声で謝罪した。
この距離でなら聞こえている筈だが、アイは合わせた額をぐりぐりしながら再度の謝罪を要求してきた。
この幽霊、自分の事ママと言ってくるけど唯のドSなだけではないだろうか、
やーいやーい!このドS幽霊!
私はさっきまで右往左往していた目をアイに向け、顔を威嚇する獣のようにすると
「御免なさい!もうこれでいいでしょ!?」
「うんうん、あいはちゃんと御免なさい言えていい子だね!」
アイは私の謝罪を満面の笑みで受け入れ、私から一歩下がり指を口に置き、考えるような仕草で
「じゃあ今回は何してもらおーかなー」
「…は?」
アイの突然の要求宣言に私はぽかんとしていると、
「前ママと約束したでしょ?自分が悪い時はちゃんと御免なさいして代わりに相手のお願い一つ叶えるって」
…してたー!!
確かこの前寝る前、えらく真剣な顔のアイに呼ばれ、膝枕してもらいながら、謝罪にはそれ相応の誠意が必要、じゃないとその謝罪は嘘になるって。嘘は駄目なんだよって。
その時はちゃんと聞いていたが、この約束が交わされた後、数か月は効力を発揮してなかったから完全に忘れてた。
「…あ、あのアイ?一応約束はしたけどできればマイルドなのがいーかなーって言ってみたり...」
「1日中抱き枕とか?でも、1日中甘えてもらえるのもいーなー」
「わー!わー!御免だからもっと簡単なことにしてよママ!」
やっぱりアイはドSだ、このドS幽霊!悪魔!
私はこれから起こる地獄のような所業を思い、羞恥心に染まった顔でアイに縋り付いて懇願した。
アイは「よし!」と意気込むと足元に縋り付いていた私を優しく引き離し、目線を合わせるため屈み、少し寂しげな顔をしながら
「一緒に行ってほしいところがあるの、来てくれる?」
「…うん」
ずるい、そんな顔されたら絶対嫌って言えないの知ってるくせに。
閑静な住宅街その一角に事務所と住宅が合わさったような建物の前に私とアイは立っていた。
「わー、久しぶりの苺プロだー!案外変わってないなー。しいて言うなら車かな?社長いつ変えたんだろー」
「付いてきてほしい場所があるからって言うから来たけど苺プロ?この事務所に何か思い入れでもあるの?」
あの後、私がお願いを承諾するとアイは此方まで嬉しくなってしまうような喜び方をされ、私も興が乗ったので、寝起きの体に鞭を打ちさっさと身支度を済ませ、朝食を作っているママにご飯を要らないと言うと拳骨をもらい、(ついでにアイからも拳骨をもらった。解せぬ)急いで朝ご飯を掻き込み、家を出た。
アイに道案内をしてもらいながら数十分。乗っていた興が冷め、次第にどこに連れていかれるのだろうかと少し恐怖していたら件の場所にたどり着いたのだ。
三階建ての建物。
家の作りは一般的なものとは違いどことなく事務所を彷彿とさせるものだった。
玄関には居住人の苗字だと思われる苗字表札にシャッターの閉められた駐車場の方にもドアがあり、そこには
「苺プロダクション?」
「あれ、言ってなかったっけ?私、死ぬ前はアイドルしてたんだよー」
「アイドル!?」
アイドル!?アイドルってあの
「自動でエンジン止まるやつ?」
「それはアイドリングストップ」
「じゃあ飲食店のランチ終わりの時間帯?」
「それはアイドル帯」
え、他にアイドルって単語もう思いつかないなぁ。
私が他にアイドルの単語を考えて百面相していると
「あい、アイドルってテレビに映ってる歌って踊ってる人の事だよ?」
「…アイって芸能人だったの!?」
でも、芸能人って綺麗な人しかなれないよね?
私は本当かぁ?と思いアイをつま先から頭のてっぺんまで、観察してみた。
枝毛のない綺麗な髪、目は大きく開き、鼻はすらっとしていて口は綺麗な薄ピンク色。見てるだけで幸せな気持ちにる顔のパーツ群に起伏がしっかりしてるボディ。これは...
「確かにアイって綺麗だよね」
「その娘のあいはもっと可愛いよー」
「あっ私が完璧可愛いのは知っているのでお構いなく」
よくよく考えたらアイと私ってほぼ容姿同じだからアイが綺麗なのは当然か。
「でも、アイと私って似てるでしょ?昔の所属アイドルと瓜二つの人が事務所に来たら凄いことになりそうだけど…」
アイがどの位凄いアイドルなのかは知らないけど、アイドル抜きにして、死んだ昔の知り合いが家の前にいたら悲鳴あげそう。私なら全力で塩を撒く。レッツゴー陰陽師って言いながら。
アイは私の言葉に少しばつが悪そうな顔をしながら
「あははーそこ言われちゃうと何も言えなくなっちゃうなー」
てへへとごまかし笑いをしながらでも、と続ける
「そろそろアクアとルビーが高校に上がるでしょ?いい機会だからあいにも会わせたいかなーって思ってさ」
アイは事務所を見上げ、はにかみながら言う。
その顔は、今ままで会いたくても会えなかった人に会えるような心から笑っている、アイの滅多にでない本当の笑みだった。
私はその顔に、その顔にさせたまだ見ぬ人に嫉妬した。
私はアイの昔の事は殆ど知らない、アイドルだったってのも今知った位だ。
元々、私が聞かなかったこともあるが喋らないアイもアイだ!
こっちは昔の記憶だから死んだ時の記憶も関連して思い出すだろうから、遠慮して聞かなかったのに、アイから話してくれると勝手に思っていた。
私は溢れ出る嫉妬心を抑えきれず未だに事務所を見ているアイに抱き着いた。
アイはいきなり抱き着かれて少し驚いたような顔になり、しかしすぐにいつもの顔に戻り、
「どうしたのあい、トイレしたくなった?」
「…何でもない」
アイは抱きしめ返し、少しからかい口調で言ってきた。
いつもの私なら直ぐに離れて、嫌みの一つや二つ言ってるんだけど今の私じゃ無理だ。
だって、今の私凄い酷い顔している。
嫉妬に染まった顔。
独占欲丸出しの顔。
アイにだけは見られたくない顔。
その後、数分間位はアイのお腹に顔を埋めていたが事務所のドアが開いた音を聞き慌てて離れた。
だって、傍からみたら何もない空間に体を押し付けている変人か、新手の大道芸人って思われるからね。
私はしわの付いた服を必死に伸ばしていると、
「あー奥さんだー!」
おーい!とアイは手を上にあげ、凄い勢いで振りながら扉からでた人に手を振っていた。
私は、服を伸ばしつつ開いたドア付近に入る人を横目でみた。
年は大体20代後半から30代前半だろうか、やや薄ピンクに近い茶髪に寝不足なのか目の下に多少の隈を携えていた。
服装は、ジーパンに半袖という見るからに部屋着で両手に持った市指定のごみ袋を見る限り寝不足の体に鞭を打ってごみ出しをしているのだろうだと簡単に想起できる。
「やらかした、最近太り気味だったからピエよんにダイエットコーチを頼んだのが失敗だったわ...これじゃあ脂肪落とす前に腰の骨落とすわ」
その女性は少し遠くにいる私にも聞こえるようなため息を吐き、腰を労り愚痴を言いながら此方に来ていた。
多分私に用事があるのではなく、私の横にあるごみ収集場に用があるのだろう。
私は常備している人見知りスキルが発動し固まっていると、女性は私のすぐ隣まで来た。
そこで女性は私の存在に気付いたようで、
「あら、その年でゴミ出ししているの?偉いわねー」
ほぼ虚空を見ていた目が朧気に私を捉えたようで疲れ切った笑顔で話しかけてきた。
「はぁ、ルビーとアクアも見習って欲しいわ。二人ともゴミ出しやってくれな...い...?」
まるで仕事の愚痴を同僚に零しているような感じで語りかけていた女性の言葉尻がどんどん遅くなっていた。
目は先ほどまで虚空を見つめていたが、私を正確に捉えると、目が飛び出すんじゃないかと思う位開き、もっていたごみは地面に投げ出され、その衝撃で少し中身が出ていた。
次第にその目に涙が浮かび手はワナワナと震えながら口元に移動し、その瞬間にアイは私の後ろに回り込んでそっと耳を塞いでくれた。
「アイーーーー!!!???」
次の瞬間、直で聞いていたら思わずしかめっ面を浮かべてしまうだろう声がつんざき、私も驚いてアイの手の上から自分の手を置き、更に耳を塞いだ。
その女性は、流れる涙も、煌めく鼻水にも目にくれず此方に抱き着いてきた。
私は知らない人に抱き着かれたという異常事態に完全に硬直した。
アイはケラケラ笑うだけで助けてくれそうにない。
私は現実逃避するように事務所の方を見た。
見た瞬間、2階のカーテンが開き、中にいる人が確認できた。
肩まで伸ばしたまるで絹のような金髪、顔の造形はなんとなしにアイに似てるなー。
だけどその瞳はアイよりも純粋に、無邪気に見えた。
まだ私はその子の性格は分からないがまるでその子の性格を表しているようだなーと思った。
そのまま窓扉をあけ、伸びをしながらベランダにでて凄い声で泣いている知り合いであろう女性の声を聴き此方に視線を送ってきた。
最初は女性の方へ目線をやり、訝しげな顔をし、次に私に目線を送り、固まった。
数秒硬直していたが次第に先ほどの女性と全く同じの表情へ移行したので、私はすっと目を閉じ心を無にした。
私は賢いのですぐ学べるのだ。
次他の場所に目を向けてもきっと何も解決しないだろうと、ならばこの場所における安寧の地は心の中だけだと。
次の瞬間2重に守っていた私の鼓膜を破壊しかねない爆音が響き渡った。
「ママーーー!!!!!!!!!!!!!」