更新遅れて申し訳ありません…右手の爪数本剥げかけるという人生初の怪我に死にそうになりながら亀みたいなタイピングで進めていたらこんなに時間が経っていました…
「何度も申し訳ないのだけれど、アイで間違いないのよね?」
「そうですよー、B小町の不動のセンター星野アイとは私の事です♪」
「ミヤえもんはしつこいなー。しつこい女は結婚できないよー?」
「だまらっしゃい!」
苺プロの応接室。ソファが二つにその間にある長方形のテーブル、一台のPCにホワイトボードだけという中小企業にありがちな簡素は部屋に私はルビーと奥さんと共にアクアの帰宅を待ちながら談笑していた。
対面のソファに奥さんが座り、私は膝に頭を乗せているルビーを撫でながら難しい表情で再確認してきた奥さんの言葉に返答していた。
「それって、その...生まれ変わりなのかしら...?」
「うーん多分それは違うのかなー?」
「じゃあ転生って事?」
「いや、言い方の問題じゃなくて色々あって...説明難しいなー」
生まれ変わりの所でルビーが少し体を震わせて反応したけど、何か心当たりがあるのかな?
しかし、何て説明しようかな…
私は撫でている手を止め、両腕を組みながら少し考える。
時間にして数秒だったが、ルビーにはそれが幾千万もの時間に思えたのか、「ママー」と寂しげな声質で此方を呼んできたので私は再度、ルビーをあやしながら奥さんの方へと目線を移した。
「今の私って凄く不安定な状態なんです」
「不安定?」
「はい、さっきは生まれ変わりって言ったけど正確には生まれ変わったけど完全に生まれ変われてないというか...」
あーもう難しいなぁ!
「簡単に言うと心と体が離れている状態なんです!」
「はぁ、心と体が…?」
私の言葉に要領を得ないのか奥さんは難しい表情で独り言のように呟いた。
しかし今の問答で理解したのか、膝にいたルビーが起き上がり、その勢いのまま立ち上がると先ほどまで甘え上手な表情を一転、頬を少し赤らめ挑戦的な瞳で奥さんの方へ体を向けた。
「簡単なことだよ、ママの本当の体は悪い人に乗っ取られているからそれを取り返そうって話!」
「流石私の娘!わかってるぅ♪」
いえーい!と私も立ち上がり、ルビーとハイタッチをした。
私達の勢いに気圧されたのか、奥さんは目を白黒させていたが、徐々に酷薄な顔の顔に変え、コホンッと場の主導権を握るために咳払いをすると、
「それじゃあ今、目の前にいるアイさんの体は誰のかしら。もしかしてその子が件の悪い人かしら?」
「違う!あいは私の娘だよ!?」
奥さんの言葉に私はつい激情してしまい、声を張り上げてしまう。
唐突の私の言動に奥さんだけではなくルビーまでも表情を固くしてしまった。
でも、奥さんが悪いんだよ。
あいが悪い人とか言うから。
あいは何も悪くない、私がちゃんと産んでれたらこうはならなかったのだ。
私は場を和ませるようにも一度ソファに座り、咳払いを一度鳴らした。流石に今の状況でいきなり喋るのは勇気がいるので私なりのスタートの合図だ。
「この子は本当は消えゆく私を救ってくれた、ママでいる事を肯定してくれた。私の大切な子供なんだよ?」
「こ...子供?私とアクアじゃなくて?」
「そう、私が本来産む予定だったけど産めなかった子」
ルビーが此方の言葉に理解しがいという声質で返したため少し補足気味で教えてあげた。
「ルビーは私の姿が変わっていても私って事直ぐにわかったでしょ?それと同じだよ」
「確かにそうだけど…」
ルビーはまだ釈然としないのか、首を捻り数秒黙りこくってしまった。
その後、顔を上げ此方を見ると
「でも、ママが言うなら間違いないかも!私妹かお姉ちゃん欲しいと思ってたし!」
見るだけで幸せにしてくれる笑顔で私の考えに同意を示してくれた。
先ほど私に怒鳴られた奥さんは思考停止していたが、先ほど同じ気難しい表情に戻りながら私たちの会話に水を差してきた。
「アイの状況はある程度解ったわ。なら私たちの優先事項はアイの体を取り戻すことでいいのよね?」
「流石ミヤえもん、情報整理助かる~!」
「貴方は難しい話理解できないから黙ってらぃしゃい!」
「は~い!」
奥さんとルビーの阿吽の呼吸な会話に少しだけ嫉妬しちゃうなー。
私は心の中に灯火のように宿った嫉妬心を隠し、盛り上がっている二人に聴こえるように咳払いをし、話を進めた。
「それでね」
話を続けようとしたら玄関の方から荒々しくドアが開く音がし、その後慌ただしい足音が聞こえ応接室の扉が凄い勢いで開かれた。
そこには一人の男性が居た。
急いで帰って来たのか着こんでいる制服は着崩れが起きており、その手には学ランと鞄が握られていた。
ルビーと同じ蜂蜜色の綺麗な髪色。しかし、ルビーとは違い短くアシンメトリーの髪型となっている。
その瞳は深い海のような藍柱石色。
体力を限界以上に使ったのか、そのまま膝に手を置き、少し離れている私にも聞こえる息遣いで息継ぎをしながら応接室全体に目を回す。
「...ア...イ...?」
奥さん、ルビー、私と順番に視線を送り私と目線が合うとその目を大きく見開き、わなわなと口を震わせながら私の名前を呼んだ。
その呼びかけに答えるようにその男性、アクアに近寄り、膝に手を置いている体制のため少し下がっているアクアの頭を優しく抱擁し、
「お帰り、アクア。そしてただいま」
抱きしめられているアクアから放たれている荒い呼吸音が一瞬止み、その後両手に持っていた鞄と学ランが落ち、次に膝が崩れ落ちた。
空いた両腕を私の腰にゆっくりと回してきた。
最初は壊れ物を扱うように若干震え気味だったが徐々に私の存在を確かめるように力を込めていった。
「アイ...俺は...アイを殺した奴に復讐するために...!」
「うん、ありがとうアクア。でも大丈夫もう大丈夫だよ」
あいの胸の中にいるアクアの懺悔の言葉をその目に流れる涙と共に受け止め続けた。
「もうアクア、いつまでママに甘えてるの!」
「別に甘えてねーよ、ルビーじゃあるまいし」
あの後泣き止んだアクアは、私に膝枕をされていた。
私は笑顔で膝にいるアクアの蜂蜜色の綺麗な髪を撫でていたが、横にいたルビーがアクアに嫉妬心を隠さず噛みついていた。
アクアは昔と同じく、若干辛辣気味に返答していたがその瞳はルビーを一切移しておらず私を見つめていた。
膝にいるアクアに目線をやると、いつものふてぶてしい顔が破顔していた。
声質はいつものクールなのに顔はだらけ切っているギャップについいたずら心がでた私は動かしている手を止めてみる。
さっきまで涎が垂れてきそうな位緩み切っていた顔をいつもの澄まし顔になったがその瞳は離した私の手を追っていた。
離した手を頭に置くとまた顔が破顔。
離すと澄まし顔。
破顔、澄まし顔、破顔、澄まし顔。
「ママ~、アクアばっかりじゃなくて私も撫でて~!」
少しの間アクアで遊んでいると、手を離したタイミングで横に居たルビーが私の手を取り自分の頬までもっていきながら甘えてきた。
膝にいるアクアは目線の先の手がルビーに攫われたのを視認するとあからさまに不機嫌になり、
「ルビー、その年で母親に甘えるなよ。兄として恥ずかしい」
「その発言はママの膝から離れてから言って欲しいなぁ!?」
アクアは一瞬固まり、ルビーの反論に勝てないと悟ったのか仰向けの体制をうつ伏せになり、そのまま深呼吸を始めた。
「うっわ...アクアほんっとキモいからママから離れて!」
アクアの突然の奇行に次はルビーが一瞬固まったが直ぐにその目をを汚物を見るような目に変え、私の手を放し未だに深呼吸を続けているアクアを本気に剥がしにきた。
ルビーはアクアの背後に回り、肩を掴んで引き離そうとしたがどういう原理か、その体は金剛力のように微動だにせずしかし、私に負担が一切こない奇跡的なバランスで深呼吸を繰り返していた。
「すぅ…はぁ…すぅ…はぁ…アイの匂い...」
「キモいから!本当にキモいから!」
私は二人の攻防を見て笑っていたがそろそろ話を進めるためにアクアの頭を優しく叩いた。
「アクア、そろそろお話ししたから一回離れてくれる?」
「…わかった」
「アクアいい加減離れ…あだぁ!?」
私の言葉に返答してうつ伏せの体制から綺麗に上体を起こしたアクア。
その後ろにいたルビーはさっきまで引きはそうとしていた力にアクアの力が加わり凄い勢いで起き上がったアクアの後頭部が顔面に激突し、短い断末魔を上げた。
アクアは私を数秒見つめその後後頭部を擦りながらに後ろにいるルビーに顔を向けると心底鬱陶しそうな顔を作り、我関せずといった感じで改めて私の隣に座った。
涙目になっているルビーを横目にふんぞり返っているアクアの額に少し強めに小突いた。
「こら、ちゃんとルビーに謝って!」
「…ごめん」
私の説教が功をなしたのか、アクアは涙目になり鼻を抑えているルビーに向きぶっきらぼうに謝罪の意を示した。
ルビーは謝罪を受け取ったのか、小さく首肯し私の私の後ろまで移動し、後ろから少し顔を出しアクアを警戒心の高い猫のように睨みつける。
私は後ろにいるルビーの方を向き、目尻に溜まっている涙をポケットにあったハンカチで拭いてあげ、そのまま両腕を背中まで回し、赤ちゃんがミルクを飲んだ後に噫気を促すような感じに背中を優しく叩く。
「…今回許すけど、次同じことしたら許さないかね!」
「あぁ、本当にすまん」
「はい!それじゃあ二人が仲直りした所でいい加減にお話進めましょうか!」
私越しに二人の和解を確認すると、先ほどまで蚊帳の外にいた奥さんが皆の意識を切り替えるように手を鳴らし、私に目線を送り話の進行を促してきた。
私はその意図を汲み取ると改めてソファの真ん中に座り、アクアとルビーは私の両隣に座る。奥さんは変わらず対面のソファーだ。
「それじゃあ話を戻すけどその前にアクアはどの位話の内容解っているのかな?」
「それなら多分殆ど把握している。此処へ来る途中にミヤコさんから音声で情報送られていたから」
アクアの方を向き状況把握はどの位済ませているか聞くとアクアは力強い首肯と共に頼もしい返事をくれた。
しかし音声?私は思わず奥さんを見ると、奥さんは通話終了状態のスマホをと謝罪の意を示すように手を顔まで上げていた。
「ごめんなさいね、アクアにも来る途中に話の内容共有してもらおうと思ってずっと通話状態だったのよ」
「成程…ありがとう奥さん♪」
確かにそれは有難いかも、私が時間の事を言ったのでそれを重んじての行動だろう。
私はその謝罪に好意をもって返答した後、人数が増えたことによる話ずらさを感じ立ち上げり、皆を見渡せる場所まで移動した。
「それじゃあ改めて!私の体を取り戻すにあたって皆にお願いしたいことがあって…
今日の出来事を想起しているといつの間にかあいの部屋まで辿りついていた。
少し寝相が悪いのか布団が明後日の方向に飛んでいたのを私は優しく掛けなおし、そのままベットに腰を掛けた。
やっぱり私の子だなー
私も子供の頃は寝相悪かったからなー。アクアとルビーはどんな寝相なんだろ?赤ちゃんの頃はあんまり参考にならないし気になるなぁ。
私はそのままベットに腰掛けると、少し荒れているあいの髪型を直しそのまま額、頬、唇、首の順に指を這わす。
あいはくすぐったいのか、少し身じろぎをし先ほどまで安心しきった顔で寝ていたが不快感を露わにした。
私は首にまで這わしている手を頬まで戻し次は五指全体を使いあやすように撫でる、そうするとまた元の寝顔になり規則正しい寝息を立て始めた。
「あい、計画が思ったより早く進みそうだからこれから少し寂しい思いすることになるけどあいなら大丈夫だよね?」
私の言葉に寝ているあいは勿論返答を返さない。それをいい事に私は独り言を続ける。
「アクアとルビー。それに奥さんからの協力は取り付けたから、あとはママが頑張るだけだから」
私は決意表明として部屋にあった姿鏡を見て写らないこと知りつつ何んとなしに見る。
「…あれ?」
そこには何時もなら写らない鏡に何故か私の姿が写っていた。
何時もの髪、何時もの体、しかしそこには一つ。何時もと違うところがあった。
瞳だ。
今日の朝までは両目に星型の光彩を放っていた瞳だが、片目の星形の光彩は消え去り、残った瞳には輝く光はなく、全てを飲み込むような妖しい光を放っていた。
鏡に写った事と瞳の変化に戸惑っていたがその間に鏡の私は姿を消してしまった。まるで何か大事なことを忘れ去っていることを仄めかすように。