本来のキャラクター設定は学生で生徒会のメンバーなのですが、今回は大人の女性向けに会社員の設定で二次創作をさせていただきました。
2023年4月23日のtwitterスペースが元になっております。
ハオラン→ホークへの乗り換え描写がございますので、苦手な方は回れ右でお願いいたします。
皆で筋トレがんばろうゼ☆
ファウンダーのツッピーさん、お誕生日おめでとうございます!!!私の脳内プリンスたちからも最上級のお祝いを!!!
どうして私はこうも流されやすい性格なのだろうか。
ぐいぐいと腕を引っ張って来る同僚を宥めながら、私は女たちの集団の中に居た。その集団の中心に居るのは一人のイケメン。わが社の営業部でホープと言われている、リー・ハオランである。ややピンクがかった茶髪に、眩しい笑顔。いつでも明るく、誰に対しても優しい。
女性から人気が出るのが至極自然なことにも思える社内きってのモテ男である。
同僚は彼の取り巻きの一人で、今日はみんなでフィットネスジムへとやって来ていた。
最近運動不足だからジムとか行ってみたい、なんてポロッとこぼした一昨日の自分を殴りたい。
丁度ジムに行く用事があるから一緒に行こう、なんて誘われて来てみたらコレである。一体彼女たちはいつになったらトレーニングを開始するのだろう。
ハオランくんは早速トレーニングを始めたらしい。腕まくりすると、しなやかな筋肉が現れ、女性たちからほぅ、という溜息が洩れた。
せめてもの救いは全員社会人なのできゃぁきゃぁ無駄に騒がないことである。集団でたむろしている事で既にあまりいい顔をしていない客が居るのだから、これ以上居心地が悪くなるのは避けたかった。
「……あのさ、私あっちのマシンとか見に行ってもいい?」
「えーーー?ハオランくんのトレーニング見てる方が眼福じゃない?」
「別に私癒されに来たんじゃなくてトレーニングしたくて来たんだからいいの!ごめん、ちょっと席外すね。」
不満げな同僚を残して、集団から離れる。ふぅ。確かに格好いいけれど、私はもう少し静かに筋トレとかしているタイプの人が好きだなぁ。
そんなことを考えながらジムをぐるりと一周してみる。
今日は見学・体験ということで中に入っているが、本格的にジム通いを始めるかどうかを決めなければならない。
それにしても、このマシンたちは一体どうやって使うのだろう。椅子をぐるりと囲むようにして器具がくっついていたり、バーの横にたくさんの重りがあったり。
とりあえず一つやってみようかな、なんて思い、椅子に腰かけてみる。腹筋マシンと書いてあるそれは、頭上のバーを引っ張り下ろして、それごと上体を起こすことで重りを腹筋で引っ張るようなトレーニングができるというものだった。
ぐっ、グッ、と腹筋に力が入る。私はどのくらいの重さまでいけるのかな?なんて実験をしつつ、とりあえず適当なところで中断してまた見学を始めた。
少し先に進むと、徐々に立ち入ってはいけないエリアの様相を呈してくる。筋肉質な男性がたくさんいて、たくさん重りをつけたものを肩に乗せたり持ち上げたりしているのだ。ちらほら女性の姿もあるが、圧倒的に男性の方が多い。
そんな中で、ひときわ目立つ一人の男性が居た。
茶色の短髪で背が高く、体は筋肉質で均整のとれ、美しい。額から滴り落ちる汗を気にすることもなく、黙々とトレーニングをしていた。
これは、なんというマシンなのだろうか。バーにたくさんの重りがついていて、柱の中で上下できるらしい。その下に入り込んで、所謂スクワットというのをしているようだ。
ふと、彼と目が合った。
「!マシン、使いますか?」
「あ、いえ、お邪魔してすみません!あの、私今日は見学に来ただけで、使い方なんかも分からないので、もしご迷惑でなければトレーニングの様子を拝見したいのですが……!」
つい言い訳がましくなってしまう。こっそり見ていた気まずさと、気恥ずかしさが同居していてなんとも居た堪れない。
「!そうか、見学に。一度くらい、触ってみるといいかもしれません。……拭きますので、良かったら。」
ご丁寧にアルコールで触れるところを全て拭き取り、どうぞと指し示される。ちょっと断れない雰囲気だ。
言葉数こそ少ないが、明らかに筋トレを好きでやっているのだろうということと、優しい人であるということが分かる。私は、勇気を出してマシンの中に一歩を踏み出した。
「これはスミスマシンと言って、レールにバーベルが固定されているトレーニング器具です。バーだけで10㎏あるので、筋肉量の少ない女性でも安全にトレーニングをすることができます。まずは……。」
先程までの寡黙さはどこへやら、器具の説明と筋トレの説明が流暢に溢れ出す。私はただただ話を聞き、お試しトレーニングを開始した。
最初こそイケメンに釘付けだったが、途中から足やお尻の筋肉が悲鳴を上げ始める。そして、この人、思った以上にスパルタだ……!
「よし、いいぞ!かなり綺麗なフォームで出来たから裏腿と大殿筋、中殿筋にしっかり入ったはずだ。実感として、分かるか?」
「は、はい、めっちゃきついです……。」
「こうやって狙った筋肉にきちんと効いてくれば、トレーニング効率はかなり上がるんだ。できればトレーナーをつけてやったほうがいいだろう。ここならパーソナルトレーニングも……。」
ジムのコースの説明までしっかりしてくれるのはとてもありがたいのだが、正直今はそれどころじゃない。お尻が痛いっ!!!
私が思いもよらないガチトレーニングに死んでいると、嫌な雰囲気の言葉が耳に飛び込んできた。
「見ろよ、あーいう輩がいるから俺たちのトレーニングが邪魔されるんだよな。全く、ひょろひょろのモテ男はプールでも行ってろってんだ。」
「そうだよねぇ、腕なんて全然ひょろっひょろだもんね。それに比べて、ふふ、私の彼氏ってマジカッコいい!腕太ぉい!」
「お前も綺麗になってきたもんな。お姫様抱っこしてやろうか。」
「きゃぁ!もう、やめてよぉ。」
イチャイチャしながらハオランくんたちの方をチラチラ見て、陰口を叩いている。べったりしながら、背中のトレーニングをしているようだ。
「酷い。ハオランくんはただジムに来ただけで、女の子たちが勝手についてきただけなのに……。」
私は思わずボソッと呟いた。
そのカップルは尚もイチャイチャしており、遂に男が彼女をお姫様抱っこしてぐるぐるし始める。
「きゃぁ、すごぉい、マジカッコいい!」
「俺の腕力に敵うやつなんてなかなか居ねぇよ!」
胸やけがしそうないちゃつきぶりだ。
思わず顔をしかめると、突然隣に居た高身長イケメンがそちらにツカツカと歩いていった。
「お前たち、ハオランと知り合いか?」
「は?あんた誰?あのチャラ男の友達?なら丁度いいや、あいつ追い出してくんない?目障りなんだよね。」
「ハオランがいかに陰で努力をしているか、あいつがどんな人間か知りもしないでよくそんな言葉を並べられたものだな。見ろ、あいつのフォーム。あんなに体幹がしっかりしていて狙ったところに効かせられる美しいフォームはなかなか拝めないぞ。」
「……は?」
「それに比べて貴様のそのフォームは何だ。腕だけで無理やり上げたところで全くトレーニングになっていない!ちょっと、協力してもらってもいいか?」
「え?あ、はい……きゃぁっ!」
突然視界が揺れ、重力から解放される。熱い胸板が頬に当たって初めて、自分がお姫様抱っこされていることに気づいた。
「ちょ、ちょ、ちょっと、あの、おろ、下ろして……!」
あまりのことに顔が真っ赤になるのが分かる。
「いいか、俺の広背筋。今彼女の全体重を支えているのは俺の広背筋であって腕ではない。自分の筋肉の声に耳を傾けてみろ。今悲鳴を上げているのはどこだ?腕だけじゃないか?」
男が目を見開く。そっと彼女を降ろすと、まるで操り人形にでもなったかのようにふらふらとこちらへ寄って来た。私もそっと床に降ろされる。ふぅ、爆死するかと思った。
「もう一度ラットプルしてみろ!」
あまりの気迫に気圧されたのか、男は黙って椅子に座り、頭上のバーを引く。
「肩が上っている!だから背中に入らず腕で引くことになるんだ!肩甲骨を寄せて肩を落とし、背中でバーを引け!そう、そうだ!入っている感覚があるだろう!」
「はい!あります!!」
「きちんとしたトレーニングもできずにハオランをこき下ろすなど言語道断だ!出直してこい!」
「はい!ありがとうございました!!」
男は彼女を引っ張るように、慌ててトレーニングコーナーから出て行った。……一体何だったのだろうか。
「突然申し訳なかった。ハオランの友人だったのか。」
「え?あ、いえ、私は同僚に誘われただけです。ジムに行ってみたかったので。」
「そうか。ハオランを誤解しないでやってほしい。あいつはああ見えて真面目で一生懸命な奴なんだ。」
そういう彼の目はとても優しい。きっと、いつもハオランくんを見守っているのだろう。
「そういえば言い忘れていた。俺は小鳥遊ホーク。よくここで筋トレをしている。君さえよければぜひまた来てほしい。女性のトレーニーはまだまだ少ないんだ。」
「はい!ぜひ!!」
私は心の奥底からむくむと湧き上がってくる気持ちに気づかないフリをしたまま、ぺこりと頭を下げるとこちらに向かって大きく手を振る同僚の元へ駆けて行った。
「ちょっと!あんたいつの間に小鳥遊主任と二人きりになってたのよ!」
「え、あの人のこと知ってるの?」
「はぁ!?ハオランくんの幼馴染でうちの会社のモテ男四天王の一人だよ!?知らないの!?」
同僚が深い溜息を吐く。
「そんな人と二人で話できるとかほんとあんた運が良すぎ!!うらやましい!」
「え、だってハオランくんを見に来たんじゃ……?」
「それはそれ、これはこれ!もぅ……!あ、ヤバ、置いていかれる!ハオランくん、待って~~~!」
随分と調子がいい。私はとりあえず今日のジムへの入会手続きを済ませ、彼女たちと一緒にそこを後にしたのだった。
それからはワイワイとごはんを食べに行ったり、買い物をしたり。
早く帰りたいな、なんて思いながらも、なかなか「もう帰る」と言い出せない。
結局そのまま飲み会に突入し、まさかの最期まで付き合う羽目になってしまった。
結構酔っぱらう子が出始め、順次タクシーに乗せて帰していく。
あまり酔わない私は、彼女たちをタクシーに乗せるアシストをひたすらしていた。
残ったのは、ハオランくん含め5人。
そこに一台のタクシーが滑り込んでくる。
「キミさ、今日昼間に小鳥遊ホークと筋トレしてた子だよね?」
「え、あ、はい、そうです。」
「そっか、じゃぁキミは居残り!お先に~~~!」
そう言ってハオランくんがタクシーの助手席に、他の女子三名が後部座席に乗り込み、車は無常にも発進する。
「えっ、ちょ、まっ……!」
引き留める間もなく車は見えなくなった。別に一人で帰れるが、まさか置き去りにされるとは思わなかった。なんだか、とても悲しい。
はぁ、と溜息をついてタクシーを拾おうと顔を上げた時、目の前に一台のバイクが滑り込んできた。
「今日の、昼間の。ハオランは居なかったか?」
「あ、小鳥遊さん、昼間はありがとうございました。ハオランくんなら、つい今しがたタクシーで帰りました。」
「は?迎えに来いというからわざわざ来たというのに……!で、キミは一人なのか?」
「あ、はい、タクシー拾おうとしていました。」
「そうか。家はどのあたり?」
「えっと、プリンススクエアの近くです。」
そう言うと、ホークさんはずいっとヘルメットを差し出してきた。
「ハオランのことだ。どうせ君を送れということなのだろう。」
「え、いや、でもそんな申し訳ないです……。」
「ここで顔見知りを放置していくような人間じゃない。後ろに乗ってくれ。あまり怖くないように、ゆっくり走るから。」
私は手にしたヘルメットをかぶってみる。思っていた以上にずっしりと重たい。
恐る恐るバイクの後ろに跨り、広いホークさんの背中が目の前にあって鼓動が増してくる。
ブルルン、とバイクのエンジンが煙を吐いた。頬を冷たい風が撫でていく。
私は、火照った頬を冷ますように、その風に身を預けたのだった。
~fin.~
お読みいただきありがとうございました!
山賊を登場させられなかったのが痛恨の極みです。。。