本来のキャラクター設定は学生で生徒会のメンバーなのですが、こちらは大人の女性向けに会社員の設定で二次創作をさせていただいております。
今回は、独歩課長との初デートを題材に書いてみました。
分かる人には分かる仕掛けをたくさん盛り込みましたので、楽しんでいただけますと幸いです。
4月29日に行われたメタバライブの様子はこちら↓↓
https://www.youtube.com/watch?v=SjFllj1L7GU
公式サイトはこちら↓↓
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5/31(水)プリンスたちによる『プリンスペース』アーカイブはこちら↓↓
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6/28(水)『プリンスペース』第二回アーカイブはこちら↓↓
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登場人物紹介はこちら↓↓↓
画像付き登場人物紹介
高く高く
海からの少し強い風が、広いデッキを吹き抜けていった。
ここはプリンススクエア。
小鳥遊主任御用達のジムがあったり、王子様のような4人組男性ボーカルユニットが本拠地としている巨大なライブハウスがあったり、花屋があったり。
クレープ屋、パン屋、蕎麦屋、カフェ、パンケーキ専門店、海の見えるレストランなどの飲食店から、アロマオイルの専門店、マッサージ店に営業部のハオランさん行きつけの猫カフェ。
同期の鬼一くんは「Lilly」というスワロフスキーなどを扱う専門店でよくパワーストーンを購入していると言っていたっけ。
とにかく、ありとあらゆるジャンルの店が軒を連ね、最上階には展望デッキまで備えている、海沿いの巨大なショッピングモールだ。
そして、この街屈指のデートスポットであった。
そんなプリンススクエアに、私は2日連続で来ている。
大型ビジョンから流れてくるメタバース音楽劇のCMを何度繰り返し見ただろう。今は
『クリエイター、まるはだかっ!』という特別番組が放送されている。
だけど、正直今はそれどころじゃない。昨日と同じ場所だというのに、まるで初めての場所に来たときのように、いや、それ以上に、私の心臓はバクバクと音を立てていた。
買ったばかりのカットソーと、それに合わせて買ったスカート。お気に入りのアクセサリーとバッグ。私史上かなり気合いを入れた格好に身を包んでいるが、それでもなかなか一歩が踏み出せずにいるのは、待ち合わせをしている相手が相手だから、であった。
つい先日。私は遂にずっと憧れ続けていた蛇神独歩課長と思いが通じ合い、晴れて恋人同士となった。
そして、『前に一緒に行ったケーキ屋さんがプリンススクエア店を出したので行きませんか』と誘ってもらったのである。つまり、初デートだ。
待ち合わせ場所であるここには、約束の1時間前に着いていた。自分でも浮かれすぎだとは思うけれど、早く来てしまったのだから仕方がない。
こんなに緊張していては、ケーキがお腹に入らなくなってしまうかもしれないので、カフェで休んだりすることなく、ひたすら歩いてはお店を流し見していた。
しかし、課長の事だ。もしかしたら早く待ち合わせ場所に来るかもしれない。そんな期待から、指定の場所の周辺をぐるぐる回っていると、やはり約束の時間よりも早く、課長が待ち合わせ場所にやって来たのだった。
少し涼しくなってきたからか、さらりとしたロングコートに身を包んでいる。
スタイルの良さが引き立つネイビーのカッターシャツに、黒のチノパン。少し大きめの革靴が足首の細さを際立たせ、凄くスタイリッシュだ。バッグの代わりに本を手にした彼は、人の行き交う場所にあって、実に目立っていた。
周りの女性たちの視線で課長に穴が空くのではないかというくらい、とにかく人目を引いている。
……果たして、待ち合わせの相手は本当に私で良いのだろうか。
そんな不安から、そしてあまりの神々しさから、私はしばらく柱の陰に身を潜め、チラチラと様子を伺っていた。
時計の針が1秒、また1秒と進んでいく度に、『そろそろ行かなきゃ』と思う自分と、『こうして少し遠くから見つめて居たい』ともう自分がせめぎ合い、感情が忙しい。
あまりの神々しさに遂に彼を凝視しきれなくなった私は、柱を背にしてずるずると崩れ落ちた。
ダメだ、顔も、服も、全てが格好良すぎる。
「あの、大丈夫ですか?」
しばらく悶えていると、ひとりの男性が声を掛けてくれた。イベント中のスタッフらしく、半被を着て、なぜか頭上に王冠を乗せている。
「あ、すみません、大丈夫です。」
大の大人がしゃがみこんでいるなんて、恥ずかしいところを見られてしまった。慌てて立ち上がる。
「具合が悪いわけじゃないなら、良かったです。あの、コレ、今試食をお配りしているんです。よかったらいかがですか?」
柔らかな物腰の彼は、スプーンが刺さった小さなカップを手渡してくれた。中にはプルンとした美味しそうなプリンが。
口に含むと、まろやかな旨味と優しい甘さが体中に広がり、緊張の糸を解いてくれる。
「これ、すごく美味しいです……!ありがとうございます!」
「それはよかった。あ、こちらにゴミ頂きますね。1週間くらい店出してるんで、気に入ったら買いに来てください。」
「はい、今週中に必ず伺います!えっと、プリン、ですよね?」
「はい、みんなを応援する『豆乳プリン』です。今日は限定のまっちゃ味も出てますので!お越しをお待ちしてます。」
人懐っこく笑った店員さんは、そう言ってまたブースへ戻り、試食の配布を再開した。わざわざ気に留めてここまで来てくれるなんて、なんて優しい人なのだろう。
「あ!しばこさーん!今日も来てくれたんですねー!」なんて声が聞こえてきたから、常連のファンの方も多いようだ。
「……初デートで浮気とはいただけませんね。」
「わぁっ!か、課長!?」
「先程の彼は確かに素敵な男性でしたが、初デートから脇見とは、お仕置きです。今日一日『課長』と呼ばないように。分かりましたね?」
突然背後から現れた課長……もとい、独歩さんが、仁王立ちでそんな不思議な事を言い始めた。
「えっと……もしかして、やきもち……?」
「私を茶化してどないするんですか。ほら、こっちに来てください。あなたの場所は…私の隣でしょう?今日は『まつり祭り』という大きなイベントがあるみたいで、随分人が出てますから。」
「あ、おまつり……!だからこんなにきれいな色味で装飾されてるんですね!あ、そうだ、あの、お待たせしてすみません。」
「……体調は、大丈夫ですか?もし具合悪いとかやったら言うてください。このへんにほっと一息つけるようなおかゆさんの店がありますんで。」
心配してくれる独歩さんに「なんともないです」とだけ伝え、私は歩き出した。まさか格好良すぎて待ち合わせ場所に行けませんでした、なんて言えるはずもない。
「……かちょ……ど、独歩、さん。あの、お店に行く前に、少しお散歩してもいいですか?できれば、あまりこう、人が多くないところで。」
「人が、多くないところ、ですか……。あ、でしたら、海岸でも歩いてみますか?今日はお天気もいいですし、海水浴場はもう閉まってますから、そんなに人も多くないでしょうし。」
「あ、いいですね!そうしましょう!」
私たちは、そのまま海岸へ続く道を歩いていった。
正直、まだこの信じられないくらい格好いい独歩さんの隣を歩く自信がない。人混みを歩く前に、少し練習しておきたかった。
案の定、海岸に人はほとんど居なかった。海は凪。穏やかな波が寄せては返す。誰かの忘れ物だろうか。小さなバケツとスコップが打ち捨てられている。
私は何の気なしにそれを手に取ると、小さな砂の城を作り始めた。せっかくお洒落をしてきたというのに、こんな事をしている場合じゃないでしょ、なんて心の声が響く。
だけど、今私は一度無心になりたかった。
「ひっくり返しますね!よいしょっ、と!で、そーっとバケツを……あ、ダメだ、崩れちゃいました。」
「仕方ないですね……。一緒に作りますから、隣で見ときや。」
独歩さんが砂をバケツの中で押し固め、くるりとひっくり返す。そこには綺麗な山が出来上がった。
「わぁ……!独歩さんって、こういうのもお上手なんですね!」
「ぽんっ♪とひっくり返すのがコツですよ。いつか子供と一緒にこうやって砂遊びするのが夢なんです。……子供っぽいですか?」
「いえ、とっても素敵です。夢中になりそうなくらい、素敵です。」
「お城を作るのはじかんがかかりますからね。サメなんてどうでしょう。」
独歩さんはあっという間に可愛らしいサメを作り上げてしまう。
「できました、シャッくんです。」
「ふふふ、可愛いですね。」
「こんな事ならいくらでも。その度に君を夢中にさせますから、その代わり、よそ見せんとってください。」
「……さっきの豆乳プリン王子を気にしてます?」
ちょっと拗ねた顔をした課長が、そっぽを向く。どうやら本当に妬いてくれているらしい。
私はたまらなく嬉しくなって、彼の隣に座り直すと、コテンと首を倒して寄り添ってみた。
「随分、可愛い事してくれますね。」
「かちょ……独歩さんが、可愛かったので。」
「今課長言うたやろ。」
「言ってませーん。聞き間違いじゃないですか?」
「聞き間違いやあらへん。これはお仕置きやな。」
「なんですか、お仕置きって。」
普段なかなか聞かない言葉に思わず笑ってしまう。すると、独歩さんはコテンと首をかしげながら、「撫でて?」なんて言ってきた。
あまりの可愛さとギャップに、身体がはじけ飛びそうになったのは言うまでもない。
私は、そっと独歩さんの髪に触れてみる。青みがかった髪はサラサラで、ツルリとしている。
「さて、悪ふざけはこの位にして、そろそろ店に行きましょか。」
「!!!やっぱり悪ふざけだったんですね!?」
「すみません、君があんまり可愛いもんやから、つい。」
ニッと悪戯な笑みを浮かべた後、彼は今度こそいつも通りスマートに腕を差し出し
エスコートをしてくれたのだった。
席に着き、大きな皿に芸術品のように盛られたケーキが到着すると、独歩さんが口を開いた。
「あの。普段気恥ずかしいのでなかなか言えへんのですが。」
「はい。」
「いつも、ありがとうございます。君に出会えて、本当に嬉しいです。」
「こ、こちらこそ……!出会って下さって、ありがとうございます!!」
不意打ちに涙が出そうになりながら、私は丁寧に頭を下げる。ここで泣いたらあまりに美味しそうなケーキに失礼だ。心して食べなければ。
「いただきます。」
「いただきます。」
手を合わせて、ケーキにスッとフォークを入れる。
とろけるような甘さのチョコレートケーキから、さっぱりとしたジェラートまで、ワンプレートの中に物語がギュっと詰め込まれたようなデザートを堪能した私たちは、しばらくの間そこで他愛もない話に花を咲かせたのだった。
「はぁ、美味しかったです……!」
「本店とはまた違った美味しさでしたね。」
「そうですね!」
ぶらぶらとお店が立ち並ぶエリアを散歩する。途中、独歩さんが可愛らしいタコのマークが描かれたお店に入りたいと言い出した。
「ここは……雑貨屋さん、ですか?」
「はい。漫画家さんが出されているグッズのお店なんですが、ちょっとお見舞いに持って行こうかと思いまして。」
話を聞けば、大切な知り合いが今度入院してしまうらしい。私は一緒にお見舞いの品というかプレゼントを選んだ。
「退院した時にもらって嬉しいようなものを選んでもらえますか?」
「あ、分かりました。入院中に使う
ものとかじゃないんですね?」
「はい。すぐに戻ってこられるので。」
「分かりました!」
私たちはあれやこれやとグッズを選び、ラッピングしてもらった。店員さんが「タコ2倍にしておきますね~」と言ってチャームを2つつけてくれたのがすごく可愛らしい。
よく見ると包装紙がきりん柄だ。それもまた可愛らしい。……きりんとタコの組み合わせは不思議だが。まぁ違和感もないしとっても素敵なので良しとする。
「用事も済みましたし、まだ夕食までは時間がありますね。」
「そうですね。あ、今特設会場で人気イラストレーターさんの原画展しているらしいので、行ってもいいですか?今日は確か、動物マフィアの擬人化シリーズアニメ化記念展と、赤ちゃんとのほのぼの日常漫画のアニメ化記念展なんです!」
「うちの会社がスポンサーをさせてもらっている企画ですね。これは行っとかな。」
それから私たちは原画展をたっぷり堪能した。自分の好きな作品の展覧会ってなんて楽しいんだろう。
それから軽めの夕食。独歩さんが予約しておいてくれたお店は、プリンススクエア最上階にあるレストランだった。メラメラと燃えるような太陽が沈み、月と、星が顔を出し始める。
「乾杯。」
「乾杯!」
シャンパングラスを軽く傾けて乾杯する。
「今日も一日お疲れさまでした。」
「ふふっ、なんですかそれ。仕事みたいですよ。」
「あぁ、いや、そんなつもりはないんやけど。」
美味しい食事と素晴らしい景色を堪能しながらだと、ついお酒が進んでしまう。少し、酔いが回ってきたかな、というタイミングで、突然無口になった独歩さんが口を開いた。
「あの、以前君に気持ちを伝えた時、『結婚を前提に』と言ったの、覚えてるやろか。」
「はい、もちろんです。」
「今日が初デートやって分かってるし、急ぎすぎなんも自覚してる。それでも。」
独歩さんが、真剣な顔でこちらを見つめてくる。その視線から、目が逸らせない。
「君の事をずっと大切にしたい。この先、私とだけ、ずっと一緒に居て欲しい。私じゃ、ダメでしょうか。」
「何を言ってるんですか、私、私は、独歩さんが……。」
「あ、いや、すみません、もっと、その、重いというか。正直、今すぐにでも結婚したいくらいなんです。焦りすぎて、格好悪いですね。」
「そんなことないです……!あの、えっと、ふ、不束者ですが、よろしくお願いします。」
私がそう言うと、独歩さんは見たことない華やかな顔で笑った。
「では近日中にちゃんとプロポーズしますから、覚悟しておいてくださいね。」
手を繋いで、駅まで続く道を歩く。あっという間の一日が終わってしまって、寂しさからかただ無言で歩を進めた。
だけど、あの、飲み会の時とは違う。だって今、私たちは確かに通じ合っているのだから。
駅の改札に着くと、私はつないだ手を放して、独歩さんに向かい合った。
「今日は本当に楽しかったです。ありがとうございました。」
「こちらこそ、夢のような時間でした。」
「じゃぁ、明日、また、会社で。」
後ろ髪をひかれる思いで、ゆっくりと体を反転させる。改札に一歩踏み出そうとした時、急に背後から抱きしめられた。
「本当に、もう帰るんですか。」
「え、だって、明日、仕事ですし……。」
「……。」
独歩さんの手に力がこもる。耳元で聞こえる息遣いに、私の体温が急上昇していくのを感じた。
「まだ……。」
「え?」
「……。まだ、帰るなよ。」
優しく、でも鋭く囁かれたその言葉は、弾丸のように私を打ち抜いて。
私は勢いで身体を反転させると、独歩さんに抱き着いた。
そして、彼の手を取ると。改札の方へ引っ張っていく。
「あ、あの、どこに……。」
「一緒に、帰りましょう?」
「え、それって……。」
私たちはしっかりと手を握ったまま、ホームへの階段を駆け上がる。
それは、これから共に過ごしていく長い長い時間の、まだほんの始まりであった。
~fin.~
お読みいただきありがとうございました!
今回は、これまでに作品を応援してくださった方々の中から一部の皆様を巻き込みつつ、第2回プリンスペースの内容などをたくさん織り込んでみました。
……すごく大変でした((笑))
話としてきちんと成り立っているかはもはや二の次ですが、こういう縛りがあるのもまた楽しかったので、第3回も……いや、もうないかもしれませんwww
次回こそは新シリーズでお目にかかりたいと思います!!応援よろしくお願いします!