大砲鳥は凶気を運ぶ 方針:海賊絶許   作:Delphinus

1 / 29
凶気を運ぶ
始まり バスターコール


 船はカームベルトを進む。この船の底には海楼石が敷き詰めてあるから、厄介な海王類に狙われる心配は少ない。

大規模な艦隊だ。目標は西の海、オハラ。

 

「……愈々、ですか」

 

 緊張が走っている。遂にこの瞬間が来た。マストの上、船で一番高い場所から水平線を見つめる。カームベルトの島は少ない。視界には一つも島が見えない。全てが海。

 

「はぁ、それにしても、バスターコールなんて」

 

「どうした? 二等兵」

 

「いや、それは……」

 

 マストの下からは、作業しながら雑談している海兵達の声が聞こえる。

大半は波切り音にかき消されて、でも私には見聞色を通じて聞こえる。

 

「だ、だって、これから罪の無い人を沢山殺すんですよ? 嫌になりますよ、そりゃぁ」

 

「そうか。まぁ、バスターコールだからな……」

 

(おや……)

 

 二等兵はどうやらバスターコールが気に入らないらしい。私は、決めた。八咫烏の翼を翻し、マストを降りる。

 

「納得出来ませんか? バスターコールは」

 

「ん、んな、少佐! 、お、お疲れ様です」

 

「ええ、お疲れ様」

 

 慌てて礼を言う2人。私は答える。

 

「バスターコールは罪の無い一般人を巻き込む。如何にもその通りです。ですが」

 

「彼等は世界の禁忌に触れました。それが何かは私にも分かりませんが、しかし危険な研究を仕出かした事は分かります。つまりは汝罪有り。世界の敵です」

 

 私は嘘を言った。本当は知っている。オハラの学者は古代文字を解読し、ポーネグリフ読解の糸口を作ったのだ。でも、これは言わない。

 

「良いですか? オハラに一般人は居ません。居るのは世界の禁忌に触れた罪人です。つまりは海賊同然。即ち」

 

「海賊は殺しなさい? どんなに弱くても殺すのです。海賊は一匹見つけたら3000匹いると思いなさい。海賊がどんなに弱くても絶対に逃がしてはなりません。弱ければ脅威にならないなどと思わないように、海賊は強くなります。下手に逃せば更に力をつけ、仲間を増やして帰って来るのです。その内の誰かがグランドラインを登り、新世界に辿り着いてやがては新しい4皇に成り代わるのですから。海賊は全て4皇の種です、4皇の種子は残さず狩り尽くしなさい。絶対に逃がしてはなりません。海賊は全て速やかに殺しなさい」

 

「えっは、はい……」

 

「人を殺すのは許されないと思いますか? 残念ながら、この世界の秩序は、海賊を殺さなければ維持すら出来ないのです。ですから殺すべきです。私が許します」

 

「は、ぁ……」

 

 二等兵は、もう答えられなかった。

 

「さて、業務に戻って構いませんよ」

 

「……ファイス少佐、最初はお飾りの少佐かと思っていたが、予想以上のようだな」

 

 ベテランの方は小さくそう呟いた。独り言でも私には聞こえた。

 

 

 

 

「各員砲撃始め! 遠巻きに包囲を維持しつつ、オハラからの逃走者に注意を!」

 

「はっ! 急げ、砲撃用意!」

 

「よし、行くぞぉぉ!」

 

 ドォォォン! 、マストから命令を飛ばした後、凄まじい轟音が各艦から次々と聞こえて来る。見聞色を通じて、救いようの無いゴミどもの嘆きと絶望の声が聞こえて来る。

 世界の禁忌に触れておいて、よくも呑気に嘆いていられる物です、塵供が。

 

(私の見聞色、相変わらず内心が読めませんね……)

 

 私の見聞色の覇気には何だか色々とネックがある。例えば心が読めなかったり。その代わりと言っては何だけど、効果範囲と探知精度は驚異的。ざっと最大距離10000kmまでは行ける。そして、

 

「見聞色の阻害、展開……さて、オハラに覇気使いは殆ど居ませんね。良い事です」

 

 何より敵見聞色の撹乱と妨害に特化した、ECM型見聞色であると言う事。何でこんな物を手に入れてしまったのか、正直私にも分からない。単に見聞色だけでなく、3色全ての覇気に妨害を打ち込める。まぁ、対見聞色が一番効くとはいえ。

 

 赤犬が、青雉が、黄猿が次々と攻撃を開始。オハラの地獄が始まる。私も行こう。

 

「行ってきます。留守を任せますよ」

 

「ええ、お気をつけて、少佐殿!」

 

 敬礼した部下達を背に、トリトリの実幻獣種モデル八咫烏が持つ八咫烏の人獣態へと変化。部下からロックを解除したランチャーを受け取り、そのまま飛翔する。まずは高度を上げる。

 

「さあ殲滅です! 放射熱線(ソーラーレイ)!」

 

 海軍技術部が製作したバスターコール用特殊兵装。殲滅型特設砲「フレームランチャー」を展開。腰だめに構えて砲身が伸びるのを待つ。エネルギーソケットに八咫烏の炎を結合。エネルギー充填、照準定め……そして放射!! 放射能を含んだ超高熱の炎、いえ、原理的には炎ですらも無い、炎を超えた地獄が放たれる。

 最大射程は約1000km、一度撃てば数十年は居住不可能の死の大地と成り果てる。こいつはバスターコールだけの特別技です、味わいなさい! 

 

 知恵の樹に直撃する。これで知恵の樹は死んだ。こいつは生物の再生能を破壊する、もう蘇らない。

 

(流石に火力過剰ですね……これ以上は同士討ちします。ここは程々に)

 

 火力を緩め、同士討ちに注意しながら放射を継続。そして私もオハラ本島に突入する。それと同時に、各艦に見聞色を通じてオハラからの避難船についての情報、特に学者の有無について送っておいた。ええ、避難船の誤射は避けなくては。

 

 そして殲滅が続く。危険なサウロ中将殿は最優先で見つけて潰した。避難船に紛れて数人の学者が入っていた。赤犬に連絡しておいた。無事マグマに飲み込まれた。水底に隠されるであろう史料も、確認して全て破壊しておいた。

 マグマと核の圧倒的な炎、そして氷。或いは光。絶望がオハラを破壊し尽くし、そして、

 

「旗艦より砲撃停止命令です」

 

「命令を受理します。攻撃止め」

 

「了解! 総員攻撃止め! 急げ! 戦いはもう終わりだ!」

 

 私の船もまた、砲撃を停止する。目の前には破壊し尽くされたオハラ。無残なのに何処か美しさを覚える。私はまた飛び立った。

 

「ファ、ファイス少佐、どちらへ?」

 

「オハラの偵察です。残敵の有無と破壊状況を確認してきます。船は任せますよ」

 

「はっお任せ下さい!」

 

 

 

 

 私の見聞色なら直ぐに分かる。その小舟の位置も。

 

「……」

 

 少女は絶望を湛えて私を見ていた。ああ、やはり印象的な場面ですね。などと私は呑気な事を思っていた。彼女の前に持ってきたサウロの首を投げつける。

 

「……!!? 、サウ、ロ……」

 

「絶滅しろ、ゴミが」

 

 そのまま、彼女の全てを焼き滅ぼす。サウロの首に仕込んだ小型の核弾頭が爆発し、核の炎がその小舟を覆い尽くした。彼女の頭に遺されたオハラの希望も、未来も、その全てがこの世界全体にとっての危険因子なのだから。私はその事を、この世界に生まれてから学ぶ事になった。いや、学ばされた。

 

「もう、後には引けませんね。これまでの教導感謝致します。さようならサウロ中将殿……、そしてニコ・ロビン、例え貴女が生きて良かったとしても、貴女の中の知識は存在を許されない」

 

「……世界政府に逆らう者には死を」

 

 これが、私が18歳だった時の話。

 

「はぁ、どうして思い出したんでしょう。オハラの、バスターコールの事」

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。