大砲鳥は凶気を運ぶ 方針:海賊絶許   作:Delphinus

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百獣海賊団 新世界

「はぁ、5老星との会見。中々疲れました」

 

 普段の任務とは別種の疲れ方、肉体以上に精神が疲れる。ひたすら緊張するのだ、あれは。

 

「これから、私が海軍大将ですか……実感湧きませんね」

 

 私が、この世界の平和を背負わなければならない。正義の名目を掲げて。出来るのでしょうか、所詮は派遣社員でしょうに。

 

「まぁ、やっては見ましょう……」

 

 頭を上げる。場所は新世界。魚人島では無く、マリージョアから直接レッドラインを超えてここまで来た。他の大将と同じく、私も対四皇の防衛ラインに立たされる事になったのだ。

 

「ドフラは居ない……いずれはドレスローザにも挨拶に行きましょう。プロデンスにも」

 

 今回の人事に際して、私の麾下も大幅に刷新された。麾下だけでも10隻近くもの艦隊を預けられ、直属の部下だけで3000人は居る。本格的な一艦隊の司令官になったと言って良い。

 

「重いですね」

 

 権限が重い。背負った命が重い。正直結構、いやかなり、いや非常にキツい。

 なんて、私は思っていた。

 

「中佐、敵が来ました。百獣海賊団です。防衛体勢が変わった混乱を突いて来ましたね」

 

「分かりました。逃げよう、逃げましょう。百獣海賊団とか無理です、無理、四皇はマジで無理」

 

「うるさいですね、艦隊各位に通達を。海軍本部にも連絡し、増援を要請して下さい。連絡が終わり次第、貴方もキングパンチの準備を」

 

「はっただちに」

 

「接敵は2時間後と思われます。2時間後に合わせてウォーミングアップを整えるよう各員に連絡して下さい。私は先行して偵察します」

 

「分かりました。……て、あぁ……職業病がぁ。逃げたい、四皇とか逃げたい」

 

「ああそうだ、逃げたら銃殺刑です」

 

「ヒェッ、わ、分かりぇ……」

 

 

 

 

 新世界の前線にある最大の海軍基地、新世界G-1支部。後にニューマリンフォードと呼ばれるであろうその場所を出立、艦隊が新世界を移動する。目標は突入して来た百獣海賊団の要撃。

 

「来ましたか、ゴミ共」

 

「ゴミ共って、今大将がゴミ共って言ったよ、やっぱ怖過ぎね? 今回の大将」

 

「百獣海賊団をゴミ扱いって、赤犬大将だってしないよ。やっぱ凄えよな赫鳥さんって。しかも地獄耳だし」

 

「おや、何か言いたいですか? 皆さん」

 

「な、何でも有りません!」

 

「お、俺は作業に戻らせて頂きます!」

 

「そうですか」

 

 彼等は慌てて去るようだった。私は改めて、マストから水平線の彼方を見つめて待つ。間も無く、接敵の時間。

 

「皆さん手筈通りに。では殲滅です、怪獣風情が」

 

 時間が来ると、翼を出してマストから飛行開始。チャージ済みのランチャーを向ける。今のランチャーにはリミットが掛かっている。ミホークとの戦いで露呈した、海域汚染を防ぐ為の処置。それでも、火力を出す方法はある。

 

「絶滅放射」

 

 海の全てが炎一色に染まった。

 

 

 

 

「ウォロロロロロロ、中々やってくれるじゃねぇか赫鳥ォ! 『死ね』」

 

 百獣海賊団の船は半数近くやった。でも、飛べる奴が居る。更に砲撃。船を集中して沈める。

 

「船ばかり狙って遊んでんじゃねえぞ? なあ」

 

「知るか、死ね」

 

(敵はカイドウ、キングも居る。数的不利。面倒ですね)

 

 艦隊は後方に下げて機動力をフルに使い、単独でヒットアンドアウェイ。ひたすら引き撃ちに徹して時間を稼ぐ。

 

 目的はカイドウを中心とした敵主力と、艦隊との引き剥がし。

 

「俺も忘れるなよ、赫鳥」

 

「チッ、キングですか」

 

 鬱陶しい。カイドウの相手なんかするだけ面倒なのに。キングまで来ては鬱陶しさが跳ね上がる。

 鬱陶しくて、不快で焼き殺したくなる。

 

「煩い、私を殺すなよ!」

 

 更に砲撃、誘導火線を乱射、更にランチャーからも砲撃。序でに六王銃もおまけ。流石に六王銃ではもうキツいですね。

 

「ボロブレス? ああもう面倒い!」

 

 撃って来たボロブレスを回避。更に切り掛かって来たキングをグレネードストライクで弾き飛ばす。

 

(でも、距離は稼いだ)

 

 引き撃ちを続ける事で敵艦隊とカイドウの引き剥がしは成功。見聞色を通じて麾下の艦隊に通達。キングパンチを発射、標的は敵艦隊。そして轟音が轟いた。300以上ものキングパンチが一斉発射され、百獣海賊団の艦隊が文字通りに消し飛ぶ。

 それと同時にランチャーから電磁パルス砲を照射。電子機器を木っ端微塵にするこいつで、カイドウは倒せなくてもログポースとエターナルポースは消す。

 

(付け焼き刃のキングパンチではカイドウの相手はキツい。でも艦隊を狙えば)

 

「良し、全員撤退!」

 

 ログポースとエターナルポースは消し飛ばした。後は新世界に迷って死ね! 

 全速で逃げに入る。でも追い縋って来る。面倒い、追いつかれる。翼を変形し、ランチャーも後方配置、火線を後方に集中。

 

「こいつは銀河一後方に強いんですよ!」

 

 そのまま乱射。前方を向いて全速力で逃げながら、見聞色で目標をロックオンして撃ちまくる。視界全てが弾幕塗れになる程の砲撃。それすらもカイドウは捌き切って、更に突進、ああ、もう面倒い! 

 

「煩い、覇天!」

 

「な、何!?」

 

 驚愕するキング、気にしていられない。追いつかれるくらいなら、反転して構える。覇気で私の分身体を作り上げ、覇国を構える。そして砲撃! 

 

「ウォロロロロ、巨人族の槍か。それも1人でやるとはな、我流の改造が入ってると見た。中々じゃねえか、気に入ったぞ」

 

「うっ、くうぅっぃ……」

 

 でも、無理だった。覇天でも抑えきれない。追いつかれる。ランチャーを潰され、首を鷲掴みにされ、あ、ああっ、苦しい、死にたく、無い。

 

「お前のせいで大損害だ。船もログポースもエターナルポースも吹っ飛んじまった、だが特別だ。お前も百獣海賊団に入れ、そうすればこの損害も忘れてやる」

 

「ん、な、何言って……えっあ、え? ……」

 

 カイドウが一体何言ったのか、私には全然分からなかった。何故私なんかを勧誘するのだろう。敵は殺すのが普通では無いか? 何故で頭が一杯になる。で、でも、死ぬくらい、なら、首を縦に振った、方が……。

 

(でも、賞金首は嫌なんで……す、私は、単に死にたく、無くて)

 

 でも、殺されるより賞金首になった方がマシだ。もう良い。やっていられない。

 

「煩い! 死ね!」

 

 ナイフはまだ生きてる。両手を縛られても翼でナイフを抜く。そして、

 

「死ね、死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね」

 

 ひたすら滅多刺しだった。策も何も無いただの滅多切り。炎と覇王色を纏わせたナイフで、何も考えずに切りまくるだけ。切って、切って、切って、でも

 

「死ね、死ね、死ね、はぁっぁ、うぅ、死ね、死ね死ね死ね死ね死ね、死ね、死ね……」

 

「ウォロロロロロロ、今のは効いたぞ。尚更お前が欲しくなった。連れて行け、キング」

 

「分かった、旦那」

 

「はぁっ、うぅっあ、ぁぁ……」

 

 ナイフを叩き落とされる。海楼石の手錠がかけられそうになって、ああ、もう良い。核融合爆発を起こして海楼石ごと全てを消し飛ばした。私まで吹き飛ぶ程の爆発。吹き飛んで、止められないまま海に落ちる。落ちそうになって、でも、未来は分かっています。

 

「ああっぁ、うぇ、何……、青雉」

 

「遅れてすまないな、ファイス嬢ちゃん」

 

 海に落ちるギリギリの所で、青雉に抱きとめられる。ビブルカードを使って追いかけて来たのだろう。海上を自転車に乗って来て、降りたばかりの青雉。ああ、お姫様抱っこは止めて……恥ずか、しい。それにお尻触るなっあ、うぅ、で、でも今だけは許してあげます。

 

「すみま、せん。青雉。このざまで」

 

「そんな事無いさ。四皇相手に良く持ち堪えたな」

 

「はぃ……。そのセクハラ、ぃ今だけは、許してあげます」

 

「お、良いのかい? やったねぇ」

 

「許したくらい、で、触る、なぁぁ」

 

 でも、少しだけ安心感はする。お姫様抱っこは終わって、凍りついた海の上に立降ろされる。ちょっとウキウキした。こんな時に考える事じゃ無いのに。

 

「カイドウ、直ぐに赤犬も黄猿も来るぞ。何ならガープ中将だって来る。5対2だ、まだやるか!」

 

「ウォロロロロロロ、仕方ねえ、残念だがこの辺りが潮時だな。立て直しだ、帰るぞキング」

 

「時間切れか。命拾いしたな、赫鳥」

 

 

 

 

「すみませんでした。カイドウに、危うく連行される所で」

 

「わっはっは、そんな事は無いわ。良うやったのうファイス、本当に成長したぞ」

 

「全くだ。四皇相手に大損害を与え、援軍が来るまでの時間を稼いだ。300人もの部下にエリザベロー2世のキングパンチを短期間で習得させ、実戦で運用してみせた。それにログポースとエターナルポースを集中的に狙うという機転も素晴らしい。まさに立派な海軍大将だな、誇って良い戦果だ」

 

「そう、ですかね……。ガープ中将、センゴク元帥」

 

 そこまで褒められると、ちょっと恥ずかしい。そんなに立派な事はしていないと思う。

 マリフォードに帰った後、元帥の執務室で会談した。内容は無様にやられたというだけだから、正直恥ずかしいですけど。

 

「大将になって数ヶ月でこの戦果じゃあ、否定は出来んけぇ」

 

「ただ、強いて言うならビブルカードもきっちり潰しておくべきだったねェ〜。カイドウはビブルカードを使って撤退したって報告があるよぉ〜?」

 

「ビブルカード……すみません、考えが及びませんでした」

 

 黄猿に言われた事を反芻する。次は、ビブルカードも消す? ああ、確かにそうだった。

 

「それに、何より無事に帰って来たのが一番だ。良く頑張ったな、ファイス」

 

「は、はぃ、青雉」

 

 顔が赤くなった。認められるのって結構恥ずかしい。

 

(はぁ、恥ずかしい。良いようにやられて助け出されただけなのに)

 

 大将として、海軍の最高戦力としては不出来な結果だ。原作でも大将では四皇に対抗出来ないのは、その通りとは言え。

 

「ともあれご苦労だった。今日はゆっくり休んでおけ。必要事項は後で伝達させる」

 

「はい、わかりました」

 

(……私は、まだ強くなる。是が非でも、何としても。例えニカだろうが、殺す)

 

 私には最強の武器がある。転生特典と言う悪魔の武器が。でも、その使い方はどうだったか? もっと洗練させなければならないのでは無いか? 今回の件で、私はその事を思い知った。

 

(カイドウ、是が非でも殺してやる)

 

 私は一礼すると、執務室を退出した。

 




主人公初の敗北。この主人公はまだ海軍大将レベルです。将来の純粋な戦闘力は4皇級。火力は古代兵器級
赤犬:一番頼りになる。でもちょっと怖い
黄猿:やりにくい相手。速すぎて連携がキツい
青雉:セクハラするな、でも今日だけは許してあげます
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