大砲鳥は凶気を運ぶ 方針:海賊絶許   作:Delphinus

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長期休暇行 東の海

「成る程、今から数年後、ゼファーと教え子が訓練船で海賊に襲われるか。そこで教え子は全員が殺され、ゼファーも右腕を失う……痛ましい、しかしまた随分と具体的だな」

 

「はい、更には船を襲った海賊が七武海に任命され、その事に失望したゼファー先生が海軍を見限り、NEO海軍と称する新組織を発足。エンドポイントを破壊し、新世界ごと海賊の殲滅を狙う未来も見えました」

 

「そこまでか。何と言う事だ、ゼファー……。分かった、この情報は必ず有効に活用させて貰う」

 

「ただ、あくまで可能性に過ぎません。今ここで私がセンゴク元帥に話した事で、見える未来はかなり変わりました。断片的ですが、明確に好転しています」

 

「そうか、そうだろうな。良いだろう赫鳥。ゼファーについては私に任せておけ。それと」

 

「さっきは言っていなかったな。大将が1人増えた事で、戦況にも以前より余裕が出来てきた。よって、そろそろ赫鳥にも長期休暇を与える。当面の間バカンスにでも行って来ると良い」

 

「バカンスですか……分かりました。有難く拝命します」

 

 小さく礼を言ってから、センゴク元帥の元を去る。それにしても、

 

「バカンス……困りましたね。何処に行きましょうか」

 

 

 

 

 大将が増えた事で、海軍の戦力にもかなり余裕が出来た。その影響で、海兵達にも以前より休暇も取らせやすくなったらしい。私のバカンスもその一環。でも……

 

「休暇……はぁ、どうしましょうか。正直、行く場所が思いつきません」

 

(この機会に空島を探ってウルージを殺す? 、東の海に行ってヒグマを殺るか、或いは首領クリークを……いや、駄目ですね。海賊殺す事ばかり考えて……)

 

 いざ休暇となると、何処へ行けば良いのかさっぱり分からない。暗殺リストの事ばかり考えてしまう。

 私の頭には暗殺リストがあって、隙あらば殺害の機会を伺っている奴らが沢山いる。1番はカイドウ、2番目はビッグマム、3番目はルフィと言った具合に。

 その中で、ウルージは高いレベルにある。

 

「名を挙げるより先にウルージを殺しに行く。いや、でも、はぁぁ」

 

 どうしましょうか、困りました。そう思って、いたのだけど。

 

 

 

 

「えっ嘘、バカンス? 何処にでも行けるの?」

 

「はい、その通りです。危険な新世界で無ければ、大抵の場所には行けますよ、ウタ」

 

 自宅に戻った後、ウタとブルックに改めてバカンスの話をする。ウタは

 

「何処でも良いんだよね、じゃあエレジアに行きたい! 凄い音楽の国だって」

 

「エレジアは駄目です」

 

「えー」

 

 不満げなウタ。でもエレジアは不味い。赤髪が居ない以上

 、トットムジカは起動したくない。

 

「じゃあフレバンスに行きたい」

 

「ローに聞きましたか?」

 

「……うん」

 

 フレバンス……封鎖は、今どうなっていたでしょうか。それに、鉱毒は。

 

(鉱毒はまだ残存している筈、行けば命に関わるかもしれません)

 

「フレバンスは駄目です、まだ命の危険があります」

 

「えーつまんない。はぁ、じゃあエルバフ」

 

「さっきから死にたいんですか?」

 

「そんな事無いよぉ、エルバフくらい簡単じゃん。お母さん海軍大将なんだから」

 

「海軍大将だから尚更駄目なんです。エルバフは四皇の縄張りの直ぐ目の前です。行けば高確率で衝突になります。四皇との衝突は可能な限り避けるべきです」

 

「はぁ、お母さんのケチ」

 

 不満げなウタ。それに対してブルックが言った。

 

「ヨホホ、どうやら大変みたいですねぇ、お嬢さん。ならこういうのはどうでしょう?」

 

「えっ? 何なにブルックぅ」

 

 

 

 

「ヤッホー、皆んなのアイドルウタだよー。今日もウタライブを見てくれて有難とー! 今日の放送は凄いんだよ!」

 

 今日はね、イーストブルーの船上からお送りしています! お母さんがバカンスに連れて来てくれたの! 目的地はゴア王国って言うんだけど、皆んなは知ってるぅ? ここにはガープお爺ちゃんに誘われて来る事になって……

 

(ウタは、どうやら上手くやっていますね……)

 

 ウタは、思っていたよりずっと上手くやっている。最近になって始めたと言う、映像電伝虫を使ったライブ放送。原作さながらの魅力的なライブを彼女は立派にこなしているようだった。adoも居ないのに。

 

(まぁ、私には関係有りません)

 

 私はと言えば、正直ヒグマの始末で頭が一杯だ。ウルージは後でやるとしても、今はヒグマと、ドンクリークを殺す事。ライブの事なんか一々気にしていられない。ライブ風情が例え失敗した所で、別に誰も死にはしないのだから。

 どうやってヒグマを探り当て、そして殺すか。平和な船上で、私はそればっかり考えている。

 

「ヨッホホ、皆さんこんにちは。死んで骨だけ、いつも通りのブルックと申します。さて本日のライブは……」

 

 このライブはウタとブルックのコンビ形式で運営しているらしい。私はノータッチで、精々新種の映像電伝虫と、後はスタジオの用意ぐらいしかしていない。だから私には関係無い。関係無い事を一々気にしていられない。

 

(ヒグマを殺すには……)

 

「お母さん! こっちこっち」

 

「はぁ、何ですかウタ」

 

 いきなりウタが手招きする。近づいた。すると

 

「はい、こちらが私のお母さん、海軍大将アルメリア・ファイスです!」

 

「初めまして、私は海軍本部大将、赫鳥ことアルメリア・ファイスと申します。宜しくお願い致します」

 

 ぺこりと頭を下げて自己紹介する。

 

「何のつもりですか? ウタ」

 

「えへへ、お母さんの事も皆んなに見て欲しくて。ね、後で歌って?」

 

「そうですか。私は歌えませんよ」

 

「どうせ直ぐに歌えるじゃん。お母さん天才だもん、少し練習したら直ぐだよ、ピアノみたいに」

 

「はぁ……」

 

 無茶を言います。私は別にアイドルでは無いのに。

 

(私なんかがアイドルにデビューしろと? 馬鹿も大概にしてくれません?)

 

 正直、私にアイドルなんかやってる暇は無い。そんな時間があるなら、少しでも多くの海賊を潰したいのだから。潰したい海賊なんて、それこそ無限に幾らでも湧いてくる。それが大海賊時代なのだから。

 

(それに、私にアイドルの素質なんか有りません)

 

 たかが派遣社員にそんな才能は無い。今の私には有るとしても、ただの殺戮機械をアイドルにする了見が知れない。

 

「私はアイドルでは有りませんよ。それに、今はどうやって海賊を始末するか考えていたのですが」

 

「うわぁ、お母さん物騒ぉー、怖ーい! でもそんなお母さんが大好きなの! 、ね、みんな見てくれた?」

 

「ヨホホ、皆さんご覧の通り、ファイスお嬢さんは非常におっかない方でいらっしゃいます。しかも……」

 

(はぁ、何のつもりですか……)

 

 ちょっとだけ脱力する。鬱陶しくなって標的の事を考える。

 

「それと、パンツ見せて下さい、お嬢さん」

 

「死ね」

 

「とまあこの通り、口癖は死ねで御座います。海賊への殺意と悪意で生きておりまして……」

 

(殺意と悪意ですか……まぁ、そうだと良いのですが)

 

 殺意と悪意……はぁ、まぁそう言うのだろうか。私は、私を殺す者が憎い。殺したい。殺さなければならない。殺さなければ殺されると思っている。そんなの平和とは程遠い思考なんだろう。でも、私には否定出来ない。海賊は私を殺す。だから殺される前に殺す。それだけだ。

 

(平和なライブとは程遠い感性で、ライブをやらせるのですか?)

 

「ぶわっはっは、何をやっておるんじゃ、ウタ」

 

「あっガープお爺ちゃん!」

 

「おっ、何じゃあそれは? ワシも気になるわい」

 

「これはね、映像電伝虫って言って、お母さんが用意してくれて……、あっ皆んなにも見せてあげる! この人が海軍の英雄、ガープお爺ちゃんだよ!」

 

「おう初めましてになるのう、ワシがガープじゃ。宜しく頼むぞ」

 

「ヨホホ、今回の東の海ツアーは、こちらのガープ中将の取り成しで成り立っております。これから向かう先のフーシャ村では……」

 

(はぁ、ガープ中将まで……どうしましょう)

 

 正直気が重い。果たしてこんな調子でヒグマを殺せるんでしょうか。

 

(……まぁ、調子が悪くても殺しますが)

 

 調子が悪いくらいで済むなら、殺す。

 

「んっ? 何やってんだよ」

 

「あっ、ロー! ローもこっち来て、ほら」

 

「うわぁっ、ちょっと、待って、あっあぁっ、ウタの事何とかしてよロシさぁん!」

 

「あはは分かった。今行くからさ、ロー。ただ、俺は顔出しと声出しは御免だから」

 

 それに、この船にはロシナンテ大佐と、ローまで居る。東の海行きは、随分と忙しい旅になりそうだった。

 

(ウタとルフィを引き合わせる以上、危険な未来も見える。ウタが海賊になったら、是が非でも殺す)

 

 断片的ながら、ウタが海賊になる未来も見える。海賊になったら殺す。絶対に生かさない。まぁ、それだけは思っている。

 

「ほら、お母さんも、歌の練習して? 良いから」

 

「嫌です。今、この船から170km東南東に海賊船が見えます。ついでに殺しに行こうかと」

 

「えっ、そ、そんな先まで見えるの? お母さんって凄い……」

 

「ぶわっはっは、そのくらいならワシが行ってくるわい、心配は不要じゃ」

 

「……そうですか」

 

 ガープはそう言って外に出ると、とんでもない速度でイーストブルーを泳いで行く。海賊船が吹き飛ぶ未来を見た。そして私は歌の練習をさせられた。

 

「うわっ、お母さん本当に初心者? ほらぁ皆んな見てよ、お母さんの才能。直ぐ覚えちゃう! 凄い気持ち悪いでしょ?」

 

「流石に気持ち悪いは無いだろ、仮にも母親なんだろ? ウタ」

 

「そんな事無いって、キモい物はキモいの! ローだってそう思うじゃん!?」

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