「さ〜てここかい? 例の、ポーネグリフが有るって場所は」
「ひえぇーまた空島だぁぁ、雲の上怖いいぃ、落ちたら死ぬううぅ」
「ええ、その通りです黄猿。見聞色の予測が正しければ、ポーネグリフはここに」
私たちは黄猿と共同で、原作にも出てきたジャヤ上空の空島にやって来た。目標はポーネグリフの回収。ロードポーネグリフでは無いとは言え、通常のポーネグリフも出来るだけ回収しておきたい。
(怯えている海兵も居ますね……早い内に目的を終えて帰りたい所です)
「では、移動しましょう。まずは空島の代表者に挨拶を」
「おや、代表者が居るのかい? なら話が早いねぇ」
移動を開始する。原作通りなら、空島の代表者はガン・フォールの筈。
(それに、この瞬間なら……)
黄猿を連れて来た理由は、もう一つある。今ならあいつと衝突するかもしれない。
雲の大地を歩いて進む。足裏の感触が心地良い。不思議な感じだ。海兵達は一々不安がっているけど。
「さて、どうなるでしょう」
ともあれ、まずは移動しなければ。
「初めまして、空島の神、ガン・フォール様。私は海軍大将の赫鳥と申します。こちらは同じく、海軍大将の黄猿です」
「と言う訳で、あっしは黄猿だヨォ〜、宜しくねェ」
「ようこそ地上の者達よ。私がスカイピアの神、ガン・フォールである」
原作とは違って、法外な入場料を取られる事も無かった。エネルはまだ居ないから、来島者の排除政策は行われていない。ガン・フォールとの謁見は比較的簡単に成功した。
「うえぇ、これが空島の神かぁぁ、普通に威厳あって怖いんだけど……」
「そ、それに、あの鳥なんだよ、な、なんか怖いぞ?」
天点鳥のピエールを怖がっている海兵もいっぱいいるけど、私は気にせず話を進める。
「実は、本日はお願いがあって参りました」
「成る程ォ〜、ジャヤの一部が打ち上がって空島にねぇ。それで原住民と抗争になった、と。ん〜、幾ら空島って言っても、暮らしてるのは普通の人間なんだねェ」
「不甲斐ない話では有るが、その通りだ。黄猿殿」
ガンフォールから空島の情勢を一通り聞いておく。原作には出なかった情報も、有るかもしれないから慎重に聞いた。
(……情勢は、エネルが居ない事を除けば原作と同じ。後はエネルさえ)
シャンドラの事情を何とかして、エネルを排除すればスカイピアに恩を売れる筈。そうすれば後の交渉を有利に出来る。見聞色で分かる。エネルは、もうすぐ来る。
「黄猿、分かりますか? 何か来ます」
「ん〜、どうやらそのようだネェ。これは〜、一体何が来るのかねぇ?」
「なっ、どう言う意味だ?」
困惑するガンフォール。そして、雷鳴が轟く。
「ヤハハハハハ、一体誰だ、貴様らは」
「海軍大将、赫鳥と申します。例え世界政府非加盟国と雖も、脅かす者に容赦はしませんよ」
「右に同じ、海軍大将黄猿だヨォ〜、どうやらお前さん、中々厄介な能力者のようだネェ〜。それにしても赫鳥、もしかして、こいつが来るって事分かってたのかネェ?」
「ああ、矢張り気付きましたか? 黄猿」
「ふ〜ん、どうやら図星かぃ? ま、ここは正義の為にぃ、少しばかりやっちゃいましょうかネェ〜」
「ヤハハハハハハハハ、これは想定外もいい所だなぁ。まあ良い、来るが良い。限りない大地は私の物だ!」
「ええい、外様だけに任せておけん。我々もやるぞ! 神兵隊、敵襲だ、急ぎ来い!」
戦争が始まる。私は武器を構えた。
「海兵隊、全員武装用意! 迎撃戦です」
「り、了解、皆んな、武器を取れ! 例え非加盟国でも関係無い! 空島を守るんだ!」
「ン〜、それどうやら雷かい? やっぱり面倒な能力だネェ〜」
「ヤハハハハハ、面倒なのはそちらも大概だろう。その能力、光と見たぞ!」
黄猿とエネルは熾烈な衝突を繰り返す。目にも止まらない超高速の激突。私は見聞色を頼りに、黄猿に追い縋って砲撃支援を繰り返す。
空島にはエネルの神官隊が次々と突入して来る。ガンフォールの神兵隊と海兵隊が共同で防衛線を展開。熾烈な衝突が続く。
そこに、
「何だ、どうなってるんだ、これは!」
(シャンドラの戦士……来ましたか)
激しい雷と閃光が見えたのだろう。シャンドラの戦士達までもが戦場に現れる。混沌は更に加速する。
「ガンフォール、これはどう言う事だ?」
「どうしたもこうしたも無い! 空島を脅かす巨大な敵が現れたのだ! 今も外から来た客人達が戦っている。頼む、お前達も力を貸せ、シャンドラの戦士達よ!」
「な、何だとっ、巨大な敵? 今更何を……」
「見て分からぬか! 敵は神の僭称者エネルだ! 奴はスカイピアだけでなく、お前達シャンドラをも支配しようとしているのだぞ!」
「エネル、神の僭称者だと!?」
シャンドラの戦士に驚愕が広がる。そして、誰かがそう言った。
「ふん、まあ良い、ガンフォールとは一時休戦だ。行くぞ、我等の大地を脅かす不遜者を打ち倒せ!」
「敵はエネルだ、ガンフォールの事は一旦忘れろぉ!」
シャンドラの戦士達の歩調が合わさる。再び激しい戦闘が始まる。
「敵同士でも手を取り合う、中々感動的じゃないのォ〜、どうやら、あっしらも負けてられないみたいだネェ〜」
「そうですね、黄猿。この場でエネルの相手が出来るのは私達しか居ません」
「ヤハハハハハ、言ってくれるなぁ。良いだろう、まずは貴様らから打ち倒してやろう!」
空島中を激しい雷光が包み込む。黄猿とエネルの激突は空島中の凡ゆる場所に及び、超高速で場所を入れ替えては何度も何度もぶつかり合う。私は次にエネルが来るであろう場所を予測して、予測地点に向けて只管砲撃を繰り返した。
「鬱陶しい奴だ」
「接近するなら好都合です」
そんな私を鬱陶しいと見たらしい。標的を私に変えるエネル。でも都合が良い。覇王色を纏わせた赤黒く発光するランチャーで、グレネードストライクを叩きつける。
「な、何いいいぃ!??」
「覇気こそが全てを凌駕するんですよ!」
ロギアの防御を抜かれたせいか、原作さながらのギャグ顔になったエネル。はぁ、相手がゴムでなくてもこうなるんですね。
「おや、随分隙を見せたネェ〜」
「うぐぅっ、おのれぇぇっ」
黄猿の追撃を、ギャグ顔のままでも辛うじて捌く。まだこれだけの余力が有るのですか。
(でも、そろそろ限界でしょう?)
エネルもいい加減限界が来ていると見える。さて、この辺りでトドメと行きましょうか。
「さあ、焼き尽くしてあげましょう」
「大将2人を相手に中々頑張ったけど、そろそろ限界みたいだねエ〜」
「くっ、よくもおぉっ」
ランチャーを展開、ソケットに八咫烏の炎を結合、エネルギーイン。エネルギー充填、完了。放射! 核の炎では有りませんが、威力は十分です!
「終末放射!」
「八尺瓊勾玉」
「おのれぇ、雷神!」
炎と光が雷の巨人を襲う。そして全てを焼き尽くす。
「ぐあああああっァァァ……」
「こんな物かねぇ、さ、早い所捕まえちゃいなよ」
「は、はいっ、海楼石の手錠だ、急げぇっ、早くエネルを捕まえろぉっ」
エネルはこうして、あっさりと捕縛された。これで御用となる。
(はぁ、何とかなりましたね……)
私は安堵して一息ついた。地上ではエネルの神官軍が、海兵隊とガンフォールの神兵隊、シャンドラの戦士達によって打ち倒されているのが見えた。
(さて、後始末です。シャンドラの戦士達にも事情を説明しなければ)
空島に降下して翼を閉じた。これから何を話すべきか、私は思案していた。
「なんて、大変でしたね……」
空島行きは比較的簡単に行って安堵した。エネルの排除も成功し、シャンドラの鐘を鳴らす事も出来た。
(ただ、思っていたよりは余程簡単でした)
そんな事を思いながら、私はマリンフォードのスタンドで買ったコーヒーを飲んでいる。
「待ってくれよロー、本当なのか? よりによってSWORDに志願するって」
「本当だよロシさん。俺もSWORDに入る」
(ローと、ロシナンテさん、口論ですか。それにしても、ローがSWORDに?)
「あんな場所に入ってもロクな目に合わないぞ。少なくとも出世街道からは外れてしまう」
「じゃあどうしてロシさんはSWORDに入ってるんだよ。俺は出世なんか興味無い、だからそんな事はどうでも良い!」
「だからそう言う意味じゃなくて、それに危険なんだ」
「さて、どうかしましたか? ロシナンテさん、ロー」
「アルメリア大将、こちらに居ましたか。どうか大将からも説得してくれませんか? ローがSWORDに入ると言って聞かなくて……」
「聞いてくれよアルメリアさん、俺もSWORDに入りたいんだ。折角志願したのに、教官からは蹴られてて、ロシさんからはこの通りだし……」
「ふむん、成る程」
ローはもうすぐ海兵学校を卒業する。卒業後の任官先としてよりによってSWORDを希望したせいで、担当の教官とも随分揉めたらしい。事のあらましはウタからも聞いている。
ロシナンテ准将は、ドンキホーテ海賊団での潜入任務で得た情報に基づき、北の海での大規模な摘発作戦に参加。北の海の闇を暴いた功績により、大佐から准将にまで昇進した。そんな話を聞いている。
「SWORDに入った海兵は、マリンコードを返上する対価に、4皇にすら喧嘩を売れる程の高度な自己裁量権を与えられます。つまりSWORDの隊員は、辞表提出済みも同然と言うわけです。そこに志願するなど、普通に考るなら貧乏籤を引きに行くような物。ローはそれでも良いのですか?」
「構わない、俺は貧乏籤なんかだと思っちゃいない。マリンコードだってどうでも良い」
「だ、そうですよ、ロシナンテ准将」
「はぁ、でも、それではローの将来に悪いですよ……。素直に軍医辺りになってくれれば、危ない目に合う事も無いですし。何なら海軍を出て、民間の医者に戻る事も出来るんですから」
ロシナンテ准将はそれでも心配している。まあ理解は出来る。SWORDなんて望んで入るような場所じゃない、それが一般的な考え方ですから。でもまぁ
「そこまで仰るなら、私に否定する理由は有りませんね。例えSWORDでも、志願して構わないのでは?」
「大将まで、そう仰いますか……」
気落ちしたロシナンテ准将。私は言う。
「それに、もうすぐ北の海での演習航海があるのでしょう。その後にでも、改めて考えてはどうでしょうか」
「演習航海か」
海兵学校では伝統的に、卒業前の生徒による大規模な演習航海が行われる。今回の演習で向かうのは北の海。予定通りなら、ローもそれに参加する事になっている。
(まあ、どうなっても未来が悪くなる可能性は乏しい。せいぜい気長に見ておきましょう)
未来予知の情報はそんなに悪くないのだ。じっくりと見ておけば良いだろう、私はそう思っている。そうして、いると
「きゃぷてん、うえぇきゃぷてーん」
「だから、キャプテンって言うなよ! 俺はまだ学生なんだって!」
そして演習航海から帰って来たローは、ベポとシャチとペンギンと、更には大型潜水艦まで連れて帰って来たのだった。この結果は、ちょっと想定以上ですね。
「そ、その、ファイスさ……ファイス大将、こいつらも入隊希望者なんだ……それで、こっちの船は」
「ふふ、分かりました。手続きはこちらでしておきましょう、心配は要りませんよ。それに、そちらの方はどうやらミンク族ですね。ゾウの国、ズニーシャのモコモ公国から来ましたか?」
「うえぇ、ゾウの国知ってるの?」
「ええ、良く存じていますよ。所で、貴方はどうしてノースブルーに?」
「迷ったの、道に迷った」
「そうですか」
なにせ、あそこにロードポーネグリフが有るんですから、ズニーシャの調査は入念にしているんです。何て、流石にそこまでは話さなかった。
黄猿VSエネルと言う原作でも夢のシチュエーション。黄猿が勝っちゃうのが予想通りでもある。