大砲鳥は凶気を運ぶ 方針:海賊絶許   作:Delphinus

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嵐の前に シャボンディ諸島

「ねぇ、それでねお母さん。ルフィが」

 

「ふふ、そうですか。ウタ」

 

 マリンフォードに置いた私の家は、思っていたよりずっと賑やかになった。もっと寂しいのが当たり前だと思っていたから、これも意外ではある。

 

「ねぇウタ姉さん、次のライブいつなの?」

 

「次のライブ? もう直ぐだよシュガー。前にエレジアのライブが終わったから、次はシャボンディ諸島に招待されてて」

 

「あら、シャボンディ諸島ね。色々大変だそうよ、あそこ。気を付けて」

 

「うん、分かってるって、ルフィだって居るんだから、心配要らないよ。モネ姉さん」

 

(私は白ひげではありません。家族なんて、それこそどうでも良い)

 

 だと言うのに、私の家族は意外と様になっている。碌に結婚もしていないのですが。

 前世が男性だった事もあって、私の性的指向は結局女性だ。男と結婚なんてする気は無い。

 

(私と、ウタと、モネと、シュガー、序でにブルック……改めて考えると、危険な能力者ばかりですね)

 

 ウタウタの実にホビホビの実と言う、本当に世界をひっくり返しうる超が付く程の厄ネタ。トリトリの実モデル八咫烏と言うただの危険物。死後の復活を可能にするヨミヨミの実、原作でボスキャラを張っていたイトイトの実が一番まともだなんて、正直冗談みたいだ。別に意図して世界にとっての危険物をかき集めたつもりでは無いのだけど、気がついた時にはなんだかこうなってしまっていた。

 

(とは言えこうも集めてしまえば、何の意図も無いなんて、幾ら釈明しても理解されないでしょう。アルメリア・ファイスは意図的に危険な実の能力者を集めている。そう言われてもおかしく有りません)

 

 と言うより、そう考えられる可能性を前提に行動するべきなのだ。海軍大将と言う立場はそれだけ重いのだから。

 

(となると、問題は……)

 

「あっ次のウタライブなんだけど、モネ姉さんもゲストに出てくれる? ちょっと大変で……」

 

「ふふ、分かったわ。じゃあ準備はこっちでしておくわね」

 

「わーありがとう! ブルックもお願い」

 

「ヨホホ、ええお任せを」

 

「えーウタライブ? 私は見てる。関係無いし」

 

「シュガーも出てよぉ、ね、シュガー可愛いんだから。お願い」

 

「嫌でーす、世界放送なんか絶対出たく無い、はぁ、お母さんのクレープは一生美味しいなぁ」

 

「うー、また。しょうがないか、今夜の放送は私達三人で行くよ?」

 

「そうですか、ではお気をつけて」

 

「はーい、お母さん」

 

 

 

 

「ねぇ、お母さん。ディアブロ海賊団を皆殺しにしたって本当なの?」

 

「ええ、本当ですよ、ウタ」

 

「……そうなんだ」

 

 ある日、ウタはディアブロ海賊団の話を問いただした。私は言った。

 

「それ、何で?」

 

「海賊を殺すのに理由が必要ですか?」

 

「い、幾ら海賊でも、相手だって生きてるんだよ? 理由が必要なくらい当たり前でしょ」

 

「相手が生きているなら、尚更殺すしか無いでしょう」

 

「……そんなの、幾ら何でも残酷過ぎるよ」

 

「そうですか」

 

(ウタは、私のやり方を疑問に思っている)

 

 別に否定する気は無い。自分のやり方が、別に褒められた真似なんかじゃ無い事は分かっている。寧ろ認める奴の方が少ないだろう。単に徹底的な殺戮なんて。

 

(それでも、私は死にたく無い)

 

「何で、お母さんはそんなに殺すの?」

 

「理由ですか? そうですね、理由は単純です。死にたく無いですから」

 

「死にたく無いって、それなら殺さないでおいた方がずっと助かるじゃない!」

 

「そうですか」

 

「無駄に徹底的に殺してばっかり、そんなの復讐されて当たり前だよ。可笑しいよ、お母さん」

 

「可笑しいですか? まあそうでしょうね。報復には報復で答えます」

 

「復讐には復讐で答えるって、じゃあまた復讐されたらどうするの?」

 

「それこそ、更なる報復で答えるだけです」

 

「そんなの、復讐の連鎖じゃない、絶対に正義じゃないよ……」

 

「そうですね。それで?」

 

「それでっ、なんて……」

 

 言葉に詰まるウタ。私は続ける。

 

「海賊は消さなければなりません。1人残らず。単にそれだけです」

 

「でも、こんな世界なんだもん、海賊になるしかない人なんて幾らでも居るんだよ?」

 

「そうですね、ですが関係有りません。事情はどうだって良い事です、海賊なのですから」

 

「どうだって、て……」

 

「海賊は消さなければなりません。殺さなければ殺されるだけです。殺されるくらいなら殺します。それだけの話です」

 

「頭悪いんじゃないの、この馬鹿。殺してるから殺されるんじゃない。そもそも殺さなければ殺されずに済むのよ、何考えてんのよ頭悪い!」

 

「頭が悪いですか? まあそうでしょう。それと、こちらから殺さなくても態々殺しに来ますよ、海賊は」

 

「そんな事」

 

「ただの生存競争です。生き延びるのは海賊か、海軍か、それがこの世界の構造です。単純な話」

 

「でも、そんなの間違ってる」

 

「そうですね」

 

 ウタは、私のやり方を間違っていると言った。正直それが正しいのだろうと思う。でも、私は正しいだの間違ってるだのどうでも良い。

 

「問題はただひとつだけ。私が生き延びられるか否かです。正しさなどどうだって良い。無慈悲な正義は正しさを繕う為の飾り。そして私は、海賊を殺さなければ生き残れない。私を憎む奴など、世界中に幾らでもいますから」

 

「無慈悲な正義が飾りって、お母さん、そんな事考えて」

 

「でも、貴方は違うと見えます、ウタ」

 

「……」

 

「貴方の正義は私とは違うようです。私の正義が碌でも無い事は自分で分かっています。ウタは貴方の正義を追求すれば良いでしょう」

 

「そんなの、碌でも無いって自分で分かってるなら何でやり方ぐらい変えないのよ! 可笑しいじゃない」

 

「碌でも無かろうと、生き延びるにはあれが効率的ですから」

 

「……生き延びるには効率的って、だからって、あんなに殺すのなんか、どう考えても可笑しいよ」

 

「そうでしょうね。でも、私は価値論争はしません。例え間違っていてもやります。現に生き延びられるか否か、それが問題の全てです」

 

「……お母さんって本当に馬鹿じゃん」

 

「そうですね。まあそうなんでしょう」

 

 ウタは失望したのでしょう。でも、それで良いとは思っています、私は。

 

「ウタ、貴女の正義は、貴女の手で見出しなさい。私は正義についてなど、海賊が消えた後でゆっくり考えれば良いと思っています」

 

「……そんなの。ねぇ、ルフィ。私どう考えれば良い?」

 

 

 

 

「ふーん、ウタ姉さんはそんな事で悩むんだ。どうでも良くない? 殺すくらい。所詮は海賊だよ」

 

「所詮海賊って。で、でも海賊も人間なんだよ。海賊になるしか無かった人も沢山いるんだし」

 

「それも含めて海賊だって言ってるの。余計な事悩んでも無駄に殺されるだけじゃん。私は悩む暇なんて無いよ。海賊なんて、なった時点で命を捨てる覚悟くらい出来てるだろうからさ、思ってる通りに殺してあげれば良いじゃん。正直お母さんは正しいと思うよ? その、ちょっとやり過ぎてるだけで」

 

「そのちょっとが危険過ぎるんだよ」

 

「それは、正直その通りかもしれないけど。でも、海軍だって命賭けてるんだから。命のやり取りに容赦なんか要らないって」

 

「でも、お母さんのやり方じゃあ敵を作り過ぎるよ。敵ばっかり作って、味方は居なくて、こんな状態だといずれ倒れちゃうじゃん」

 

「逆に聞くけど、殺さなければ敵が減るの? 事実として、海賊は殺さないと常に増加し続けるんだよ? 絶えず殺し続けないとその内海軍の処理能力を飽和する程に蔓延して、最終的には世界そのものを滅茶苦茶に破壊するの。そんなの嫌だよ。お母さんは、駄目な所はあっても頑張ってるよ」

 

「……私、もしかして甘いのかな。海兵向いて無いの?」

 

「甘くは、無いと思うけど。海兵として物凄く役に立ってるよ、ウタ姉さんは。これは本当」

 

「……シュガー」

 

 シュガーの言い分は厳しい。シュガーは可愛いけどそこまで優しく無い。身内には偶に情を見せるだけで、本質的には他人に無関心。自分さえ良ければそれで良い。モネ姉さんも、シュガーもどこかそう言う所がある。お母さんと、同じで。

 

(でも、だからこそ海賊の事なんか気にかけずに殺せる。シュガーの考え方の方が、海兵向きなのかもしれない)

 

「でも、私には出来ないよ。海賊だから殺すなんて。海賊だって、本当に成りたくてなった人が何人いるの? 他にやる事が無いから、仕方なくやってる人だって多いんじゃないの? 、そう、思うと」

 

「うん、優しいよね、ウタ姉さんって。私なんかとは、違って……それに、別に殺さなくても良いよ。捕らえてインペルダウンに送ればそれで良い、そうでしょ? その為のウタウタの実の能力なんだから」

 

「優しい……そっか。ごめんね、シュガー。分かった。私、海賊は出来る限り捕らえて殺さない事にする。お母さんみたいな殺人鬼が正義ぶってる世界なんて、もう許せない」

 

「そんな事言ってたら、海兵なんて全員殺人鬼じゃん。……でも、やっぱりウタ姉さんは眩しい。私には、絶対無理だよ。海賊なんか相手に、そこまで優しくなるの。態々殺さないで、済ます余裕とか無いもん」

 

「……ごめんね、シュガー」

 

 正直、私はウタ姉さんが怖い。優し過ぎるもの、私なんかとは違って。人間風情がこんなに優しくなれるなんて、全然思っても居なかった。

 ……それに、もしもウタ姉さんが本当に正義の道を歩むなら、その正義が私と姉さんを焼き滅ぼすんじゃ無いかって。それが、一番怖い。殺されたく無いのだ。私は、私達は、結局自分の身の為にしか恐れられない。自分が一番大事。他人なんか想えない。でもウタは、他人に代えてしまえる。

 

「私には、絶対無理だから」

 

「何が? シュガー」

 

「何でも無い」

 

 私の手は、既に玩具の残骸を何度も何度も弄んでいる。ウタとは、違うの。私と姉さんと、ああ、そうだ、お母さんは。

 私達は、何処まで行っても正しく無い存在。だから、断罪されるのは嫌だよ。もし断罪するのなら、例えウタ姉さんでも。

 

(でも、ブルックはどうなんだろう。良く分からない)

 

 ブルックだけが、どうにも分からないの。

 

 

 

 

 行列が続く。巨大な行列。天竜人の行軍。その日、私とモネ姉さん、そしてお母さんは天竜人の護衛の為に駆り出された。正確には、駆り出されたのはお母さん、アルメリア・ファイス大将1人だけだ。そのお母さんが私達を連れて来た。天竜人風情の、後始末の為に。

 

「いつもすみませんね、モネ、シュガー」

 

「分かってる、後でクレープ、沢山」

 

「構わないわ、お母様も大変なのよね?」

 

「分かりました、クレープは準備しておきましょう。モネの分も、ですよ」

 

「アルメリア大将、間も無く、護衛予定の天竜人が」

 

「分かりました。モネ大尉、シュガー特装兵、隠蔽用意」

 

「はいっ、お母さん……アルメリア大将」

 

 姉さん……モネ大尉と私は姿を隠す。可愛らしくて性的価値の高い私達は、天竜人に見つかると奴隷として狙われる可能性が高い。この場は大将1人に見せかける。

 

「初めまして、マリガンド聖。本日の護衛を承りました、海軍大将赫鳥、アルメリア・ファイスと申します。宜しくお願い致します」

 

「おーこれは良い女だえ、決めたえ、この女はわちしの奴隷にするえー。ほれ、さっさと準備するえ」

 

「海軍大将を奴隷にしていては、海軍全体の業務が切迫し、更にはマリガンド聖自身の身にも危険が及ぶ可能性が高くなります。この世界は非常に不安定です。無数の海賊が常に御身の身柄を狙っています。どうか身の安全を思って下さい」

 

「たかが大将風情が、一丁前に言うもんだえ。まあ良いえ、さっさと行くえ」

 

「分かりました、こちらです」

 

「はぁー信じらんない! 何このクズ! お母さんの足元にも及ばない雑魚未満の癖に! 私のお母さんを奴隷にするですって!? 馬鹿も大概にしなさいよ!」

 

「その辺りにしなさい、シュガー。余り叫んでいると、こちらの位置が露呈するもの。それにしても、お母様は切り返しが上手いわね。天竜人が相手なのに惚れ惚れするくらいよ」

 

 お母さんの切り返しは凄かった。天竜人相手に一歩も引かずに、相手でも理解出来るロジックで的確に説得する。正直、お母さんが奴隷にされかけた時点で、私はもうホビホビの能力が必要になるって思ってたもの。

 

(やっぱり、お母さんって凄い。強いし、頭良いし、私の事守ってくれるし、もう最高じゃん。こんなのどうでも良いよ、海賊相手にどれだけ残虐でも)

 

 お母さんは、ウタ姉さんなんかとは違って私を守ってくれる。多くの人間を玩具に変えて、支配する私の本性も含めて、私の全部を守ってくれるの。それが、本当に頼もしい。ウタ姉さんは、私の正体を知るときっとドン引きなんだろうなぁ。それで、もう人を玩具にするのはやめろって、そう叫ぶに違いない。

 

(それが、嫌なの。そんなの強者の論理だもん、私は弱いの)

 

 弱いから、能力が無ければ生きていけない。能力が無くても生きられるのは強者だけ。弱者は、能力が無いと単に踏み潰されて死ぬの。それで終わり。後には何も残らない。

 

 行列はシャボンディ諸島を移動する。事前にお母さんからは、シャボンディ諸島にはロジャー海賊団元クルー、シルバーズ・レイリーが活動しているって通告された。接触すると面倒になるから、近づくのは可能な限り避けろって。私だって、ロジャー海賊団の船員なんて死んでも近づきたく無い。例え望まれてもこっちから願い下げ。

 

「おー、シャボンディパークだえー。いつ見ても良いえー、でも今日は奴隷を買いに行くえー」

 

「分かりました、マリガンド聖」

 

「はぁぁ、それにしても、天竜人ってほんっと悪趣味、下品、人でなし! 何あの乗り物、奴隷に乗るって何のつもり? 乗るなら普通に馬あたりにしとけば良いのよ、何を考えて人間に乗ってるのよあいつら、あー気に入らない。こんな奴らのせいで私があんな目に……。こんな奴らの応対させられてるお母さんが可愛そうだよ」

 

「そうね、海軍大将にまでなって、やる事がこんな奴らの護衛なんて。そんなの全然割りに合わないわ。しかもいつ奴隷にされるか分からないんだから。はぁ、お母様は本当に大変なのね」

 

 見れば見る程、お母さんの苦労が知れて頭が痛くなる。何なのよこの人でなし共、どいつもこいつも目を付けたら即奴隷にして、こんな奴らのせいで奴隷商風情も叩き潰せないなんて、本当に不愉快。

 

「奴隷商ども、纏めて玩具にしてやろうかしら」

 

「そうね、良い案だわ。でも今度にしておきなさい、シュガー特務兵。アルメリア大将が困るもの」

 

「はーい、はぁぁ」

 

 お姉ちゃんと2人だと、ウタやブルックの前だと話せない事もガンガン話せて気が楽。あの2人は善人だから、根本的に気を許せない。私達は、結局善人じゃ無いから。

 

(はぁ、善人って鬱陶しい。自分は生きても良いって面してるのが最高に気に入らない。それで私は生きてちゃ駄目なんでしょ? 死ねば良いのに、天竜人も死ね)

 

 移動する度に、人々は続々とひれ伏して行く。この感覚、気に入らないけどちょっとだけ面白いのだ。人混みが切り開かれて、道が出来て行くこの感じ。天竜人のせいって言うのが根本的に不快だけど。そして、見聞色にビビッと来た。私達2人だけに向けた、お母さんからの連絡。

 

「シュガー、お願いします」

 

「はーい、お母さん」

 

 見聞色を通じて聞こえたお母さんの声に従って、私と姉さんは移動する。そして

 

「そこのお前、わちしの妻にするえー」

 

「えっ嘘、そんな」

 

「おめでとうございます、ただちに手続きを」

 

「えっあっ嫌『玩具になりなさい』あ……」

 

「あれー、わちしは何してたんだえ? まあ良いえ、さっさと行くえー」

 

「はい、分かりました」

 

 天竜人がCP0を使って妻にしようとした子を、ギリギリの所で玩具に変えた。これをやると私も玩具の情報を忘れてしまうから、事前に情報タグを付けて精査してから実行。天竜人の一団が去ったのを確認して、事前に用意したタグに基づいて玩具化を解く。

 

「はっ、わ、私は」

 

「心配しないで、早く帰りなよ」

 

「す、すみません、もしかして助けてくれたんですか? ど、どうか、お礼を」

 

「お礼は良いから早く帰りなさい。私達は急いでいるもの」

 

 引き止めるその子を制止して、私達はまた隠れて天竜人の一団について行く。そうしながら、何度も奴隷にされたり、妻にされたりした人を玩具に変えて救出して行った。そして、目的のヒューマンショップ。

 

「よーし、今日も沢山買うえー」

 

 

 

 

 そして競りが始まった。吐き気のしそうな程不愉快な競り。気に入らない。最低な思い出が蘇る。潰したい。でも潰せない。

 

「2億ベリー、2億ベリーで買うえー」

 

「2億ベリーです、2億ベリーはいらっしゃいますか? 居ません! 購入者はマリガンド聖に決まりましたー!」

 

 マリガンド聖は、奴隷が出品される度次々と手を挙げると、とんでも無い高額で買い付けて行く。こうして買った全員がマリガンド聖の玩具にされるのだ。悔しい。気に入らない。惨めな昔よりずっと強くなったのに、この程度のゴミも掃除出来ないんだから。

 そして、競りも終盤。

 

「はっ? 冗談でしょう……、な何でですか」

 

 お母さんが、確かにそう言ったのが聞こえた。ど、どう言う意味で。

 

「お前さっきからうるさいえー! そんなにうるさいなら責任取ってさっさと奴隷になるえー」

 

「申し訳ありません、マリガンド聖。ですが、この場で私を奴隷にするとマリガンド聖は確実に死ぬかと」

 

「何だえ?」

 

 頭を下げるお母さん。そして、見聞色を通じてその事を言った。驚いたその足で、私達は脱出を始める。間も無く、次の競りが来る。

 

「今度の競りは超大物が来たぞぉー! 皆様お待ちかねぇ、元ロジャー海賊団副船長、冥王、シルバーズ・レイリーィィィ!」

 

「10億えー、10億で買うえー」

 

「いや、20億だっ」

 

「30億で買ったぁ!」

 

(何でこんな所にレイリーが居るのよおぉぉ!??)

 

 逃げるのに必死で何も考えていられない。お姉ちゃんに抱かれて全力逃走。わき目も振らずに逃げ続ける。こんなのもう無理じゃん。

 

(はぁ、最悪じゃない、何のつもりなのよあのレイリー!)

 

 

 

 

「50億えー!」

 

「50億、50億は居ますかー? 居ませんか? 、チャンスですよー! 居ません! シルバーズ・レイリーの購入者はマリガンド聖に決定しましたー!」

 

「やったえー! 海賊王の船員を奴隷にしてやったえー!」

 

 呑気に喜んでいるマリガンド聖。呑気過ぎて羨ましい。私はそれどころじゃ無い。

 

(レイリーが、奴隷オークションに出た。そうなると、間違い無く)

 

「何のつもりですか、シルバーズ・レイリー」

 

「ああ、貴女が例の海軍大将アルメリア・ファイスだね。噂通りの美人じゃ無いか」

 

「煩い、今の私は余裕が無いんです。何のつもりですか」

 

「何、そろそろ持ち金が尽きそうでね、ちょっと稼いで来ようかと……」

 

「はぁ、この場では休戦協定、と行きませんか?」

 

「おや、海軍の強硬派も案外冷静と見える。まあ良いさ。その要求は飲んであげよう」

 

 一安心する。このゴミのような荷物を背負ってレイリーの相手は不可能な上に、後ろにはモネとシュガーも居る。ここでは到底戦えない。

 

「さぁ、さっさとわちしの所にくるえー、レイリーの乗り心地はどんなだえー!」

 

「ふっ、そうだな。ではそうさせて貰おう」

 

「おい、さっさと行け、そら!」

 

 監視役に連れられて、マリガンド聖の元に移動させられるレイリー。私は思った。もう逃げよう。

 

「マリガンド聖、至急逃げましょう」

 

「はっ? 何言うえ、ふざけるんじゃ無いえ『ドゴォォォォォォォォンンン!?』わびゃぁぁっ」

 

 いきなり起きた大爆発のような衝撃。一瞬でヒューマンショップがボロボロになる。レイリーに着いていた監視員は呆気なく天上の彼方へ吹っ飛んで行った。あーダメみたいですね。

 

「逃げますよマリガンド聖! 御身の安全が最優先です!」

 

「とんでも無いえ! 折角買った奴隷を『逃げますよ』んびょぉぉぇっ」

 

 マリガンド聖を連れて強引に逃走。奴隷の事はもう忘れる。後はヒューマンショップがズタズタに壊されて、仲買人達が次々と天空の向こうまで吹っ飛んで行くのを遠目に見るだけだった。

 

 

 

 

「この無能っ、おまえのせいで大損害なんだえ! 折角買った奴隷に全部逃げられたえ、どうしてくれるんだえ! もう良いえ、お前が奴隷になるんだえ、いや、奴隷だけじゃ無いえ、わちしの奴隷兼妻として一生苦しめてやるえー!」

 

「申し訳ありません、マリガンド聖。シルバーズ・レイリーに狙われては、生き延びただけで上等かと」

 

「うるさいえー! 良いから奴隷になるんだえっ、ごちゃごちゃ言うなえっ! そら、さっさと焼印押すえ、マリージョアに連れて行くんだえ!」

 

(はぁ……ゴミが。下等生物の癖に)

 

 そう思わずには居られない。天竜人は、本当に愚鈍な下等生物のようだ。絶対に生かしてはおけない。

 

(私を奴隷にすると言うのなら、全力を以って殲滅しますよ?)

 

 本当にどうしようも無くなったら、そうする。でも、そこまではまだ言わない。まだ策はある。

 

「んっ、この、サイファーポール、どこ行ったえ? 早く来るえー! さっさとこの使えない屑に焼印押すんだえ!」

 

「はい、分かりました。赫鳥、お前はやり過ぎた。ここまでだ。己の所業を後悔しろ」

 

「はい」

 

 粛々とサイファーポールの手に繋がれる振りをする。海楼石の手錠がかけられる、その寸前

 

 

 

 

「お母さん!」

 

「んっ? わちしは何してたんだえー? はぁ、今日は疲れたえ、もう帰るえ」

 

「はっ分かりました。よし、帰るぞ」

 

(玩具になるって、こんな感じなんですね……)

 

 原作でも分かっていたけど、奇妙な感じだ。複雑な思いでは有る。本来は、能力者であるシュガー自身も玩具にした対象を忘却してしまう。だから、今はタグを付けて人形ごとに記録を残す事で運用している。短時間で元に戻すべき玩具には特定のタグを付けると言った具合。タグの色までは忘れないで済む。そして

 

「ああ、御免なさい、お母さん」

 

「ありがとう。よく頑張りましたね、シュガー」

 

「は、はい……」

 

「私は直ぐに戻ります。2人とも今日の役目は終わりです。マリンフォードに帰還しなさい」

 

「ええ、分かったわ。行くわよシュガー」

 

「うん、お姉ちゃん」

 

 お母さんは翼を広げ、高速で一気に飛び立って行った。そんなお母さんを羨ましいって思う。あんなに早く、世界のどこまでも好き放題に飛べるんだから。私なんかより、ずっと。

 

 そして、そう思っていたから、到底信じられなかった。数日後に起きた、起きてしまった事が。

 

「ルフィが天竜人を殴った? その上ウタを連れて逃走したと?」

 

「ああ、その通りだ。赫鳥もすぐに来い」

 

「分かりました、元帥閣下」




これより、逃亡海兵編を開始する!

ちなみにこの逃亡海兵編、合計3ルートあります。
1.虐殺ルート:ルフィもウタも殺害する。サボとエースが離反、青雉のやる気が失せる。
2.ドラゴン、お前面倒見ろルート:殺した事にして2人を革命軍に連れて行き、ドラゴンの所にぶち込んで強制的に面倒見させる。このルートだと2年間死んだ事にして潜伏、2年後から革命始まります
3.馬鹿言うなルート:ルフィが天竜人に手を出すギリギリの所で締める。主人公必死のとりなしでウタの奴隷化は免れ、ルフィは反省文書かされた上一週間飯抜き。その後も3兄弟が問題起こしかける度に事前に察知して必死にリカバリーし続けるルート。一番安心だけどつまらない。そして主人公にとっては一番の地獄。

因みに今回は虐殺ルートです。基本ルートは虐殺ルートで進行し、もし派生すると残り2つに行きます。

…4.悪ノリルート:主人公も一緒になって天竜人を殴り散らかす。その後エースとサボ、ガープとゼファー先生、序でにヒグマを味方につけて残りの海軍と大決戦。あかん、マリンフォード壊れる。その後更にドラゴンと組んで新世界政府、そして武力部門NEO海軍を設立。海賊の根絶、天竜人の排除、腐敗海兵の粛正、真の正義の樹立を掲げて、全世界を巻き込んで大戦争を…あかん、世界終わる
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