大砲鳥は凶気を運ぶ 方針:海賊絶許   作:Delphinus

19 / 29
殺戮 ウォーターセブン

 

 

 全ては順調に行くと思っていた。4皇を除く脅威はほぼ排除に成功、4皇の殲滅作戦についても、間もなく用意が整う。そう思って、私は戦力の強化を急いでいた。

 

「ルフィ大尉が、シャボンディ諸島で天竜人を殴ったと? ウタ少佐を庇って」

 

「ああ、その通りだ」

 

 私が来たときには既に、執務室は重々しい雰囲気に包まれていた。

 

(この展開は、ウタを引き取った時から予想済みでした)

 

 いつも通り行われたシャボンディ諸島でのライブの帰り。その日、ウタは天竜人に奴隷として狙われた。ルフィはそれを殴って掣肘し、そして2人で逃亡した。これが、その事件の概要。

 

「成る程、では追いましょうか?」

 

「いや、黄猿がもう動いている、これを機に四皇が動き出す可能性もある、守りを疎かには出来ん。赫鳥は待機し、継続して対四皇計画を進めろ」

 

「分かりました」

 

 私は一礼すると、一旦執務室を出た。今後の事を考える。

 

(ルフィは、やはり消すべきようです)

 

(面倒なのは……ガープ、それにエースとサボ)

 

 

 

 

 対四皇の作戦を準備する間、片手間にルフィ追撃の情報も集めた。ルフィの追撃は失敗続きのようだ。シャボンディ諸島でルフィを取り逃がしてから、ずっと、何度も何度も失敗し続けている。それこそ原作の様に。

 

(この状況も想定済みですが……はぁ、主人公を甘く見過ぎでは有りませんか?)

 

「これ以上、損害ばかり重ねてもしょうがないのでは無いでしょうか。ルフィの居場所は分かります。直ぐにでも仕留めて来ましょうか?」

 

「それに、あまり放っておくとアホウドリの動きを止められませんよ。センゴク元帥」

 

「そうだな……、確かにその通りだ」

 

 アホウドリ、今の状況だとあいつが一番厄介だ。もしルフィとの接触を許すと更に面倒になる。

 

(トリトリの実モデルアルバトロスの能力者、新聞王モルガンです。この状況だと、あいつが一番面倒い)

 

「いや、ワシは構わんわい」

 

「ガープ、そうか、分かった。頼めるか、赫鳥」

 

「分かりました、直ぐに行ってきます。ルフィ元大尉とウタ元少佐は現在ウォーターセブンに居ます。対四皇作戦の兼ね合いも有る以上、早い内に仕留めて来ます」

 

「ファイス」

 

「はい、ガープ中将」

 

「ルフィと、ウタを、ワシの孫を頼むぞ」

 

「分かりました、承ります」

 

 センゴク元帥と、ガープ中将に礼を言った。部屋を退出する。急がなければと、そう思っていたのだけど。

 

「……」

 

「エース大佐、サボ大佐、どうしましたか」

 

「ルフィを、ウタを助けられないのか?」

 

「事ここに至っては、最早不可能でしょう。話はそれだけですか?」

 

「ウタはっ、あんたの娘なんだろ! どうして娘を助けられないんだよ! アンタそれでも母親なのかよ!?」

 

「私はウタの母親ではありませんよ。ウタはただの監視対象です。手元に置いたのはウタウタの実の能力者を監視する為、血縁関係も有りません。親子関係など、ウタが勝手に言い出しただけです」

 

「て、てめえぇっ」

 

「よせ、待てよ。待つんだエース」

 

 激昂するエース。サボがそれを掣肘する。そして、

 

「アルメリア大将、本当に助ける方法が無いんですか? 本当の、本当に。それこそ追撃が失敗して、革命軍に身柄を奪われたとかでも良いんです。何か、方法は」

 

「有りませんよ。では」

 

「なっ、そんな事は!」

 

「待て、待てよ赫鳥! 巫山戯んじゃねぇ! 何てめえの娘を殺そうとしてんだよ! ウタはお前を信じてるんだぞ!」

 

「ですが敵です。世界の敵である以上、殺されるより先に殺します。でなければ殺されるだけです。私は死にたく無いので」

 

 まだ何か言うエースの言葉を、私の思考は遮断する。羽を広げ、飛び立つ。目標はウォーターセブン。

 

(本当の所、助ける方法はある)

 

 シュガーの、ホビホビの実の能力でルフィとウタを玩具にすれば良い。その上で、忘れても良いよう記録を残して保管する。ざっと2年くらい待てば良いだろう。2年間の間に四皇さえ片付ければ、天竜人による体制を倒壊させる準備が整う。そうすれば、ルフィとウタも再び日の目を浴びても良い時が来る。

 

(でも、関係ありません)

 

「殺さなければ、殺されるだけです」

 

「おやおや、殺伐としていらっしゃいますねぇ」

 

「ブルックですか。何の用です?」

 

「いえ、何でも」

 

 マリンフォードから飛び立つ寸前、いつの間にか来ていたブルックが言う。ブルックは

 

「しかし、骨肉の争いなどする物では有りませんよ。ましてや母親が娘を手にかけるなど」

 

「その娘は世界最悪の犯罪者です。殺すしか有りません」

 

「ヨホホ、それは厳しいですねぇ。ですが」

 

「私を止めますか?」

 

「いいえ、止めませんよお嬢さん。止めませんとも」

 

「そうですか。ではさようなら」

 

 私はまた翼を開いた。一気に飛び立つ。

 

「ですが、中々虚しい物です」

 

 

 

 

 ウォーターセブン近辺で羽を閉じる。時間は真夜中。

 

(やはり狙撃しますか? ……ウォーターセブンは狭い上に民間人が多い。狙撃すると、少し面倒ですね。それに、例え接近戦でも私が有利です)

 

 例え服装を変えた所で、私の身長の313cmだとあっさり素性がバレる。だから変装は無しで、人目を避けながら移動するだけに留める。見聞色を使って、敵の居場所は精査済み。

 

「……」

 

 夜陰に紛れて移動する。ナイフシースからナイフを取り出す。そして見つけ出す。

 

「見つけた、ルフィ」

 

 ルフィの居場所を目視でも確認。想定通り、フランキーハウスの様だ。フランキーハウス……面倒な場所ですが。

 

「フランキー毎殺す。最低最悪の犯罪者を匿うのです。死ぬ覚悟はある筈」

 

 接近する。そして、

 

「死ね『まあ待ちな』誰です、貴方」

 

 突入しようとして、しかしナイフを止める奴。面倒い、これは、フランキーですか。このくらいは想定内です。

 

「内の客人に手ぇ出してんじゃねぇよ。何のつもりだ『知るか、死ね』全く、最低だなぁお前」

 

「鬱陶しい。死ね、死ねよ」

 

 ナイフと拳の応酬。例え相手がサイボーグでも、パワーではこちらが上。押し切れる。赤熱化したナイフを突きつけ、そして

 

「クソ、やっぱり止められねぇか」

 

「消えろ『待ちやがれ』出てきましたか、ルフィ」

 

 シキの持っていたもう一振りの刀、木枯らし。それを私に向けてナイフを抑え込もうとするルフィ。

 

「フランキーに何してやがる。お前の目的は俺なんだろうが」

 

「好都合です、死ね『待て、止まれよ!』死ねよ、ルフィ」

 

「どうして自分の娘を殺そうとしやがる! ウタはお前の家族なんだろ!」

 

「知りません、死ね」

 

「ふざけやがって、この野郎!」

 

(2対1……面倒ですね。それに、時間をかけると鬱陶しいのが来る)

 

「死ねよ、ゴミ共。終わらせてあげますよ」

 

 ナイフに覇王色と武装色を纏わせる。更に核熱を打ち込んで高熱化、そのまま全速力で突撃。策も何も無い、ただの滅多刺し。

 

「く、ぐぁぁっ」

 

「ふ、フランキーいぃ!」

 

「死ねよ」

 

 受け止めようとした木枯らしが溶ける。溶解した木枯らしをこちらに投げ付けて、更に格闘戦を仕掛けて来るルフィ。溶けて爆発したフランキーの肉体からナイフを引き抜き、投げられた木枯らしを斬り払う。そのまま拳ごと、ナイフで何度も何度も何度もズタズタに引き裂いた。

 

「うぁぁぁっ、に、逃げてくれウタ『死ね』ぁぁぁ……」

 

「ルフィ、思っていたよりあっさり倒れましたね。はぁ、良かった」

 

 正直、いつ横槍が入るか気が気で無かった。グチャグチャに破壊し尽くされたルフィの死体を見ながら、始末出来て安心する。

 

 

 

 

「お母さん、ここに、来て『死ね』きゃああっぁ、ルフィいいいっッッッ」

 

 突入したフランキーハウスの中、ウタに向けてルフィの首を投げつける。驚愕するウタをルフィの生首に仕込んだ爆弾で焼き尽くす。悪魔で普通の爆弾だ。核爆弾だと後処理か面倒。

 

「なんで、何でこんなっぁぁっ……嫌、だ、お母ぁ、さん」

 

「おや、嫌ですか? それは良かった」

 

 そのままナイフでウタの全身をズタズタになるまで引き裂いた。最早原型を留めない程グチャグチャに損壊したウタの身体。ウタも、始末そのものはあっさりだった。安心する。

 

「死になさいウタ。貴女は世界の敵。はぁ、主人公の相手は面倒です。殺せて良かった。……可能な限り証拠を消して、早い内に撤退しましょう」

 

 余り物証が残っていると例のモルガンに気取られる。そうなったら鬱陶しい。証拠は可能な限り消して、ウォーターセブンを脱出する。

 

「世界政府に逆らう者には死を」

 

 

 

 

 帰還したマリンフォードは、重苦しい雰囲気に包まれていた。その様子を私は気にせず進む。そして、

 

「何故ルフィを、ウタまでも殺した!」

 

「必要だから殺しました。彼等は世界の敵です」

 

 振りかざされた拳を、ナイフで必死に抑え込んだ。その後は何も考えられなかった。ガープ中将を相手に考え事をしている余裕なんて無い。只管ナイフで切り裂き続ける。私にはそれだけしか出来ない。でも

 

「そこまでだ、ガープ」

 

「センゴク、貴様」

 

「その辺りにしておけ、ファイス嬢ちゃん」

 

「何です青雉!」

 

 青雉が私を止める。凍りつかせる冷気を、高熱の炎が強引に遮る。熱と冷気が鍔迫り合う。

 

「何のつもりです」

 

「嬢ちゃんこそ海軍大将だろうが! ここは正義のお膝元なんだぞ、ここを何処だと思ってる、誰を相手に何をしてる!」

 

「成る程……」

 

 ナイフを止める。ガープ中将は、センゴク元帥と何か言い合っている。何を言っているのか、もう気にすることも出来なかった。私は酷く憔悴している。

 

「なぁ、オハラでサウロ中将を殺したの、嬢ちゃんか? サウロ中将だけじゃ無い、逃された子供も殺したな?」

 

「はい、私がサウロ中将を殺しました。逃された子供も」

 

「……」

 

「彼等は、オハラの学者は世界の禁忌に触れました。かつての知識を得て、世界を破壊しようとした連中。殺してはならなかったのですか?」

 

「……そうか」

 

「私は、何か間違った事をしましたか? したのでしょうね。でも、それでも構いません」

 

「この世界は見かけよりずっと脆弱です。脆弱な世界を覆す者は、誰であっても生かしてはおけない。私は死にたく無いんです」

 

 青雉は、それ以上何も言わなかった。元帥に詳細を報告した後、その場は一旦解散になった。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。