私はゴール・D・ロジャーの処刑に立ち会わなかった。原作の知識を持つ私がロジャーに接触すると、見聞色を通じて私の情報が露呈するのではないか? ロジャーが想定外の行動、それこそ力尽くでも縛を解いて逃走する可能性があるのでは無いかと、そう警戒していた。だから処刑の情報は、電伝虫を通じて外から見るに留める。そして、処刑が終わると
「少尉、すみません。ローグタウンに行ってきます」
「は? ローグタウンに? ロジャーはもう死んだのに、今からですか?」
「はい、その通りです。目的は、ロジャー海賊団船員の殲滅です」
ローグタウンから1000km沖合、空中に浮かんで布陣。奴の出現を待ちながらフレームランチャーを起動。砲身が伸びるのを確認して、エネルギーをチャージ。そのまま射撃体勢で待機する。
「……」
その状態で数時間待った。空中でじっと静止し、そして
「見つけた、死ねぇ! 終末の火炎!」
標的のシャンクスを捕捉。海上を漕ぎ出した小舟だ。見聞色の阻害を展開し、そして砲撃開始。チャージ済みのフレームランチャーを最大出力で放射した。赤い炎を超えて、青色に、更には真っ白に成り果てた核の砲撃。これが私の最大の必殺技。題して終末の火炎。
覇気をも纏った圧倒的な破滅の炎が、水平線の遥か先へと向かって放射され続ける。奴の状況を見聞色で確認する。厄介な見聞色殺しは……まだ覚えていない、なら行けます!
「シャンクス、殺した。次はバギー」
見聞色でシャンクスの死亡を確認した後、バギーの始末に移る。八咫烏の翼をはためかせて市街地へ向けて高速飛行。飛行の途上、一応目視でもシャンクスの死体を確認しておく。無惨に焼き尽くされた赤髪と、破壊し尽くされた小舟。核汚染は無い、大丈夫。大尉にも命じて赤髪の遺体を確認させながら、ローグタウンへ。
「バギー、見つけた。市街地にいる、面倒ですね」
見聞色でバギーを捕捉、ローグタウンの市街地内だ。人が沢山いる場所での狙撃は難しい。
「狙撃すれば、誰か巻き込まれる可能性が有る。それにこちらの情報が、目撃した市民を通して露呈しかねない。バギーは……人気の無い場所に引きずり出して始末を」
別に見縊る訳ではありませんが、バギーは私より弱い。接近戦でも私の方が有利。
「接近戦は趣味じゃありませんが……姿を隠して接近、殲滅を」
ローグタウン付近、人気の無い場所を選んで無音着陸。そのまま服装を市民の物に変える。海軍制式の正義コートも脱いで普通のシャツにした。髪色も目の色も偽装して、着替えが完了次第に移動を開始。市街地まで歩いて行く。
「すみません、そのフルーツ下さい」
「はいよ、嬢ちゃん」
移動の途中、適当な屋台に寄ってフルーツを買っておいた。二つ買って一つは食べる。普通に美味しい。そしてそのまま見聞色を辿り、
(見つけました、バギー)
「ああ、すみません。その聞きたい事があって」
「ん? 何だぁアンタ」
「貴方は、その見た目、もしかしてピエロなんでしょうか? じ、実は、今ちょっと手品が見たいんです。少しだけど金は出します。お願いです。手品を見せてくれませんか? こっちに来て手品を見せて欲しいんです」
「へえぇ、まぁ良いか。おう、手品くらい構わねぇよ。あんたみたいな可愛い子の為ならな」
「わぁー凄いです! ベリー追加しちゃいます!」
「へっ、有難うよ。まぁ俺様にかかれば手品なんてこんな物さ」
「あ、後、ピエロさんの名前教えてくれませんか? それに、良ければサインも欲しいです」
「おうよ、俺様の名前は道化のバギーってんだ、覚えとけ。後、サインはこれだ。好きに持って行きな」
「わああ、有難うございます、宝物にします!」
(バギーのサイン、割と真剣に嬉しい)
まさか本当にバギーのサインが貰えるなんて、原作の重要人物からサインを貰う、転生者の醍醐味を味わえる瞬間。そして、サインを仕舞い込んだ後、密かに懐のフルーツを確かめる。
「それと、アンタの名前聞いても良いか? 覚えときたくなってな」
「あっ私ですか? 私は」
(今!)
油断は誘えた。今仕掛ける。道化のバギーが持つバラバラの実は斬撃に耐性がある。だから燃やし尽くす。まずは足を燃やして動きを潰し、そして全身に普通の炎を打ち込んだ。市街地で核を使うのは不味いでしょうから。
「私はアルメリア・ファイスです。死ね」
「お、お前、まさかグギャァアァァぁぁぁ!??」
バギーが燃やし尽くされた後、私は急いで大尉達を呼んだ。フルーツを確認する。ふふ、これは賭けでしたが、どうやら思ったより上手くいったようです。
「バラバラの実、確かに頂きました。大尉達も呼んで、遺体は早急に処理しなければ。市民に見つかると面倒です」
燃やし尽くした後、早急に遺体を処理し撤退する。
(はぁ、それにしても、ふふ、道化のバギーのサイン、貰っちゃいました)
サイン、本当に嬉しかった。まぁ、それはそれとして殺すのですが。
「海賊に生かしておく理由は有りません」
スゴォォォン! 今日も海軍本部に凄まじい轟音か響いた。知らない奴には事故でも起きたみたいに聞こえるかもしれないが、海軍の英雄ガープが実施する訓練は普段からこんな物だ。海軍少佐アルメリア・ファイスは何百メートルも殴り飛ばされて無惨にぶっ倒れてしまった。
「ぐええぇ、うぉいぃぃぃ♡♡、無理ですうぅぅ」
「全く、まるでなっとらんぞ。少しは覇気ぐらい使わんか」
「覇気とか無理ですうぅ、もうらめえぇぇ、死ぬうぅぅ♡♡」
そして私は死んだ。今日も駄目でした、はい。
「ふん、相変わらずなっとらん。もう少しでも練度を高めればな」
「どうだ、ガープ。アルメリア少佐は」
「おおセンゴクか、そうだなぁ……」
大砲鳥のアルメリア・ファイス。将来的には将官入りも有り得るとされる海軍の有望株、一般的にはそう見なされているが。
「やはり、どうにもチグハグさが目立つ。過剰な迄の素質に対して練度が全く見合っとらん。覇気も能力もはっきり言って異常だ。覇王色、武装色、見聞色、全てが高水準。下手をすればロジャーと互角……いや、ロジャーすら超えかねん。だが、それに対して練度が欠落しとる」
「ロジャーと戦えば話にならんだろうな。まぁだからこそ、こうして鍛えようとしておるんだが」
「そうか……やはりそう思うか」
(それに、八咫烏の能力は……)
更に、彼女の能力は既に覚醒している。本来なら地力が足りないにも関わらず、だ。ゾオン系の覚醒は、本来耐久力と回復力を異常なまでに強化する物。だが、
「ファイス少佐の覚醒は、機動力と火力を過剰なまでに高めている。耐久力は今一つ」
「ああ、そこもだな。ゾオン系でありながら打たれ弱さが気になる。その分と言っては何だが、攻撃力は異常な程だ」
殺戮と殲滅に特化した、いや、特化し過ぎた存在。殺す為にあるような能力。それが不死鳥と対になるとも言われる太陽の遣い手、八咫烏の力だ。
圧倒的な機動力で世界を自在に飛び回り、一度浴びれば生涯癒える事の無い、破滅の炎を撒き散らす。彼女は既に島一つ焼き滅ぼす程の火力を持っている。現状でも既に圧倒的だが、恐らくは更に成長するだろう。どこまで行くのか予想がつかない。
「つい先日も、ローグタウンでロジャー海賊団の残党を始末したと報告が入った。バラバラの実も回収し、今はここの本部に収めてある」
「そうか、手柄を立ておったか……。なら気長に見ても良いんじゃないか? まだ若いんだ、技量の無さも、精神の未熟さも仕方がない。その内、時間が経てば立派な将官に成長するかも知れんぞ?」
「まぁそうだな。その通りなんだろうガープ」
彼女の事は、長い目で見ておくのが良いだろう。結論から言えばそうなる。不安定だが、素質は間違い無くあるのだ。
しかし、ガープは難しい顔をしたままだ。はっきり言えば気に入らないのだ。年少であるシャンクスとバギーだけを狙って屠った事が。
ガープとロジャー海賊団の間には浅からぬ因縁がある。ロジャー海賊団の子供、シャンクスとバギーの事も当然見知っている。若い芽を摘める内に摘む、確かに卑怯なやり方かもしれない。
(だが、海軍として間違った事はしていない。海賊は倒せる内に倒すべき、それは確かにその通りだ)
「ともあれ彼女については、まず地力の強化という事かな」
「そう言う事になるか、訓練はこれからも継続するぞ。センゴク」
(それに、気に入らない事はもう一つあるのだろう)
彼女は、故郷を裏切った。故郷を裏切り、家族を切り捨て、仲間を皆殺しにして海軍に入ったのだ。そのせいで西の海の辺境、かつてディアブロ海賊団の縄張りだった非加盟国の一帯には、マフィアが再び跳梁し、貧困化が加速。天上金を巡る争いも再発した。
その事を、彼女は何とも思っていない。海賊の元で平和を得るより、海賊の居ない地獄の方がマシだ。彼女は本気でそう思っている節がある。未熟と言えば、その通りなのだろうが。
「……中々に厄介な物だ」