大砲鳥は凶気を運ぶ 方針:海賊絶許   作:Delphinus

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殺戮の後 マリンフォード

「四皇の追い落とし……間も無く準備が整います」

 

「標的は何処が良いでしょう。ワノ国、カイドウを消すか」

 

 ルフィを始末した後も、私は対四皇作戦の準備を継続する事になった。そして間も無く、その準備も整う。

 

(ワノ国にバスターコールをかけて殲滅する。しかしその間、他の四皇も抑えなければならない)

 

「仮にワノ国とすると……百獣海賊団は面倒。ですが、赤鞘も大概面倒ですね」

 

 ワノ国を落とすとなると、最も厄介なのは当然ながら百獣海賊団。だが、赤鞘もかなり厄介な相手だ。赤鞘を潰す方法……。

 

「赤鞘の本隊が現れるのは今から2年後。良いでしょう」

 

 赤鞘ごと、ワノ国を殲滅してやる。そう決めて、しかし

 

「まずはシャドウ海賊団です。一番脆弱な所から落とす」

 

 

 

 

(現在、四皇の地位を占めるのは4つの海賊団。一つは白ひげ海賊団、一つはビッグマム海賊団、一つは百獣海賊団。そして、最後は)

 

「よお、帰ったぜぇファイス大将」

 

「お帰りなさいヒグマ、シャドウ海賊団のバスターコール、どうでしたか?」

 

「確かに壊滅させたぜ。ちょっとばっかし面倒臭かったがなぁ、所詮は泡沫四皇に毛が生えた程度の奴らだ。本物の四皇に比べれば話にならねぇよ。赤犬と組めば安いもんだ」

 

「分かりました。一先ずは休んでおいて下さい。後で元帥閣下にも詳細な報告を」

 

「はいよ、んじゃ、遠慮無く休ませて貰うかねぇ」

 

 赤犬と緋熊が連携して撃破したシャドウ海賊団。かつてモリアが持っていたカゲカゲの実を食べた能力者、シャトール・キリス率いる新しい四皇の海賊団となる。無数に居た泡沫四皇の中から成り上がった新興の存在、それが泡沫四皇の規格を超えて強大化したもの。

 しかし、それでも赤犬と緋熊には全く及ばなかったらしい。これも想定内の結果だけど、私は安堵した。

 

「ああそうだ、褒美と言う程では有りませんが、取って置きのワインが有ります。後で部屋に送らせますよ」

 

「おっ気が利くねぇ。じゃあな、楽しみにしとくぜ」

 

 それと、次は赤犬なんかと組ませんなよ。山賊上がりなんざ気に食わねぇってんで、一悶着あって大変だったんだよ。そう言い残して緋熊は去った。……改めて私は一考する。

 

「四皇の一角はこれであっさり落ちた。次、白ひげ海賊団は……それこそ白ひげが死んでからでも良い。狙い目は……やはりビッグマム海賊団」

 

 次の相手は、ビッグマム海賊団にする。私は密かにそう決めた。

 

「元帥とも会談して、計画の詳細を詰めましょう」

 

 

 

 

 ガタンっ、音を立ててドアを閉じる。マリンフォード本部の一室。目の前には目標通り青雉がいる。狭い部屋に2人っきり。

 

「青雉、海軍を抜けるつもりでしょう」

 

「気付いたか、赫鳥」

 

「何となくですよ。でも、何故ですか?」

 

 ドンッ、壁際に押し倒して詰問する。それが壁ドンだったって後から気付いた。

 

「理由ぐらい、分からねぇか?」

 

「自分の娘ですら殺すような奴とは、もうやって行けない?」

 

「ああ、まあそうだなぁ、そのくらい分かってんじゃねぇか」

 

「……はい。取り敢えず、今ドレスローザのワインが有るんです。飲みませんか?」

 

「……そうだな」

 

 テーブルに座りなおすと、改めて持ってきたワインの瓶を開ける。グラスに注いで、その内の一杯を差し出す。

 

「トンタッタ族の栽培するブドウを使ったワインは最高だそうですよ」

 

「トンタッタ族ねぇ、ドレスローザの小人か。まぁ良い、頂くぜ」

 

 カランッ、グラスの音が鳴る。私も飲んだ。酒は好きじゃないけど、美味しいと思っていた。

 

「それで、どうしてここまで来た」

 

「思い留まって下さい。海軍を抜けるなんて嫌です」

 

「はっ、言うもんだなぁ。自分の子供すら殺した正真正銘の下衆野郎が。毒親とかもうそう言う次元ですらねえぞ、お前」

 

「そうですね、そうなんでしょう」

 

 下衆野郎ですか。確かにそう見えるんでしょうね。でも、それでも構いませんよ。

 

「この際下衆でも構いませんよ。私はこの世界を守らなければならないのです。でなければ私が生きて生けませんから。私は死にたくないんです」

 

「そこまで言うなら何でウタを守らなかった! 巫山戯てんじゃねえぞ! ウタだけじゃねぇ、ルフィの奴まで殺しやがって! 俺はなぁ、本当にルフィの奴に期待してたんだよ。あいつは凄い奴だ、俺やお前なんかとは違って、きっと新しい時代を作るに違いねぇって、それを、お前なんかが……」

 

「すみません。殺すしか無かったんです」

 

「殺すしか無いってもう聞き飽きたんだよその台詞! 今まで何度言った? 殺すしか無いって言いながら何人殺した!」

 

「覚えていませんよ、殺した数なんてどうでも良い」

 

 私はトレーズ閣下じゃ無いのだから、殺した相手何て一々覚えていられない。抑もそれが普通なのでは無いでしょうか。

 

「だからお前は屑野郎なんだよ……。海軍大将なんだ、殺すくらいは良い。俺も散々殺して来たからな、とやかくは言えねえ。だがお前は、幾ら何でも殺し過ぎる」

 

「海賊を殺さなければ、この世界は維持できません」

 

「出来るさ、ルフィなら出来た。お前には出来ないってだけだ」

 

「それでも、構わないと言いました」

 

「もともと、ルフィもウタも敵だと考えていました。いずれ敵対する未来が分かっていたからです。この世界の全ては、ルフィの為に存在します。この世界の全てがルフィの為の引き立て役に過ぎない、ルフィこそが世界の中心なんです。貴方がルフィに期待したのもそのせい。この世界に生きる全ての善き人は、必ずルフィを好きになります。何故ならモンキー・D・ルフィこそがこの世界の主人公だからです。本来なら、ルフィは海賊になるんです」

 

「どう言う意味だ……ルフィが主人公、それに、海賊だと?」

 

「ルフィだけじゃありません。エースも海賊になります。更にはサボも革命軍に入る。エースはスペードの海賊団を率いて出航、新世界に入り、やがて白ひげの度量を容れると、白ひげ海賊団の2番船船長になる。サボは革命軍の参謀総長になります」

 

「何言ってる、それは」

 

「未来の情報です。本来ならそうなる筈の未来。ルフィはゴムゴムの実の能力者になると、シャンクスからロジャーに由来する麦わら帽子を受け継ぎ、麦わら海賊団を組織して出航。各地で仲間を加えながら強敵を撃破します。東の海でドンクリークを、アラバスタで七武海のサー・クロコダイルを、エニエスロビーでCP9を、魔の三角地帯では七武海のモリアを」

 

「シャンクスだと……誰の事だ。それに、クロコダイルとモリア? 昔お前が殺した海賊の名前だな」

 

「シャンクスは四皇です。かつてロジャー海賊団に、バギーと共に乗っていた子供。バギーもシャンクスも殺しました。2人とも、後に四皇になる事が分かっていたから」

 

「……お前、どこまで知ってる」

 

「大抵は。ルフィはシャボンディ諸島で最悪の世代に数えられ、その後黄猿に追われ、くまに飛ばされて女御島へ向かいます。七武海ボア・ハンコックを惚れさせた後、インペルダウンに侵入して大勢の囚人を解放し、その後マリンフォード頂上戦争に突入、白ひげ海賊団に与してエースを救うべく海軍と交戦します。そして、エースは赤犬によって殺され、舞台は2年後へ」

 

「……」

 

「その後も、聞きますか?」

 

「いや、ああ、もう良い」

 

「私には未来がある程度分かっていました。だから先手を打ってルフィが海賊になる可能性を削ぎ落とし、本来なら食べるであろうゴムゴムの実も剥奪した。それでも、ルフィにはまだ危険性があった。ウタを庇って、天竜人を殴って逃走する可能性が。そしてその通りになって、私は安心しました。この世界で最低最悪の危険人物を、これで漸く排除出来る」

 

「はっ、ぁぁ、お前は、お前はどこまでクズ野郎なんだよ! 最低最悪の危険人物だぁ!? 危険人物なのはむしろお前だろうが、巫山戯てんじゃねえぞ。お前は、ウタもルフィも知ってて見捨てやがったのか!」

 

「見捨てた? それは違います。ルフィもウタも生まれた時から既に深刻な脅威でした。その脅威を排除しただけです」

 

「この、畜生が……お前は天竜人以下の下衆だよ、お前みたいな最低の悪党は俺だって見た事が無え、俺も……なぁ」

 

「そうですか。ええ、そうなんでしょうね。屑でも、構わないと言いました」

 

「屑には屑なりの特権が有るんです。手段を選ばずどんな真似でも出来る。善人なんて窮屈です。一々手段を選ばなければならない。正しく、自由に生きなければならないという枷を嵌められる」

 

「私は善人では無いそうですね。では、悪党らしくやらせて頂きます」

 

「な、お前は」

 

「お願いです。行かないで下さい、青雉」

 

 ただの泣き落としだった。策もへったくれも無い、ただ抱きついて懇願するだけ。青雉のすぐ隣に寄って横から抱き着く。そのまま懇請する。

 

「私、本当は弱いんです。弱いから殺すことしか出来ない。正面から戦えない。正面からぶつかれないから和解も出来ない。殺すだけしか能が無い」

 

「私はどうしようも無い奴です。助けて下さい、お願いします。もし貴方が海軍を出奔して海賊にでもついたら、貴方を殺すしか無くなります」

 

「私の知る未来では、貴方は今から2年後までの間に、赤犬と仲違いして海軍を出奔する。その後は四皇の一つ、黒ひげ海賊団に偶然から拾われ、黒ひげ海賊団の船長の1人として海賊島ハチノスにてガープと、SWORDと交戦し、敗北します」

 

「それは嫌です。こんな未来だと、私は貴方を殺すしか無くなる。私は未来を壊したい」

 

「何なんだよ、そりゃぁ……四皇、黒ひげ? そいつは白ひげと関係有るのか?」

 

「そうですね。黒ひげは、私が知る未来の中で最低最悪の海賊です。黒ひげは幼少期白ひげによって拾われ、何年もの間白ひげ海賊団船員として活動、その後ヤミヤミの実を食べて白ひげ海賊団コックのサッチを殺害、逃走し、黒ひげ海賊団を旗揚げします。その後は追っ手のエースを撒きながらグランドラインを移動、バナロ島にてエースを下し、エースの首を手土産に世界政府に対し七武海入りを要求、マリンフォード頂上戦争の引き金を引きます。更には頂上戦争に乱入すると、白ひげの死体からグラグラの実を奪い、ヤミヤミとグラグラの二つの力を併せ持つ最強の能力者になるのです。まだ聞きますか?」

 

「……そこまで細かいのか。はぁ、もう良いさ。なら何でその黒ひげとやらはこの世界に居な……いや、お前、その黒ひげを殺したな」

 

「はい、私は黒ひげ、エドワード・ティーチがまだ小さい内に暗殺して来ました」

 

「だろうな、本当に若い芽を摘むしか能の無い奴だ」

 

 良いからそろそろ離れろ屑野郎。そう言って私を引き離す青雉。そして、言う。

 

「良いさ、海軍を出るのは思い留まってやる。だが、これもどうせ知ってるんだろ? エースからも、サボからも相談されたんだ、海軍を出たいってな」

 

「エースと、サボが」

 

「これもお前のせいだ。天竜人風情を守る為に、お前みたいな家族を奪った仇と一緒に居たく無いってんだよ。これがルフィを、ウタを殺した結果だ」

 

「私が仇ですか……成る程」

 

 予想はついていた。エースも、サボも私を憎んでいる。別にそれは構いませんが。

 

「俺も海軍を出るのは止めてやる。だが一つ要求を飲んで貰う。もうエースもサボも殺すな。これ以上若い芽を摘むんじゃない。これを飲めないなら、俺はエースとサボを連れて海軍を出る」

 

「……分かりました。もしエースやサボが海賊や革命軍になったら、両手足切り落としてインペルダウンに入れるくらいで妥協しましょう」

 

「やっぱり最低だよ、お前」

 

「おや、最低に見えますか? それは良かった」

 

「はっ、悪党が。そのくらいでルフィやウタとも妥協してやれば良かったんだよ、本当に」

 

 項垂れたように、青雉は呟く。私は何も言えなかった。

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