「ふむ、まずはビッグマム海賊団を狙うと言う訳か」
「はい、白ひげ海賊団については、それこそ白ひげが死ぬまで待っても構わないでしょう。百獣海賊団、そして和の国には、赤鞘と言うもう一つの懸念点があります。まずはビッグマム海賊団、万国を狙うのが良いと考えます」
「成る程……それでは良いだろう。対四皇作戦、最初の目的を万国攻略とする。その為に……」
元帥とも会談して、対四皇計画の詳細を詰める。四皇を消し去る為の作戦の準備。
(ルフィもウタも殺したのです。責任くらいは取りましょう。四皇は全て消す事で)
「その為にも、メガリス・システムの完成を急がなければ……」
「それと、もう一つ新たに話しておかなければならない事が出来た。次期海軍元帥の選任についてだ。私からは赤犬を推薦したのだが、世界政府側は赫鳥、お前を海軍の次期元帥として推薦している」
「世界政府が、私を元帥に。ですか?」
「その通りだ。お前はどう思う?」
「私は……その」
回答に詰まった。私が元帥になる? そんな事、そこまで深く想定していなかった。どうすれば良いのか、自分にも分からない。どうした物でしょうか。
「いきなりの話だからな、回答は後でも良い。だが答えは必ず出せ。今後の世界そのものを左右する話だ」
「分かりました、センゴク元帥」
「それと元帥への推薦に当たって、改めて五老星から接見の要望がある。具体的な日時は後で通告する」
「成る程、五老星が……。分かりました」
「シーザー、メガリス・システムの進捗はどうです? 何か問題は」
「シュロロロロロ、計画は順調さ。悪くないぜ大将」
「おや、それは良かったです」
シーザー・クラウンがMADS追放される事は事前に分かっていた。やった事は簡単、追放の機会を利用して先手を打ち、彼を身内に引き込んだと言うだけだ。クズだの何だの言われてるけど、金払いさえきっちりしておけば相応の仕事はしてくれるから、私にはベガパンクとか言う本物の狂人よりも億倍信用出来る。それにこうでもしないと、SMILEや種々の新兵器を開発してワノ国に垂れ流す可能性が高い。百獣海賊団の将来の戦力を削ぎ落とすと言う意味でも、やる価値はある。
「ああそうだ、お前のランチャーだが、ちょうどさっき再調整が済んだぞ。調整ついでに非効率なパーツもかなりあったから、全体システムを根本から見直した。これで熱効率は20%向上、更に10%の軽量化も達成だ。それと新機能として……」
「ふふ、有難うございます。貴方はベガパンクより頼りになりますね」
「はぁ、本気で言ってるのか? それ」
「言ってますよ。ベガパンクは、幾ら優秀でも頭おかしいですから。正直扱いにくいんですよ」
「それ、おれが扱いやすいって意味かよ」
明らかに気落ちするシーザー。私は思う。
「メガリスシステムの完成次第、四皇との全面戦争を開始します。可能な限り急いで下さい」
「あー分かってる、そっちは急いでるから心配すんな。それと」
「ベガパンクからだ、また来てんぞ。あんたの血統因子が欲しい、一度エッグヘッドに来てくれって」
「貴方からも断っておいて下さい。ベガパンクは信用出来ません」
「おれが信用出来るってそれどう言う意味だよ……ったく。だが、ベガパンクだって大概気になってんのさ。八咫烏の能力者は、何百年間もの間一度も現れなかった。八咫烏の実自体は確認出来ても、いざ食べた奴はどいつもこいつも燃やし尽くされて灰になっちまう。あんたは何百年ぶりに現れた八咫烏の能力者なんだからな。それに」
「あんたが気になるのは、おれも同じなんだがなぁ……全く、あんたについての研究が止められてさえいなければ」
「そう思ってるから止めたんでしょう」
「ったく、科学史に残る大発見になるぞ? あんたの実の能力、それに太陽の炎は。シュロロロロ、それこそ冗談でも何でも無くな」
「そうですか、私にはどうでも良い事です」
「シュロロロロロロ、そりゃ勿体無いねぇ。隠れちゃいるがあんた程の科学者が。よりによって海軍大将なんかと兼任して無ければな……、どうだ、今からでも研究に専念と行かねえか?」
「まあ、海賊が消えたら考えましょう」
私には転生特典を用いた学習能力がある。きっちり使えば剣士でも武道家でも、それこそ科学者にもなれると言う強力な代物。私はこれを使って大量の科学情報を学習し、科学者としての訓練を積んだ。今の私なら、科学者としてもかなりの物になる筈。
「そりゃあ残念。所で、前から用意していた新型武装についてだが」
「ええ、拝聴しましょう」
「では次の議題だ、改めて聞こう。赫鳥、次期海軍元帥候補についてはどう考える?」
「赫鳥か。奴の力はまさに怪物的と言えるな。かつての白ひげ、更にはあの海賊王ロジャーを彷彿させる。つくづく敵でなくて良かった。もし海軍に入らず、海賊になっていたらと思えば実に恐ろしい」
「彼女の血筋は入念に洗ったが、Dの一族と無関係なのも大きいだろう。今の海軍には妙にDの一族が集まっているからな」
赫鳥、或いは大砲鳥、或いは凶鳥とも称される海軍大将アルメリア・ファイス。彼女の力は海軍大将の域を完全に超えている。戦力としては四皇にすら匹敵、いや凌駕しかねない正真正銘の怪物。彼女に匹敵するのはかつての白ひげか、或いはそれこそ海賊王ロジャーくらいの物では無いかと思われる。彼女はそれ程の存在だ。力だけを見れば元帥に相応しい。
「もし海賊であれば、確実に四皇の1人として数えられていた筈だ。ただ一つ、ロジャーや白ひげ程のカリスマ性が無い事、人を動かす力に乏しいのが数少ない救いになるだろうな」
「……やはり力で言えば、海軍元帥の素質は十二分か。だがそれ以外はどうだ?」
「彼女の持つ八咫烏の能力、あれが問題だろう。あれの能力者が最後に現れたのは例の800年前。何より、八咫烏は太陽神の遣い手だ。奴は太陽の神ニカ、ジョイボーイの盟友として戦い、何度も我等と干戈を交えた存在。非常に危険な実の能力者だが、それでも構わないのか?」
「大丈夫だろう。既にニカニカの実が我々の手中にある以上、今や我々こそがジョイボーイだとも言える。ニカニカの実の能力さえあれば、例え八咫烏と雖も圧倒出来る。我等の忠実な遣い手として、せいぜい役立って貰おうではないか」
「それについ先日、彼女は義理の娘、ウタ・ファイスをモンキー・D・ルフィと共に殺害した。身内だからと情を掛けない点は元帥として見ると長所だ。だが彼女の負担も大きいだろう。ボーナスと感謝状くらいは出して謝意を示しておくべきだな」
「彼女の素行を調べても、そこまで問題は見られない。ただ、彼女の就いた天竜人の護衛任務中、不自然に奴隷が消えている部分が見受けられる。何らかの手段で奴隷を解放している可能性があるぞ」
「奴隷か……。確かに忌避すべき物だが、彼女も奴隷を嫌っているのか? ……これだけでは分からんな、まあ良い。奴隷についてはまた別途に考えよう。それより、センゴク元帥は次期元帥に赤犬を推挙しているが、これについてはどう思う?」
「赤犬、確かに悪くない。それに……」
聖地マリージョアの中心部で私は待機していた。間も無く時間が来る。そして時間が来たと同時に、その部屋に踏み込んだ。
「お久しぶりです、五老星の皆様。お呼び頂き感謝申し上げます」
「よく来たな、予定通りだ赫鳥。まずはそこに座るが良い。呼びつけた話だが、まあ言うまでも無いな。お前の海軍元帥への推薦についてだ」
「はい、分かりました」
会談の間はずっと緊張し続ける事になった。一つ一つの質問に、私は必死になって応答していた。
「それで、艦隊の編成作業はどうですか? ドン・クリーク」
「順調だぜ。もうすぐ仕上がる所だ。早くグランドラインに出たいもんだなぁ、あぁ血が疼くぜ」
ドン・クリークは現在東の海にて、ワンピース捜索を任務とする大艦隊の編成作業を行なっている。この艦隊は安全な東の海にて編成を行い、作業の完了次第東の海を出発。いずれはマリンフォードを超えて新世界に入る予定だ。とは言え、それはまだ先の話でしょうか。
「それは良かった。心配は要らないようですね」
「それで、そろそろ教えてくれねぇか。目的の物、ポーネグリフは何処にある。前ははぐらかされたが、面倒な所にあるんだってな」
「ポーネグリフは、現在四皇、百獣海賊団とビッグマム海賊団がそれぞれ所持しています」
「成る程、そりゃあ面倒だ。はぐらかす訳だぜ」
「後もう一つ知っていますが、こちらはまだ秘密です。これも面倒なので、マリンフォードに来たら改めてお話ししましょう」
「おう、良いぜ。それにしても、四皇がなぁ……実に面倒だねぇ。中々奪りがいあるじゃねぇか」
「それは結構。艦隊の準備が整ったら改めて連絡をお願いします」
「おう、任せときな。心配すんなよ、編成はもうすぐ終わる。すぐにでも出航してやるさ。ワンピース探しの旅にな」
ドン・クリークがワンピースを見つけるか否かは、私はそこまで問題にしていない。見つからないならそれでも良い。目的は二つ、ポーネグリフの確保と、原作では描写されていない問題の洗い出しだ。この世界にはもしかしたら、原作では書かれていないだけの深刻な問題が何処かに隠れているかもしれない。そうした問題をこの艦隊も使って探り当て、可能な限り解消する。
「ええ、良い航海を。では、そろそろ行きますよ大佐」
「は、はい。でも行くって何処ですかね?」
「海上レストランのバラティエ。ご存知ですか?」
「バラティエ? いや、初めて聞きますが……しかし海上レストランですか。それは楽しみですね」
「そこで食事にします。貴方も来ますか? ドン・クリーク」
「おう、いいのか? それなら遠慮なく行かせて貰うぞ。ついでだ。ギン達も連れて行くが構わないな?」
「ええ、構いません。では行きましょう」
バラティエの座標は事前に確認済み。グランドラインとは違って、座標さえ分かれば直ぐに行けるから本当に良い。航路があんなに滅茶苦茶じゃ無いのはそれだけで素晴らしいと思う。
「着きました」
「へ、へえぇ……凄い船ですね、これ」
改めてバラティエの様子を確認する。原作で見た時から変わらない、相変わらず心踊る場所だ。部下達を連れて店内に入る。
「いらっしゃいませ、お客様。12名様で、ってああ、何と言う素晴らしい方でしょう、マドモアゼル」
「私は38歳ですよ? はぁ、巫山戯も程々にしなさい。今日は食事に来ただけですから、ここで騒ぎは起こしません。席に案内をお願いします」
「ええ、お任せを、こちらです」
ヴィンスモーク・サンジ、生で見るのは初めてになる。さて、後でサイン強請りましょうか。彼に連れられて店内を移動する。大テーブルに着いた。
「メニュー表はこちらです。ではまた後で」
「ええ、ありがとう」
メニュー表を見る。皆が思い思いにメニューを確認している間、私もオーダーを考えた。私はピザにしましょうか。ピザと、それにドリアを。
「私からはピザと、それにこのドリアをお願いします。デザートにショコラケーキを」
「ええ、お任せを。お姫様」
「……お姫様扱いは程々に。私はおばさんですから」
「そんな事はございません。貴方は最高のお姫様ですよ」
「鬱陶しいですね」
「はっ、海軍大将をよりによってお姫様扱いとはなぁ、中々豪胆な物じゃねえか」
「そちらのお客様、オーダーは」
「おう、こいつを頼むぜ。それと」
「はぁ……普通に美味しいですね」
料理は普通に美味しかった。ピザもドリアも良い。
「おや、かの海軍大将にまで気に入って貰えるとは何よりだな」
「そうですね。悪くありませんよ、赫足のゼフ」
海上レストランバラティエ、オーナーである赫足のゼフは、かつての海賊にあたる。
「い、良いんですか? 大将。赫足のゼフは海賊だったんでしょう? た、逮捕しなくても」
「構いませんよ、大佐。彼はもう海賊をやめています。止めた相手に一々手を出す理由もありません」
「で、ですが……」
「ほう、どうやら逮捕したいのかね?」
問い掛けて来る赫足のゼフ。私は言う。
「そうですね。こうやって海賊活動を止めている間は見逃してあげても良いでしょう。ただ、また海賊を始めるならその限りでは有りません」
「成る程、覚えておこう。赫鳥」
赫足のゼフはそう言ってから、空になった食器を持って一旦下がって行く。私は少し考える。さて、あの事くらいは話しておきましょうか。
「味は如何でしたか? マドモアゼル」
「ええ、悪く有りませんよ。中々です。後、貴方のお名前を聞いても?」
彼は、自分の名前をサンジだと言った。十分です、私は言う。
「ではヴィンスモーク・サンジ。お父様が、ヴィンスモーク・ジャッジが貴方を探していらっしゃいます。有名になるような事、例えば賞金首になるような真似は絶対に避けなさい。そうすれば貴方も普通のコックでいられるでしょう」
「なっ、し、知っていやがるのか。それを」
「ええ、貴方のお父様とは面識が有りますので。私からは何も言わないと約束しましょう。ですが貴方が悪目立ちするようであれば、それこそ命すら危ういですよ」
「……あ、ああ、ありがとう、マドモアゼル」
「後、貴方のサインを下さい」
「はっ、いや、何だって?」
「貴方のサインを下さい」
サンジと赫足のゼフ、2人分のサインを貰った。満足感たっぷりでバラティエを出る事になった。