大砲鳥は凶気を運ぶ 方針:海賊絶許   作:Delphinus

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終末の日 万国

 バスターコールを発令した後、新世界G-1支部から100隻近くの大艦隊が出立。ビッグマム海賊団との前線に移動する。今回の作戦でビッグマム海賊団、そして万国を殲滅する。

 

「結局、ニューマリンフォードと名付ける事は有りませんでしたね」

 

 この世界の海軍本部は、今もマリンフォードのままだ。頂上戦争による壊滅が無かったから、それでも間に合っていると言う話。

 

「それにしても、元帥直々の出陣だなんて」

 

「やっぱり今回の元帥、前のセンゴク元帥とは全然違うよな。やたら攻撃的でアグレッシブと言うか」

 

「それだけこの作戦を重視しているんだろうよ。ま、当たり前だな、相手は四皇なんだ。さあ、お前らもお喋りはその辺にしとけ。作業がつっかえてんぞ」

 

「へーい」

 

「……」

 

 何人かの海兵達のお喋りが聞こえる。どうやら私は随分と攻撃的に見えるらしい。

 

「……さて、攻撃的だと良いのですが」

 

 その辺りで、見聞色にピンと来る。ビッグマム海賊団、もうこっちの作戦を掴んでいるらしい。先遣隊が接近して来た。

 

「ビッグマム海賊団は情報力に秀でている……、この状況は想定済みです。各艦、ビッグマム海賊団の先遣隊が来ました。迎撃用意」

 

「迎撃用意ぃ! ビッグマム海賊団の先鋒が来たぞぉっ、気を付けろぉ!」

 

 数十分程海路を移動すると、見えて来た。水平線を包み込む程の圧倒的な威容。ビッグマム海賊団の大艦隊。

 

(ただでさえ圧倒的だったビッグマム海賊団の艦隊。それが泡沫四皇の吸収、更には四皇を頼んで来た各地の海賊を傘下に収めた事で、途轍も無い規模に巨大化しました。恐らく、量だけなら原作の倍はあってもおかしくありません)

 

(しかし、数は多くても木偶の坊です。大半は容易に蹴散らせる筈)

 

 ここにはビッグマム海賊団だけでなく、それこそ世界中の海賊が集まっていると言える。その多くが、世界中を射程内に収めるマリンフォードからの砲撃によって四つの海や楽園から追いやられ、新世界に流入した敗残者たち。数だけ多くても戦力としては脆弱な筈だ。

 

「間も無く最後の戦いが始まります。ここには大海賊時代を象徴する凡ゆる海賊が集まっています。これを打倒すれば、大海賊時代の終結はもう間近です。皆さんの尽力を期待します。海賊王ロジャーが始めた悪しき歴史を、ここで終わらせましょう」

 

「おやおや、小娘にしては中々言うじゃ無いかい。だがセンゴク程じゃないねぇ、演説の腕は程々かい?」

 

「!? ……。シャーロット・リンリン。貴女まで来ましたか」

 

 ビッグマムまでもが先鋒に乗って来た。やがてクイーン・ママ・シャンテ号の巨体が見えてくる。どうやらビッグマム海賊団の本隊までここに来ているらしい。となると、これが好機です。

 

「メガリス・システム。始動を」

 

「了解、メガリス、始動します。標的は万国、発射開始」

 

 メガリスの発射を号令。後の事は管制要員に任せておけば良い。マストからランチャーを構える。目の前の相手に集中。

 

「マ〜ママハハハハハァ〜、小娘ぇ。お前何をする気だ?」

 

「別に何でも良いでしょう。死ね」

 

 後は、ビッグマムをここに縛り付けるだけだ。艦隊が砲撃を開始。砲撃と共に私もランチャーを発射。これは防がれる。まあ良い。

 

「青雉」

 

「はいはい、分かってる」

 

 青雉が海を凍りつかせた。海賊団の動きが一斉に止まる。取り敢えずの時間稼ぎは成功。

 

「赤犬」

 

「良いじゃろう」

 

「黄猿」

 

「は〜いはい」

 

「緋熊」

 

「あー分かってるよ。ったく」

 

「十分でしょう。艦隊は指定した軌道を避けながら、迂回して万国へ。シャーロット・リンリンを恐れると寿命を吸われます。では殲滅です」

 

 後は、何処まで時間を稼げるか。

 

 

 

 

「神避、神避り、更に神避りぃっ!」

 

「神避の中に威力が高いのを混ぜてるのかい? 面倒な真似するじゃないか緋熊ぁ!」

 

 緋熊が後ろから神避を連射。それも抑えこむビッグマム。

 

「流星火山!」

 

「八尺瓊勾玉」

 

「マーママハハハハハハァッ、大将共、相変わらず鬱陶しいじゃないか!」

 

「はぁ、面倒ですね。さっさと死ねよ死に損ない。お前の時代は終わりましたよ」

 

「勝手に終わらせてんじゃ無いよ小娘え!」

 

 4大将と私でビッグマムを包囲、全周囲から集中攻撃を繰り返しているのに、それでも奴は耐えている。はぁ、無駄にしぶとい。

 

(そろそろ、時間で……、良し来ました)

 

 どうやら、メガリスが遂に発動するようだ。メガリス・システムは、小惑星の落下による致命的な破壊を齎す自動広域破壊システム。代替可能な多数の凡人によって制御され、能力に寄らない破壊が可能な、島どころか大陸すら消し飛ばす戦略破壊兵器。これが、新しい海軍の象徴になる代物。別にズシズシの実で良い? そこはまぁ、能力に寄らないのが売りですから……。

 

「こいつは、空が落ちて来やがるだと? 何しやがった小娘」

 

「何でも良いでしょう。死ね」

 

「狙いは万国か、面倒じゃねぇか。釣り出しやがったか!」

 

 メガリスの誘導によって、万国に10数個もの小惑星が落下する。もう目視圏に入る。これで万国は終わり。

 

「これで万国は終わりです。死ね」

 

「まだ終わっちゃいないよ!」

 

 ビッグマムは一瞬の隙を突いて包囲を脱出。そのまま万国方面に移動しつつ天上遥かに飛び上がる。はっあ、いや……何で、

 

「はっえ? んな、そんなの……」

 

 そのまま、落下する隕石を強引に押し返し始めてしまった。はっ? あ、いや、何やってるんですか。何でそんな真似を、隕石は10個以上あるんですよ? ひ、1つ止めたくらいで……。

 

「そんなの、隕石を、一つ止めたくらいじゃ……何で? えっ、あ、えっ? い、いや、これは」

 

 それに、見聞色に来た。面倒な展開になった。

 

「ウォロロロロロロロロロ、海軍相手に中々苦戦してんじゃねぇかババア!」

 

「マーママハハハハハハハハ、来やがったねカイドウ。ほら、さっさと隕石を何とかしな!」

 

(カイドウ、いえ、百獣海賊団の本隊まで……)

 

 かなり面倒な状況。百獣海賊団の本隊が動いた。これで白ひげ海賊団まで動くなら、最悪の場合作戦中止もあり得る。

 

「ど、どうすれば、こんな、状況……作戦は、中止も? いや、どうして『しっかりせい元帥!』あ、赤犬……はい」

 

「この軍の指揮官はお前じゃ。お前が全軍の命を預かっちょるんじゃぞ! お前がしっかりせんでどうする!」

 

「す、すみません、赤犬。白ひげ海賊団までもが動いた場合、作戦を中止し撤退します。白ひげが動くまでは作戦を続行。目標はビッグマム海賊団と、百獣海賊団の殲滅です」

 

「それで良い、たかが死に損ないの四皇共じゃ。纏めて一捻りにしちょるわ!」

 

「メガリスシステム、次発装填準備、以降の攻撃は任せます。装填でき次第順次撃って下さい! ストーンヘンジも砲撃開始!」

 

 マリンフォードに連絡を入れた。私は考えを決める。そして言った。

 

「ここで四皇を纏めて殲滅します。短期決戦です。覚悟を決めて下さい」

 

 

 

 

 地上では海軍艦隊とビッグマム海賊団、百獣海賊団の連合艦隊が衝突。熾烈な艦隊戦が続く。そして上空では

 

「チッ、無駄にしぶとい」

 

「ウォロロロロロロ、楽しいもんだなぁ、俺より強い奴と戦うのは! 挑戦者になるのは久しぶりじゃねぇか」

 

 カイドウとは違って、私には戦いを楽しむ余裕なんか無い。あるのは死にたく無いという一念だけ。死にたく無いから大砲を向ける。殺されたく無いのだ、私は。

 

「ウザいんだよゴミ共、灰は灰に帰れよ!」

 

 翼から大量の火線を放射。これも防がれて、更に接近を許す降三世引奈落をランチャーで強引に押さえつけ、撥ね飛ばす。でもそれで対応が薄れた。皇帝剣破々刃が来る。

 

「チッ、ウザい」

 

 そちらは翼でナイフを抜いて応戦。覇王色と武装色を纏わせた核熱を放つナイフでナポレオンを押さえつける。

 

「地上の艦隊……、押されてますか」

 

 地上には、無残に焼き滅ぼされた万国の姿がある。メガリスの何発かが落着した結果。しかし、艦隊戦は向こうが優勢らしい。数で向こうが圧倒している上に、4将星、そして大看板の相手が厳しい。

 

「青雉、赤犬、黄猿、緋熊、地上に降りて艦隊の援護を。四皇は、私が一人で始末します」

 

「それで良いのかい? 艦隊が押されてるのは分かるけどネェ〜」

 

「大丈夫です、決めたんですよ。こいつらの相手、そろそろ飽きました。殺します」

 

「ほお、遂に赫鳥様の全力が拝めるって訳だねぇ、良いぜ、下の艦隊は任せときな」

 

 四大将が艦隊の支援に入る。私は向き直る。覇国を構える。

 

「一人で十分ってかい? 余裕じゃない『五月蝿い! 覇皇!』マーママハハハハ、覇国、そりゃあ面白いじゃないか、カイドウ!」

 

「ウォロロロロロロ、覇天を改良しやがったな赫鳥! やるぞババア」

 

 この覇皇は、前に使っていた覇天の改良型。覇天は覇国を再現しようとして、出来上がった中途半端な再現品でした。それを改良し、破壊力の一点を追求して高威力化しつつ、完成度を引き上げた物。国でも、海でも、天でも無く、お前達四皇を征する為の代物。

 

「覇皇!」

 

「覇海!」

 

 覇皇と覇海の激突。海が割れる程の衝撃。そして、こんな時に見聞色から連絡が来る。こんな時に限って! 

 

「報告、白ひげ海賊団に動きあり、万国海域に向けて移動中です」

 

「チッ、こんな時に面倒い。分かりました。白ひげ海賊団の動向は継続的に監視して下さい。本部に指揮権を委任します」

 

 白ひげまで動き出した。目的は、恐らくこの戦争の仲裁。気付いているのだろう、ここで仲裁出来なければ今度は自分達が滅ぼされる事に。

 

(もう時間が無い。白ひげが来るまでに、全て滅ぼしてやる)

 

「力比べしに来た訳じゃ無いんですよ!」

 

 覇皇を解除して離脱、覇海の砲撃から逃れると、ランチャーを構えて突進。狙いは、ビッグマムの方。

 

「どいつもこいつもウザいんですよ! 死ね、死ねよ、死ねよゴミ共、お前達さえ居なければ私は適当で居られるのに!」

 

 接近に成功、ランチャーから覇気と核熱を乗せたパイルバンカーを射出。この為にシーザーに改造させた特別製です。味わいなさい! 

 

「死ね、死ね、死ねよシャーロット! 、死ね死ね死ね死ねぇぇ」

 

「ギャァァァァァッッッ、ぐうぅ、小娘が『何でも良いから死ねぇ!』グギャアアアッッ」

 

「おいババアッ、クソ、やりやがる。面白えじゃねえか!」

 

 20発以上のパイルバンカーを撃ち込んだのに、奴はまだ健在。ああ、鬱陶しい! もう一度ナイフを抜く。もう良いか。核熱を纏わせるだけじゃ無い。ナイフを基点に核融合反応が始まる。こいつはどんな物質でも、素粒子でも無に還元しますよ? 

 

「そろそろ死ねよ、良いからさあ!」

 

 後は全速力で突撃、何も考えずに引き裂くだけだった。迎え撃つナポレオン毎切り潰す。ビッグマムは真っ二つに割かれて、その肉片を更にズタズタになるまで切り潰した。何もかもが無に還る。ビッグマムは、殺した。

 

「ビッグマム、殺した。次はお前です。カイドウ」

 

「ウォロロロロロロ。ババアがもう死にやがって。これからが良い所だろうに!」

 

「お前も死ねつってんだよ! 良いから死ねよ!」

 

 恐らく最大威力の攻撃が来る。これは火焔太鼓? 翼を使って背中からランチャーを自立、構える。ショット。核の砲撃と火焔の突撃が、衝突して火花を散らす。

 

「もう良いです、死ね」

 

 しかし止めきれない。接近を許す。火焔太鼓と激突。ランチャーを破損した。しょうがない、パージして投げつける。投げつけた核爆発の衝撃を利用して距離を取る。ナイフを構える。カイドウは何か言ってる気がする。もう何も聞こえない。本部から報告が来る。白ひげ海賊団の動向ですか? でも聞こえない、後で聞く。

 

「良いから、死ね、死ねよ、死ねぇ、死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ねェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェぇぇぇ!!!!!」

 

 後は、なりふり構わずナイフでズタズタに引き裂くだけだった。

 

「はぁ、はぁ、死んだ? もう死にましたか? なら、次はどいつですか」

 

 

 

 

 ビッグマム、カイドウによる海賊連合はこの海戦で壊滅し、総戦力の8割が死亡、或いは捕縛された。旧万国周辺は隕石群による破壊と核汚染により侵入不能に陥り、復旧の見込みは不明となった。

 和ノ国では百獣海賊団の崩壊に伴い、海軍機密部隊SWORDと連携した現地勢力が決起。黒炭オロチの追い落としに成功した。和ノ国の将来は比較的明るいと思われる。

 その後、白ひげの死亡後を狙って残存勢力に対しバスターコールを発令、白ひげ海賊団2代目船長エースは捕縛され、白ひげ海賊団は崩壊した。

 革命軍残党の篭るカマバッカ王国も、バスターコールを受けて崩壊。この戦いで革命軍幹部、そしてドラゴンが相次いで死亡、或いは捕縛。革命軍幹部となっていたサボは捕縛された。反政府勢力が軒並み倒れた事で、世界政府は大海賊時代の終結を宣言した。これが結果になる。

 

 

 

 

「なぁ、エース。この辺りで考え直してくれねえか? 今すぐ海賊なんかやめろ。嬢ちゃんは苛烈だが、海賊を辞めた奴には優しいからな」

 

「巫山戯んじゃねえ! 親父の死に便乗しやがって、今更何言ってやがる」

 

「汚ねえのは承知の上さ。それでも海賊は全て討ち亡ぼすってのが嬢ちゃんの判断だ」

 

 エースが出奔した時点で、彼が白ひげ海賊団に与する可能性は理解していた。エースは海軍を出奔した後、やがて白ひげ海賊団に入った。白ひげの死後には新しい船長になったらしい。バスターコールには青雉を向かわせた。青雉が私に隔意を持っているのは分かっていたから。

 

「なあ、引いてくれよエース。良いから引いておけ。引かないと殺すしか無くなるんだよ」

 

「巫山戯んじゃねえ、あんな、ルフィを、ウタを殺したような奴!」

 

「しゃあねぇ、恨むなよ。何て、言っても無理か。恨んでも良いぞ。ガープの爺さんには恩がある。投降くらいはいつでも受け付けてやる」

 

 メラメラの能力とヒエヒエの氷が激突。それでも、青雉の方が圧倒的に上だった、らしい。

 

「ぐわぁぁっ、く、くそおぉ」

 

「そのまま凍り付いとけ。じゃあな」

 

「で、これがそのあと、ですか」

 

「ああ、そうなる」

 

 辺り一面が氷の海。白ひげ海賊団の全てがここで凍り付いている。これがバスターコールの結果。

 

「それで、エースはこれですか……」

 

 凍り付いたエースの姿を見る。無残な物ですが、妙に美しさを感じる。

 

「成る程、分かりました。凍り付いた白ひげ海賊団の船員を拘束し、海軍本部に連行します。作業開始」

 

 

 

 

「つまりは、綱紀粛正っちゅう訳か」

 

「はい、海賊勢力が軒並み倒れた事で、海軍にも余裕が生まれました。これを機に、内部の組織改革を行います」

 

「つまり戦時の軍隊から、平時の軍隊へと転換する訳です。海軍全体を点検して汚職を正すと共に、問題点の洗い出し、中央から地方支部への権限移譲を急ぎます。大幅な軍縮も必要です。赤犬には、地方支部の大規模な監査をお願いしたいのです」

 

「成る程、良いじゃろう」

 

 世界政府が大海賊時代終結を宣言した後も、私達は忙しかった。平和のその後には海軍の組織改組が待っていた。各支部の汚職を正し、組織の改変を実施。これまでの戦時体制から平時体制への転換を急ぐ必要があった。

 

「青雉、海軍を出たいのですか?」

 

「ああ、まあな。俺は少し殺し過ぎた。これからはゆっくりさせて貰おうと思ってな」

 

「……分かりました。今までありがとうございました。嫌いな私なんかの為に」

 

「それと、一つ正しておく。嬢ちゃんの事、別に嫌いなんかじゃねぇぞ。良くやったな嬢ちゃん。お前のお陰で、この世界は平和になったんだ。せいぜい誇りな」

 

「……はぃ」

 

 青雉が海軍を出た後、その後も小さな事件は多かったから、忙しい日々が続いた。だから、その時が来るのはあっと言う間だった。

 

「ガープ、中将」

 

「がっはっは、もう中将でも何でも無いじゃろう、ワシはただのガープじゃ」

 

「それでも、ですよ」

 

 何年も経ったその日、私は病床のガープ元中将を見舞った。ガープ中将が引退した時は驚いた。でも、正直納得もした。

 

「モドモドの実は、使わないのですか?」

 

「いや、それは良いわい。ワシは使わん」

 

「ガープ中将、私を、憎んでいますか?」

 

「はっはっは、何かと思えばそんな事か。ワシはのう、今でも嬢ちゃんの事は許しとらん。済まんが、孫を殺されてはどうしても許せんのじゃ」

 

「……はい」

 

「それでもじゃ。良くやったな嬢ちゃん、良くこの世界を平和にしてくれた」

 

「例えそれが、恐怖によって支配された平和でも?」

 

「そうじゃ。もう血は流れとらん」

 

「……はぃ」

 

 その後、間も無くガープ中将は死んだ。ガープ中将も、センゴク元帥も、ゼファー先生も死んで、私は置いていかれた気分になった。

 

 

 

 

「ああ、そうだ大尉。そろそろ元帥を引退しようと思います」

 

「ええ、本当ですか? 元帥! 冗談ですよね、ね!?」

 

「いえ、本気ですよ」

 

 世界政府が大海賊時代終結を宣言してから70年間の間、私は元帥を務める事になった。モドモドの実の能力で若返った後、20歳の姿に固定して執務を取る私の姿は、巷では海軍の魔女だの何だのと言って恐れられているらしい。

 

(海軍も、すっかり不人気になりました)

 

 この70年で、世界は少しずつ、しかし確実に良い方向へと変わった。大海賊時代の終結と共に、世界政府による体制改革が開始された結果、天上金は大幅に減額され、それでも天上金を払う事が出来ない非加盟国の為には別の救済制度が用意された。

 海禁政策は限定的ながら徐々に解除されて行き、やがて一般人が海に出ても罰されない様になった。

 奴隷制度も相当に改変された。奴隷売買の違法化が宣言され、奴隷商人は次々と摘発された。天竜人についても意識改革が行われた。

 

 70年も経てば、世界はかなり変わるようだ。ワンピースの真実は、海賊王ロジャー以来ずっと埋もれたまま。ポーネグリフの解読技術もオハラで失われたままなのに。

 

 序でに海軍も不人気化した。平和な時代が続く中で労働力の民間需要が沸騰し、民間報酬は海軍の公定給与を上回って行った。苦しい思いをして海軍なんかに行くくらいなら、民間に行った方がましな時代。海賊の居ない長い平和が、海軍を無用の長物へと変えて行った。

 

(ねぇ、これで良かったんですか? ルフィ。貴方は死んで、エースもサボも牢獄の中で死んだ。ワンピースは闇に埋もれたまま)

 

「引退しては駄目なのですか? 大尉」

 

「いや、その、海軍って今超不人気じゃないですか。元帥が居ないと広告塔不足と言うか、ただでさえ地味なのに本格的に華が無くなると言うか……」

 

「そうですか。ですが、いつまでも同じ人間を元帥には置いて置けませんよ」

 

「それは、まあ、そうかも知れませんけど……」

 

 口ごもる大尉。私は言った。

 

「私が元帥に就任してからもう70年です。引退には適当な時間でしょう」

 

「はぁ、元帥はこんなに美人で可愛いのに。寂しくなりますよ」

 

「美人だの何だのと言っても、私はおばあさんですよ?」

 

「それでもです、嫌にもなりますよ。ただでさえ海軍は野郎ばっかりなのに」

 

 

 

 

「はぁ、これからどうしましょう」

 

 元帥位を引いて、後任が就くのを見届けた後、引退祝いの大きなパーティがあった。それも終わった後、私はいよいよ一人になった。もう、モネも、シュガーも居ない。私は本当に一人。私はモドモドの実の能力を利用して若返り、転生特典と悪魔の実の応用を組み合わせて老化を止めた。これからはずっと20歳のまま、いつまでも生き続ける事になる。それこそモドモドの実の能力者が死んでも。

 

 一人で、砂浜を彷徨う。

 

「やる事、無くなりましたね」

 

 海賊はめっきり少なくなったから、賞金稼ぎの需要も減った。武力で出来る仕事は少なくなったけど、それでも種々のトラブルや海王類の脅威は健在だ。新世界のような危険な地域では護衛の仕事も多い。ふと、思いついた。

 

「あっ、今から宇宙行きましょうか」

 

「ヨホホホホホ、さては宇宙に行かれるのですか?」

 

「ブルック、ここに来ていたのですか?」

 

 いつの間にか、ブルックもこの砂浜に来ていた。ブルックも、少し前に海軍を引退したと言う話を聞いている。私は言った。

 

「不死では有りませんが、私は不老になりました。一緒に来てくれませんか?」

 

「ええ、喜んで」

 

「ありがとうブルック。これから宇宙に出ようと思います。まずは月に行く方法を見つけたいんです。構いませんか?」

 

「ええ、構いませんとも。後パンツ見せて下さい」

 

「死ね」

 

(そうだ。ブルックには、私の全部を話しましょう)

 

 ブルックには、私の知っている全てを話そう。そう思いながら、私達は砂浜を歩いた。




海賊が消えて世界政府の体制改革も行われ、平和にはなったもののポーネグリフの解読手段は喪失、ワンピースの真実は闇に埋もれたまま顧みられなくなった。
主人公じゃなくて世界政府とイム様大勝利ルートですね、これは。
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