大砲鳥は凶気を運ぶ 方針:海賊絶許   作:Delphinus

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絶望を運ぶ 世界徴兵ルート
世界徴兵ルート 絶望の始まり


「ど、とうぞ……コーヒーです」

 

「頂こう」

 

 酷い緊張だった。ああ、まさか自分の部屋に、よりによって赤犬が乗り込んで来るとか本当に考えて居なかった。将官クラスを何人も引き連れて対面する赤犬。緊張してしょうがない。さっきからずっと表情が強張っている。

 

「ほう、これは中々美味いのぅ」

 

「き、恐縮です……はぃ」

 

「さて、前置きはこれでええじゃろう。ワシの要件は簡単じゃ。世界徴兵の話は知っちょるか?」

 

「世界徴兵……ですか? はい、そ、その、海軍の増強の為、各地から戦力になる人材を招聘するとか」

 

「如何にもその通りじゃ。そして、この世界徴兵ではお主に白羽の矢が立っておる。是非ともお主を海軍に招聘したい。ワシらはそう考えておる」

 

「は、はぁ……私なんかが、ですか」

 

「なんか、とはのう。西の海。いや、世界最強の賞金稼ぎともあろう者が」

 

「世界最強の賞金稼ぎ……い、いえ、そう名乗った覚えは、有りません、が…」

 

 私が賞金稼ぎとして、ちょくちょく億越えの海賊を狩っているのは事実だ。でも私が最強だなんて、そんな肩書を名乗った覚えは無い。勝手にそう呼ばれてるだけだ。はぁ、たかが白ひげを殺したくらいで。

 

「返答は、そ、その……」

 

「重要な話じゃ、回答を急ぐ必要は無い。まあ、これは独り言じゃがのう」

 

「先の西の海で起きた、セント・ラグエル島消滅事件。黒ひげ海賊団が関わっている以外は詳細不明。実に謎の事件じゃったが、最近になって調査に進展があった」

 

「……!??」

 

 セント・ラグエル島、西の海の端側にある小規模な無人島だ。まさか西の海まで、いや、私だけを目当てに黒ひげ海賊団がやって来るとは思っていなかった。見聞色で黒ひげの来航を予知した私は、セント・ラグエル島に核融合弾頭を設置して待ち構えた。そして接近して来た所を、島ごと消し飛ばして全力で逃走したのだ。あれで幹部の大半は殺したけど、黒ひげ本人はそれでも生き延びたらしい。はぁ、無駄にしぶとい。

 正直、外部に知られると困る奴では有りますが。

 

「セント・ラグエル島を消した正体不明の爆発について、改めてべガパンク博士に調査させた所、非常に特殊な反応の形跡が明らかになった」

 

(チッ、ベガパンクめ。相変わらずウザい)

 

「その反応は太陽の炎に近い物、いや、殆どその物だと言うのがベガパンク博士の見立てじゃ。太陽と同じ種類の反応がセント・ラグエル島で発動し、黒ひげ海賊団を半壊させた」

 

「……それで、何ですか?」

 

「事件を起こしたのはお前じゃな?」

 

「私だったらどうするんです」

 

「全く、喧嘩腰もいい加減にせい。ワシの言いたい事は別じゃ」

 

「……では、言いたい事は何でしょうか。元帥様?」

 

「海軍に入るなら、目を瞑ってやっても良いと言っておる。セント・ラグエル島の事件だけじゃのうて、ベーネリュング群島の件も含めてのう」

 

(ベーネリュング群島……、はぁ、アレも気取られた)

 

「分かりました。それだけ仰るなら海軍に入りましょう。それで、待遇はどうなのですか?」

 

「賢明な選択じゃ、まあ良いじゃろう。お主の待遇について、こちらでは海軍大将の地位を想定しちょる」

 

「はっ? ……い、いや、せめて佐官クラス辺りが妥当では? わ、私が大将? そ、それは、その……、そんなので良いのですか?」

 

「それだけ期待をかけとるっちゅう事じゃ。お主程の逸材を迎える為にのう」

 

「は、はぁ、逸材、ですか……それは、まあ有難うございます」

 

 

 

 

 セント・ラグエル島の件を人質に取られては、拒否なんて出来なかった。でも、こんな展開は正直想定出来なかった。原作に関わっても余計なリスクが増えるだけだと思ったから、西の海をあんまり出ずに適当に賞金稼ぎをやるだけにしたのに。

 

 賞金稼ぎで資金を調達しながら、宇宙開発に必要な技術をじっくりと蓄積する。その後は取り敢えず月にでも行きたい。と言うのが、私の当面の目的だった。その為にわざわざ空島に行って、エネルと知己にまでなったのだから。月にはもう行ったし、次はどうしようかと、思っていたらこれですよ。

 

「……まあ良いでしょう」

 

 でも、これは断言して良い。はっきり言って麦わらは世界を荒らし過ぎた。麦わらだけじゃない。黒ひげも、クロスギルドも。

 

 こうして普通に過ごしているだけでも分かるのだ。世界中凡ゆる場所で、海賊が余りにも増え過ぎているという事が。この西の海でも海賊の被害が急増しているし、だと言うのにクロスギルドの海兵懸賞金に萎縮した海兵達は、基地に引きこもって満足に打って出ようとはしない。内の関連会社も既に何件か海賊の被害に遭っている。つまりは、そろそろ潰さなければ不味いかもしれない。

 

「はぁ、これからどうしましょうか。取り敢えず、宇宙開発会社の業務は何とか引き継がないと」

 

「ああ、そうです。エネルにも話を付けなければ」

 

 

 

 

「死ね、Tボーン!」

 

「待て、待ってぐださいっ、話せば分かります。どうかどうか考え直しを」

 

「うるさいんだよおっ、こっちは飢え死にするかどうかなんだ、お前が死ね、死ねよ! 死ねつってんだろうがぁ!」

 

 急報を受けて辿り着いたぺぺ王国、酷い状況だった。Tボーン中将と一隊が無数の群衆に追い詰められて、囲んで袋叩きにされる凄惨な状況。

 

「俺達の事顧みてるってんならさぁ、まず懸賞金寄越せよ! クロスギルドがぁっ掛けてんだろ懸賞金ん! 良いから懸賞金出しやがれTボ『死ねよ、ゴミ共』ギャァァァァァ!??」

 

 袋叩きにする群衆に、翼からホーミングレーザーを浴びせて片っ端から射殺。広場は一気にカオスと成り果てる。逃げ始めた群衆にもホーミングレーザーを乱射した。海軍に刃向かった以上容赦はしない。容赦すれば私が死ぬだけ。

 

「うわぁぁっ、やめろっ、やめてくれぇ、死にたくない『死ね』ギャァァァァァぁぁぁぁぁぁ!??」

 

「大丈夫でしたか? Tボーン中将。救援に来ました」

 

「お願いです、もうやめて下さい。もう十分でしょう、お願いです、助けて『良いから死ね』グギャアアアァァァァぁぁぁっ!??!?」

 

「もう、止めて下さい、お願いです大将。彼等に罪は有りません。もう止めて『死ねよ』止めろおおおおおおッッッ!?!!!」

 

 群衆を皆殺しにしようとして、Tボーン中将に組み付かれる。これで動きが鈍った。はぁ、困りました。

 

「どうしましたか? Tボーン中将」

 

「どうしたもこうしたも無いでしょう! 彼等は罪の無い民間人なんです。どうして殺そうとするのですか!」

 

「罪ならあるでしょう、貴方達を殺そうとした罪が」

 

「ですが、彼等にも事情と言う物があります。この国がどんな場所かお分かりでしょう。明日の食事すらも知れず、いつ餓死するのかも分からない悲惨な状況が有るのです。それを!」

 

「事情などどうでも良いでしょう。彼等は海軍に刃向かった。これだけが問題です」

 

 そう言いながら、最後までTボーン中将に組み付いて、首を取ろうと必死になっていた、老人の髪を引っ張って掴み上げる。

 

「ねぇ、どうして海兵を狙ったんです?」

 

「ぐ、ぐぁぁぁっ、く、ぐえぇっ、い、一家、全員でぇっ、飢え死に、するよりはぁっ、家族を、守る、為にいぃっ」

 

「へえぇ、そんなに家族が大事ですか」

 

「や、止めなさい、大将、それ以上、はぁぁっ」

 

 彼の大事な家族とやらの居場所は、分身を使って同定済み。分身で首を切り落として、爆弾を仕込んで準備は完了。

 

「その家族って、これですか?」

 

「あ、ああああ、アッァァァァ、もう、止めろっ、止めてくれええぇっ、悪かった、悪かったから、もう止めて『さようなら』ギャァァァァァ!??」

 

「泉下の子供達に伝えなさい。貴方は海賊として立派に戦い、そして戦死したと」

 

 後は家族とやら全員分の首を投げ込んで、仕込んだ爆弾を一斉に起爆するだけだった。その老人は灰すらも残らずに蒸発した。

 

「あ、ああ、ふざけるな赫鳥、な、何故こんな真似を、こんなやり方では、幾ら何でも残酷過ぎる、海軍の信頼に傷が付いてしまう。例え非加盟国でも、彼等は民間人だと言うのに」

 

「海軍の信頼? そんなのもうボロボロでしょう。別に気にしなくて良いですよ。それと、彼等は既に民間人ではありません。海賊なんです。理由が何であれ、彼等は海軍を殺そうとしたのですから。せいぜい海賊として、立派に死なせてやれば良いんですよ」

 

「これは、単純な生存競争なんです。海賊が生きるか、海軍が生きるか。それだけなんですから。では、早く帰還しましょう。早い内に傷を癒しますよ」

 

 

 

 

「元帥、非常に強くクロスギルドの殲滅を進言します。最早一刻の猶予も有りません」

 

「全く、またか赫鳥」

 

「また、にもなりますよ。新四皇は全員が危険ですが、その中でもクロスギルドは輪をかけて危険極まり無いですから。つい先日も、Tボーン中将が奴らのせいで殺されかけました」

 

「そのTボーン中将を救援する過程で、多数の民間人を虐殺したと報告に上がっておるが?」

 

「それはコラテラルダメージです。彼等は、ぺぺ王国の暴徒は海軍を殺そうとしました。控え目に言って生かす理由が有りません。死んで当然では?」

 

「成る程、コラテラルダメージのう」

 

「それに、これでもまだ手が出せないと言うのなら、ミホークでも暗殺して来ましょうか? 相手には気付かせずにやってみせますよ」

 

「全く、ちっとは落ち着け。ワシとてクロスギルドの危険性は分かっちょるわい」

 

「……はい」

 

 本部に戻った後、元帥赤犬と会談した。Tボーン中将救援の結果を報告し、改めてクロスギルド殲滅の沙汰を求める。結果は微妙だ、まあそこは分かっているから良い。

 

「貴様は当分の間待機じゃ、余計な真似はするな。間も無く、大艦隊を編成してエッグヘッドに向かう。貴様もそれに同乗してもらうけえのぉ」

 

「分かりました、余計な真似はしません。では、出航までの間メガリスの調整作業に戻ります」

 

 一礼した。黒い翼を翻して執務室を出る。

 

「全く、ガキ共が」

 

 そう呟く声が聞こえた。それにしてもガキですか、正直否定は出来ませんね。

 

(殺すか殺されるかなんです。形振り構っていられませんよ)

 

 

 

 

 メガリスは衛星軌道から、圧倒的な質量で敵本拠地を直接攻撃する。こいつを衛星軌道に打ち上げ、宇宙空間からカライ・バリ島、或いはハチノスを直接砲撃、殲滅するのが本計画の要になる。

 

「メガリスはもう稼働状態に入りました。ですが、これだけでは不安もあります」

 

 メガリス・システムは調整を完了し、現在稼働中。隕石による広域破壊を齎すシステム。だが、これではギア5の相手は難しいだろう。恐らく迎撃を許す。その為の切り札はある。

 

「……」

 

 テーブルに頬杖をつく。コーヒーを飲んで一息つきながら、思案する。現状、海は揺れている。そして揺らしたのは海賊。海賊を皆殺しにしなければ、海軍が皆殺しにされるだけ。私も当然殺される。私は死にたくない。殺されるくらいなら殺す。

 

「それにしても、シャンクス辺りの首でもさっさと取っておくべきでしたね。はぁ、私も臆しました」

 

「へぇ、もしかしてシャンクスの首を取るつもりだったのか? 昔のお前」

 

「貴方は、緑牛ですか。ええ、そうですよ。シャンクスは殺しておくつもりでした。10年前の当時は色々あって取り止めましたが、今は結構悔やんでいます」

 

「そいつはまた。流石は世界最強の賞金稼ぎさんって所かねぇ」

 

 いつの間にかやって来た緑牛が言った。胸に刻まれた四川心中の入墨が見える。私は答えた。

 

「世界最強なんて、別に名乗った覚えは無いですよ。勝手にそう言われてるだけです」

 

「謙遜も過ぎると嫌味になるぜ? せいぜい素直に誇っておきな」

 

「……そうですね」

 

 またコーヒーを一飲みする。そして考える。最優先のターゲットはカライ・バリ島。ここは揺るがない。

 

「現状、一番危険なのはカライ・バリ島だと考えています。クロスギルドは既に脅威的ですが、その上成長の余地も大きい。時間が経つほど脅威度は更に増します」

 

「成る程、そいつが赫鳥の見立てか。それでカライ・バリ島を直接砲撃するってか? ワノ国でシャンクスを殺しておいて。中々無慈悲なもんだねぇ」

 

「そうですか、ええ。無慈悲だと良いのですが」

 

「へぇ、そいつは良い。悪くない」

 

 たわいもない話が続く。私は懐から、クロスギルドのゴミ共が勝手に作った私の手配書を取り出した。ヒラヒラと見せる。

 

「私の懸賞金、何でも50億ベリーだそうですよ。死んだ方がマシですね、私にとっても、世界にとっても。あのゴミ共」

 

「そいつはご愁傷様」

 

「全く、貴方も他人事ではいられないでしょうに。ああ、そうだ緑牛。もうすぐ来ますよ。ガープ中将が」

 

「お得意の未来視かい? 相変わらず便利なこった」

 

 カップの中身を飲み干して、さっと洗浄して少し待つ。そうしていると、やがて本部中にガープ中将の大音声が響いた。

 

「乗れい! これより海賊島ハチノスへ向かい、海賊共をブチのめし、コビー大佐を救出する」

 

 かなり遠くから言っているのに、ここまではっきりと聞こえてくる。ホント、随分な大声です。私はテーブルから立ち上がる。

 

「私は行ってきます。貴方はどうしますか? 緑牛」

 

「たく、確か赤犬から待機って言われて無かったか? アンタ」

 

「ですが、黒ひげ一味を打撃する好機です。ついでに、ハチノスは完全に海の底に沈めてやります。エッグヘッドへの到着も間に合わせますよ」

 

「そいつは海賊が可愛そうになるねぇ。俺は無しだ、もう少し待機しとく」

 

 

 

 

「それ、私も乗せてくれません? 船ごと飛行すれば短時間で到着します。これを機にハチノスは完全に殲滅しましょう」

 

「おお、赫鳥か。頼んだぞ。だが、目的は悪魔でコビー大佐と捕えられた海兵の救出だ。そこは忘れるな」

 

「ええ、お任せを。分かっていますよ」

 

 そして、私は一言告げた。

 

「藤虎も、連れて行きませんか?」

 




いきなり始まる世界徴兵ルートです。現在の荒れに荒れまくった世界、落ち目の海軍にスーパー海賊抹殺マシンをぶち込んだらどうなるでしょうか?A.無事赤犬元帥の頭痛の種3号になる
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