大砲鳥は凶気を運ぶ 方針:海賊絶許   作:Delphinus

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ハチノスの攻落

「赤犬、ニューマリンフォードから連絡です。ガープ中将が藤虎とSWORDの部隊を連れて出航しました。標的はハチノス、目標はコビー大佐と捕らわれた海兵の救出のようです」

 

「何じゃと!? 何故それをもっと早く言わんかった!!」

 

「すみません、どうやらさっき決まったばかりのようですから」

 

 エッグヘッドヘ向かう船上、私は赤犬に連絡を入れておいた。赤犬は驚いて聞き返して来る。私は答えて言った。

 

「何とか止められんのか?」

 

「すみません、もう出航したようです」

 

「……ぬぅ、如何に英雄と言えども、ここまでは目に余るわ」

 

「ですが、完全に悪いとも言い切れないかと。これを機にハチノスを打撃するのも有りでは無いでしょうか? 現状、黒ひげは強力なフリーハンドを握っています。ここで手札を削ぎ落とすと言うのも良ろしいのでは?」

 

「……ふむ」

 

 赤犬は黙考する。再び沈黙が走る。そして言った。

 

「仕方あるまい、次善の策じゃ。ハチノス急襲には追認を出す。ガープ中将にはそう伝えておけ」

 

「分かりました。私の分身体もガープ中将の船に乗せて有ります。直ぐに連絡しましょう」

 

「全く、この可能性も貴様の手の内か。実に面倒な女じゃ」

 

「完全に予期していた訳では有りませんよ。あくまで偶然です」

 

「それでもじゃ。くれぐれも余計な真似はするなよ。ただでさえワノ国では暴れておるんじゃからな」

 

「はい、分かっています。それともう一つ、黒ひげがハチノスから行方を晦ましました」

 

「何じゃと!?」

 

 いくつかやり取りの後連絡を閉じた。私は思案する。黒ひげの目的は何か。私の見聞色にすら反応が無い。まさか見聞色殺しを? 

 

「サボの、公開処刑? それともデロイア島……? 分かりませんね。ルフィの居場所と同じで」

 

 

 

 

「ハチノスはもうすぐです。予定通り降下します」

 

「おう、頼んだぞ」

 

 焔雲を解除して水面に降下。先にSWORDの先遣隊を降ろして、工作に当たらせる予定だ。

 

「では、行ってきます」

 

「ええ、行ってきて下さい。皆さん、ひばりさんも」

 

 数名の工作員が小型艇に分乗し、移動を開始した。まずは先遣隊で海兵の救助に当たる。私達はそれを見送りながら、本船でクードバースト機構の起動作業に入る。

 

「クードバースト、起動開始します。始動まで後240秒です」

 

「それにしても、豪快な作戦でございやす。船ごとハチノスの中心部に突っ込むたぁ」

 

「ええ、豪快なくらいが混乱を誘えますから。それに帰還の手段も準備済みです」

 

「ガッハッハ、確かにその通りじゃなぁ」

 

 ガープ中将はそう言って同意してくれた。おしゃべりの間も作業を継続する。ここにはガープ中将と私、藤虎とSWORDの隊員が来ている。戦力は十分。そして、ハチノスから連絡が入る。

 

「コビー大佐の救出、成功しました。どうぞ」

 

「分かりました、先遣隊は直ぐに退避を。聞こえましたか? クードバースト機構点火。総員耐衝撃用意。では発進!」

 

 クードバーストを始動。軍船が一気に水面から飛び上がる。凄まじい衝撃に頭がクラクラしそう。物凄い勢いで飛行し、そのままハチノスの真上に。そして、

 

「時間でさあ! 隕石落としやす!」

 

「拳骨流星群!」

 

 隕石と拳骨の嵐が、ハチノスを粉々に破壊し尽くすのだ。

 

 

 

 

「ギャァァァァァ隕石だぁぁぁぁ、死ぬうぇぅぅ、こんなの死ぬうぅゥゥゥ!??」

 

「グエエええェェェッッッ、なぁっ、な何か爆発したアアアァァぁぁァッッッ、もう駄目だぁお終いだぁぁ……」

 

 ハチノスは酷い状況だった。其処彼処も死人だらけ。無数に降り注ぐ隕石と拳骨が何もかもを破壊し尽くし、踏み潰された死体や蹲る怪我人で溢れている。

 

「アハハハハハハ、死ねよ死ねよ死ねよ! 海賊共みんな死んじゃえば良いんですよ!」

 

「グワァァァァァァ!? 。わ、や、止めてくれグボォェァァツゥゥ!??」

 

 そんなハチノスの中心部に突入し、黒ひげ海賊団の幹部と生き残りの海賊を片っ端から仕留める。こうやって派手に陽動し、捕らわれた海兵の脱出を援護する。これが事前に決めた方針になる。

 

 そうして殺しまくっていると、見聞色にピンと来た。回避運動。回避した元の場所が凍り付く。

 

「来ましたね、青雉」

 

「お前が、赫鳥か」

 

 見間違う筈もない。青雉の姿。私は聞いた。

 

「どうして黒ひげ如きに付いたんです? 海軍を出るのは分かります。でも何故海賊なんかに? せめて賞金稼ぎくらいにしておけば良かったのに」

 

「黒ひげ如きか。そりゃそうだな」

 

「黒ひげは世界を荒らす元凶。絶対に生かしてはおけません。それに加担する者には死を」

 

「待てい、赫鳥!」

 

「ガープ中将?」

 

 ガープ中将が私を制止する。そして言った。

 

「青雉、事情は聞かん。貴様を海軍に連れ戻す!」

 

「殺さなくて良いのですか?」

 

「構わん、良いからやるんじゃ!」

 

「成る程、承知しやした」

 

 藤虎は受け入れたらしい。私も覚悟を決める。閻魔を鞘に収めた後、ナイフを抜いて覇気と高熱を通す。この際業物は使わない。

 

「生け捕りは苦手ですが、まぁやってみましょう。青雉、貴方の意思は関係有りません。貴方の身柄は、力尽くでも頂いて行きます」

 

「はっ、そうかい!」

 

 

 

 

「こいつは困った。エッグヘッドが空なんてネェ」

 

 黄猿はそう言って嘆いた。セラフィムが多少面倒な事になったけど、ベガパンクの拿捕は成功。後は帰還するだけの状況。しかし、麦わらは見つからない。黒ひげも不在。ここには居ないらしい。

 

「それに、麦わらのルフィはここにも居ませんでした」

 

「麦わら、確かにそれも気になる所だネェ。お前さんの見聞色じゃあ追えないのかい?」

 

「はい。麦わらはどれだけ探しても見つかりません。もしかすると、覇王色による見聞色殺しを覚えた可能性が有ります」

 

「成る程ぉ、そいつは厄介だネェ〜」

 

 麦わらの居場所は、あれから割れていない。場所さえ割れたら、すぐに報告してメガリスをぶつけられるのに。その事が分かっているのでしょうか。

 

「それに、黒ひげの居場所も分かりません。取り敢えず、当面は麦わら大船団、麦わらと関係のある連中、黒ひげの関係者の動向を注視しましょう。麦わらは孤独を嫌います。麦わらが動くなら、必ず誰かと組んで一斉に来る筈です」

 

「へえぇ、そいつは良く知ってるネェ。確かに麦わら大船団は希少な手掛かりになる。赤犬にも連絡しとかないとネェ」

 

「はい……。それと次の連絡です。先程ガープ中将が率いる一隊によりハチノスが陥落しました。青雉の捕縛も成功し、ニューマリンフォードに帰還するとの事です」

 

「そうかい、そいつはご苦労さん。じゃ、あっしらも早いうちに帰るヨォ」

 

「分かりました。各艦に帰還指示を出します」

 

 

 

 

「青雉、もう動けないでしょう。これで終わりです」

 

「こんな、もんか」

 

 背中からナイフを突き刺して脅し付ける。致命傷にはならないけど、これでも脅迫にはなる。青雉は藤虎の重力に押さえ込まれて、完全に動けなくなっていた。

 

「そう言う訳でさ、有無は言わしやせん。来てもらいやす」

 

「ガッハッハッハ、観念せい、このバカ弟子が」

 

「ふっ、ああ、バカ弟子、だな」

 

(案外あっさり行きましたね)

 

「……たく」

 

「そうだ青雉、お願いが有ります。後で構いません、貴方のサインを下さい」

 

「……は?」

 

「貴方のサインを下さい」

 

「……」

 

 思っていたより、あっさり行って拍子抜けした。黒ひげの幹部は全員を捕縛し、海賊も大勢を殺害、または捕縛した。黒ひげ海賊団の根拠地、海賊島ハチノスは崩壊したと言って良い。

 

「早い内に撤退しなければ。目的のコビー大佐は?」

 

「はい、コビー大佐はこちらです」

 

 SWORDの隊員がコビー大佐と捕らえられていた海兵を連れて来る。私は言う。

 

「ど、どうも、初めまして大将」

 

「ええ、どうも、お初にお目にかかります。私が世界徴兵で編入された赫鳥、アルメリア・ファイスです」

 

 コビー大佐、正直そんなに好きな相手じゃ無い。何故って言えば単純、要するに善人だから。私は善人じゃ有りませんからね。

 

「それと、これは後で構いません。貴方のサインを下さい」

 

「はっ? え、どう言う意味で」

 

「貴方のサインを下さい」

 

「……」

 

 コビー大佐は、何も答えられなかった。私は考える。

 

(それにしても、ハチノスがやられたのに黒ひげが動かないなんて)

 

 黒ひげは動かない。これだけ釣り出しの策を向けたのに、何処にいるのかも不明。これではメガリスも撃てませんよ。困りましたね。

 

「黒ひげの釣り出しは失敗、となると、どうするか……。ええ、この場合は予定変更です。赤犬とも相談して……」

 

「アルメリア大将?」

 

「何でもありませんよ、コビー大佐。所でサインは出来ましたか?」

 

「あっはい、これです」

 

「有難うございます。宝物にします」

 

「は、はぁ……。サインなんて、普通こっちの方が強請る立場なんじゃ……」

 

 私達は撤退を開始する。完全に破壊し尽くされて更地と成り果て、無数に積み重なる血と死体と、呆然とした僅かな島民達の姿が見えるハチノスを後目にして。

 

「ぐぁぁぁっ、く、くそぉ」

 

「序でにモリアと、貴方も殺してから、です」

 

 それからモリアとペローナも、きっちり殺しておいた。

 

 

 

 

「すみません、赤犬。黒ひげと麦わらの動向、本当に分かりません」

 

「それは構わん。捜索の失敗は海軍全体の問題じゃあ」

 

「……はい」

 

 元帥の執務室に戻り、改めて話をする。ハチノスとエッグヘッドでの作戦の報告と、次の方針の相談。

 

「恐らく、麦わらは見聞色殺しを覚えています。黒ひげもそうです。覇王色の覇気を更に進化させたのでしょう」

 

「成る程、じゃが、そのくらいで大筋に変更は無い。麦わらは必ず仕留める。黒ひげもじゃ」

 

「分かりました。ただそれより先に、既に居場所の分かっている脅威を仕留める、と言うのはどうでしょうか」

 

「クロスギルド、じゃな」

 

「はい」

 

「確かに上策じゃ。じゃが、敵がいつ仕掛けてくるか分からん以上、こちらの守りを固めねばならん。迂闊に戦力は動かせん」

 

「分かっています。ですから最小限の戦力で仕留めます。メガリスを使いましょう」

 

「メガリス、貴様の噛んでいた切り札じゃのう」

 

「はい。使い時は今かと」

 

「……ふん」

 

 赤犬は思案する。私は考える。暫くの沈黙。そして、赤犬は言う。

 

「良いじゃろう。クロスギルド本拠地、カライ・バリ島を直接攻撃する。じゃが数は動かせんぞ。分かっちょるな」

 

「分かっています。では、今からメガリス・システムを起動しましょう。まずはカライ・バリ島に潜入し、捕らえられた海兵を救出した後、メガリスで島ごと破壊。その後直接攻撃し、クロスギルドを完全に殲滅します」

 

「うむ、それで構わん。直ちに準備にかかれ」

 

「はい、分かりました」

 

 私は一礼して、執務室を後にした。

 

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