大砲鳥は凶気を運ぶ 方針:海賊絶許   作:Delphinus

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暗殺の残滓 マリンフォード

 私は、私には、是が非でも殺すしか無いと思っている奴がいる。殺さなければ絶対に殺される。そう思っている。

 

「……ここですか」

 

 私がまだ海軍学校の学生だった頃。島外への外出は避けた方が良いというのに、休日の時間を縫ってそこへ向かった。

 グランドラインの移動は面倒だ。早く済ませたい。

 

「……」

 

 見聞色をフルに使って飛行するのは中々疲れた。ログポースが足りない分を、見聞色による航路探知とマリンフォードのエターネルポースを組み合わせて強引に補い、飛翔する。

 

「奴が白ひげの所に拾われるのは12歳。それまでに始末を付けなければ」

 

 この日の為に情報は集めた。これ以上待つと白ひげの船に乗ってしまう。そうなれば、殺せる機会が遠のく。そして、辿り着いた。場所は市街地だ。はぁ、面倒ですね。

 

「市街地ごと、吹っ飛ばしますか? 黒ひげ相手ならそれくらいやっても許される……いえ、実行犯が割れると面倒です。今の黒ひげなら、始末も……可能」

 

 移動を開始して、市街地の外縁に辿り着いた。翼を畳む。市民に偽装し、歩いて移動。移動中も見聞色をフルに使う。

 

「……見つけた、黒ひげ」

 

 見聞色の探知で、黒ひげの存在を確認。まだひげも生やしていない、ストリートチルドレンその物の姿。惨めな子供のティーチ。こちらの存在が露呈しないよう、気を付けながら歩いて接近。

 

「ゼハハハ、コソコソと何のつもりだぁ?」

 

「!??? ッッッ、死ねェェェ!」

 

 何でバレた!? 黒ひげにこっちの存在が露呈した。もう見聞色が使えるの!? 、ああ畜生、形振り構わずナイフに炎を通す。更に覇王色と武装色をナイフにぶち込んで、兎に角突撃。何も考えず最高速度で全力の滅多刺し。

 

「死ね、死ね、死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ」

 

「グギャァァァァァ!?」

 

「……勝手に成長するな。弱いまま死になさい、死ね」

 

 気付いた時には既に、黒ひげはグチャグチャの滅多刺しになって死んでいた。そのまま八咫烏の炎を打ち込んで、死体も残らない程燃やし尽くす。悪魔で普通の炎だ。核まで使うと事後処理が面倒い。

 

「はぁ、はぁ、ううぅ、勝手に成長してんじゃ無いですよ、ゴミ共が……」

 

 ティーチが灰に帰ったのを確認してから、私は必死になって翼を広げ、島を脱出する。そのままエターナルポースと見聞色を頼りに、マリンフォードへと逃げ帰った。

 

「灰は灰へと還りなさい。マーシャル・D・ティーチ」

 

 

 

 

「それにしても後になってから考えると、黒ひげのサイン。正直欲しかったですね」

 

「サイン貰ってから殺す……でもそんな余裕無かったですし。それは仕方ないのでしょうか」

 

 オハラから帰還した後、私は何となく、黒ひげを殺した時の事を思い出していた。殺す事が罪だとは思っていない。

 

「殺さなければ、殺されるんです。だからやられる前にやります。悪いとは思いませんよ」

 

 特に黒ひげみたいな危険人物、生かしておいては私の命に関わる。形振り構っていられない。

 

 これでヤミヤミの実は確保が難しくなるけど、まあしょうがない。

 ……悪魔の実の確保はずっと、成功したり失敗したりを延々繰り返している。能力者に対して単にフルーツを近づけてから殺すだけでは、どうやら足りない部分があるらしい。でもその条件は、科学者ではない私にはさっぱり分からない。

 

「……はぁ」

 

 場所はマリンフォード。向こうにはでっかく海軍と揮毫された巨大な建造物が見える。原作では単にカートゥーン用の誇張表現くらいにしか思っていなかったけど、実際に現実の物として見ると、ちょっと、いやかなり、いや凄く恥ずかしい。

 

「で、でも、誰の目にも分かりやすいのは良い事、なんですよね……多分」

 

 それに、最近身長が急激に伸びて来たのも気になる。少し前までは別に普通だったのに、今は日に日に身長が伸びて、現在なんと180cmだ。しかも更に伸びていると来た。

 

「それに、この身長どこまで行くんでしょう。ワンピース世界の大将が基準だと、ま、まさか3m? ……そ、そんな、そこまでは、い行かない筈です、行かないで下さい」

 

 流石にそこまでは行かない……筈だ、多分。自分の身長までワンピ体型とか、け、結構嫌だ。

 

(それに、もし身長がワンピ体型だとしたら、胸が全く無いのはどうなんでしょう)

 

 今の私の性別は女性だけど、私の胸はAカップ。僅かな膨らみも無い、完全な平坦。ちょっと寂しいけど、まぁ便利ではある。巨乳なんてどうせ邪魔でしょうから。ある意味、胸までワンピ体型じゃ無くて助かった。将来まだ成長する可能性もあるから、安心はしていられないとは言え。

 

「……はぁ、前世から、随分遠くまで来てしまいましたね」

 

 前世の私は、ああ、思えばどうしようも無い奴だった。夢も希望も未来も無い只の派遣社員。趣味と言えばゲームと、アニメと、週一でジャンプを読むくらいしか無いどうしようも無い男。ワンピースはそこそこ好きだったけどそれだけで、別に本格的なファンじゃ無い。学歴もショボいし、家族とは縁切られたし。特に打つ手なしの、まぁそんな退廃的な人生だった。

 

「そう考えると、今の方が幸せなんでしょうか……。殺人者になりましたが」

 

 殺人を、私はもう忌避しない。忌避出来なくなった。その理由は分からないけど、前世からずっと情の薄い性格ではあったし、理由の少しはそのせいなのかもしれない。

 

「……」

 

 私は、結局答えが分からない。

 

「……次にやるのは、誰でしょう。恐らくハンコックでしょうか。テゾーロと、コアラもやる」

 

 別に、ハンコックに恨みが有る訳じゃ無い。テゾーロが嫌いな訳でも無い。コアラのアンチ? それこそ冗談。それに、奴隷制が正しいとも思っていない。ただ、やらなければ殺されると思っているだけだ。だから形振り構っていられない。

 

 フィッシャー・タイガーは、どうだろう。もし強者だとしたら、当たるのは避けたい。でも殺せるなら殺す。

 

「殺されるくらいなら殺します。遊びでやってはいられないんですから」

 

 そっと独りごちた。見聞色を使い倒して、海兵の誰にも気付かれないように。

 そう思って、いたのですが。

 

 

 

 

「大尉、状況は」

 

「こちらでも海賊の壊滅を確認した。残骸を確認します」

 

「分かりました」

 

 海上で、私達の船は普段通り海賊の掃討に当たっていた。海賊船の乗員を燃やし尽くし、皆殺しにした後は部下達に船の検分を任せる。ただ、その日は少し様子が違った。

 

「大佐、これです、船の中に気になる物が有ります。見て下さい」

 

「こ、これは、宝箱? いや、何で子供が……い、いや、まさか!? 、そ、そんな、シャンクスを殺したからってよりによって私に!? 何で!? 私もヤキが回って」

 

「大佐?」

 

 怪訝そうに言う大尉。私は混乱した。一見すると何の変哲も無い宝箱。でも、見聞色で中身はすぐに分かった。

 

(ウタ……はぁぁ、何で私が……、面倒な。私にシャンクスの代わりをやれとでも?)

 

「宝箱を開けます」

 

「なっ、こ、子供!? 女の子ですか!?」

 

 中身は、間違い無くウタだ。何で私が見つけたんでしょう。一体どう言う確率なんですか。これって皮肉何ですか? シャンクスを殺した私への? ああ、もうどうでも良い! 

 

(正直、ウタなんて何処かの海賊団が勝手に見つけるか、或いは野垂れ死にするくらいに思っていました。こんなの運命の悪戯にも程が有りますよ……)

 

「彼女は海軍で保護します。大尉、用意を」

 

「はっ、直ちに、お前ら! 海賊から子供を保護した、本部に連れて行くぞ!」

 

 ウタは、ひとまずマリンフォードに連れて行く。船を引き返して本部に向かった。




この主人公は黒ひげと同年代、原作開始時点で38歳です。
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