大砲鳥は凶気を運ぶ 方針:海賊絶許   作:Delphinus

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回想 魔の三角地帯

 私が生まれたのは、西の海の辺境を根城とするディアブロ海賊団、その船の上だった。

 

「……」

 

 その辺境は、かつてから争いの絶えない場所だった。碌な資源も産業も無く、土地は痩せ、水産資源も乏しい島が続くその一帯では、天上金を支払う為に、複数の非加盟国が僅かな金を求めて戦争を繰り返して来た。

 そんな場所に平和を与え、繁栄を齎した偉大な海賊。それがディアブロ海賊団だそうだ。

 悪魔の名を冠しておきながら、その実態は悪魔とは程遠い。平和を作った英雄達との事。

 

「……そろそろ、ですか」

 

 私はそんな海賊団の船で生まれた。私の父はガーテルー・ファイス。ディアブロ海賊団の幹部の1人。そして私の名は、アルメリア・ファイス。

 

 遠景を一望する、展望デッキの上。私はそこから水平線の遠くを見ている。

 

「美しいですね、海は」

 

 ふと、見聞色にピンと来た。下が騒がしい。何を言っているのでしょう。何となく耳を傾けると

 

「見ろよこれ、悪魔の実だ」

 

「な、何だって、本当かよそりゃ!」

 

「ああ本当さ! しかもこいつ、ただの悪魔の実じゃねえぞ? ゾオン系の幻獣種、トリトリの実モデル八咫烏だ。電伝虫で白ひげの所にも問い合わせたから間違いねえ、とんでもなく珍しい奴だぜ」

 

(悪魔の実? まあ、私には関係無いでしょう)

 

 悪魔の実、それがある事自体は知っていた。しかし、正直自分には縁が無いと思っていた。そもそも希少だし、それに

 

(悪魔の実なんか食べても、狙われる可能性が増えるだけです。食べたい奴が食べていれば良い)

 

 デッキの下では悪魔の実を巡って激しい口喧嘩が始まる。更には殴り合いにまで発展し、まあ凄い興奮状態。皆んなが皆んなしてヒートアップしている。これでは当面降りられそうに無い。

 

(喧嘩が終わったらデッキを降りましょう)

 

 

 

 

 ディアブロ海賊団は白ひげの傘下に入っている。ここの船長は力に長けるだけでなく、政治的嗅覚も相当の物らしい。白ひげなど新世界の海賊ともコネクションを築き、日々変動する西の海のマフィア間抗争を巧みに泳いで縄張りを守る。白ひげとの伝手を使って新世界から多数の技術者や教師を招聘し、縄張りの開発、学校の新設、土質や環境の改善まで行うその手腕は並大抵の物では無い。

 

「はぁ、何なんでしょう。今日の料理は不味い」

 

 喧嘩が終わり、今は夜。私は船内で普段通りの夕食を取っていた。さっきの悪魔の実、ゾオン系トリトリの実、モデル八咫烏、でしたか? それを誰が食べたのかは知らない。知らないし、私にはどうでも良い。どうせ幹部の誰かが食べるだろうから、私が食べる可能性は無い。無い物は気にしなくて良いって、そう思っていたのだけど。

 

「分かりませんが、今日の夕食は無駄に不味いですね」

 

 今日の食事は何だか不味かった。理由は分からない。サンジの様な最高のコックがいるわけじゃ無いけど、ディアブロ海賊団のコックはレベルが低い訳じゃない。それなりに美味しい料理を安定的に出してくれる。だから味なんかの心配はしていなかったのに。

 

「ん? そうですか? 味は普通では? アルメリア姉さん」

 

「そうですか……」

 

 私は、船内ではそれなりに慕われている。この船に乗る子供の中では一番強くて有望株、らしい。何でもあのゴール・D・ロジャーに匹敵する覇王色の覇気があるだの、生まれながらに見聞色の覇気を持っていたとか。正直そんなの与太話だと思うのですが。私的には、鍛えると称して毎日の様に無駄にボコボコにされるの困ってるんですけど。痛いのやだ、やです。

 

「ゴール・D・ロジャー。まだ海賊王でない」

 

「えっ? ロジャー? 何ですか」

 

「何でもありませんよ」

 

(それに、今食事が不味かったのって、まさか……)

 

 そしてその日、私は気付かない内に八咫烏の能力者になった。いつの間にか食事に悪魔の実が混ざってたとか、酷くありません? 

 

(はぁ、これで厄ネタが増えました)

 

 

 

 

「私を、白ひげの所に送る?」

 

「ああ、そうだ。お前はいつまでもこんな辺境の海賊団にいる器じゃない。新世界に行って白ひげに鍛えて貰え。白ひげは十分信頼できる奴だからな」

 

「はい……」

 

「それに、白ひげ海賊団には不死鳥のマルコがいる。お前の八咫烏とは対になるとも言われる、不死鳥の能力者だ。向こうではお前の面倒を見て貰うようお願いしておくから心配するな」

 

(新世界とか、正直行きたくないんですけど……)

 

 新世界は怖い。シンプルに気候が酷いし、海王類がわらわらいるし、海賊は強いし、航路に迷ったら死ぬし。私的には、出来れば海賊なんか止めてイーストブルーの辺境辺りでのんびり過ごしたい。そう思っている。

 でも、それが言える私じゃ無いのだ。

 

「分かりました。では新世界に行きます」

 

「そうか、そりゃあ良かった。ま、行くのはまだ数ヶ月先の話だ。当面は心配しなくて良いさ」

 

「……はい、お父様」

 

(ロックス海賊団は既に無く、しかしロジャーは健在。ロジャーの処刑はまだ先)

 

 ロックス海賊団は既に壊滅し、白ひげは独立を果たして勇名を轟かせている。ロジャーは未だ健在。だが、白ひげ、カイドウ、シキ、ビッグ・マムと言った多数の大海賊が覇権を競う時代。

 

(それにしても、はぁ、海賊なんて……)

 

「賞金首なんて遠慮したいんですけどね。それに海賊は……」

 

 海賊は、やはり許されないのでは無いか? 私は、そんな考えを今も捨てられずにいる。

 

「……」

 

 

 

 

「やっぱり私は海賊にはなれません。賞金首にだけは、なりたく無いんです」

 

「そうか…成る程」

 

やはり、駄目だった。海賊にだけはなれない。海賊だけは嫌だ。原作通りにあんな冒険させられるなんて、命がいくつあっても足りない。

 

(やっぱり、冒険なんかしたくない)

 

「それなら、これからはどうする気だ。賞金稼ぎでもするのか?それとも、ここを離れて堅気に」

 

「いえ、海軍に」

 

「海軍か…そうか、分かった」

 

 お父様は、私を否定しなかった。私が白ひげの船に向かうという話は撤回された。その後、私は近場にある海軍の基地に向かった。そして、任官した私はディアブロ海賊団を皆殺しにした。他の海賊と同じように。

 

(海賊は、何であっても滅ぼす)

 

 

 

 

(何でこんな事……思い出したんでしょう)

 

 今更になって思い出すなんて。私が生まれた頃の事。私はディアブロ海賊団を滅ぼした。それが悪いとは微塵も思っていない。

 

(まぁ良いでしょう)

 

「こ、ここ、魔の三角地帯じゃ無いですかぁぁぁっ、うわぁ怖いぃ」

 

「全く、心配しなくて良いですよ。そんな事」

 

「か、帰りましょう帰りましょうってえぇ、うぁぁ、もう嫌だぁぁ、今すぐ海軍止めたいぃぃ……」

 

「はぁ……。見聞色で未来は読めています。ですから不安になる必要は有りません」

 

 少なく無い数の部下が怖がっていて、船内の士気は低い。それでも私は気に留めずに船を進める。

 

(モリアはまだ居ない。今ならやり易い)

 

「ふふ、見つけました」

 

 目的はブルックの確保。敵に回られるくらいなら早い内に確保する。将来の麦わらの戦力を削れるなら、やらない理由が無い。

 

「向かいますよ、進路は海賊船へ」

 

「は、ははははいっ、幽霊船に突入しますっ!」

 

「はぁ、だから幽霊船では有りませんよ」

 

 

 

 

「ひえええええが、ガガガガイコツだぁぁぁっあぁぁぁぁぁぁ!?? 本物だぁぁぁ!??」

 

「ヨッホホ、これはまた酷いですねぇ」

 

(部下が怯えていますね。はぁ、早い内に何とかしなければ)

 

 ブルックと接触した後、かなりの数の海兵が怯えてガクブルしている。面倒です、早く交渉を付けましょう。

 

「初めまして。私は海軍本部大佐アルメリア・ファイスと申します。貴方の名前を伺っても?」

 

「ヨッホホ、これはこれはご丁寧に。初めまして、私はブルックと申します。しかし海軍ですか。ヨホホ、これは困りましたねぇ」

 

 

 

 

「それで、どうでしょう。貴方を是非とも海軍にスカウトしたいのです。勿論、相応の待遇を約束します。ただ、海賊は今日で廃業して頂く事になりますが」

 

「ヨッホホ、それは素晴らしい提案ですねぇ、しかし宜しいのですかお嬢さん。私は札付きなのですが」

 

「構いません。貴方が海賊をやっていたのは何十年も昔なのでしょう?」

 

「い、いいいい良いんですか大佐ぁぁっ、こんなガイコツを身内に入れるなんてえぇ、さ、さっさとインペルダウンにぶち込んだ方がぁぁっ」

 

「大丈夫です。彼は引き込む価値があると見ました」

 

 

 

 

「海賊を止めるのは残念ですが、まあしょうがありません。分かりました。お嬢さんの提案を飲みましょう」

 

(はぁ、何とかなりました)

 

 ブルックの引き込みは成功。小さく安堵して、

 

「所でお嬢さん、パンツを見せて頂いても?」

 

「死ね」

 

(あっああああああっ、そうだった。忘れてた。ブルックはセクハラ好きだった、な、何で忘れてたんですかっぁぁぁぁぁっ、うえぇぇ)

 

 完全に失念していた。ブルックはパンツ見たがりの変態だった。はぁ、どうしましょう、こんなの全然想定してない……。

 

(今の私、スカートは履いていない。見られる可能性は無い、筈)

 

 私はスカートを履かない。飛んでいると下から見られる可能性が有りますから。履くのはズボンだ。

 

「う、うぅ、まぁ、その、帰投、しましょう。大尉」

 

「は、はい、進路反転だ、戻るぞぉ」

 

 そして、私達は帰投する。ひとりの新しい客を連れて。

 




海賊だからと言うだけで故郷も仲間も家族も皆殺しにする、ワンピ本編に出て来たら間違い無く極悪党扱いの主人公を宜しく!
ちなみにこの主人公、海軍ルートの他に白ひげ海賊団ルートが有ります。白ひげルートだとマルコと合わせて白ひげの両翼と呼ばれ、恐れられながら4皇相手に戦争します。でも黒ひげは暗殺する模様。
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