間も無く、フィッシャー・タイガーが赤い大陸を登るであろう時間。私は部隊にも待機を命じた。
「しかし、今から何が」
「何があるかは分かりません。ですが、恐らく何かあります。心配なさらないで下さい、大尉」
「は、はぁ……」
私は展望台の上に立ち、翼を広げてその瞬間を待っている。
「それにしても、大佐は『大佐! 緊急事態です』応答します、電伝虫を代わりなさい」
ふふ、来た。電伝虫の通信を変わる。
「アルメリア大佐、そこに居たか。都合が良い」
「こちらファイス大佐です。通信代わりました、元帥殿、ご用件は」
「至急マリージョアへ向かえ。フィッシャー・タイガーがマリージョアを襲撃した。なんとしても止めろ」
「了解。さて、良いですか大尉」
「はっ、全員進路マリージョアだ。急げえぇ」
移動を開始。私も告げる。
「私は先行してマリージョアに向かいます。後を頼みます」
「分かりました。お気をつけて、アルメリア大佐」
部下からランチャーを受け取る。翼を開き、一気に飛行開始。
「マリージョア、酷い状況ですね。ハンコックは……見つけた。死ね」
私が来た時には、酷い状況だった。街中が火に包まれている。逃げ惑う無数の奴隷、そして天竜人。見聞色から嘆きの声が聞こえて来る。
私は、まずハンコックを殺した。不可視の火線で狙撃。サンダーソニアとマリーゴールドも狙撃し
「上手く行きました。遺体は、一応確認を」
ハンコックはやった。サンダーソニアとマリーゴールドも殺害を確認。次はテゾーロ。テゾーロを探し当てようとして、
「いえ、コアラはこいつですね。死ね」
先にコアラが見つかった。私がやったと気づかないように偽装しながら狙撃、殺した。そしてテゾーロも見つけ出す。狙撃する、死んだ。ステラも見つけた、殺した。その後は、奴隷を見つけ出して回収して回る。
(思ったより順調……!??)
見聞色に来た。回避運動、砲撃のような激しい水の激流が私の側を通り抜けた。
「躱しやがったか。さっきから奴隷ばかり狙ってんじゃねぇぞ!」
「チッ、所在がバレましたか。フィッシャー・タイガー」
あれは何? 魚人空手? フィッシャー・タイガーは魚人空手が出来たのでしょうか? だとしたら面倒ですが。超高熱の炎で全身を覆い尽くす。次撃たれても、水の全てを蒸発させるつもりで。
「雑魚ばかり狩って気持ち良いかぁ? なぁ!」
「別に、私は雑魚だと思っていませんよ。この世界に雑魚なんて居ません。では死ね」
ランチャーから全力砲撃。真っ白に染まった炎がフィッシャー・タイガーに向けて放たれる。これも躱される。チッ、鬱陶しい。
「さあ喰らいやがれ!」
「接近戦は気に入りませんね。グレネードストライク!」
接近戦に持ち込もうと肉薄して来たフィッシャーに、覇王色と武装色をありったけ纏わせたランチャーを叩きつける。フィッシャーの打撃とぶつかり合い、そして発生する衝撃に身を任せて、思いっきり距離を取る。
「その大砲、見るからに脆いと思ったんだがなぁ、覇気か」
「覇気ぐらいご存知の様で。では死ね」
八咫烏の翼を開く。フィッシャーの力量は見切った。これでとどめを刺す。
「誘導火線放射!」
翼から無数の火線を放つ。覇気を乗せた万単位の火線が曲線を描いてフィッシャーを襲う。この火線は見聞色を通じて誘導している。その一つ一つが核融合の炎。汚染はしないけど、少しでも当たれば死。さながらホーミングレーザーとでも言うべき代物を、何十秒もの間延々と打ち続けた。
「……」
そしてフィッシャー・タイガーは、あっさりと死んだ。
「次は、どいつだ」
「私の身長、もう313cmですよ。何処まで行くんでしょう」
私の身長、もう313cmになった。ここまで来てそろそろ止まった様だ。はぁ。こんな身長、高すぎていい加減邪魔なんですけど。
「よりによって私がワンピ体型になるなんて。それに、ワンピ体型の割に胸は無いですし」
私は胸が無い。序でに尻も無い。高身長スレンダーというか、まぁそういう感じでしょうか。見た目は黒髪赤目の超高身長スレンダー系美女、中身はただの屑。それが今の私となる。
「……はぁ」
マリージョア襲撃事件が終わった後、フィッシャー・タイガーを始末した私の功績は高く評価された。それこそ元帥からも賛辞を頂けたくらいだ。非常に恥ずかしかったけど、かなり、いや凄く、いや非常に嬉しい。
「うふ、うふふふ、昇進までしちゃって、私も遂に将官入り、あは、あははははっ、はぁぁ」
そろそろ恥ずかしくなって来ました。そ、それに、この世界ってワンピースなんですよね。
「わ、私も、もしかしてそろそろ笑い方を考えないといけない? 、ら、らはははは……、じはははは……、ぜはははは、ふっふっふ……、駄目ですね。全然しっくり来ません」
ふっふっふ、ふっふっふ、ちょっと笑い方を練習したけど無理だった。はぁ、なんやかんやと言ってもドフラって凄い奴だと思います。だからふっふっふガシャンガシャンとか言ってあげないで、ね? お願い。
「ああそうだ。ドフラも潰さなきゃ」
「ヨッホホ、何か悩み事ですかな、お嬢さん」
「ブルック、相変わらず鬱陶しいですね」
ブルックは、味方に引き込むと想像の数十倍鬱陶しかった。ウザい不愉快。しかも汚い。オナラするな、ゲップするんじゃない、パンツ見るな、ああ、全く。
(こんなでも、引き込めばメリットはある。あるんで、すけど……)
「海軍の生活はどうです、もう慣れましたか……」
「ヨッホホ、それはまあまあですねぇ。それと、さっきは笑い方を練習していたようですが……」
「ええ、していましたよ。この世界には笑い方の特徴的な方が沢山居ますが、私には笑い方という物が全くと言って良い程分かりません。ふっふっふ……、ふっふっふ、うぉろろろろろ、はーははまままま、くははははは……はぁ」
「ヨッホホ、無理してまで笑う事も無いのでは有りませんか? 笑いとは自然に出る物です」
「そうでしょうか……アハハ」
やっぱり、無理して笑うことも無いのでしょうか。……全然分かりません。
「ヨホホ、そのアハハと言う笑い方、それこそ正しく笑いなのではありませんか?」
「はぁ、それは、そうなんでしょうか。アハハ、ハハ、アハハハハハ……、はぁ」
私の笑い方、も、もしかしてアハハなんですか? ……あはは、あはは、あはは……はぁ。
「アハハ、アハハ。……んぅ、これで良いんでしょうか……」
「構いませんとも、素晴らしい笑い方ですよ。お嬢さん」
「どうだろう、ファイス准将は」
「ファイスか。筋は良いんだがな、それこそ驚異的だ」
六式を覚えさせた所、短期間で六王銃まで習得した。あの才能はまさしく天才と言って良い。と黒腕のゼファーは言う。
「だが、強いて言うなら打たれ弱さが気になる。将来、ひいては海軍大将になる可能性も考えるなら、いずれ四皇と正面からぶつからなければならない時が来るだろう。そうなると、脆さが露呈する可能性が高い」
「やはり不安定か。せめて黄猿のような安定性があれば……」
「ぐえぇ、うぐぅぅ……」
訓練場でガープ中将にぶっ飛ばされて、またまた気絶したファイス准将を見る。やはり、正面からのぶつかり合いに弱いのがネックか。
「ええい起きんか! 貴様は将官になったんだぞ! 海軍准将の意地を見せい!」
「意地とかぁ、そんなの無いんですうぅ、ぐえぇぇ……」
「火力と機動力だけは、現状でも凄まじいんだがな」
(……それに)
「話は変わるが、ブルックについてはどう思う?」
「ブルックか。何十年も魔の三角地帯を彷徨っていた海賊だそうだが……、素行は最低だな。しかし腕も良いし、何より人格が完成されている。ファイス准将にはきっと良い刺激になると思うぞ」
「成る程……たしかにその通りだろうな」
ブルック、ファイス准将が連れて来たヨミヨミの実の能力者だ。何十年も前に活動していた海賊だが、海賊団が壊滅し、自らも死亡。帰る方法を無くして長い間海を彷徨っていたと言う過酷な経歴を持つ。
(賞金首ではあるが、それはあくまで何十年も昔の話だ。海賊を止めて海軍に入ると言うのなら、懸賞金の撤回自体は簡単)
ブルックの賞金首は撤回され、今はファイス准将の麾下として活動している。働きはかなり良いらしいが、見た目の不気味さと骨を題材にした妙なジョークで海兵を不安にしているとの報告が上がってはいる。
(まぁ、ファイス准将についてはまだ様子見となるか。ただでさえ覇王色の持ち主は希少。そして、ファイス准将と言えば)
「それに、ウタウタの実についてか……」
全く、懸念は尽きないな。そう、センゴクは今日も悩んでいる。