大砲鳥は凶気を運ぶ 方針:海賊絶許   作:Delphinus

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休息 マリンフォード2

 海軍中将、赫鳥のアルメリアが鷹の目のミホークを殺害。更には戦闘の余波で、グランドラインの航路の一つが磁気を破壊され当面の間使用不能に。その話はとんでもない大ニュースになって世界中を駆け回った、らしい。

 

「センゴク元帥。ミホークを、殺しました」

 

「そうか……ご苦労」

 

 マリンフォードに必死で逃げ帰った後、私は気絶するように眠った。そのまま数日くらい何もする気になれなかった。無断休暇を取った形だけどどうでも良い。数日経った後やっと起き上がって、マリンフォードのニューススタンドで何とか世界経済新聞を入手した頃には、世界はもうとっくにひっくり返っていたのだった。

 

「正直、今も疲れています。話は手短にしろ」

 

「ふっ、そうだな、分かった。鷹の目を撃破した功績により、ファイス中将は大将への内定が決まった。更には5老星からも会見の申し入れがある。具体的な事は後で説明しよう、今日はもう休むと良い」

 

「分かりました、もう帰る。さようなら」

 

「それと」

 

「何ですか?」

 

「良くやったな。しっかり休め、ファイス中将」

 

「は、はい……」

 

 ファイス中将は翼を広げ、飛ぶように帰って行った。

 

「……それにしても前から思っていたが、ファイス中将は余裕が無くなるとああなるんだな」

 

 ぶっきらぼうな態度くらいで咎めるつもりは無い。ファイス中将如きの粗相を咎めていたら、ガープなど幾ら咎めても咎め足り無くなる。多少の粗相は見過ごしてやるくらいで良いのだ。それに重要な問題は、そんな事には無い。

 

(鷹の目のミホークを殺した……つまり、彼女は既に準4皇級の力を持っていると言う事だ)

 

 鷹の目のミホーク、四皇にすら匹敵すると言われる海の怪物。常に単独で活動し、積極的には海賊として振る舞わない為四皇としては扱われていないが、彼の実力は常軌を逸脱している。それを単独で破ってしまった。

 海軍に準四皇級の力を持つ実力者が現れた、それ自体は大変好ましい。ただ、強いて言うなら

 

(ファイス中将、正に驚異的と言って良い。人格の欠落は変わっていないにも関わらず、実力はあそこまで高まっている。この手の実力者は初めて見る)

 

 人格の不安定さは、全く改善されていないと言う事だ。人格には相変わらず欠陥を抱えたまま、力だけが異常な迄に高まっている。これで海軍大将が、更には後の元帥が務まるか……些かの疑念も残る。

 

(しかし、喜ばしいのも間違いは無い。後は、こちらの導き次第でもあるだろうな)

 

 探知範囲が世界中に及ぶ見聞色の覇気、世界中を射程に収める圧倒的な長射程、そして圧倒的な機動力。彼女の力は最早世界中に及ぶ。彼女から逃れる方法は、それこそ4皇並みに強くなるぐらいしか無い。まあ

 

「だからこそ、不安は尽きないか」

 

 

 

 

「お母さーん、鷹の目のミホークを殺したって本当?」

 

「ええ、本当ですよ。私がミホークを殺しました」

 

「ええっ凄ーい!」

 

 ウタはキラキラした目で私を見る。そんなに楽しい話じゃ無いんですけど。

 

(巨人族の伝統的な技を勝手に盗用して、しかも自己流に改造した技で撃破したんですから、あんまり褒められた物じゃ有りません)

 

 覇天、何て言っては見たけど、あれは正直褒められた技じゃない。覇国を参考に、覇海を作ろうとして結果的に出来上がった、中途半端な失敗作。

 

(見聞式による未来予知を用いて、未来において覇国が撃たれる瞬間を捉える。その瞬間を見取って再現し、覇国を複製した結果が覇天)

 

 いずれ何処かで撃たれるであろう覇国を元に、自分で使うための独自解釈を加えて作り上げた代物。正統的な訓練は一切していない。覇天だけじゃなくて、占いもこうやって覚えた。

 

「ヨホホ、どうかなさいましたか?」「はぁ、いつの間に来たんですか、ブルック」

 

 骸骨のブルックは、いつの間にかここに来ていた。ブルックは最近、ウタにピアノや声楽のレッスンを付けるようになった。割と頻繁にこの部屋までやって来るのだ。

 

「ねーお母さん、そう言えば、お母さんはピアノ出来ないの?」

 

「ええ、出来ませんよ」

 

「えー勿体ない。お母さんもやろうよー、折角の機会だしさぁ、ほら」

 

「私は、ずっと海賊を殺す事で頭が一杯でしたから」

 

「ヨホホ、だとしたら尚更やってみては如何です? お嬢さん」

 

「はぁ……」

 

 その後、いきなり超絶技巧練習曲まで覚えたのは別の話。

 

「うわぁー何これ気持ち悪い。お母さんって才能あり過ぎでしょ……」

 

「ヨホホ、やはりお嬢さんは素質がございますねぇ」

 

「そうでしょうか……」

 

「それとパンツ見せて下さい」

 

「死ね」

 

 

 

 

「はぁ。ヒグマ、ウルージ、首領クリーク、全部殺さなきゃ……」

 

「いや、何なんですかそれ……」

 

「何でも有りませんよ、中佐」

 

 私の部下、前まで少佐だった彼は、最近出世して中佐になった。つまりは、彼もいい加減自分の船を持つ頃合いなのだ。誰かの下に付く側から、誰かの上に立つ側へ、段々と変わろうとしている。

 ……それに、最近はなんと武装色の覇気まで覚えていたのだ。才能が無い一般海兵にしては正に破格では無いだろうか。

 

(彼もそろそろ独り立ちを……ああ、そうでした。思い出した)

 

「ああそうです、中佐。貴方にも今からキングパンチを覚えて頂きます」

 

「はっ? き、キングパンチ?」

 

 

 

 

「うおおお、ぐ、ぐえぇっ」

 

「ふむ、こんな物ですか。訓練は明日もやりますよ」

 

 部下達を対象として、実験的に実施したキングパンチの教習は散々だった。中佐では初歩の初歩にすら立てずにいる。まぁ、これはゆったりやりましょう。

 

「そもそも、キング、パンチって、何なん、ですかっ……」

 

「そうですね。キングパンチとは、新世界のプロデンス国王、エリザベロー二世が用いる特殊なパンチの事です。キングパンチは1時間ものウォーミングアップを要する代わりに、四皇ですら沈めると言われる破格の威力を持ちます」

 

「無理! 無理です! そんな凄い物覚えられる訳有りません!」

 

「覚えて下さい。貴方程度の力でも、四皇相手の戦力に数えられる数少ない手段です」

 

「四皇の相手なんてそれこそ無理ですからぁぁぁ!!!」

 

「海軍に居る以上、いずれ四皇とも正面から激突せざるを得ないのです。腹を括って下さい」

 

「な、なぁ、それ何やってるんだ? ファイス姉さん」

 

「おや、いらっしゃいましたか。ロー」

 

 訓練場にやって来ていたトラファルガー・ロー。理由は、恐らくは偶々だろうか。私は言う。

 

「キングパンチの教習を施していました」

 

「キングパンチ? な、何だよそれ」

 

「そうですね、キングパンチは……」

 

 キングパンチについて、私は一通り説明する。説明した、その後

 

「そのキングパンチって、おれでも覚えられるか?」

 

「不可能では無いと思いますが……覚えたいですか?」

 

「うんっ覚えたい!」

 

「……そ、そうですか」

 

 思案した。ローにキングパンチを覚えさせても良いのか。覚えさせた場合、不味い事になる可能性は有るか……そして

 

「良いでしょう。今からでは遅いですから、訓練は明日からです」

 

「えっ良いの!? ありがとっ!」

 

「ええ、構いませんよ」

 

 それにしてもローの表情、気付かない内に随分と変わりました。

 

(それにこのキングパンチも、覇天と同じく無断の盗用品です。まぁこの程度事で、手段を選んでる理由もありませんから)

 

 申し訳ありません、エリザベロー二世。私は密かにそう思っていた。エルバフにもごめんなさい、でもまあ勝手に使うんですけど。

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