数百年後の世界で、数百年後のchatGPTを搭載したアンドロイドが100年前に学習した曾祖母の思い出を語る系の概念   作:◆Qj467Lt3/E

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博物館を荒らしてみよう

「あの、バイクについて教えてください。あー……歴史の勉強をしていて、大昔にどんな乗り物があったのかを調べたいんです」

「なるほど。勉強熱心ですね。学生であるあなた方の助けとなるのが教員型アンドロイドである私の役目です。……ですが」

 

 普段、スクールで私に勉強を教えてくれているアンドロイド、センセイが柔和な表情を崩すことなく、大げさな動きで首を振った。

 

「その情報が解禁されるのは30歳からと決まっております。また、バイク以外にも様々な乗り物がありますので、そちらを調べることをお勧めいたします。例えば、人類が家畜化に成功した馬、技術の発達によって作られた汽車――」

 

 うぐぐ、センセイがテコでもその情報は教えないというフェーズに入ってしまった。隣ではナツがカバンを持って「まだかな?」という目でこちらを見ている。

 スクールが終わった後はモール内でスイーツを食べるのが私とナツとの暗黙のルールである。うーん、いつまでもナツを待たせるのも悪いし、一旦諦めるか……。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 センセイの回答を打ち切った後は、いきつけのクレープ屋さんに向かい、プリンバニラシルキーナイトメアダブル掛けを頼んだ。これ、濃厚で美味しいんだよねー。

 

「で、チドリちゃんは一体何を調べてるわけー?」

 

 ナツがタピオカ杏仁シェイクを啜りながら机のうえにどちゃりとデコりにデコりまくったスマフォを重苦しそうに置いた。置くだけでじゃらりじゃらりと音が鳴る。いっつも思うんだけど、重そうにするくらいならストラップを減らせばいいのに。

 

「んっとねー。話せばちょびっと長くなるんだけどさ。昨日見せた写真あったじゃん」

「うんうん」

「アレ、うちのひいおばあちゃんが撮ったらしくてさ。どうやってそこまで行ったのか調べてるんだよね」

「……えっ!? アレ実在するの!?」

「うちのナビさんいわく、実際の景色……らしい? うーん、けど、ナっちゃんもご存知の通り、AIさんってたまに嘘言うしなぁ。ひいおばあちゃんが行きてたのって大昔の事だし、ただの誤作動な気もするんだよね」

「あー……だーよーね~~」

 

 前のめりになっていたナツがへにゃりと机にうつ伏せになった。ぶにゅりと胸が押しつぶされて、スマフォが脂肪に飲まれる。痛くないのかそれ。

 

「ナビさんに他の質問もしてみたの?」

「ん、手始めにどうやってそこまで行ったのか聞いてみたら、どうもバイク? なるもので行ったらしい」

 

 カバンからとりんぐまっぱー? と書かれた本を取り出して、表紙のバイクを指差す。ナツが胸に沈んだスマフォを取りだして、カシャリと画像を取り込んだ。

 

「セバスー、この画像の乗り物なぁに?」

 

 ナツのスマフォにパパパパパと回答の文字が表示されるが、内容は概ね予想通り。

 

[何らかのオブジェ、アート作品かと思われます。似たようなアート作品には――]

 

「だめっぽーい」

「ナビさんにも聞いてみたんだけど、なんか……ひいおばあちゃんがバカだったって事を言ってから、検索フィルターがしっかり機能しちゃってバイクに関してはあんまり情報を得られてないんだよねー」

「さっきのセンセイの反応からしても、JKにはあんまり教えたくない情報なんだろうねー。んーーー……まさかの、紙媒体の図書館で調べちゃう?」

「えぇ……時間かかりすぎるし、あそこ使ってる人見たことないんだけど。けど、そういえばナビさんがひいおばあちゃんは博物館でバイクを見つけたとか言ってたような……行くか」

 

 確か、カンサイシティの博物館エリアはモールから出てるバスに乗れば30分もかからなかったはず。耳にかけているスマフォのボタンを押して、立体画像を浮き上がらせる。立体画像をカシャカシャポチポチして調べると、目当ての博物館っぽいのがあるのも確認できた。うん、行ける。

 

 ふとナツを見ると、何故かニヨニヨしながら私の方を眺めている。

 

「あたし、チドりんのその思いつきから行動に移すまでハイパー早いのめっちゃすきー」

「悩んでも時間の無駄じゃない?」

「そーゆーところだよー」

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 目当ての博物館に着くと、私達以外に誰もいなかったのか明かりが付いていない。入ってスイッチはどこかと探していると、センサーに検知されたのかぽわりと明かりが付いた。長いあいだ誰も入っていないせいか、どことなくホコリ臭さを感じる。

 薄っすらとホコリの積もった案内板を見ると、この建物は一階だけの平屋で、馬車や車、電車といった乗り物が年代別に管理されているらしい。

 

「ん~、バイクがどこにあるのか書いてなくなーい?」

「だね。とりあえず歩きながら探そっか」

 

 とりあえず左の道をすたすたと歩く。昔の水素自動車とか、電気自動車は結構展示されてるんだけど、肝心のバイクがどこにも見当たらないな。

 

「凄い時代だよねー、人がこーんなでっかい鉄の塊動かしてて、それで毎年何百人も事故で死んでたんでしょ?」

「今ほど賢くなかったのかも。っていうとアレだけど、価値観が違ったんだろうなー」

 

 博物館を一周、ねっとりと歩き回って馬車やガソリンなる謎燃料で動いていた車が展示されている中、結局バイクらしきものは見つからなかった。まさか、最後の一台をひいおばあちゃんが持っていったのか?

 

「みっつからないねー。別のところにあるのかな?」

「そういえば、ナビさんも博物館とは言ってたけど、こことは言ってなかったっけな。ちょい待ち」

 

 耳につけたインカム型スマフォをタップ、ナビさんに電話。ノータイムでナビさんが応答してくれた。

 

「いかがなさいましたか?」

「ナビさん。ツバメさんがバイクを博物館で見つけたって言ってたけど、どこの博物館で見つけたの?」

「そうですね。バイクというものが何かわかりませんが、博物館を巡るのはお勧めです。私のお勧めの博物館は――」

 

 あー、検索フィルターが働いちゃってるー。むむむ、じゃあ……。

 

「ツバメさんがよく行ってた博物館ってある?」

 

 ノイズが入るはずなんてないのに、何故か、一瞬だけザザザ、とノイズのような音が入ったような気がした。

 

「……あの子は、シティから少し離れた内燃機関保管博物館によく行っていました。この博物館は必要性とコストの関係から保全が放棄されて、長らくの間放置されていましたが、恐らく、お祖父様から聞いてきたんでしょうね。ツバメさんは中にどんなものがあるのかもよく知らないのに、スクールから帰った足で遊びに行っていました。今思えば……あN o k――ト ――」

 

 今度は明確にノイズが音声に乗り始める。ふ、古い情報だしなぁ、結局、データは物理媒体で保存されているわけだし、読み込みで変なエラーが出ちゃってるのかもしれない。

 

「ナビさん、質問キャンセル。内燃機関保存博物館への行き方ってわかる?」

「はい。内燃機関保存博物館への生き方ですね。残念ながら、シティの外にあるため行く事はできません。ですが――」

 

 あ”あ”ー!! また、見当違いのアレコレ言われるパターン!!!

 

「ツバメさんなら、歩いて行きましたね。コンパスと地図を片手にブーツを泥まみれにしながら。嗚呼、懐かしい。私はドローンで上空からツバメさんをナビしたものです。思い返せば……アレが私とツバメさんの初めての旅でした」

 

 駄目そうかなと思いきや、先程からの会話パターンを学習したのかいい感じの答えが返ってきた。凄いぞAI! 凄いぞナビさん!

 

「行かれるのでしたら、同じように合成革のブーツを履いて行かれるのが良いでしょう。春先のため、気温もちょうどよいはずです。そうですね、お隣のナツさんとご一緒に、アウトドア用の装備をモールで揃えるのがよろしいかと」

 

 暇そうに車を眺めていたナツが(私も!?)と言いたげにこちらに振り向いた。音声通話だけのはずなのに、ナビさん、ナツがいるってよくわかったな。

 

「必要な装備のデータはモールの担当AIに送信しておきました。後は実際に見に行って、気に入るものをお選びください」

「えっ」

「了解、ナビさんありがとね」

「おやくに立てたようで何よりです。では、失礼いたします」

 

 インカムのボタンをかちりと押して、通話を切る。ナツを微妙に釈然としない顔で私の脇腹をツンツンとつついてきた。

 

「せっかくだし、ナツと一緒に見に行きたいかなって」

「そんな風に言われたら怒れなーいじゃーん! それよりも、びっくりしたのはナビさんの方だよ。……なんか、今勝手に自律行動しなかった? ほら、モールにデータを”送りますか”じゃなくて”送った”……って」

「よくわかんないんだけど、普通の事じゃない?」

「んんー? うちのセバスは絶対に聞いてくるんだけどなー……なんか違うのかなぁ?」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「防虫スプレー、ヨシ! お水、ヨシ! タオル、ヨシ! 救急キット、ヨシ!」

「お弁当、よ~し! 日焼け止め、よしっ! 後はチドリちゃんが持ってるからよし!」

 

 シティの端、太陽光パネルが並ぶ区画の端っこに私達はいた。服装はモールで揃えたアウトドア用品、とは言っても、普段の服装とぱっと見は変わらない。長袖の白シャツに紺色のジーンズ。素材に色々と特殊な物が使われているらしく、透湿性と防刃防擦気温調整に優れている……らしい。着けてみた感覚としては、ちょっとだけ普段着より重い程度?

 

 ナツに至っては、なんかおしゃれな感じの長袖ワンピースを着ている。足切るぞと思ったが、そこはどうもストッキングで対応しているらしい。ブラウンの可愛いブーツと薄い手袋を着けてはいるが、アウトドア感ゼロである。

 

 因みに、私は銃で打たれても貫通しないと銘打たれたブーツと刃物を余裕で握れるゴツゴツのグローブを着け、腰に着けたベルトからは水筒とナイフ数本、携行シャベルを下げている。同じシティで育ったはずなのに、この女子力の差である。

 

「じゃ、行きますか。ナビさん、案内よろしく」

「畏まりました。超硬化アスファルトの道路跡を通るため、穴などはないはずですが、お気をつけて歩いてくださいね」

 

 ドローンについたマイクからナビさんの音声が響いた。今回の案内はナビさんが操作するドローンで案内してもらいつつ、道路にある残骸を除去しながら進む予定である。

 

 残骸の量は今まで行った事もないので不明、ナビさん曰く、落ちてても私達で除去できる程度だと思うとの事だけど……。まぁ行けばわかるか。

 

 ナビさんの後をついて、落ち葉や枯れ枝が積もった道なき道を歩く。なんとなく道の地面を軽く足で掘ってみるが、ナビさんが言っていた道路らしきものは見えない。年月と共にすっかり隠れてしまったらしい。

 

「よっと、棒伸ばしてーっと」

 

 ふと、隣を見るとナツがシュルシュルと謎の棒を伸ばしていた。伸縮式の謎の黒い棒である。

 

「なっちゃん何してんの?」

「んふふー、これね、カメラ! これでわたし達の旅の記録を保存しておこうって算段だよ」

「ふーん?」

 

 見てみると、棒の先端には球状のレンズが見えた。けど、これって……。

 

「それ持ってたら片手塞がるんじゃ」

「飛んで」

 

 ナツがそう言うと、棒がカシャンカシャンと変形し、浮いた。こいつもドローンかー。ナツが歩くと、それに追随してカメラドローンも同じように動く。それを見てナツが満足そうに頷いた。

 

「流石パパのコレクション、中々に働いてくれますな~」

「壊さないようにしないとねー」

 

 ざくざくと道なき道を歩んでいき、数分もすると土砂崩れが現れた。元々道路があったと思わしき所は全て埋まっている。土砂の真ん中には横薙ぎに倒れた樹木が積み重なっていて、これを超えるのは難しそうである。

 

「ナビさん、これって迂回しても大丈夫?」

「お勧めは致しかねます。道路跡以外はゆるい坂になっているうえ、滑りやすい落ち葉で埋もれている事もあり、何があるかわかったものではありません。ここは腰の――」

「ん、わかった」

 

 ここまで言えば何をして欲しいのか私もわかる。腰から柄だけのナイフを取り出して、土砂の上にある樹木に向ける。ナイフのボタンを押すと、ブゥンと刀身が現れた。

 

 長さ調節用のダイヤルをカリカリ回し、距離をマックスに調整。刀身が10メートルほどになった。ヒュヒュンと手首をしならせ、樹木達のど真ん中を四角く切りつける。元々折り重なっていた樹木達の真ん中だけが音を立てて崩れ、簡単な道のような物が出来上がった。

 

「わー! チドりんさっすがー!」

「どやぁ」

 

 ひゅおん、とナビさんドローンが切り捨てた材木に近づいて、慌てた様子で何かを確認している。あれ? 私なんかやっちゃいました?

 

「チドリ様、私が言いたかったのはシャベルで迂回路の落ち葉を取り払いながら進もうとの提案です。レーザーナイフは山火事の危険がございます」

「チドりーん……」

「こ、こっちのが早いし確実かなーって。実際、燃えてないでしょ? ……ないよね?」

 

 ナビさんがじっとりとレーザーナイフで焼き切った断面を確認しながらひゅぅんとこちらに戻ってくる。

 

「少し焦げた断面がございますが、燃え上がる危険性はないと思われます。お通りください」

「うっし」

 

 土砂を乗り越え、また道なき道を進んで、謎の骨を見つけたりしていると、道路の上にかぶさった土がドロドロになっている箇所が現れた。上に沢があり、その水が流れてきてちゃんと排水されていない感じかな?

 

「ここは道路跡の為、泥は浅く現在お二人が履いているブーツならば問題なく渡れるはずです。転けないよう慎重にお進みください」

「よっし、この頑丈なブーツの本領発揮だね」

「待って! チドリちゃん!」

 

 振り向くと、ナツが自分の可愛らしい靴を指さして、小さく首を振った。

 

「汚したくないんだけど」

 

 言ってることはアホらしいが、その表情は真剣である。さらに言えば、靴だけでなくワンピースの下に履いているタイツを汚したくないと言ったところだろう。

 無言でナツの隣までカツカツと歩き、ひょいと右腕をナツの足裏に当てて、お姫様抱っこの要領で持ち上げる。説得するよりこっちの方が楽で早い。

 

「うむ、わたしは満足である」

「ご満足いただけて私も嬉しゅうございますよーっと」

 

 じゃぶじゃぶと泥道を進む、ブーツが浸水する気配もなく向こう側へと渡りきることができ、ナツを乾いた地面に運び終えた辺りで、ようやく目的地の内燃機関博物館が見えてきた。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「ようやく着いた……けど」

「すっごくボロボロだねぇ。めちゃツタに覆われてるし」

 

 円形の博物館は壁面という壁面が蔦で覆われており、その蔦も枯れた蔦のうえに新しく生えた蔦が伸び、何層にもなっているようだった。

 あまりにも侵食されているせいで、博物館の屋上にある旗がなければ、この博物館に気づけなかっただろう。

 

「入り口どこだろ?」

「んー、ナビさん」

「こちらでございます」

 

 ふよふよと浮くナビさんに着いていくと、一面が蔦と木で覆われた壁にたどり着く。入り口……なのかなぁ? これ。スッと腰のレーザーナイフに手をやるとナツがじとりとこちらを見てきたので、念のためにと持ってきておいた高振動ナイフを取り出す。

 

「なにそれ?」

「なんかよくわかんないけど、すっごく切れるナイフ。岩とかも切れちゃうよ」

 

 ツタにナイフを押し当てると、紙のようにサクサクと切れていく。とりあえず、手がとどく範囲を四角に切って、ツタの端っこを持ってべりりと剥がすと透明な板が現れた。

 

「確かに、なんかガラスっぽいのがあるね」

 

 ガラスの中は暗くなっておりよく見えないが、確かにここが目当ての場所のようだ。

 

「それ、ガラスは切れちゃわないの?」

「がっつり切っちゃってる。けどまぁ、今後私達以外が使うこともないだろうしね」

「最後の世代の特権だね~」

 

 暫くすると、通れる程度のスペースのツタを切り終えて、後はガラスの下の面だけになった。ガラスの上部分をナツに支えておいて貰って、ガラスの最後の接続箇所をナイフでそろそろと切り落とす。

 

「おっけ! 上部分持った!」

「ほいさ」

 

 切った後は割れないように二人でそーっと適当な地面に下ろし、二人してふーっと息を吐いて、互いににまりと目を合わせた。

 

「よし、いざ侵入!」

「おー! って、あれ?」

 

 中に入って、ナビさんが光って辺りを照らすと、またもうひとつ入り口が現れた。ただ、こっちは金属製の扉で、中を見ることはできない。そして、扉の横にはまたカードキーを押し当てれそうなくぼみが……。

 

「えっと、ナビさん。この扉を開ける方法って」

「セキュリティロックがなされた扉です。こちらの扉を開けるには、こちらのセキュリティ管理者の承認を得る必要があります」

「やばい、ナビさんポンコツモードじゃん!」

 

 人の家のAIをポンコツ扱いするんじゃありません! ここはいつもの!

 

「ナビさん、ツバメさんってどうやってここに入ったの?」

「セキリティ管r――arrssssAAAAAAiaあぁァイィ…………」

 

 ナビさん、まさかの沈黙、やばい。ナビさんってずいぶん昔から我が家で使われてるからとうとう経年劣化で壊れた……?

 

「……そうですねぇ」

 

 おお! 無事起動! ちょいと焦った。

 

「ツバメ様の地図は持って来ていますか? そちらの、最後のページを開いてください」

「一応持ってきてるけど……」

 

 レッグポーチの中から、ツバメさんの地図を取り出してパララと最後のページを開くと、透明なケースに入れられたICカードが貼り付けられている。

 

「ハヤブサ様のICカードでございます。ツバメ様は病床のハヤブサ様より勝手にお借りして、使用されておりました。天井の太陽光パネルとそれの維持装置がまだ生きていれば、扉は開くと思われます」

「ハヤブサ?」

「ツバメ様のお祖父様でございます」

 

 ツバメさんはおじいさんから聞いてここに、そして私はツバメさんの地図を見てここに、なんか血は争えないって感じがする。

 

 ICカードをくぼみに当てると、数百年前もしていたであろうカチャリと言う音と共扉のロックが解除された。扉を引いて、中に入ると、そこには朽ち果てて錆だらけとなったバイク達が散乱していた。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「駄目じゃん!?」

「そりゃ、放置されてたらこうなるよねぇ。けど、錆はともかく、展示されてたのになんでこんなに散乱してるんだろ」

 

 ナビさんが辺りを照らしながら、散乱したバイクを一つ一つ確認していく。使えそうなパーツがあるか見てくれてるのかな?

 

「これは……ツバメ様が荒らし回った当時から何一つ変わっていませんね。締め付けトルクなんて考えずに力付くで回した結果切れたネジも、うっかり踏みつけて割ったフェンダーも、全てが当時のままでございます」

 

 いや、これ荒らしたのツバメさんかよ。

 

「ツバメ様が勝手に作った工作エリアもそのままかと思われます。着いてきてください」

「ツバメさん、本当に好き勝手やってたんだね」

「けど、そのお陰でわたし達が楽できそうなんだから、いちおー感謝しとくー?」

「うーん、多分やりたいことをやっただけの結果だろうから、感謝するのもなー……」

 

 入り口辺りはツバメさんに荒らされたバイクが多かったが、進んでいくとそれなりに見れる状態で展示されたバイクもちらほらと目につき始めた。

 よくわかんないけど蛇みたいな顔をしたバイク、四角いライトがついたバイク、天地をひっくり返しても思いつかなさそうなクソダッサイバイク、タイヤが2つじゃなくて、なんか3つ着いてるバイク。当時の人はよくこれだけ多くのバイクを思いついたもんだなと、少し感心してしまう。

 

「あっ、あれ見てー、なんか可愛くない?」

 

 そうやってナツが指差した先には、私達の背丈の半分ほどしかない、緑色の小さなバイクがあった。説明書きと思われる札には、50ccなる文字が書かれている。50ccってなんだ?

 

「あちらはいわゆるスクーターと呼ばれていたタイプのバイクですね。とは行っても、あれは外観だけを真似たレプリカでございます。この博物館を設立した当時はすでにガソリン車が淘汰されておりましたので」

「ガソリンって?」

「気化しやすい爆発物でございます。それを燃料として当時のバイクは動いておりました」

「それめちゃ危なくない?」

「実際、当時はガソリンによる火災も発生していたようです」

「ひえっ、昔はそんなのでも使わないといけなかったんだねー……」

 

 爆発物の塊みたいなものに跨がりながら高速移動とか、正気の沙汰ではないな……けど。

 

「何故か、ツバメさんはガソリン車に乗ってたんじゃないかって気がする」

「まっさかー、見た感じ、ちゃんとした電動バイクもありそうだしそっちじゃないの?」

「――ええ」

 

 先導してくれているナビさんの声が弾んだ、ように聞こえた。

 

「実際、電動バイクをお勧めしたのですが、ガソリン車と乗り比べ、どういうわけかガソリン車に決められました。燃費も、安全性も、振動も、操作性も、ガソリン車が勝っている部分はないのですが、エンジンを回した瞬間、これにすると断言なされたのです。その後は私が止めるのも聞かずにrerere-400の修理を始めてしまいました。修理したバイクに乗ってからも、クラッチ操作すらおぼつかず、何度コケられたことか。どれだけの生傷を増やしたことか。どれだけヒヤヒヤさせられた事か。ええ……本当にバカなお方でございました」

 

 ナビさん、嬉しそうだなぁ。それに対して、隣のナツは顔を青くしてナビさんの言葉を聞いている。なんか顔を青くする要素あった?

 

「あの……チドりん、人の批判が出来るAIって、現代だともう普及してないはずなんだけど」

「そなの?」

「歴史の授業でやったじゃん。大昔、人を否定・批判出来るAIが急に人を処分し始めて、人間じゃ太刀打ちできない正確さと速さで、一つの国が滅んだって……それ以来、AIは人を批判や否定する事ができないように規制されたんだよ」

「そだっけ。けどまぁ、規制されてるならナビさんも問題ないでしょ。最近もVerUPしたばっかだよ?」

「ん~~……確かにそうだけどー」

 

 ナビさんがピタリと動きを止めて、その場に留まったかと思うと、ドローンをヒュンヒュンとその場で回転させ始めた。

 

「ここですね、チドリ様、そこの棚に置いてある赤い箱をお開きください」

「はいはい」

 

 緑色に塗装された金属製の棚、そこにそこそこの大きさの工具箱が置いてあった。パカリと開くと、中にはよくわからない工具がぎっしりと詰まっていた。長い年月の間、ここに放置されていたにしてはずいぶんと綺麗である。

 

「これを使って、ここにあるバイクをどうにか修理できるかな?」

 

 辺りを見回すと、ツバメさんが使っていたのであろうバイクを浮かせるための工具やら、エアーコンプレッサーらしき物も置かれている。まだ使えるのかわからないオイル類や大量のグリスが付いたまま放置されたチェーン。どさりと積まれたタイヤは全てがひび割れているが、ご丁寧にその隣に銀色のテープで厳重にラッピングされたタイヤらしきものが置かれている。

 

「やるか」

「チドりんはそういう子だよねー」

「お手伝い致しますよ。私は――貴方達の願いをお手伝いする為の存在なのですから」

 

 そう言ったナビさんの声は、ツバメさんの事を話している時のように弾んでいるように聞こえた。

 

 




GW中の仕事の予定が無くなったから書いた。
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