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突如発生した異変に、駆けつけてみれば、
「___説明せい、いったい何が起きたんだッ!?」
「……きゅ、急に頭上の空間に裂け目が開いて、その中に御三方とも……吸い込まれてしまいましたッ!」
唯一現場を目撃した証人/若い侍従は、わけのわからないことを世迷言を出すのみ。
あまりにも素っ頓狂な『言い訳』に、目を丸くしてしまう。がすぐに、怒鳴り返してやった。
「空間に裂け目? 吸い込まれた? ……バカも休みやすみ言えぃ!」
叱りつけると、侍従はさらに恐縮するのみ、地面に頭を陥没させるようかとするほどにも。
(……話にならんな)
『空間に裂け目』など、そんな異変が起きるわけがない。しかも、この[土の神殿]の中で最も魔力的防御力の高いココ/祈祷場においてだ。どんな力持つ魔法詠唱者でも破るのは不可能な聖域だ。
もしも万が一にもそんな異変を起こせるとしたら、それこそ……。
怒気は収まらないが、役に立たないのなら仕方がない。
周りを見渡す。
『消えた』などトリックに過ぎない。異空に飲み込まれたかのように見せつけただけで、まだこの神殿内の何処かに隠れているだけ。コチラの混乱と警戒が緩んだ隙に外に逃げ出す算段だろう。
かつて一度、同じような詐術に引っかかっては、法国の秘宝を奪われてしまった。神官長たちの面々の前で赤っ恥をかかされたのは、苦すぎる思い出だ。……あの小娘め、思い出しただけでも腸が煮えくり返ってくるわ!
(今度こそは、騙されてなるものか―――)
「___しかし神官長。巫女姫様たちが消えてしまったのは……事実ですよ」
後ろに控えていた副神官長が、このマヌケを助長してきた。
思わず振り返り、睨みつけた。……こんな妄言を信じるほど、頭の緩いやつではなかったはずだが、鍛えたりなかったか?
それで恐縮して目を俯かせるも、意見を改めるつもりがないのは顔に書いてあった。
「もしも、誰かが拉致したとしたら……マズい事態になります。我らにとってはもちろん、法国にとってさえも」
「わかっておるわ! だから探しておるだろうに」
「……どういうことですか?」
「わからんのか? ……まあ良い。
そんな苦言など言う暇があったら、さっさとココを封鎖しろ!」
ここまで使えん奴だったとは……。耄碌してしまったのか? そうではなかったと思いたいが、コヤツがこの調子では引退など程遠い。
吐き捨てる命じるも、副長は戸惑うばかり。周りの部下たちも同様に動揺している。
「……何をしておる。さっさとせんかッ!」
怒鳴りつけると、ようやく動き出した。
しかし副長は、まだ動かず。むしろ訝しりを深めたかのように、
「……神官長、何ゆえの封鎖なのですか?」
「決まっておるだろう。犯人たちを逃がさぬためだ!」
皆まで言わせるな―――。そう叩きつけるように説明してやると、ようやく得心がいったように目を丸くした。
しかし……、次にくる反応は、予想していたのとは違った。
「……ココに犯人など、いませんよ。隠れてもいません」
「ならば、どこにいるというのだ?」
「それは……、そこな侍従の言ったとおりかと」
ふたたび注視をあびると、侍従は上げかけていた頭をまた地べたへと伏せた。
「あの『裏切り者』の時とは、事情が全く違います。内通者がいたわけでも警備の隙を突かれたわけではなく、まさに突然……だったはずです」
「異空への裂け目が開いて、そこに吸い込まれた……というわけか?」
「ありえないことではありますが、現実の唯一の出入り口であるココからは不可能です。幾百の警邏に気づかれず侵入し、あまつさえ3人を連れ去ることなど。【漆黒聖典】の上位者ですら不可能でしょう。もしできたとしても、なぜあの3人なのかも不明です。
ソレらを鑑みると……、そうとしか考えられないかと」
整然と推論を並べられると、吐き出そうとした罵倒は飲み込まされた。
そして気づかされた。自分があの裏切り事件に囚われていること、侍従の言葉を頭から否定したことに。……頭に登った血を、冷まさねばならないと。
「……仮に、コヤツの妄言が全て事実だとする。姫は侍女ともどもに攫われてしまったとも。
そんなだいそれたことができる奴らとは、いったい……
口に出してみて/認めて初めて、背筋が凍りついたのが分かった。
異空を切り裂いて、人間を連れされる存在。神殿の防壁などものともしない。そんな大魔法を平然と行使できる存在は……人間ではありえないと。
そこからさらに、不遜なる考えが浮かんでしまう前に、
「___姫様がたは、予言された【破滅の竜王】の所在を探っておりました。
此度のことがもし、ソレと関わっていたとしたら……?」
「【竜王】が、拐かしたと?」
斜めからの推察に驚かされるも、ありえることではあった。ただかの【竜王】が、そんな搦手を使ってくるとは、予想していなかった。
思い至ると、また別の意味で肝が冷えた。ただ破壊を撒き散らすだけ、天災のような認識でしかなかったが、実は人間並みの知性と悪意をもっている。今回の事件がその証拠だ。……危機感の足りなさを痛感させられた。
ただそのおかげで、冷静にもなれた。……予言と全てつながっていると分かれば、なすべき道はひとつだ。
「……どちらにしても、同程度の大災厄とみて間違いないな。
【漆黒聖典】の面々に伝えろ! 直ちに対処しろと―――」
号令すると今度こそ、部下たちは足早に動き出していった。
◆ ◆ ◆
人里離れた小山にできた洞穴。盗掘されて久しい円墳墓を、それなりに補強して作り直されてる。数十人の人間が群がり雑魚寝するぐらいには広大なアジトとなっている。
そんなアジトの奥、入口から中に入れば入るだけ、聞こえてくる反響音。それは最奥に近づけば近づくほど、男たちの怒号と野次に、若い女性の悲鳴じみた声が混じり合っているものだと分かってくる。
空気の循環/換気など考えていない。もちろん部屋の掃除も、自分たちの清潔さすら頓着していない。そんな澱きっているだろう中の空気は、べっとりと張り付いてくる猛烈な臭気まで連想させてくる、まるで暗渠のようだとも。
さらに/止めにも、『喧騒』を傍らにしながらも平然と、蕩けている若い男。壁に背を預けながら、ぼんやりと天井にむけたその口からは、吐息とともに白煙がホクホクと吹き上がっていた。大量にふかれただろうソレのおかげで、天井が白く烟っているほどだ。
「___
そんなはんば夢見心地な若い男が、『喧騒』の片割れである半裸の男へ気楽に声をかけた。
しかし半裸の男は、返事をせず無視。より『喧騒』を騒がしくさせんと、汗まみれに鼻息を荒げながらも集中している。
「……新団長? 新団長ってば! 話聞いてますかぁ?」
「うっせぇなッ! ヤってる最中に話しかけんな―――、オゥッ!」
たまらずか激昂するも、ブルリと全身を強ばらせた、まるで電撃が走り抜けたかのように。
それまで激しく波打たせていたのも止め、両手で掴んでいた『モノ』を思い切り引き寄せた。身体をくの字に力み上げると、獣のような雄叫びをあげた。
―――最大音量の『喧騒』は数秒後、急に静まり返った直後、周囲によりいっそうの臭気がまきあがった。
その元凶たる半裸の男は、気にせず。むしろ、スッキリとした笑みまで浮かべていた。
「プハアァァ~ッ・・・・。すっきりしたぜ!
やっぱ女は使い古しなんかよりも、新鮮に限るな」
「ウウッ、そんな・・・・、こんなのって・・・・」
押し殺したように啜り泣く全裸の女から身体を離すと、その場にドカリと尻をつけた。
「そう言えばその娘、今回の『戦利品』でしたね」
若い男から使っていた煙管をわたされると、勢いよく吸い込んではプハァッと、紫煙を吹いた。……また一段と、臭気が濃くなっていく。
「そうよッ! 我ながら全くもって、良い采配だった。縄張りに固執して敵対なんかしてたら、こいつを……味わえなかったしなぁ」
言いながら爪先でツンと軽く太ももをつくと、女はビクリと震えた。顔を見せずとも恐怖が溢れ出ていた。……そんな怯えた様子に、男はまた気分を良くしている。
「奴らが暴れてくれたおかげ、俺たちは堂々と『商売』ができた。何のリスクもなく、罪は全部奴らにおっかぶっせられる」
「今まで手つかずだった村を『乱取り』できたのは、ありがたかったスねぇ」
乱取りじゃねぇ、商売と言えよ……。無作法を嗜めるも、口の端が歪んでいた。
「あの戦士長と騎士団が出張ってきた時には、さすがに肝が冷えちまったが、上手く奴らの方に食いつかせた。……もつべきものは、土地勘ある優秀な部下だぜ」
「俺のことっスね!」
「どの口がほざきやがる、ボケが」
口悪く罵りながらも、気分良くまた紫煙をふいた。若い男も気にせず、代わりの煙管を出しては火をつけ、紫煙をはきだした。……二人が吐き出す臭気が、もう一人の存在をかき消していく。
「殺しの腕前なんかよりも、チャンスを読み取る嗅覚よ!
傭兵稼業で戦場駆け回って死ぬような目に遭うよりは、戦乱に乗じてそこらの村を襲えば楽して女が手に入る。女は抱けば快楽を得られるし、売れば大金にもなる。金は力になって、この【死を撒く兵団】をデカくしてくれる」
【死を撒く兵団】。その名があげられると、半裸の男の肩に描かれた刺青へと注意がいった。若い男も、自分のソレに意識が向けられたのがわかった。……この穴蔵にいる全ての男たちが、仲間なのだとの証拠。
「
「手前がやってることは何か、商売てものが何なのか? 頭の中まで筋肉だった奴には……難しすぎたのかもしれねぇな」
互いに感慨にふけりながら、しかし現われてくるのは嘲りのみ。……ようやくウザかった奴を黙らせたとの、安堵と達成感のみだ。
「奴を始末できたことも含めりゃ、今回のことは一石二鳥。万が一にも、あの戦士長をどうにか始末してくれたら、言うことなしだ!」
「あの【八本指】の奴らが、なに要求してくるかは……少し不安ですがね」
部下が無遠慮に水を差してくるも、団長はかまわず気分を上げる。
「なぁに、今までと同じさ。奴隷と【黒粉】の護送だよ。ちと量が増えて傭兵稼業は減らさなにゃならなくなるかもだが、今まで以上に実入りが増える」
「傘下に入るてことに、なっちまいませんかね?」
「とっくの昔に、入ってたさ!」
キョトンと部下が口を開けたのに、団長は愉快そうに解説してきた。
「一応、体裁は取り繕ってはいるし、戦争ジャンキー共にはウケが良いからな。【ゼロ】の旦那も、ウチの売りをよぉく理解してくれてる。
戦場で腕がたとうとも、いきなり闇社会の【六腕】じゃ倦厭されちまうだけ。が、一応は真っ当な看板掲げてきたウチの兵団だ。まずここで『筆おろし』を済ませてからなら、て感じよ!」
「へぇ……、なんかいい感じになったんスね!」
部下の適当なまとめぶりに、さすがに眉をひそめた。
分かっていようがいまいがどちらでも良いのだと、気を取り直すと、
「とにかく、すぐに取り潰されることだけは無い。下手に逆らわなきゃ、美味い汁もたっぷり吸える。戦乱が続く限り、俺たちは生き延び続ける」
そう断言するや、煙管に溜まっていた灰をパンッと、女の足の上にわざと捨てた。当然女は「つぅッ!?」と足を胸元へ、つけられたそこを涙ぐみながら手でさすった。
思ったとおりの反応をしたためか、団長はカカと笑い声を上げる。つられて部下も、愉快そうに笑う。
「……ただ、ゼロの旦那は侮れねぇ。腕っ節はもちろんだが、頭の方もめっぽう冴えてる。長年従ってきた部下だろうと、役に立たなきゃ容赦なく切り捨てる。家族もいなけりゃ、弱味らしい弱味もねぇときた……。
対抗策の一つぐらいは、握っておかねェとな」
そうひとりごちるや、煙管にまた黒い粉をつめては火を点け……、紫煙をふきあげた。
―――
……
『遠隔視』から意識を戻すと、大きくため息をついた。
(___なるほどな。そういうわけか……)
どうりで、奴らに覚えがなかったわけだ……。そもそも、壊滅させられた村々の半数以上は、あの[陽光聖典]達の責任じゃなかった。あの[死を撒く兵団]とやらが漁夫の利を得た。
ガゼフを確実に暗殺するためとはいえ、さすがにやり過ぎな大被害だった。一応は帝国兵に扮して帝国に責任をおっかぶせたとしても、戦争は待ったなしだ。そして王国と帝国が、小競り合いではない本気の殺し合いをしたら、どちらも国力が激減し……、人間種を守護したい法国の思惑にも反する。ガゼフを暗殺しただけじゃ釣り合いが取れない大被害になるはず。
(……と、それはあっちの世界での話か)
コチラでは、『一騎当千』という言葉が現実のモノとしてある。ガゼフは、弓でしか戦えない一般兵の中、鋼鉄の戦車で蹂躙してくるようなもの。倒すことができたら、士気はもちろんのこと、国防力が大幅に激減するのは間違いない。
なぜそんな必殺の大量破壊兵器を、むざむざ暗殺させるのか? はじめは理解に苦しむ、というか呆れ果ててしまったけど、俺の/あっちの世界の常識観ならば当然のことでもあった。一人の武人に戦局ならびに国防までも左右する力は、無い。もしも王国の大臣達が、コチラでは『非常識』となるこんな考えだとしたら、あっちの世界常識が彼らの中/王国民と貴族たちの教育方法の中に埋め込まれている可能性がある。……プレイヤーの置き土産にしては、ずいぶんと手が込んでいる。
今考えても、答えは出ない。これから確かめるべき事案の一つだ。
(それにしたって、まさかとは思ってたけど……この世界て、あんな盗賊たちが普通にいるのかよ!)
それに、奴隷て……。しかもアレは、いわゆる性奴隷てやつだ。家族や友人・隣人たちを虐殺しておきながら、むしろ嬉々としてヤれるなんて……。変態紳士の[ペロロンチーノ]さんでも、いやだからこそか、ドン引きものの激ヤバ事案だ。
どう弁解しようが、アウトな奴ら。いや、弁解するだけアウトオブ眼中になる、というかしたい。
(どうしようかなぁ。今もうやっちゃっても良いんだろうけど、アイツら下っ端ぽかったしなぁ……)
釣り餌になるかは、微妙だ。切り捨てられるだけなら、もう少し太らせてからでも遅くはない。……彼女たちには大変申し訳ないけど、最適な復讐プランも思いつかない。
(【集眼の屍】もそろそろ制限時間だし、さすがに手を広げすぎてる気がする……)
便利すぎるので、一日4回しかつかえない[上位アンデッド作成]の権限を全て、今の彼が連続顕現できるよう費やしている。最速で再ストックする方法/課金アイテムはあるけど、補充が見込めない今は控えるべきだ。
頼れる前衛戦士がいない。正確無比な周辺情報を提供してくれる彼までいなくなっては、さすがに心もとない。万が一にも敵対プレイヤー、あるいはカンストレベルの敵対者に遭遇したら、殺される可能性がでてくる。……ビギナーズラックには頼れない。
___今すぐは必要ない。後はじっくり腰を据えてやるべきだ。
弱気とは違う。今はもう、やれることは無いだけだ。……たぶんそのはずだ。
そんな迷いは、脳内に送られてきた【伝言】が晴らしてくれた。
『___アインズ様、奴らの調教が完了致しました』
デミウルゴスからの通信。
知らせてくれるよう伝達してけど、予想していたよりもずっと早かった。
『さすがデミウルゴスだ! 仕事が早いな』
『いえ、全てはアインス様のお力ゆえです。
すでに心は砕けており、新たなる『神』を切望している有様。従順な下僕にするのは容易いことでした』
同じことをしたはずなのに、なぜか彼が『下僕』言うと物凄く様になっている。たぶん奴らはもう、太陽の下には戻れないとも。……やはり悪魔だからかな?
どうなるにせよ、罪悪感は浮かんでこない。ようやく収まるべきところに収まった、そんなパズルを解いた達成感があるのみだ。……やはり俺も、アンデッドだからかな?
人間じゃなくなったのは寂しいけど、アレらと同一種族じゃないことだけは最高だ。アレらに比べれば、アンデッドだって悪くないと思える。……気を取り直していこう。
『奴らにはまず、壊して回った村々の掃除と、慰霊碑造りだな。ソレが終わったら―――』
先の[兵団]のことが、思い浮かんだ。見逃すつもりだったけど、奴らを差し向けたらよいのでは?
しばし考えてみた。同じ穴の狢同士で潰し合わせるのが、誰にとっても/俺の心の平穏のためにも相応しいことに思える。けど同時、それだけで済ませて良いのか? ただ殺し合わせるだけでは、あっちの世界でもできること。奇跡も魔法もあるこっちの世界では、ソレ以上のことができる。もっと相応しい報復を与えられる。……なら、やらない理由はどこにある?
実際の問題を考慮してみた。奴らの戦力なら、あの兵団ごときは潰せるだろう。生け捕りにして、新しい『奴隷』にしてやることも。けど、その悪心を潰すまでは……分からない。一人でも取り逃がすなど、あってはならない。ただ、デミウルゴスに指揮を任せたのなら、完璧以上にしてくれるはず。
(問題は、今でも奴らが[天使]を召喚できるかだけど……)
難しいはず。ゲーム時と同じような仕様ならば、今の奴らはカルマ値がマイナスになっているはず。ここではソレでも召喚できるのかもしれないけど、弱体化するのは間違いない。……天使の方も嫌がるだろうし。
かわりに[悪魔]を召喚できるようになれれば良いけど、一朝一夕で習得は難しいはず。使いこなすのにも時間がかかる。……でも、最高位悪魔のデミウルゴスがいれば、簡単なのか?
カルネ村で働かせるとしても、無駄に戦力をもっている奴らは使いづらい。そもそも、奴らはカルネ村に直接被害は与えていない、村人たちも使役しづらいだろう。奴隷は他から賄える。……やはり、後始末に尽力させるべきか。
『―――[死を撒く兵団]と名乗っている、愚か者どもの処分をさせろ。ただできる限り殺さず、同じ奴隷にしてやるようにな』
『かしこまりました。必ずやご期待に応えてみせましょう』
了承の声は、礼儀に満ちた平静ながらとても嬉々として聞こえた。……やる気があるのは良いことだ。
『ただこやつらは、色々と『実験』に使えそうですが……よろしいのですか?』
実験……。なんとも物騒な単語だ。
確かに、試してみたいことはいっぱいある、早めに確認しておかなきゃならないことも。適度に頑丈で魔法も召喚も使える奴らは、かなり最適な『実験動物』になってくれるだろう。
けど、
『構わんさ。どうせこれから、いやでも増えてくるのだからな。『実験』の機会はいくらでもある
その時まで、分からないことを楽しむまでだ』
……あんまりやりたくない。
例えあんな人でなしであっても、生命は生命。魂の方は欠陥品だけど、身体のほうは健康優良児たちだ。ただ自分たちの生存と幸福のためにソレを害するのなら、村人たちを『ゴミ』扱いした奴らと同じになる。心までアンデッドになるつもりはないし、なにより『正義』があると信じたい、ソレは種族も異世界も超えるものだとも。……単なるわがままだ。
わざわざ自分からやらない。必要なら、機会は巡ってくる。……身を任せるのは怖いけど、たぶんソレこそ俺が背負わなければならないことだろう。
『さすがアインズ様、まさに王者の泰然さ! ……浅慮から発言でした、お許し下さい』
そんな優柔不断隠しのヤセ我慢だったけど、ものすごい勘違いをされてしまった。……なんでアレ、不満に思わなかったの?
『……そう畏まるな。おまえは我がナザリックの『軍師』でもあるのだ。
私への忠誠と敬意は必要なことだが、過ぎれば阿りとなる。『奸臣』と変わらないぞ』
ちなみに『軍師』てのは、我がナザリックの諸葛孔明【ぷにっと萌え】さんいわく、王様よりも気位が高いのが当たり前、唯一『大きな顔』をしても認められる/認めざるを得ない存在。特に戦乱時は王様よりも優先される。……だから、俺のことドンドン追い越してね。
そんな切なる責任回避だったけど、やっぱりものすごい勘違いをされてしまった。
『耳に痛きお言葉……。精進に励みます』
めちゃくちゃ恐縮されてしまった……。別に「掣肘を加える」てやつじゃ、なかったのに。
俺は気楽にやりたいだけ。せっかくの異世界を謳歌しただけ。……王様ムーブも、過ぎれば毒でしかないな。
『うむ、共に愉快にやっていこう』
今言えるのは、これだけだ。
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長々とご視聴、ありがとうございました。
感想・批評・誤字脱字のしてき、お待ちしております。