騎士王国ルート   作:ツルギ剣

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激突②

 

 

 身を隠し/目を凝らしながらガゼフは、はるか数km先だろう彼方を確認する。

 

「___……確かにいるな」

 

 等間隔に横一列、押し迫ってくる人壁のように徐々に近づいてもいる。ここから先へと通さないと、囲い込んでくるかのように。

 しかし、あまりにも薄すぎる網だ。騎兵ならば楽々と突き破ってしまえそうだが……、やはりソレは難しいだろう。

 なぜなら、その一人一人の頭上には―――、炎の剣を構えた白き[天使]がいるからだ。

 

(アレて、やっぱり……【炎の上位天使(アークエンジェル・フレイム)】だよな?)

 

 確かにそのままの外見だけど、まだ実感が得られない。というか、天使がそこに勢ぞろいしている光景が、幻ではなく現実なのだと受け止めきれてないからだろう。……すでにアンデットなど超常現象をたっぷり実感してきたのに、新しいだけで意表がつかれる。

 

 そんな一時的だろう戸惑いを隠せないでいると、ユリからの【伝言】がきた。

 周囲の人間たちには気づかれない様に、

 

 

『___アインズ様。敵意を撒き散らしている者共が村に近づいているようですが、ご無事でしょうか?』

『ああ、問題ない。……とそうだった!?

 お前の方は、どこか不具合でもあるか?』

 

 いつの間にか、30分をゆうに過ぎていたことを思い出した。……やっちまった。

 こうやって[伝言]できている以上、無事でありかつ魔法まで使えるのは確認。しかし……、完璧な状態では無いはずだ。

 そんな心配と申し訳なさに、「恐縮です」と添えながら、

 

『体が少し……重い気がします』

『普段を10とするなら、今はどのぐらいの体調だ?』

『そうですね……。6と半分、といった具合でしょうか』

 

 6・5か……。思っていたよりも低いし、『少し』どころじゃない不調。

 彼女の総合レベルは50ほど。単純に30ほどにまで落ちたとことになる。使える能力や技の数々はあるけど、[デスナイト]と同じほどの戦闘能力になってしまったということにも。

 

 ___死体10体使って、同じか……。

 コスパで考えると、かなり悪すぎる。でも、制限時間を越えて自立し続けられるのは、大いなるメリットだ。NPC達も自由に外出できる/この異世界を堪能できるのは、主君というより親友の子供らを預かっている身として、大いに嬉しいこと。……十全ではないのは、通行税だと割り切ろう。

 

『今賜りましたような使命でしたら、問題なくこなせます。ただ、戦闘となってしまいますと……、御身の盾ぐらいにしかお役に立てそうにないです』

『私の周りにいる者共や、今迫ってきている奴らが相手だとしても、きつそうか?』

『順当ならば駆逐できます。しかし、奇策や切り札がはまれば……わかりません』

 

 自信もって教えてくれた。

 隣のガゼフなら/減退した今なら、なかなかに苦戦しそうなのにはっきりと。直接対峙してないから何とでも言える、とも言えてしまうけど、戦士系同士の直感は侮れない。少ないとは言え魔法も使える彼女の方が強くなるのは、当然でもあるか。……加えるなら、その美女ぶりで悩殺もできるし。

 

『もう少し詳しい状態を診てみたい。我らの今後にも関わる重要な事柄でもあるからな』

『は! すぐにそちらに参ります』

『いや、指示するまでそこで待機していろ。コチラの状況もちと、不安定だからな』

 

 ___……かしこまりました。

 不満を抑えているのが、丸わかりな了解。訴えたいこともすぐに察しがついた。

 けど……、ソレからあえた外した。

 

『心配するな。もしもの時はまず、己自身の身をナザリックに届けることを優先しろ』

『し、しかし! それでは御身が―――』

『私が、負けるとでも?』

 

 今ここで帰るわけにはいかない。まだ全然心構えはついていないけど、『威厳ある支配者』ロールをあえて低めた声音とともに押し付けた。……コレで外したらもう、ナザリックにもひきこもれない。

 その思惑/賭けは、ど真ん中に当たってくれた。

 

『___不敬なる浅慮、大変失礼いたしました』

 

 おそらく現地では、土下座でもしてるんじゃないかと思えるほど、謝罪してきた。……ユリは全然悪くない/俺のワガママなのに、申し訳なさすぎる。

 と謝罪返ししたい気持ちは喉元までで堪えて、「分かれば良い」と冷たく/自分で後戻りを捨てる締めセリフ。

 さらに恐縮されてしまう前に、「では指示を待て」とコチラから[伝言]を終了させた。

 

 

 脳内から再び、現実に目を向ける。

 

 緊張しきっている場の空気。おそらく誰もが、有効だろう打開策を提案できない状況。このまま何もせずに待っていたら、殺されるだけだと、言葉にしなくても共有されていた。

 隣のガゼフも、戦意こそ滾らせているけど、勝目はほとんどありえないとも理解している様だ。敗北し絶滅する迫り来る恐怖を、戦意で祓いつづけている。……一人だったらたぶん、獰猛な笑みでも浮かべていたのかもしれない。

 ゆえにか、集まっていた期待。泰然と、何事でもないかのように佇んでいる(様に見える)俺へと、まだ言葉にはしない期待が込められ続けていた。

 

「___彼らの目的は、何なのでしょうね? この村にあそこまでする価値があるとは、思えないのですが」

 

 そんな期待に応える、わけではなかったけど誰も何も言わないので、独り言風に尋ねてみた。……案の定か、一気に注目を集めてしまった。

 ガゼフもその一人だが、調子をかえることなく、

 

「ゴウン殿にも心当たりがない、か……。 

 であるなら、答えは一つだな」

 

 私の抹殺―――。彼らは、ガゼフを殺すためにそこにいる、のだと。

 

 たった一人の戦士にここまで……と考えてしまうも、すぐに改めた。この異世界では、『一騎当千』という言葉は現実にありえると。目の前の彼は、自由意思をもった核ミサイルなのだと。あの天使の群れでもってしなければ、確実には滅ぼせない大量破壊兵器だと認識されている。

 王国にとっては守護神、でも他国からしたら悪魔だろう。……殺される理由は、山のようにある。

 

「……憎まれてるのですね、戦士長殿は」

「この地位を授かった以上、仕方のないことだが……、困ったものだ」

 

 最悪な事ながら、肩をすくめて苦笑してみせた。……他人事のようなフワフワ感が無いのは、人徳かな?

 

 ___なぜこんな派手な荒事を……?

 首をかしげずにはいられない。もっと『穏便』に済ませる方法なら、幾らでもあったはず。

 ガゼフは大量破壊兵器ではあるけど、同時に一人の/生身の人間だ。それも壮年の男となれば、『女性』をあてがえばよい。自分たちの息のかかった女性を、妻として娶らせらせる。形だけとはいえ、夫婦になれば情もわく、子供ができればもう別れがたい。出身こそ平民だけど、武官としては最強で王様の信任も厚い、顔も体格も性格も悪くないし。…………ダメだ! これ以上は我が身が悲しすぎる。

 次点の方法では、『毒殺』。人間種ならば、アイテムや解毒対策をしなければ、毒は有効な攻撃だ。これだけ強いとなると、自然と毒耐性がつき何より体力と気力で吹き飛ばしてしまうのだろうけど、ソレを上回る猛毒もある。王侯貴族や大富豪ならば、用意することは不可能じゃないはず。

 それらの上策をやらず、下策だろう『暗殺』にふみきったのは、時間がなかったからだろうか? ガゼフを亡き者にしたい者たちは、切羽詰っている……。

 

「[天使]を召喚できる魔法詠唱者をあれだけ揃えられるところみると、相手は【スレイン法国】の者達だな。それも、このような任務に従事することを考えれば、特殊工作部隊群……噂に聞く【六色聖典】の一角だろう」

 

 数でも腕前でもあちらが上手……。そう公平に/最悪な評価を出すも、やはり平然としたまま、事実は事実として受け止めている。

 

 ___国の特殊部隊、か。

 とてもワクワクさせてくれる単語だ。けど、現実に敵対されればそんな浮ついた気持ちなど吹き飛ぶことだろう。周りにいる人々のように、青ざめたりヘタったりオシッコちびりそうになったり、あるいは空想に逃げ込んだりと。

 幸いなことに俺は、浮ついた気持ちのままでいられてる。……やはり奴らにも、あまり脅威を感じることができない。

 

 そんな内心は隠して、この場の空気に合わせて尋ねる。

 

「……[王国]からの援軍を期待することは、できますか?」

「無理だろうな。何より、時間が足りなすぎる」

「では、貴方がただけではどれほどの勝率になりそうですか?」

 

 たて続けた質問、この場の誰もが知りたがり同時に聞きたくない答え。あえて無神経にも/何気ない流れのままに聞いてみた、ガゼフ自身の口から言わせてみる。

 

 その答えは―――、言いたくないほどだった。

 問いかけられた直後、その顔が強ばっていた。零れ出てきそうだった勝率を飲み込むのに、必死にならざるを得なかった有様だ。

 その彼の表情/沈黙でようやく、微かな希望にすがっていた者達は絶望に叩き落とされていた。

 

 そんな皆の動揺、特に部下たちの動揺には厳しげな視線を向ける/鎮まらせようとした。けどすぐ……、溜息をついた。己の失態/虚勢が敗れたことに諦める。

 故にか改めて/襟を正すようにしながら、真正面から俺に向き合ってくると、

 

 

「___ゴウン殿、よければ雇われないか?」

 

 

 報酬は望まれる額を与えよう……。背筋こそ真っ直ぐな『提案』なれど、足にすがりつくような『懇願』なのは分かった。

 ただソレは、ガゼフだけの想いではなく、この場の総意であるのが、向けられてくる必死な視線から肌でも分かる。

 

 ___別に、断っても……いいよね?

 一方的に乗せられてくる期待の重厚さに、思わずそんな弱気が出てきた。この『力』があれば解決は簡単だろうけど、これからそれ以上のことが求められるのだと、先の心配が首をもたげてきて。……単純に、頼られ慣れていないだけだろうか。

 しかしながら、今の俺はナザリック大墳墓の主君だ。そんな弱気はみせられない。

 

「……その雇い主は、王国なのでしょうか、それとも貴方自身ですか?」

 

 訪ね返した問に、ガゼフは答えに窮した。

 ハッキリさせなきゃならないことなので、さらに突っ込んで、

 

「失礼ながら、貴方に私が望むほどの財の持ち合わせがあるとは、思えません。ソレに貴方は、王に忠誠を捧げてもいる身。その上で、貴方が私を雇うに足る報酬とは、一体何なのでしょうか?」

 

 財力もなければ忠誠も捧げられない。それ以下の報酬など、この死地から救出するにはあまりにも安すぎる。……残酷なれど、明確な事実だ。

 ソレは、改めて言われなくてもわかっていたのだろう。ガゼフは、その『お断り』の衝撃を黙って/瞑目しながら受け止める。

 そして―――、次に出てくるだろう『頼み』が口から出てくる前に、

 

 

「___貴方が殺されれば、ここの村人たちもまた殺されることになるでしょう」

 

 

 静かにそう伝えると、集まっていた村人たちがギョッと強ばった。村長殿は、「ホヘェ?」と茫然自失までなっている。……どういうわけか、自分たちはこのまま守ってもらえるのだと、無根拠に信じていたのだろう。

 もちろんこと、日常の軌道にのるまでは面倒を見てやるつもりだけど、ソレは暗黙の了解ですらない俺の一方的な『親切心』だ。ソレを当然のことと受け入れてもらえるのは、まぁ悪い気はしないけど、利用されるのは我慢ならない。……ここらで釘を刺しておく必要がある。

 

「……貴殿は、村人たちを見捨てるような方には見えないが?」

「気まぐれですよ。ですから、気が変わってしまえば見捨てることでしょう」

 

 あえて冷淡に告げると、村人たちもようやく『裏切られた』のだと気づいてくれた。

 演技は我ながら完璧だったけど、ガゼフは食いついてきた。

 

「すまないが……、やはりそんな事をする方には見えんのだが?」

「買いかぶりですな」

「私は武骨者だが、戦士長の地位を拝命してから今日まで、悪意渦巻く政界の中で生きてきた。幾分かは人を見抜く目も養われたとは、自負している」

「……なるほど、『人』を見抜く目ですか―――」

 

 ___それなら―――。

 流れのまま言い切って、少しためらう。本当にやるか/やっていいのか?

 

 しかしままよと―――、仮面をとった。

 オーバーローたる己の顔を、皆の面前にみせる。

 

 

「___あ……、アンデットぉッ!?」

 

 

 予想通りの絶叫/恐慌状態が、あたり一面で噴出した。

 近くにいた人々は、思わずも離れる。しかし足がもつれたのか/腰が抜けたのか、そのまま地面に尻餅をついている。それでも/少しでも逃げようと、しかし視線はどうしても外せなくて、ナメクジほどにしか離れられない。

 ガゼフは、なんとかその場に踏みとどまっていたが、やはり驚愕が優ったのだろう。思わずか立ち上がり、その腰の剣にも手を伸ばし……、ギリギリ堪えていた。

 

「き、貴殿は……[死の大魔術師(エルダーリッチ)]だった、のか」

(あ、そういう認識かぁ……)

 

 どう見ても[オーバーロード]のはずだけど、この世界では[エルダーリッチ]か……。それとこれとでは文字通り雲泥の差があるけど、見慣れていない人たちからすると、同じ区別にするしかないか。

 どちらにしても、言いたいことは同じ。十二分に伝わったはず。

 

 仮面をかぶりなおすと、改めて、

 

「___どうです? コレをみてもまだ、村人たちを私に託せますか?」

 

 弱り目に祟り目……。あるいは、前門の狼に後門の虎か。今ガゼフは、戦慄のうえに憔悴までさせられている。

 

 弱い者イジメ、以上に虫を潰すような残酷さ。もうその強靭だろう精神もパンクし始めているだろうけど、手を抜かずに締めた。

 

「今彼らを守り抜けるのは、貴方だけです。……命の捨て所を間違えては、いけないと思いますよ」

 

 そしてゆったりと、安楽椅子の背もたれに預ける……様な気楽さで、みなみな一同の恐怖を眺めた、全身でじっくりと味わうように。……今の俺、かなり魔神ムーブできてるんじゃない!

 再び溢れてきた厨二病心に、今はなんとか轡を握れている安心感/万能感からも、ただ相手の反応を悠然と待てた。じっくりと観察もできる。

 

 ガゼフは緊張も柄から手を離すこともできず、しかし呼吸は整えてから、

 

「___なぜ、素顔を見せてくれた?」

「あと数時間もたたずに死ぬことが、決まっているような方々なので」

 

 死人に口無し……。どうせ秘密を喋っても、言いふらされない。

 慈悲にして愉悦……。内なる[モモンガ]の気持ちが、今はすごく理解できる。

 

「……貴殿にとって、生者はみな信頼に値しないか?」

「ソレは私の問題ではなく、あなた方の問題です」

「生者への憎しみは、克服していると?」

 

 ……その質問に答えはない。信じ抜けるかできないか、だけだ。

 ただし今は、少しだけ事情が異なる。正体を明かした今でもなお、信じたがっている皆の感情をそのまま、代弁していたからだ。

 だから、応えるわけにはわけにはいかず、ただ黙って視線をぶつけ合うだけだ。決して混じり合わないと、わかっていながら。そして勝利は、最強の暴力を握っている俺の手元に転がってくる……。俺以外の全員の絶滅も、特典として。

 

 誰もが、次に告げる言葉を待っていた。自分からも出したがっていた。次で決まってしまうと分かっている。

 時間は俺に有利だ。言葉を/誠意をみせなければならないのは目の前の彼らだ。けど、誰がもその声を持ち合わせていなかった。どうしても出せず、震えたまま/ふるい出せぬまま、けどこのまま死にたくは無いと……。

 

 

 ___…………残念だ、これで『終わり』だな。

 都合の良い救世主には、なるつもりはない。自己犠牲はもう、ウンザリするほどしてきた。

 全て自己責任だ―――とまで突き放すつもりもない。けど、何もできなきゃ何もしてやれない。赤の他人/初対面同士、まして今の俺は異形であり、生者を憎むアンデットの王。肩入れなどしたくてもできない。……ソレすら理解できなきゃ、話す言葉もない。

 

 【伝言】の用意をした。ユリへは、奴隷たちをナザリックへと移送しろと、奴らを徹底的に『実験』するとも。そしてナザリックの配下たちには、これから死ぬであろうこの者共の死骸を、ナザリックへと輸送せよと……。

 どのような文言にするか、もう思案し始めていたら―――

 

 

 

「___か、仮面のおじさんはッ、悪い人じゃないよぉッ!!」

 

 

 

 突如乱入してきた少女/ネムが、叫んだ。

 一同の注目が彼女に集まる。あまりの突然に俺まで、彼女に顔を向けていた。

 

 小さいながらも仁王立ち、でも泣きそう/膝を震わしながら屹然としているネム。そんな彼女を姉エンリが背中を守りながらも、ソワソワとしている。

 そして登場した勢いに任せてか、全員の注視を跳ね除けるように、続ける。

 

 

「ね、ネムのママ達も、助けてくれたッ! 村の皆も、助けてくれたッ!! ……約束、守ってくれたの」

 

 

 言い切るや、溜め込んでいた涙が溢れ出ていた。

 

 その言葉に/心に、張り詰めていた冷たい何かが解け……、霧散していった。

 

 

 ___……なぜここにネムたちが?

 彼女らの後ろに目を凝らすと……、努めて忘れようとしていた、執事鰐が控えていた。

 ユリの手伝い/奴隷が逃亡しないような見張りをさせていた(とにかく離れさせたくて)のに、なぜかそこにいる。「私は何もしてませんよ」と言わんばかりのドヤ顔オーラを漂わしながら……。あやつめ、ナイスアシストじゃん!

 

(……そうか、『約束』してたっけな)

 

 それじゃ……、守らないといけないな。

 

 

「___この村の惨状を引き起こした輩の雇い主に、あの法国の者共が深く関与している?」

 

 

 沈黙を割いて……なわけじゃないけど、そういう形になっての質問/確認。

 皆の注目がまた集まってきた。今度は、絶望ではない色をした視線が。

 ソレは、問いかけたガゼフも同じだったが、努めてその色を抑え直してから、

 

「……被害はこの村だけではない。少なくとも2つの村が潰された」

 

 マジか!? ……他にもあるかもとは思ってたけど、想定以上の大人災じゃん。

 あの奴隷たちの罪はさらに増えた。……もう輪廻をこえて来来来世まで奴隷させなきゃならないじゃん。

 

 その情報は、同じ被害をうけた村人たちにも『火』をつけた。

 偶然にも助かったけど、同じような全滅があったかもしれなかった。ソレを思うと心底から身震いし、助かったことに感謝し、そして―――怒りが沸いてくる。

 自分たちだけじゃない。殺戮された人たちの無念/復讐心が、内なる『怪物』を呼び覚ます―――

 ソレらは黒い炎となり、さらに熱を上げながら―――、俺へと収束されていく。

 

 だからか……、その『声』は俺であって、俺のものではなかった。

 

 

 

「___貴方は、どのような決着をつけるつもりですか?」

 

 

 

 一同すべての感情がのった代弁、あるいは預言というべきか。

 穏やかながらも突きつけられた問に、ガゼフは出会ってからはじめて動揺を露わにしていた。

 

 受け取り/飲み込み、しかし苦しげに/弱々しげにまで、

 

「……は、犯人達を捉え、証拠を突きつけ……、国王に直訴を―――」

「ぬるいッ!」

 

 

 一喝―――、言い訳のような戯言を断ち切った。

 自分はこんな居丈高でも威厳に満ちた人間ではなかった。けどソレは、この場の総意/ガゼフの部下たちまでも含めてもそのものだと、心底から直感できていた。

 そしてその一喝は、目の前の巌のような男の鉄芯までも……、砕いていた。

 

 たたらを踏まされ、しかしそのままヘタリ込みそうになるのだけは、グッと堪える。……しかしもう、風前の灯火なのは誰の目にも明らかだ。

 だから手心を加える―――、()()()()()()()

 

「___ガゼフ殿はまだ、国王を信じておられるのですね」

「……無論だ。忠誠を尽くすに足るお方だ」

「では、その『忠誠』を捨てて下さい」

 

 断罪するように、彼の核たる信念を執着と切り捨てた。

 

 

「ソレを、今この場で約束してくれたのなら、我が力をお貸ししましょう」

 

 

 取引の言葉に、一同皆の視線が追い打ちのように重なった。

 誰もがソレを求めていると、ガゼフに決断を突きつける。

 

_




長々とご視聴、ありがとうございました。

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