逆に考えるんだ、推しを産んじゃっても良いさと 作:ダイコンハム・レンコーン
アニメ民の見切り発車故ガバ設定は見つけ次第後から修正します。
○月△□日
今日から日記を書く事にした。俺は昔から筆まめなタイプじゃなかったが、だからこそ、今の気持ちを整理する為に必要な事だと思ったからだ。
さて、何を書こうか。これは将来娘に見られても良いように分かりやすく、かつボカして書かなければならない。
〜中略〜
まずは自己紹介を書く事にした。
俺の名前は
好きなものは藍色。嫌いなものは水色。それ以外は特に好き嫌いしないタチだ。強いて言えば、これから特別好きなもののカテゴリーには娘が入るだろう。
身長は165で体重は秘密。と言ってもまだ成長の余地はあるからまだ伸びるかも知れない。
今日の日記、完。
ps:下の余白に思い付いたら付け足していく。
──(何かを書きかけた跡)──
○月○□日
これまでの日記は俺の独り言日記となりつつあったが、この日記は娘の成長日記も兼ねている。
娘の藍果はすくすく育ちはや6ヶ月。不思議な事に、もう既に『ママ』と『お母さん』の二言をマスターしていた。どう考えても麒麟児だ。今すぐに世界の人々は神の子の誕生を祝福すべきだと考え──
〜中略〜
──長くなったが、何が言いたいかと言えば、藍華が何事もなく育っている事がとても嬉しい、その一言に尽きる。手のかからない所がやや気になるが、それもまた愛嬌だろう。もしかすると、早熟過ぎて上手く甘えられないのかも知れない。目一杯甘やかしてやろう。
昔から秀才は他人を見下し、天才は他人に理解されたがる、なんて話がある。藍華が秀才なら、そうならない様に育てるつもりだ。もし俺なんかじゃ相手にならない天才だったら、俺も天才になってやる。藍華を独りになんてさせるか。
後、どう言う訳か藍華の両目に星みたいな光が見える様になった。何かの見間違えかも知れない。放射線状に広がった光は、以前もどこかで見た様な気もする。どこだったか。
とにかく今は、気にしない。藍華の幸せの為に、今日もアイドル頑張るぞ。
□月△□日
プロダクションの移籍を考えている。
俺は12の時から地下アイドルグループ『キラメイテ』の『ラ』担当だった。俺は他のアイドルと同じ様にフリフリの服を着て歌うのが仕事だったが、そろそろ限界が来ている気がした。愛想を振り撒くのは慣れたけれど、俺が持っている物を活かすためには、もっと違う事をしなければいけないと思っていた。
顔は可愛い系と言うよりは、キリッとした格好いい系だし、股下も高いからスカートよりズボンの方がスタイルが映える。今のガーリーガーリーしたグループは嫌いじゃない、応援する分には寧ろ好きだ。
応援するには。
こう思うのは、きっと俺が焦ってるからだろう。
○月○△日
今年に入り俺は14になった。藍華も2歳になった。今日も今日とて平和でうだつの上がらない日々を過ごしている。
プロダクションの移籍を考え始めてからと言うもの、ネットサーフィン中に藍華がアピールをする様になった。例えば、ネットの広告やパンフレットに記載されている芸能事務所を指差すとかである。
ウチの藍華は天才だからそれについてはたまごボーロ増量で労うとして、気になるのは、藍華が指し示す芸プロが決まって苺プロダクションである事。
苺プロと言えば期待の新星(それなりに雌伏の時間を過ごしていたが)の『アイ』を擁していた。
が、丁度一年前くらいに、彼女はタチの悪いストーカーに刺されてこの世を去った。世界の損失とも言える出来事を前に、多くの関係者とファンは涙した。何せドームライブ直前の出来事だったのだ。必死の思いで掴み取ったチケットの代金が弔意金になる場面なんて人生で見たくない瞬間ベスト3には入る。
勿論、ファンもショックだったが、誰よりもショックだったのは、二人三脚で夢を追っていたであろう社長だと俺は思う。
あの日以降、アイがセンターだったB小町は解散し、苺プロからアイドル部門は消え去った。
と言う事を限りなくオブラートに包んで藍華に話した所、藍華は想像以上にショックを受けていた。気の毒だが、目を見開き、何度も何も無い空間をぐるぐる回る姿は、可愛い以外の何ものでもない。
生まれ変わったら何になる。なんて良くある質問の誰も知らない答え。私は一足早く人類の神秘に近付いちゃったみたい。
ここは多分、病院のベットの上。ルビーとアクアマリンを産む前に入院した時と似たような風景だったから分かる。
「オレの子だ、オレの──」
──誰、この人?
私はあの時、遠い所に行った筈だった。アクアとルビーを置いていってしまったのに。こうして人の肌の温度を感じてる。顔は知らないけど、かなり整っていた。けれど、どこか幼く見えた。
──そういえば、女の子の胸に触れるなんて、メンバーの子相手以外にあったっけ。
まともな母親の記憶すら無い私に、目の前の女の子は男の子みたいな笑みを浮かべて優しく頭を撫でてくれた。そろそろ、理解も出来てきた。
私はどうやら、赤ちゃんになってしまったらしい。
「……アイカ。今日からお前は
お母さんらしき人──どう見ても未成年──からそう言われて、悪い気はしなかった。寧ろ、欠けていた何かが埋まる気分がした。それは私の新しい名前。
あいか、どんな漢字だろう。あまり難しい漢字じゃないと良いな。
「無事に産まれてきてくれて、ありがとうな」
お母さんがおでこを私のおでこに合わせる。こうして見ると、やっぱり顔の完成度が高い。ノーメイクなのに王子様みたいに小顔で澄んだ目鼻立ち。目が鋭いのが少し怖いけど、それもまた個性かも。
「これから、宜しく。アイカ」
母親になれたと思ったら、また赤ちゃんからやり直すなんて思いもしなかったなあ。もしかして、ここで学び直せって事なのかな。子供として、もう一度ゼロから。カミ様もイキな事するね。
でも……アクアとルビーに会いたいな。でも私の子だし、今頃はトップスターになって気軽に会いに行けないかも。それはそれで嬉しいんだけど。まあ、こうして生きてたら、またいつか会えるよね。
──って事で、宜しくね。お母さん。
「笑った……はは、笑った!」
『子供は親にとって生まれ付いてのアイドル』なんだって。ちょっと分かった気がするかも。
△月□○日
いよいよ俺も焦りより一周して余裕が出て来た。壁の薄いアパートだが、自殺した地下アイドルの霊が出ると言うアパートにはあまり人は入ってないし、大家だって幽霊物件のオーナーやりたいって感じのほぼ道楽でやってるだけ。藍華はあまり泣かないし、意思疎通だって出来る。早熟なんてレベルじゃないと思うが、俺も似たようなもんだったしな。気味悪がられて速攻捨てられたんだけど。
そして今日は藍華とこんな会話をした。
「藍華はさ、どうだった。オレの母乳の味」
お母さんは、ちゃぶ台に掴まり立ちする私にそう言った。急に凄い事聞くね。私だってそんな事聞いた事もないのに。
「……あまくて、美味しかったよ?」
知ってたから嘘を交えて答えてみる。これでも私は昔より嘘を吐かなくなっていた。アイドルじゃなくなったからか、お母さん相手だからか、それはよく分からないけど。
「本当か? ちょっと栄養偏ってたからしょっぱかったろ」
でも、お母さんは、嘘を吐くのが凄く下手なのに、私の嘘にはよく気付く。嘘がバレると凄く怖くなるのに、少し安心する。もう1人のお母さんみたいに、怒らせてしまう事がないから。ご飯も混ざり物無しの白米が出てくる。
「ほんとはしょっぱかった」
「ほらな。……藍華にはもっと良いモノ食べさせてやりたかったのにな」
「でも、お母さんのぼにゅーは、好き」
「〜っ、やっぱ天使だな、ウチの娘はよ!」
「んぎゅ」
事あるごとにお母さんはとろけた顔で私の事を抱きしめてくれる。キスは一度もしてくれたことは無いけど。
「ん、またお乳飲みたくなったのか? ほら、いいぞ」
「はむっ」
昔の私も、こうやってお母さんに世話されてたのかな。……それなのに、多分お母さんより早く死んじゃったんだ。私、親不孝な娘だったかも。
「遠慮するな、飲め飲め」
お母さんの胸、ぽよんとしてる。これでまだ14であの頃の私より若いんだから、世の中よく分からないよね。
それよりもよく分からないのは、お母さんが未だに売れていない事だ。
顔と身体も大人びたルックス、透き通っていて伸びのある声、何より、パワフルなダンス。お母さんはぱるくーる? や、ブレイクダンス位なら余裕で出来ると言ってた。多分私の知ってる人でも、あそこまで身体を動かせる女性アイドルは居なかったと思う。
娘のひいき目に見ても、才能はなくはない。六畳一間で終わるアイドルじゃない。
「オレのとこに産まれてくれてありがとなぁ、藍華」
お母さんがにかっと笑う。どうしてお母さんはこんなにも悪戯っぽく笑うんだろう。14だった私とは、まるで違う笑顔。アイとお母さんは他人だから当たり前だけど、それだけじゃない。いつもお母さんは笑みを解く時、いつも哀しそうな顔をする。
お母さんって、何者なんだろう。時々、14歳の女の子には思えない時がある。
「こんな、夢ばっかの馬鹿オンナのオレを、好きでいてくれて」
今だって、その哀しそうで、嬉しそうな表情も。
どこまでも普通に見せかけて、私から見ても謎めいて。
私と同じくらいの
どっちも持っているから、どちらにもなれない。私みたいに、
□月△○日
今日は師匠に会ってきた。
いつも釣り堀でぼーっとしてるが、師匠は元々芸能界の関係者だったらしい。関係者と言ってもピンからキリまであるとは思うだろうが、知識量からして結構上の立場の人間だったろうってのは分かっている。
馴れ初めとしては、丁度二年前。妊娠が発覚した時、俺は師匠に出会った。
アイドルがこっそりして妊娠、なんてありふれた話だって言ってた師匠の顔が、俺の話を聞けば聞くほど青褪めたり赤くなったりしてたのは未だに記憶に残ってる。それから師匠は色々と手を貸してくれるようになった。
産んだ後も師匠は色々と面倒事を引き受けてくれて、俺は何とか今に至るまで事務所に藍華の存在を隠せていた。感謝しかない、恩人みたいな存在だが、師匠は俺に謙った態度をされるのを嫌がる節がある。
その一点だけは師匠の事が好きくない。まるで俺を通して別の誰かを見てるみたいで。とは言え、口には出さない。
今日してた話は、藍華の事だ。師匠は藍華の事を結構気にかけている。もしや年の差婚でも狙ってるのかと思ったが、あれは孫を見るおじいちゃんの風格だ。気苦労して来たんだろうな。
俺の周りで数少ない俺と藍華の関係を知る師匠には色々と相談に乗って貰っているが、アイドルとして更に成長する為のヒントに関しては一切教えてもらっていない。なんかトラウマでもありそうだから、聞くに聞けない。
けど、今のままじゃダメなんだ。師匠に力を貸してもらわないと。
今度会う時は必ず聞き出す、絶対に。
主人公の見た目
普段着:キュロットにレギンスにスカジャン。
ヘアスタイル:髪は藍色でくせっ毛のポニーテール。
主人公は『推しの子』を知らない転生者です。
ps:『好きくない』と言う表記は死語として敢えて使ってます。違和感ありますけど許してクレメンス。