逆に考えるんだ、推しを産んじゃっても良いさと 作:ダイコンハム・レンコーン
誰かアイ生存ifだけじゃなくてアイ転生if書いて♡
転生アイが苺プロで双子の後輩になってアクアの事ふざけて先輩とか呼んだりして困らせたり、ルビーに甘えて後輩面して脳を爆発させたりして欲しいんだよ私は!
私はお母さんに質問した。
『お母さんにとって、アイってどんなアイドルだったの』
お母さんはあまり口には出さないけど多分私のファンだったんだと思ってる。家の中をウロウロしてた時、偶然私のファングッズを見つけた事もあるし、自意識過剰って言うのではない筈……ないよね?
それに気付いた時は……素直に嬉しいと思う反面、尚更悔しい気持ちだった。やっと本当の愛に気付けたのに。ファンの皆に愛を伝える前に私はお星様になった。最後に会ったあのファンの人には伝えられたって、そう思いたいけど。
今の私もその星の輝きを見上げる1人でしかない。不思議だよね。死んだ自分が有名人だったのを自分が見てるなんて。自分だった筈なのに、もう二度と届きそうにない。『今の私では』だけど。
だから聞いてみた。興味本意で。もし私がまたあの世界を目指すなら、より成長した自分を見せたいから。
「……そうだな」
お母さんは、私を胸に抱いてゆりかごみたいにゆらゆらと揺れている。ずっと昔の事を思い出すみたいに、言葉を溜めて溜めて。
「アイは『昔のアイドル』だったな」
……その言葉に、私はショックを受けた。
私、もう『昔』になっちゃったんだ。
……分かるけど、時間が経てばそうなる事くらいは。
でも、皆から置いて行かれた様に思えて急に寂しくなった。気付いたら私はお母さんの服をぎゅっと握って、しがみ付いていた。はは……こんな甘えただったっけな、私。
「昔、って言っても、『昭和』か『平成初期』っぽいって事だけどな」
「へ?」
やだ、私勘違いしてたっぽい。でも勘違いしそうな事言ったお母さんもちょっと悪いよね。と抗議の意思を込めてジッとお母さんの顔を見つめる。
「よく分からないか? まあ、ずっと前って事だよ。だからそう難しい顔するなって」
私からすれば大きなお母さんの手で頭をよしよしされた。
すると……仕方ないなあ、なんて思えてしまう。でもそれ、遠回しに古臭いって言われてる気がする。
「お、おい藍華? 乳首抓るなよ? 何か悪い事したか?」
「ノーブラは良くないよ」
「……家でくらい良くないか?」
「良くない」
「ごめん……って何でオレは赤子に身だしなみを説かれてるんだ」
ただ、こんな光景は私が思うお母さんの像とは少し違う。どちらかと言えば、ガサツなお父さん? 私なった事も居たこともないから分からないや。でも、女の子らしくない仕草やあぐら姿がサマになってる辺りそれっぽい気はするかも。ちょっとおじさんくさい所もあるし。
それから私は、お母さんのあぐらの上に座って話の続きを聞いた。
「オレが知ってる昔々のアイドルはな、朝食の内容が雑誌の記事に載るくらい秘密めいた存在だったんだ。……好きなものは、嫌いなものは、どこに遊びに行って何をする。アイドルは神様みたいな存在だった」
……こうして話をするお母さんを見てると、やっぱり今年で14なのが信じられない。落ち着いてると言うか、堂々としてると言うか。アイドルをやってるだけじゃ説明がつかない程大人びてる。
そんなお母さんは言った。
「アイには──」
──
そう言うお母さんの顔は、私が生まれた時と同じくらいの笑顔だった。それ位、お母さんにとって『昔のアイドル』と『アイ』は特別な存在だったんだ。
だから、私は決めた。
今度は、『アイ』じゃなく『藍華』としてアイドルを目指すって。
だって今の私は、どれだけやっても『アイ』にはなれない。
私が私をダメな意味で引き摺る事は、私自身が夢見た『アイ』の姿に傷をつけてしまうから。それがプロとしての線引きだって、
「でも今のオレからすれば、藍華が一番のアイドルなんだぞ? なんたって腹を痛めて産んだオレのただ1人の娘なんだからな」
「お母さんって、恥ずかしげもなくクサい事言うよね」
「おいおい……どこで覚えたんだそんな言葉。語彙がグロいぞ、心にクる」
ひとまず、アイドル『アイ』の看板は一旦終了。今の私はただの藍華。お母さんの娘から、1からのスタート。でも悪い事じゃないよ、だって今の私は自然な笑顔をお母さんにも見せられてるから。星野アイの身体は無くても、心まで失くした訳じゃない。
「……隠れてる部分が多いからこそ、綺麗なものを想像する。オレも幾つアイドルに夢を見た事か」
お母さんはアイドルを夢に持ってる。その気持ちは私も一緒。もしお母さんと一緒にその夢を追えたなら、どんなに楽しいのかな。きっと想像もつかないくらい、輝いてる未来がそこにある気がした。
「でも、今を夢で終わらせたくない」
私も、諦め悪いなあ。でも、良いじゃん別に。アイじゃなくても、アイドルは目指せるし。
──今度こそ、皆を愛したいから。
嘘が本当になるって分かったんだから。アイを辞めても、アイドルは辞めない。だってそれが私らしさだから。
「なら、一緒に頑張ろ?」
「ありがとう、藍華。やっぱりオレ、アイドルになりたいんだって分かった」
「じゃあ、同じだね」
「おっ、藍華もか?」
「うん、私も──アイドルになる」
「ははっ、将来が楽しみだ」
この六畳一間から、夢をもう一度始めよう。ねえ、お母さん。
でも、ちょっとは休んでも良いかな。
お母さんが私に愛をくれるのは
○月△□日
俺は、苺プロダクションへ売り込みを掛ける事に決めた。
アイドル部門がとっくに無くなっているのは百も承知。けれど可能性が0と決まった訳じゃない。諦めは敵だ、って誰かも言っていたし、やるだけやってから初めて選択肢から除外出来るんだ。
何よりも、藍華が示してくれた道だ。やってみよう。親なら、子供の期待には応えないとな。
そう藍華に伝えると、藍華はふるふる震えて感極まった様子で俺の脚に抱きついて来た。ここまで表現力豊かだと、将来はアイドル兼演技派女優のバイプレイヤーか。その頃には俺も売れっ子からそこそこのポジションにならないとな。
ただ、何も手札が無い状態じゃ話にはならない。どこの馬の骨がアイドルにして下さいって言ってアイドルにしてくれるのか。
師匠にも話を通す。俺は俺で準備を進めていく。
もう二度と後悔はしない。
生まれ変わり、なんてモノは信じちゃいない。
そんな幻想に縋り付きたくなった事は何度かあったが、今はもう諦めた。振り上げたこの手を振り下ろす為に、今に燃え滾る復讐の意思が濁ることのない様に。
だが、アイの死後に出会ったアイツは、どこか似ていた。生まれも、育ちも、根っこは当然違うが、その意志の硬さも。
「……どうして、見ず知らずのオレを助けたんだ?」
初めて出会った日の事は覚えている。土砂降りの雨に濡れていたアイツを拾ったあの日を。
「ああ、どう見たって訳ありだな。けどあんな死にそうな眼してる奴をほっとけるかよ」
「……悪いな、迷惑かけて」
「こんなのどっかの我が儘娘と比べりゃなんて事ないな」
アイツは、冷たい息を吐いていた。何をしようとしてたかは分からなかったが、踏み込む気にもなれず、俺はただ家の中でアイツが落ち着くのを待っていた。
「ありがとう、もう帰るよ」
「待て」
タオルで雨粒を拭ったアイツは帰ると言い出した。
帰しても良かった。だがあの時の俺は、嫌な予感ってやつに対して人一倍敏感な時期だった。
「また濡れて帰る気か」
「……」
「抱えられない事があるなら、話せば良いだろ。どうせもう会うかも分からない他人だしな、俺たち」
俺は、そんな事を頭で考える前に言っていた。
関わって得する事なんて何一つ無いだろう。ただ放置しても俺の気分が悪くなるだけ。それが一番嫌だったんだろう。妻を置いて来た負い目を少しでも拭い去ろうとしてたのかもな。
「──そんな事聞いたって、何にもならないだろ」
「それを決めるのがアンタならだ。俺はまだ何も知らない」
「……後悔するなよ」
観念したのか、そう言ってアイツは自分の身に起きた事を話し始めた。
薬を盛られた、その一言で全部察した。それも芸能界絡みの厄ネタ。オマケに本人が対処方法を知らず、そのまま妊娠したって話だ。
「聞いて後悔した」
「おい……!」
「冗談だ。ただ今時珍しいな、成人のアイドルに手を出すクズなんて。クズは専ら弱い立場の若い奴を狙うものだが──」
「オレは12だぞ?」
「──は?」
アイツは見た目から想像も出来ない程若かった。身長160越えの女子小学生って何だ。ランドセル背負ったら完全に如何わしい店で出てくる奴だぞ。
「イメクラ……」
「傷心の少女に掛ける言葉じゃねえ」
「いや何で知ってんだよ」
「ノーコメント」
「お前思ったより余裕だな?」
けど、態々こうまでして嘘を吐く理由なんて見当たらない。それに俺は多少歳は上だが、16で子供を作ったアイドルを知っている。……慣れって怖いな。あんまり驚きがねえ。
「それはそれとして、災難だったな」
「……このまま産んだって育てられる自信が無い。けど、この命を、何も出来ずに終わらせたくない。生まれる前の赤子だって、きっと死ぬのは怖いんだよ。だから」
ただ、子供にしては落ち着き払ってた。
親は居るかと聞けば、ネグレクト気味の母親が1人いるだけだと言う。
そんな状態で、この程度ならむしろ理性的だ。だからって何が出来るとは限らないが。まあそこは、大人の出番って訳だ。
この時から、知らず知らずの内に俺はアイツとアイを重ねてたのかもな。
「なら、協力してやる。アテもある」
そうして俺は復讐者であると同時に、アイツの支援者になった。
──それから二年。
アイツが言うには、藍華って名付けた自分のガキはすくすく育っているらしい。2歳で日本語をマスターしてるとか、ってそれ本当にただのガキなのか?
話を聞く限りでは、アイよりかは普通の母親やってる様だが。このままアイドルの夢を諦めて、その通りの普通の生活をしてくれればこっちの心労も減るのにな。
──未だに俺はアイツをアイドルとして応援するのを躊躇っていた。
アイツのアイドルとしての素性はヅカの男役に似ている。顔立ち、タッパ、声。女相手に商売出来るアイドルだ。
だが女は時として男よりも恐ろしい力を振るう事がある。
団結力といざと言う時の度胸、それが悪い方向に噛み合った時、俺にアイツを守り切れる自信はない。
もう二度と、世話を焼いたアイドルが死ぬのは御免だ。
だから俺は、アイツから逃げていた。
そんな日々の中、俺が時間を潰す平日の釣り堀に1人でやって来た奴がいた。
「──話がある」
……ああ、もう逃げ切れないな。
奴の藍色の夜空みたいな瞳の中で
アイ転生ifが増えたら安心して筆を置けるので、誰か供給おなしゃす。
下手すりゃアイ幽霊ifとどっこいとかどう言う事なの……(レ)
ps:感想は全部見てます。ありがとうございます。