「えっ、マキ先輩のお家喫茶店だったんですか!」
「そうだよー。『喫茶 マキ』って言うんだけど知らない?学校の近くなんだけどさー」
「えーっと……この辺りだと私の家と真逆の方向なので知りませんでした!」
「正直な子だ、コーヒーを奢ってあげよう」
「やったー!」
食後の散歩も兼ねて、公園をぐるっと一回り。紲星は随分と弦巻に懐いたようで、さっきからずっと話続けている。
二人して弦巻のスマホを覗き込んで何やら騒いでいたが、突然こっちを振り向いて……。
「って訳で今から行ってみよう『喫茶 マキ』!ここから徒歩で二十分!!」
「ぱちぱちー」
どういう訳だ。
つーか紲星がだいぶ遠回りで家に帰る事にならねえかそれ。
「大丈夫です!体力には自信があるので!」
「そうなのか」
「むしろゆかり先輩の方が心配なんですが……二十分も歩けます?」
「なっ、流石にそれはゆかりさんを舐めすぎですよあかりさん!」
「最悪引きずってく事も視野に入れてる」
「マスター!?」
うるせえ揺らすな。すぐに『疲れました』とか言っておぶらせようとしてくるじゃねえかお前。
「せっかくだし、店長にもなんか土産買ってくか」
「屋台で売ってるようなものだと邪魔になりません?匂い強いですし、冷めると美味しくなくなっちゃいますし」
「んー……ベビーカステラならたぶん大丈夫かなー?ちょっと買ってくるねー!」
言うが早いか、弦巻は屋台に向けて走っていってしまった。判断早いなあいつ。
「あれ、マスター先輩はマキ先輩のお家知ってるんですか?」
「俺のバイト先なんだよ、弦巻の家」
紲星の頭に疑問符が浮かんでいたので、とりあえず説明をしておく。
「マスター先輩、ゆかり先輩だけじゃ飽き足らずマキ先輩まで……!?」
「マスターはやめろ、っつーか何でそういう反応になんだよ!!偶然だ偶然!!!」
学校と俺の家から程々に近ければそれでよかっただけで、意図して弦巻の家を選んだ訳じゃない!
「大丈夫ですよあかりさん、マスターはゆかりさんのことが大好きですので浮気なんてしなあーっ!!」
「お・ま・え・は!いい加減に!!後輩にろくでもねえ嘘を吹き込むのをやめろ!!!」
連続チョップをアホの脳天に叩き込む。なんで何回言っても覚えねえんだ!!!
「浮気性なんですか……?」
「違うそうじゃねえ!!」
お前はお前で俺をろくでなしに仕立て上げようとするんじゃねえよ紲星ァ!!
頼む弦巻、早く帰ってきてくれ……俺一人じゃこいつらの相手が追っつかねえっ……!!
「わー、DVだー」
お前もそっち側か弦巻ィィィィ!!
ベビーカステラを抱えて戻ってきた弦巻の声に、俺はその場に崩れ落ちるのだった。