ゴールデンウィーク初日の朝。以前の約束通り、俺は結月と駅前に買い物に来ていた。
「おい」
「どちらかというとさっきの服よりはこっちの方が似合うんですよねマスターは細身ですからいえしかしイメチェンというのも捨てがたく」
天を仰ぐ。されど見えるのは店の天井だけ。
俺は今、結月によって着せ替え人形にされていた。
数日前、結月が言い出した買い物の件。適当に付き合ってシャツの一つでも買えば終わりになるかと思ってたが、こいつあれだな?上から下まで一式コーディネートする気だな?
「そういうわけでこれなんかどうでしょうマスター!」
「その趣味の悪いシャツを着せようってんなら俺は二度とお前と喋らねえからな」
「戻してきます……」
ショッキングピンクで『I LOVE YOU』って書いてあるTシャツとか絶対着たくねえわ。誰の趣味だよ。
「つーかあんまり買い込んでもな」
「マスターは手持ちの服が少なすぎるんですよ」
バイト代もまだ残ってるし金銭面での余裕はあるのだが……そんなに服ばっかあってもなあ。
「うーん……マスターは何着ても似合いますね」
「これ動きづれえんだけど」
「オシャレはガマンですよ」
結月の持ってくる服は……なんというか、ぴっちりしたのが多い。
こういうのが最近の流行りなのか?俺はもう少しサイズに余裕ある方が好きなんだが。
とはいえ今回は結月に対する謝罪の面もある。よっぽど変な服じゃなけりゃ文句をいうつもりはない。こいつのファッションセンス自体は信用してもいいだろうしな。
「それではこのシャツとかどうでしょう」
「そのろくでもないやつを着せようってんなら俺は二度とお前のことを信用しねえ」
「戻してきます……」
蛍光ピンクで『WE ARE LOVERS』って背中に書いてあるシャツとか絶っっ対嫌だ。なんでそんなふざけたデザインのやつが置いてあるんだ。
「買いすぎじゃねえ?」
「予算が許せばもっと買いたかったくらいです。どうせマスターのタンスなんてスカスカなんですし」
「そこまでじゃねえよ」
結局、シャツからズボンから一式結月によるコーディネートを受け、俺は大きな紙袋を抱える事になった。
この上まだ買いたいとかどうなってんだ。あと金は俺が払った。俺が着る服だし。
「そして買い物にお疲れなマスターへゆかりさんから愛のプレゼントです」
「気持ちだけ受け取っとくわ」
「ダメです」
「おい」
有無を言わせぬ勢いで俺をベンチに座らせ、結月がカバンから取り出したのは……ネックレス?
結月に渡した髪留めと似たようなデザインの、黒と赤の指輪が通ったシルバーのもの。
座り込んだ俺の首へと結月が腕を回し、ネックレスをつける。
「せっかくですから、マスターと一緒のオシャレがしたかったんです」
「……そうかい」
うちの高校はそこまで校則が厳しい訳でもない。服の下に隠しておけば、四の五の言われることはないだろう。たぶん。
「失くさないでくださいね?」
「おう」
結月に返事をし、立ち上がる。さて、昼飯どうすっかね。