時刻は十一時ちょい過ぎ。
結月が行きたいと言い出したパンケーキの店。細かい場所はうろ覚えだったのでスマホで調べ、足を運んだはいいのだが。
「…………やめにしねえ?」
「……まさかここまでとは」
長蛇の列、とはこの事を言うのだろう。人、人、ヒト。
とんでもなく並んだ人の列に、俺と結月はお互いにげんなりした顔を向けあった。
どうもその店が少し前にテレビで紹介されたらしく、それがこのアホみたいな長さの列の原因の一つではあるようだ。
「なあ、今二時間待ちとか聞こえたんだけど」
「奇遇ですねゆかりさんもそう聞こえましたよ」
「……別の場所探そうぜ」
「そうしましょう……」
その場を離れ、あてども無く歩き出す。
「んで、何食いてえよ」
「わりと何でもいいです」
「一番困るやつじゃねえかソレ」
まだそこまで滅茶苦茶に腹が減ってる訳じゃないし、適当に選ぶか……?もう少ししたら店も混み始めそうだし、空きっ腹抱えて並ぶのは嫌だしな……ん?
「結月、あそことかどうだ」
「カードショップで一体何を食べようというんですかマスター?」
「違えよその上!」
俺の指の先のビル、二階のカードショップ……ではなく三階にあるカフェ。
「『Burger Cafe ARIA』ですか」
「ちょっと気になってな」
「敵情視察ですか?」
「方向性違いすぎるだろ」
いやまぁ色々見といて損はない気はするが。『喫茶 マキ』はどちらかといえばドリンク中心で、フードメニューは軽食が少しある程度だ。
対してこの店は店名に『Burger』なんて入ってるくらいだ。たぶんしっかりしたハンバーガーが出てくるだろう。
「マスターが気になったなら行ってみましょう」
「よっしゃ」
なんて話をしながらエレベーターに乗って、その店へいざ行ってみたら。
「いらっしゃいませ、何名……様……」
「あれ、ずん子さん?」
「東北?」
受付に出てきたのはエプロン装備の東北。
クラスメートがバイトしてる店だって知ってたら選ばなかったぜ……。
「……私、バイト先教えてたっけ?」
「いや、偶然」
「マキさんのご実家でバイト始めた時といい今回といい……一体なんなんですかマスター?」
「マジで偶然なんだが!?」
同級生を狙う変質者みてえな扱いすんじゃねえよこのアホはよぉ!!
「……とりあえずこちらの席へどうぞー」
ジト目で見てくる東北にせっつかれ、空いてる席へと放り込まれる。
机に置いてあったメニューを見ていると、コップに入ったお冷とお絞りを東北が持ってきた。
「本日のオススメはこちらずんだバーガーとなっております」
「いやいやずん子さんいくら私達相手だからってそんな適当な」
「うわマジでメニューにずんだバーガー入ってる」
「ええ……」
ずんだバーガーお値段千三百円。中身は……玉ねぎ、トマト、ビーフパティに……ずんだと、練乳……?
……オススメってったってこれはちょっとな……。
とりあえずずんだバーガー以外を頼むことを決めつつ、俺はメニューに目を通し始めた。