ちょくちょく妄想でトリップするアホを再起動させながら歩く羽目になったので、俺達が教室に着いたのは結構ギリギリの時間だった。
教卓真正面の席へと向かう伊織に手を振り、廊下側一番後ろの俺の席へと向かう。ミナセンが来るまでに少しでも体力を回復したい――。
「おはよーゆかりん!今日はギリギリだったね!」
「おはようございますマキさん。ええ、ちょっとマスターが」
「ほぼほぼてめえのせいだろうが結月」
が。机の脇にカバンを放り投げ、隣の席の会話に割り込んだ。
登校中にさんざ構い倒したので放っておこうと思ったのだが、風評被害をばら撒かれて黙ってる訳にもいかない。
つーかそのふやけきった面をさっさと直せ。
「……今日は何があったのさ」
「マスターが銀河一の美少女ゆかりさんを是非とも娶りたいと言い始めまして!」
「確かにてめえの顔がいいとは言ったがいくらなんでも誇張しすぎだバカ」
どんだけ都合のいい耳してやがんだこの女。ちくしょう笑ってないで助けてくれ伊織。
「駄目じゃんマスター、ゆかりんはマスターの褒め言葉なら十倍増しで受け取っちゃうんだから」
「事実を言っただけで褒めたつもりはねえよ……あとマスターはやめろ弦巻」
アホ毛を愉快そうに揺らしながら陽気に話を進めるのは弦巻マキ。クラスのムードメーカーで、誰とでも仲良くなれる陽キャオブ陽キャである。
そしてこいつも……というかクラスメートほぼ全員が俺を『マスター』と呼ぶ。結月が俺をそう呼んだのが何でか知らんが滅茶苦茶ウケてしまったのだ。クソが。例外は伊織だけである。どいつもこいつもやめろっつってんのに聞きゃしねえ。
「おはよう。大丈夫?ずんだ食べる?」
「よぉ東北……気持ちだけ受け取っとくわ」
正面から突然のずんだ。こんな事をやらかす奴は一人だけだ。複数いてたまるか。ふざけんな東北ずんだ。間違えた東北ずん子。
「おはようございますずん子さん、今日もいいずんだですね」
「ありがとうゆかりちゃん、お礼にずんだどうぞ」
「ずんだどうも」
ずんだがゲシュタルト崩壊しそうな会話を繰り広げるのはやめろ。頼むから。
あとちゃっかり俺の机にもずんだ餅の入ったタッパー置いてくな。困る。美味いけど困る。
いよいよ頭を抱えたくなったところでチャイムが鳴る。ほぼ同時に扉が開いて、担任の
「きりーつ」
級長の弦巻が号令をかける。ずんだタッパーをカバンに放り込み、俺はのろのろと立ち上がった。