腹ごなしにその辺りをしばらく歩き回った後、結月のワガママに押し負ける形でゲーセンに連れ込まれた。
「マスター!プリクラ撮りましょう!とびっきりデコってあげますから!」
「いらんわ。前撮らされた分で十分だろうが」
結月とゲーセンに来るとだいたい強制的にプリクラに連れ込まれる羽目になるせいで、俺の机の中にはこいつとのツーショットが山積みになっている。
捨てるに捨てられねえし処理に困るんだよマジで。
「男子三日会わざれば刮目して見よ、って言うじゃないですか」
「ここ数年お前の顔見なかった日がほぼねえんだけど」
学校がある日は当然の事。家に乗り込んでくるのもしょっちゅうで、最近はバイト先にまで顔を出し始めるようになった。おかげで常連の人らにまで顔を覚えられ始めている。何だこいつ。
「ご存知ないんですかマスター。ゆかりさんの主動力であるマスタニウムは毎日補給しなければあっという間に枯渇してしまうんですよ?」
「ご存知ねえしそんな物質は存在してねえよバカ……あん?」
バカなことを言い出したバカを適当にあしらい、視線を前に向ければ、どうにも見知った顔。
「…………相も変わらず音ゲーにかけてはカッ飛んでんなアイツ」
伊織結弦。我が親友の一人が、ギターを模したコントローラーをものすごい勢いでかき鳴らしていた。
指先の動き無茶苦茶すぎねえ?いつだったか本物のギターも練習中だとか聞いたような気がする。ただでさえ勉強出来るのにこの上ギターまで弾けるようになったらもうラノベの主人公じゃねえか。
「わぁ、フルコンボ……なのに何であんな難しい顔してるんですか」
「オールパーフェクトじゃねえからだろ」
「何それ怖い」
「俺もそう思……う?」
納得いかなかったのか、難しい顔でコントローラーを筐体へ戻す伊織の所へ、一人の女子が近づいていく。
難しい顔をしていた伊織の顔もだんだん穏やかになってきて……こいつは……。
「よし結月、別の場所行くか。邪魔しちゃ悪いだろうし」
「誰が何の邪魔なのさ、マコト?」
「おおっと」
やっべぇバレてた。
「こんにちは弓鶴さん。それに茜さんも」
「よぉ伊織。それとそっちの人は……」
茜、と呼ばれた、ピンクの髪の女子。どことなく伊織と似た雰囲気の……っつーかどっかで見たことある、ような……?
「マスター?」
「初対面の人の顔見るだけでキレてんじゃねえよバカ」
デコピン一つ。
んで。
「改めて……斗田 一だ。よろしく頼む」
「ウチ、琴葉 茜言うんよ。ゆづ兄から色々聞いとるんや、よろしゅうなー」
「おう。……ちなみに、なんて言ってたんだコイツ」
そこでデコ抑えてるアホと違って、伊織ならそんなろくでもない事は言いふらしてねえと思う、んだが。
苦笑する伊織を横目に聞いてみる。
「んー……ホンマ色々言うとったでー?『マスター』って呼ばれると律儀に訂正するー、とか」
「その呼び方を俺は認めてねえからな」
「マスターはゆかりさんだけのマスターですって何度も言ってるじゃないですか」
「お前のもんじゃねえしマスターでもねえんだわ」
毎回やってる気がするんだけどな、このやり取り。いい加減諦めろよコイツ……。