んで。
「他には……口は悪いけど何だかんだお人好し、とかー」
「……おう」
「そうですね、マスターったら結構勘違いされがちなんですけど優しい人ですよ」
「ちょっと黙ってろお前」
とか。
「テストのたびに泣きついてくる、とかー」
「待てそこまでは」
「じゃあ次のテスト、一人でやってみるかいマコト」
「大変申し訳ございませんでした伊織大明神様」
「即落ちやんけ……」
とか。
色々話しながら、移動する伊織についてったら。
「なぁ伊織、これは無理だろ」
「ムリやろ」
「無理じゃないでしょうか」
「ひどくない?」
ハイパークラッシュヒーロー。
つまる所のパンチングマシーンである。
見た目からして華奢な伊織には向いてねえゲームの筆頭だろう。
「……確かにこれの一面まだクリアしたことないけどさぁ!」
三回殴った合計が規定値以上の威力が出ればクリア。
最初のステージはバールのような物を持った通り魔を殴り飛ばして市民を救う……のだが。
「知ってた」
「知っとった」
「知ってました」
「言い返せない……!」
画面の向こうでは通り魔を倒せなかったヒーローが容赦なくボッコボコにされて救急搬送。おどろおどろしいゲームオーバーの文字が躍っている。
容赦なくバッドエンドになるなオイ。
「……せっかくだから皆もやろうよ」
「ゆかりさんがこんなのできるとお思いですか」
「お前にやらせたらまず殴る前に滑って転びそうだな」
「そんなに運動音痴なんかゆかりさん」
「そういう茜さんはどうなんです?」
「流石に僕より弱いと思うけど……やってみる?」
「なめんといて? うちの華麗なる必殺パンチを見せたるわ」
ぽん、と渡されたグローブを自信有りげにはめた琴葉が……一度グローブを外して百円玉を投入。もう一度グローブをはめ直して。
「何わろとんねんゆづ兄」
「ごめん……ふふっ」
「あんだけドヤ顔ではめたグローブ即外したら笑いもするわ」
不満気な琴葉だったが、ゲーム側のアナウンスと起き上がったパッドを見て拳を構え──。
「ちぇいやー」
気の抜ける掛け声とともに放たれたパンチは、しかし意外にも腰が入ったいいもので。
出されたスコアは既定値の四割程度……つまり、だ。
「このまま行けば第一ステージ突破だぞ琴葉」
「えっ嘘」
「すごいじゃないですか茜さん」
「よいさー」
愕然とした顔の伊織を尻目に、琴葉の二撃目が放たれて。
この時点で規定値の九割。
「はいなー」
三撃目。通り魔はどうにか立ち上がったもののその場でダウン、無事お縄になった。
「──────」
「伊織? おい伊織、しっかりしろ」
伊織を軽く揺さぶってみるが、駄目だ。完全に魂が抜けきっちまってやがる。
画面に目を戻せば、琴葉は暴走する二階建てバスを殴って止める第二ステージで脱落。バスに轢かれたヒーローはかつてヒーローだった肉塊へとジョブチェンジを果たした。
……この後味の悪いゲームオーバー画面、パンチングマシーンにはいらねえと思うんだけどな……。