ボイロ高校のマスターくん   作:楠瀬ハジメ

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ゲーセンデート ②

 んで。

 

「他には……口は悪いけど何だかんだお人好し、とかー」

 

「……おう」

 

「そうですね、マスターったら結構勘違いされがちなんですけど優しい人ですよ」

 

「ちょっと黙ってろお前」

 

 とか。

 

「テストのたびに泣きついてくる、とかー」

 

「待てそこまでは」

 

「じゃあ次のテスト、一人でやってみるかいマコト」

 

「大変申し訳ございませんでした伊織大明神様」

 

「即落ちやんけ……」

 

 とか。

 色々話しながら、移動する伊織についてったら。

 

「なぁ伊織、これは無理だろ」

 

「ムリやろ」

 

「無理じゃないでしょうか」

 

「ひどくない?」

 

 ハイパークラッシュヒーロー。

 つまる所のパンチングマシーンである。

 見た目からして華奢な伊織には向いてねえゲームの筆頭だろう。

 

「……確かにこれの一面まだクリアしたことないけどさぁ!」

 

 三回殴った合計が規定値以上の威力が出ればクリア。

 最初のステージはバールのような物を持った通り魔を殴り飛ばして市民を救う……のだが。

 

「知ってた」

 

「知っとった」

 

「知ってました」

 

「言い返せない……!」

 

 画面の向こうでは通り魔を倒せなかったヒーローが容赦なくボッコボコにされて救急搬送。おどろおどろしいゲームオーバーの文字が躍っている。

 容赦なくバッドエンドになるなオイ。

 

「……せっかくだから皆もやろうよ」

 

「ゆかりさんがこんなのできるとお思いですか」

 

「お前にやらせたらまず殴る前に滑って転びそうだな」

 

「そんなに運動音痴なんかゆかりさん」

 

「そういう茜さんはどうなんです?」

 

「流石に僕より弱いと思うけど……やってみる?」

 

「なめんといて? うちの華麗なる必殺パンチを見せたるわ」

 

 ぽん、と渡されたグローブを自信有りげにはめた琴葉が……一度グローブを外して百円玉を投入。もう一度グローブをはめ直して。

 

「何わろとんねんゆづ兄」

 

「ごめん……ふふっ」

 

「あんだけドヤ顔ではめたグローブ即外したら笑いもするわ」

 

 不満気な琴葉だったが、ゲーム側のアナウンスと起き上がったパッドを見て拳を構え──。

 

「ちぇいやー」

 

 気の抜ける掛け声とともに放たれたパンチは、しかし意外にも腰が入ったいいもので。

 出されたスコアは既定値の四割程度……つまり、だ。

 

「このまま行けば第一ステージ突破だぞ琴葉」

 

「えっ嘘」

 

「すごいじゃないですか茜さん」

 

「よいさー」

 

 愕然とした顔の伊織を尻目に、琴葉の二撃目が放たれて。

 この時点で規定値の九割。

 

「はいなー」

 

 三撃目。通り魔はどうにか立ち上がったもののその場でダウン、無事お縄になった。

 

「──────」

 

「伊織? おい伊織、しっかりしろ」

 

 伊織を軽く揺さぶってみるが、駄目だ。完全に魂が抜けきっちまってやがる。

 画面に目を戻せば、琴葉は暴走する二階建てバスを殴って止める第二ステージで脱落。バスに轢かれたヒーローはかつてヒーローだった肉塊へとジョブチェンジを果たした。

 ……この後味の悪いゲームオーバー画面、パンチングマシーンにはいらねえと思うんだけどな……。

 

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