「マスターの!かっこいいとこ見せてください!」
「ちょっと黙ってろお前」
琴葉からグローブを受け取り、手にはめる……前に、筐体へと百円玉を投入。
画面の案内と注意事項を確認しておく。
助走の禁止、パンチ以外での打撃の禁止、グローブつけろ……etc。
「マコト先輩は自信あるのん?」
「琴葉、マスターはやめ…………」
?
??
???
「????」
「マコトが宇宙背負ってる……」
「え、なに?マコト先輩ってマスター呼びされるの嫌なんちゃうん?」
そうだ。その通りなんだが。誰も彼も俺の言うことは聞いてくれなかったんだ。なのに。
「琴葉」
「?」
「ありがとう……そしてありがとう……っ!!」
「語彙力」
うるせえぞ伊織。普段からマスター呼びしないでくれてありがとうな伊織。
「……ほらマスター、通り魔に襲われてますよ」
「あっ」
慌てて叩き込んだパンチは、それでも何とか通り魔を叩きのめせるだけの威力はあったようだ。
「――ぶねー……」
「一発クリアはスゴイな」
「一応筋トレは普段からしてるしな」
そりゃ筋肉モリモリマッチョマンとはいかねえけど。いざとなりゃ結月くらいは抱えられるだろ。たぶん。
「やるやんマコト先輩」
「ふーん。マスターなんてバスに轢かれてハンバーグになっちゃえばいいんですよふーん」
結月の反応に言いたい事はあるが……とりあえず今は目の前のバスを殴ることに集中する。
二回ではギリギリ足りず、三回目でバスを殴り止めることに成功。続く第三ステージのUFOでギリギリのスコアとなったヒーローは、第四ステージで現代に蘇った恐竜に踊り食いされたのであった。
「えっぐ」
気のせいかもしれんが画面の彩度落ちてねえか?流石にショッキングすぎるって判断か?遅いしこの程度じゃ配慮も足りてねえだろ……。
「さっきまで生命だったものがあたり一面に……」
「オーイェー!」
「茜、早いって」
よく分からん事を言い出した伊織と琴葉の二人を背に、グローブを元に戻して。
「で、何で結月はキレ気味なんだよ」
「キレてませんよ私がこの程度でキレる訳ないじゃないですか何言ってるんですかマスター」
「お前の一人称が『私』になる時は中途半端に機嫌が悪い時だろうが」
普段とマジギレした時はいつもどおり『ゆかりさん』だからな。どういう情緒してんだコイツ。
「ゆかりさん、安心してええよ?うち、人のもん盗る趣味はないで」
「…………ええ、茜さんがそういう人じゃないのは分かってるんですけど」
「マコトはもう少しゆかりさんの事を気にかけてあげるべきだと思うんだ」
これ以上こいつを気にかけろってか。調子に乗りすぎるだけだろうによ……。