「あなただけ見つめてる 出会った日から今でもずっと」
中途半端に機嫌を悪くした結月を宥める為。あとついでに琴葉の希望もあって、俺たちはカラオケに来た。
……正直、こいつらと来たくなかったんだが。琴葉は知らんが、伊織も結月もやたらと歌が上手い。その上結月に至ってはモニターどころかこっちの顔をガン見しながらラブソングを歌い続けやがるのだ。何だコイツ。
「ゆかりさん大胆やなー」
「なあ琴葉、このアホ引き取ってくれねえか」
「ウチ馬に蹴られる趣味は無いんよ」
カラオケルームのどこに馬が居るってんだ。画面から生えてくんのか?
「つーか近えよ」
歌いながらじわじわ近寄ってくんじゃねえ!妙に圧を感じる!
持ってた紙袋を間に挟んで強引に距離を取ろう――とした所で、伊織に袋を没収されてしまった。何してくれてんだお前!?
「あなたさえそばにいれば 他に何もいらない」
「考え直せ結月」
「マジレスしてて草生えるわ」
「琴葉ァ!」
「じゃあ後はごゆっくり」
「逃げるなァ!逃げるな伊織ィ!!」
近づく結月。距離を取る俺。歌い終わってなお寄ってくんな大人しく座ってやがれ!!
「えー、仲がええように見えとったけどマコト先輩ひょっとしてゆかりさんのこと嫌いなん?」
「嫌いな奴とわざわざ遊びに来るかよ」
いきなりどうした琴葉。
「その割に冷たいやん、そんな調子だとそのうちゆかりさんも愛想尽かすちゃうんの」
「茜、ちょっと……」
こいつが?正直考えられねえ。
なんて思ってた、俺の考えは。
「ゆかりさんがマコト先輩以外にこうしとったらどう思うんよ」
――結月が。俺以外の誰かと。それは。……そいつは。
「へぇ、そりゃまた、随分と」
「ごめんなさい言い過ぎましたごめんなさい許してくださいごめんなさい」
「どうした琴葉、何でそんな怯えてやがる?」
「マコト、顔、顔」
顔なんざいつも通りの仏頂面だろうが。
問題ねえ。何も問題なんてねえ。結月のお守りから解放されるんだ、気が楽になるなんて次元じゃねえよ。そうだろう?ああそうだ問題ねえ。
……問題、なんて。
「――えいっ」
ぽすっと。軽い衝撃が背後から。
「おい離れろ結月」
「そんな顔のマスターを放っておくなんてゆかりさんにはできません」
どういう顔になってんだ。俺はいつも通りだってのに。
琴葉は小動物みたいなビビり方して伊織の影に隠れてやがるし。
「うるせえ離れろ暑苦しいんだよ」
「嫌です離しませんし離れません。マスターの隣はゆかりさん専用席ですしゆかりさんの隣はマスター専用席です」
「……、勝手に決めつけんな」
教室だとたまたまそうなってるけどな。次の席替えでこいつから離れられりゃいいんだが。