「「ごめんなさい」」
ひとまず落ち着いて、開口一番。俺と琴葉はお互いに頭を下げあった。
俺の方にビビらすようなつもりが無かったとはいえ、泣かせかけたってんならこっちに非はあるだろうし。
「…………」
――無言の伊織がこっちを見ていたから、というのもある。
我が親友は基本的に温厚だ。キレてるとこを滅多に見ないし、それだって自分の為じゃなく他人の為にキレられるいい奴だ。
だがそれはそれとして。キレたアイツは怖い。笑顔のまま圧だけが膨れ上がっていくタイプ。普段温厚な奴ほどキレると怖いとは言うが……納得のいく話だ。
「で……琴葉、俺の顔そんなヤバい事になってたのか」
自覚がない……というか、俺個人としてはいつも通りなつもりだったんだけどさ。あんまり表情変わんねえだろ俺。
「いつもあの表情やったら警察呼ばれとるよマコト先輩」
「マジで?」
流石に話を盛りすぎだろうと振り向けば伊織も頷いていたし、結月は未だに俺の腰に手を回したままだ。お前いい加減離れろ。
「つまるところマスターはゆかりさん依存症だという事なので積極的なユカリニウムの摂取が必要なのです」
「依存症だっつーんならまず元を断たねえと意味ねえだろうが離れろコラ」
なんだよユカリニウムって。マスタニウムに続く謎物質を生み出すんじゃねえ。
「この距離感はそうそう変わらへんのな」
「僕がマコトとゆかりさんに初めて会った中学の時からこうだったから……」
「なんならマスターは小学校低学年の時点でゆかりさんからのハグを嫌がってましたよ」
「いきなり人の過去を引きずり出すのやめねえ?」
このままの流れだとまたあることないこと結月が喚きかねねえ。ので。
「歌おうぜ。せっかくカラオケ来てんだからよ」
結月を引き剥がして座らせ、デンモクを引っ掴んで曲を選んでいく。そりゃまあ俺は結月や伊織みてえに上手くはねえけど。それはそれ、歌うことは俺も好きだ。
技術的な事とかさっぱり分かんねえんだけどな。なんだよビブラートって。マヌケな響きしやがって。
「マスター!ゆかりさんはマスターとのデュエットを希望します!」
「お前の持ってくる歌やたら早口なのばっかじゃねえか」
なんであんな早口言葉か謎の呪文詠唱みてえなの歌えるんだ。放送部の滑舌練習で歌ってたりすんのか?
「これとかどうかなマコト」
「お前はお前で趣味に走りすぎだ伊織」
「カラオケなんてそんなもんちゃうん」
「自分で歌う分なら文句もねえけどよ」
伊織が俺に歌わせようとする曲は、結構激しめなテンポの曲が多い。伊織本人が歌うには向いてない、とは言ってたが……フツーに行けると思うんだけどな。
あと洋楽も勧められてんだけど……メロディともかく歌詞が何言ってんのかさっぱり分かんねえ……。気に入った曲自体はいくつかあんだけど、こっちも早口なのが多い。どうなってんだ。
結局そうして、俺たちは数時間カラオケでわいわい騒いでいたのだった。
……喉痛え……。