雨は止んでぽつぽつ星空が見えだした頃。
結局結月は晩飯まで家で食ってきやがった。
流石にこのアホとは言え、夜道を一人で歩かせるのも憚られたので。
「いつもの事ですけど、素直じゃないですよねマスター」
「うるせえ黙れ」
結月を家まで送る事になっちまった。
歩いて五分程度の距離で、念の為に傘は持ってきちゃいるが……出番がねえことを願いたい。
「マスターにお家まで送られちゃって、ゆかりさんいったいどうされちゃうんですか」
「寝ろ」
「えー?一緒に寝てくれないんですかマスター?」
「一人で寝ろ」
「送り狼してくださいよマスター!」
「うるせえ一人寂しく寝てろ」
マジで黙れでけえ声出すな近所迷惑だバカ。
「……もう、マスターはいつもこうなんですから……照れ屋さんですね」
「うるせえ黙れ」
関係ねえよ。雷もその後も。何も。何もねえ。
……何も。
「ところで、ゆかりさんポイントを1000ポイント消費したマスターですが……じゃーん!ただいまマスター限定超還元キャンペーン中ですので1500ゆかりさんポイントを贈呈です!」
アホなことを言う結月の顔に目が行って。
あいつの、唇に。
「馬鹿かお前馬鹿なのか」
「照れてるマスターはとっても可愛らしいですよ」
「うるせえ黙れ」
睨みつけてやってもどこ吹く風、能天気な面を晒してやがる。
「夜に舌打ちするとアナコンダが丸呑みしに来るそうですよマスター」
「どこがどうなりゃそうなるってんだよ」
またコイツは適当な事を……。
「あれ、バジリスクでしたっけ?それともリヴァイアサン?」
口笛吹いたらモンスター召喚できんのかよ。いつからファンタジー世界の住人になったんだお前。
「そんなもんがほいほい沸いて出てきてたまるかバカ」
で、まあ。そんな下らないことを話してたら、あっという間にあいつの家に着いちまって。
「ただいまお母さん!マスターに送り狼されあーっ!!」
「馬鹿かこの馬鹿!」
根拠のねえ妄想を声高に喚くんじゃねえよ!おばさん苦笑いしてんじゃねえか!!
「とっとと帰って寝ろ!」
「えいっ」
玄関へとアホを叩き込もうとしたのに、油断してたせいか、握っていた傘を結月にあっさりと掠め取られて。
そのまま開かれて――俺たちとおばさんを遮るように。
「おまっ――」
「お月さましか見てませんしいいですよね――1500ポイントプレゼントですよ、マスター♪」
くすりと笑った結月は、軽い足取りで家の中へと駆け込んでいって。
おばさんの笑い声と扉が閉まる音を聞きながら、俺は呆然と立ち尽くすしかなかった。