平子真子に好感度100のクリティカルな彼女ができたら   作:架鍵キー

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Don't say Yes/No. 4

 待ちに待ったデート当日です。

 

 そうですね、今空座町で一番ニコニコしているのは浦原商店の店主、浦原喜助ではないでしょうか。

 平子の義骸は浦原のところで保管しているので現世に来るときは必然的に浦原を通さなければなりません。

 つまり、浦原はニコニコしていました。

 

「いやぁ~~~~、平子サンに可愛い彼女ができるなんてアタシも平子サンのことのように嬉しいッスね!」

「普通に他人事やんけ。まだ彼女ともちゃうし」

「おっと『まだ』は聞き逃がせませんよ。やはりそういうおつもりで?」

「やかまし。言葉のアヤや。ほっとき」

「言葉の綾で『まだ』が出てきますかねェ……」

 

 棗も浦原に義骸をオーダーしたので、彼女が準備を整えているあいだ浦原は平子をいじりまくっているのでした。

 平子が苦労しているのを知っているので本当に嬉しいのもありますが、女の子をエスコートするのに柄にもなく不安そうにしている平子を見ているのは面白いです。

 

 しばらくすると雨がそっと襖を開けて顔を覗かせました。

 雨の後ろから棗が姿を見せます。

 

「棗さん……準備できたって」

「お待たせしました」

 

 平子はスカートだとばかり思っていましたが、彼女は体のラインが出たパンツスタイルでした。

 型はシンプルながらも細いレースや刺繍でさり気ない飾りがついた上品な服をお洒落に着こなしていて可愛いです。

 胸が豊かなのも腰が細いのも尻が大きいのもはっきりわかります。

 良いです。とても可愛いです。

 想像以上の可愛さでした。

 

「カワエエなァ、良う似合うてるで」

「ありがとうございます……平子隊長も、洋装、素敵ですね」

 

 棗は棗で初めて見る平子の洋装、カラーシャツにジャケットを羽織った姿にやられていました。先日贈ったタイも着けています。シャツの色をタイに合わせているのは間違いありません。

 嬉しいです。胸が高鳴って心拍が120を超えます。

 

 お互いに照れている二人に浦原は呟きました。

「平子サンも若かったんですねぇ」

「ホンマ喜助黙っとき」

「それじゃあ、今日は一日パァッと楽しんできてください」

「言われへんでもそうするわ」

 

 

 

 さて、まずは空座町を見て回りましょう。

 どうという特徴もない町ですが重霊地です。

 彼女も死神なので重霊地がどういうところか肌で感じるのもいいでしょうし、守るべき人間たちが平凡に、平和に暮らしている様子を見るのは今後のモチベーションになるでしょう。

 

「平子隊長」

「隊長はナシや。こっちでそんな呼び方は流通してへん」

「では、平子様」

「様もようつけへんなァ。

 真子て呼び捨てでエエで。俺も棗って呼ばしてもらうわ」

 

 棗は人を呼び捨てることに慣れていません。いきなり下の名前で呼び捨てにするのはハードルが高いです。母だって父をさん付けで呼ぶのです。

 

「呼び捨ては難しいので……真子さん、で、お願いします」

「そんくらいなら構へんけど」

「真子さん」

「何や?」

 

「私、真子さんが好きです」

 

 平子は笑みを浮かべて「俺もやで」と軽く流しました。

 

 あれ? 流して良かったかな? 棗は真剣でしたよね?

 彼女の気持ち伝わっていましたよね? 本当に流しちゃって良かったのかな?

 

 当然、平子は言ってから猛烈に後悔しています。

 あまりにも告白のタイミングでもシチュエーションでもなかったので、つい軽く返してしまいましたがやばいくらい失礼だったかもしれません。

 いいえ。マジやばいくらい失礼です。ダメです。アウト。

 単なる通りすがりに鉄扇でしばかれても仕方ないレベルです。

 

 棗は首を傾げ、正確に伝わっていないと考え、誤解されない言い方に直しました。

「私は、あなたを、真子さんをお慕い申し上げております。恋をしているという意味で」

「すまんかった。ちゃんと伝わっとる。でも何で今言うた……?」

 そういうイベントはデートのクライマックスにするものです。平子も来るならプランのあの辺りだろうと予想していました。

 棗は自分の胸に手を当てます。

 

「もう、どうしても、言いたくて言いたくてたまらず」

「出かけるのこれからやのに気まずぅなるとは思えへんかったん?」

「お察しでいらっしゃいましたよね?」

「はァ、まあ……」

「知っててこうして出かけてくださってるならいつ言ってもあまり違わないかなと思いまして。なら、早く言いたくて。

 好きです。百年前からずっと好きです」

 

 思った以上のしんどさに平子は心の中で頭を抱えました。

 棗が自分に気があることは知っていました。知っていましたとも。

 そこまで鈍くはないのです。知らなかったことは一つだけです。

 

 直接言われるのは、めちゃくちゃ嬉しい。

 

 たぶんこれこの調子だと何度も言われるやつやん。

 しんっっっっっっっど。

 と、思いつつ手で口元を隠します。

 

「ただ好きだと言いたかっただけです。お付き合いをしてくださいですとか、私をどう思っているかお聞かせくださいという意味はありません。

 何も求めていませんので、どうぞ、私の扱いは何も言っていないときと同じようになさってください」

 

 アホか無理やろ。

 その言葉はぐっと堪えました。

 

 

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