元伝説アイドルが新人アイドルのガチオタやってる   作:バカイザー

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元伝説の再誕

「 あの、美作傑さんで合ってます、よね…? 」

 

「 君、誰? 」

 

スーパーからの帰り道、行成フードを被った女性らしき人に声を掛けられた。

俺は一般人。声掛けられる理由が見つからない。

 

あ、ハンカチ落としたとか?いいよそんなん。

地面に落ちたのなんてばっちぃしもう使わんわ。

 

そんなことを考えていると、女性らしき人が安堵したように見えた。

そして次の瞬間、俺は刺されていた。

 

「 は、ははっ。これで、これで伝説と言われたアンタも終わりね…!あ、アンタが悪いのよ。私のタクヤを奪うから。私にはタクヤしか居なかったのに、アンタは、アンタは私からタクヤを奪ったのよ!!この人でなし!!死ねよ!なあ!! 」

 

興奮したように声を荒げ、包丁が刺さったまま俺を横倒しにして何度も何度も蹴って来る。

ていうかちょっと待て。タクヤって誰だよ。

俺にタクヤって名前の知り合い居ないんだけど。

それにこの人、俺のこと伝説って言った?

 

伝説、伝説ねぇ…。

 

「 情報が、情報が古いぞ炭◯郎。情報収集が遅い!! 」

 

「 私は炭◯郎じゃないわよ!! 」

 

昔も今も、仕事もプライベートも何も変わっていない俺は、こんな状況でもいつものテンションだった。

そりゃ死ぬのは怖い。刺されたお腹も熱を持ってて熱いし。けど、けどさ。

 

まだ刺さってんだよ、包丁。

 

人は包丁が刺さったままの状態ならある程度生きてられるって、昔どっかで聞いたことがある。

多分ソースは知り合いのドクター。

そして俺の知り合いのドクターは1人しかいない。

ありがとうゴローちゃん。最後まで俺はゴローちゃん呼びは変わんねぇぜ。

 

なんて、この場に不釣り合いなことを考える。

だけど俺が死にかけたのはこれが初めてじゃないし、やり残したことはない。

いや正確にはあるけど、悔いが残ることはない。

大事なことは、一番最初に死にかけた時に全部済ませた。

 

「 なあ、お姉さん。最期にひとつ聞きたい。 」

 

「 は?なによアンタ、まだ死んでなかったの?最悪。息吸わないでくれる?寒気がする。ていうかアンタと話した直後に、タクヤは私を警察に『 ストーカーだ 』ってバカみたいなことを言ったの。その責任取ってよ、ねえ!!! 」

 

「 情緒不安定…。生理か? 」

 

「 アンタホントに懲りないわね! 」

 

「 生理で悩んでるなら、俺の知り合いの産婦人科医紹介するけど…。これでもゴローちゃん、腕結構良いんだよ…? 」

 

「 歳は俺と結構離れてるけど…。 」と言おうとすると、女性らしき人が今まで以上に強く、蹴って来た。

 

「 アンタさあ、そろそろウザいよ。 」

 

「 え、待って。まだタクヤくんが同性愛者か聞いてな…っ。 」

 

「 死ね!死ね!…死ね。 」

 

 

 

あー、流石に調子乗りすぎたかも。

 

 

 

あー、失敗したぁ…。

 

 

 

あの人がノリ良いからさぁ…?

 

 

 

仕方ないんだよ。

 

 

 

不可抗力不可抗力。

 

 

 

「 そろそろ死んだ?アンタゴキブリ並の生命力あったし、まだ生きてるかも。もう一発やっとくか。 」

 

何回目かもわからない肉の繊維が切れる音が、閑静な住宅街に響いた。

 

 

 

もう目も見えない。

 

 

体が金縛りにあったように動けない。

 

 

なんだこの感覚。

 

 

気持ちわりー…。

 

 

あー、最期にゴローちゃんに会いたかっ

 

 

 

 

 

* * *

 

 

 

 

 

「 はあ、なんで産まれてくるかなぁ…。 」

 

「 あでっ 」

 

あのー、神様。

転生して早々、親に叩かれるは如何なものかと。

 

なになに?人の感情まではコントロール出来ない?

あ、はいそうですか。すみませんでした。

 

そんなアホみたいなことを考え続けて1ヶ月。ひとつわかったことがある。

今世の両親が俺を虐待していることだ。

俺が受けている虐待は、虐待の中でも特に有名な身体的虐待。

親、というか父親から暴力を受けている状況。ちなみに母親からは教育虐待な。

 

それにしても俺は虐待児か。

母親の教育虐待は、母親自身の劣等感を俺でなくそうとしているからこその行動。

父親はただ単純にストレス発散だな。つくづく終わってんなこの家族。

 

二人共周りの評価しか考えてないから、外でアホみたいな量のストレスを抱えて家に帰ってくる。

そして俺でストレス発散、と。

母親の場合は父親が家に居る時点でストレス溜まってるからもう終わってる。

金持ち特有の悩みなのかも知れないが、それを俺に当たらないで欲しいものだ。

 

それにこんな2人とずっと一緒に居ると、俺までそういう性格になってしまいそうになる。

だから本音を言えば捨てて欲しい。

いやまあ捨てられた所で一歳にもなってない赤さんに出来ることなんて泣くくらいですけどね。

 

本当になにも出来ない。多分捨てられたらこのまま野垂れ死ぬ。

だけどこの二人みたいな人間にはなりたくないし、このままでは俺は今世の両親に情が湧いてしまう。

それだけはダメだ。絶対に。

 

話せるようになったら絶対「 俺は虐待児だ 」と警察や周りの大人言わなくてはならない。それも出来るだけ早く。

俺のこのガバガバな理想プランでギリギリ。それ以上居ると、感情移入しやすい俺は二人に情が湧いてしまう。

だから理想プランを実行させられる為に、俺は家族以外の大人と意思疎通を出来るようにせねば。

 

そういえば昔、こんなことをテレビで言っていた気がする。

虐待児が周りの大人に相談しないのは親が「 自分を愛している 」と思い続けているからだとか。

 

あながち間違いでもない虐待もあるが、人の愛は度を超えすぎたら凶器となる。

それは俺が身を持って経験したことだ。

人の愛は怖い。無償の愛なんてくれるのは親くらいだ。

 

だけど今世の両親は俺にそれをくれない人だった。

別に悲しくなんかない。愛は前世で厭といというほど貰った。

 

いくらあっても困らないが、前世で恵まれていた俺は今世で望むことは特にない。

今世の両親からの愛も、貰えたら嬉しい程度のものだ。

 

それにもし2人が俺に愛をくれていても、俺の両親は前世のあの二人だけ。

今世で俺を産んでくれたのがこの2人だとしても、俺の中での両親はあの2人だから。

それだけは永遠に、変わることはない。

 

 

 

 

 

* * *

 

 

 

 

 

「 な、なんで…。 」

 

たまたま病室にあるテレビを見て、私は絶望する。

 

「 今日未明、自宅へ帰宅途中だった美作傑さん23歳が、腹部を包丁で何度も刺され〜…。 」

 

嘘。ねえ、嘘だと言って。お願い。

 

「 …〜死亡しました。 」

 

この時ばかりは、嘘に縋ってた。

 

「 この人は絶対死なない 」って思ってたワケじゃないけど、ただなんとなく、「 この人は幸せに生きて、それで寿命が来て、周りに悲しんでくれる人が沢山居て、暖かなベッドで眠りにつくんだろうな 」なんて勝手な妄想してた。

 

この人は私と違うって。

私が最初で最後に推した人は、最高の人だからって。

ファンの勝手な押し付け。

 

わかってる。たまに見せるあの悲しそうな表情も。

なんでアイドルを辞めたのかも。

全部全部、君を本気で推してたからわかる。

 

わかってるんだよ…。

 

「 …バカ野郎。刺された時は包丁を抜かせないようにしろって、あれだけ、言ったのに…。 」

 

「 せんせ…? 」

 

美作傑のガチ勢の私よりも、彼が死んだことを悔しがっているせんせ。

ねえせんせ、せんせは美作傑のコトを、知っているの…?

 

 

 

 

 

* * *

 

 

 

 

 

はい、バブー。

無事俺は一人暮らしを始めれることに成功しました。

親から送られて来た使用人付きでだけど。まあそこは気にしない。

ちなみに今年で小1。4月1日生まれだから、まだ5歳だね。バブー言ってたのは気にしない。

 

確か小学校入学が4月6日だから、入学までには6歳となる。

これ以上に早生まれで良かったと思うことはないだろう。

基本早生まれには損しかないって思ってるし、俺。

 

両親からの一人暮らしの条件は「 国立の小学校に通うこと 」だ。

一応前世は京大卒だってので入試試験は難なく合格。

そしてずっと望んで居た一人暮らし生活をゲットしたのだ。

 

学校からも近い結構いいマンション買って貰ったし、二人から離れられたし、いいこと尽くめなんだよなー。

 

隣の部屋への挨拶用に渡された行き付けの和菓子屋さんの袋を下げ、俺は隣の部屋のインターフォンを鳴らす。

あの二人が持たせてくれた和菓子屋さんは俺が前世の時に物凄く好きで週一で通っていた所だ。

 

あの2人は洋菓子より和菓子派の人間で、そこだけは俺と気が合った。

3人で和菓子の話をしている時は本物の家族になれたみたいだったし、それに平和だった。

 

殴られることもないし、ヒステリーを起こされることもない。

全員笑顔だった。だからか知らんが、俺が勧めた和菓子屋さんを挨拶用に持たせるのは傑作としか言いようがない。

 

多分俺ら家族は特別なことが起きない限り、もう会わない。

それをわかっているからこそのこの選択だと感じた。

 

別にそれでいい。いや、それがいいんだ。

足枷を付けても、俺は飛ぶんだから。

 

「 隣の部屋に引っ越して来た、咲川梓です。 」

 

「 …梓ちゃん? 」

 

「 俺は男です!! 」

 

引っ越して初日、初めて俺を女の子扱いする人に出会った。

 

そして翌日、その人は死んだ。




本文最後に書いてある通り、アイ生存IFではございません。
アイ生存IFを期待した方はお帰りください。
それにアクア、ルビーとオリ主は同い年設定はありません。

ちなみに主人公の今世の名前は「 青春ブタ野郎 」シリーズの主人公、梓川咲太から来てます。
由来は再放送の青ブタを執筆前に見たからです。あれは安定に面白い。
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