Shimokitazawan Rhapsody   作:へんどり

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Let it be

(あっ……。"また"だ……)

 

5月5日。木曜日。祝日、こどもの日。日めくりに書かれたそんな言葉が、リフレインする。ここ数日、ひとりは強烈な既視感に襲われることが多かった。ただ既視感があることなら、以前にも経験がある。幼い頃連れて行ってもらった美術館。小学校の修学旅行先。学校の教室。その他、日常の何気ない一幕で。

インターネットで調べたこともある。ヒットしたサイトは難解で、ひとりには半分も理解できなかったが、とにかく人間にはしばしば起こり、特に害があるわけではないとか、メカニズムはよくわかっていないとか、そんなことが書かれていたのだった。

 

では、現在起こっていることがそのような既視感と同じかというと、少し違う気もしていた。

まず、回数が多い。今まではぼんやりとした既視感を含めても、1年に数回あるかないか程度だったものが、ここ数日はほぼ毎日、1日に複数回起こる。

妹のふたりが起こしに来る時の言葉。母が用意してくれる食事。動画についたコメント。全てに既視感がある。

 

そのおかげで助かったことさえある。

昨日のギターの練習中、気になる事があり、ひさしぶりに手に取った教本で手を切ってしまいそうになったのだが、手に取る直前で既視感があり、手を切らなかった。

 

ここまで来ると、ひとりも流石におかしいと感じ始めたが、春の休み中に特別な能力に目覚めたのかと思って調子に乗っていた。

調子に乗って部屋で踊っているところを妹に見られ、笑われてしまったが。

 

(肝心なところで発動しない……! )

(でも使い続けてれば、目覚めるのかも……)

 

ひとりは単純だった。

その日もギターの練習をして一日を終え、夜にはオーチューブにアップする用の動画を撮影し、元々大きく編集するわけではないが、多少の編集をしかけたところで眠りに就くことにした。

ひとりは複雑でもない理由で居住地から離れた高校に通っており、平日は早く起きなければならないのだった。

 

目が覚める。5月6日。金曜日。ひとりはやはり強い既視感を覚える。まるで、何回もこの日を経験しているかのようだった。

 

(もし本当に何回もやっているなら、未来に起こることが分かってもいいのに……)

 

そんなことはない。

ひとりも、奇妙な違和感はありつつも、それが現実に起こり得ないことであることは理解している。今日の数学の授業で抜き打ちの小テストがあるかどうかは分からないのだ。

 

そのはずなのだが。

 

学校に着き、朝のHRを終える。1限は数学だ。数学科の教員が教室に入ってくる……。

 

(あっ……!)

 

入ってくる直前に、普段は持っていない紙束を持っている様子をひとりは幻視した。

 

(デジャヴじゃ、ない!?)

 

教員が入室して、紙束と冊子と教科書を教卓に置き、言った。

 

「今日はいきなりだが、小テストを行う。ほら、教科書とノート片付けろ〜」

 

教員が紙を配り始め、教室が俄かに騒ぎ立つが、ひとりの内心は困惑でいっぱいで、それどころではなかった。

 

(もしかして、本当に未来予知!?)

(でも、あれ?  肝心の問題が予知できてないんですけど!?)

 

ひとりの学力では、問題が多少予知できたところで、答えることはできなかっただろう。

小テストは、半分以上白紙で回答することになった。

 

そんなことがあり、ひとりはその日少し浮かれていたが、その後の授業では特に"予知"は起こらず、放課後になった。

 

(このまま予知能力を鍛えて、宝くじとか競馬で荒稼ぎしたら働かなくて済む……!)

 

ひとりは単純だった。

ホクホク顔で家へ向かう途中。駅で、ベースを手に持った人物とすれ違った。中性的で精悍な顔立ちをしていて、服装次第では男性かと思っただろう。目を引く程の美人が、駅構内でケースにも入れないでベースを持っていて、ひとりはなんとなく目で追っていた。

 

(わ、すごい美人……。私と同じくらいかな。あんな人ならバンドとか組んでるんだろうな……。うう、私もいつかは)

 

その女性は、持っていたベースを振り上げ……

思い切り、地面に叩きつけたのだった。

 

(えっ! ……ちょっと!?」

 

がばっ! と音がしそうな勢いで体を起こした。ひとりは何かが体にまとわりついているのを感じた。布団だった。

 

「おねーちゃん! そろそろおきたほうがいいよ! ……あれ、おきてる。おはよう! きょうは休みなのにはやいね!」

「ふたり……?」

 

「あれ……? 美人ベーシストは? 未来予知は?」

「おねーちゃん、ねぼけてる?」

 

呆れ顔でふたりが言った。日めくりを見る。5月3日。火曜日。祝日、憲法記念日。

 

「5月……3日??」

「あさごはんできてるよ〜」

 

ふたりがぱたぱたと階段を降りていく。ひとりは今までのことが夢なのか現実なのか、分からず混乱していた。

寝惚けていたのか? あんなに明確に意識を保っていたのに? 今は現実なのか? ……それとも、またあのベーシストがベースを叩きつけたら夢になって目が覚めるのか? 日付は本当はいつなんだ? 昨日撮った動画の編集は済んでいるのか?

 

"昨日"って、いつだ。

 

(とりあえず、ご飯たべよ……)

 

 

(わかったことがある)

(どうやら私は、この数日……1週間くらいを、ループしているらしい)

(ループさせれられている、というほうが正しいかもしれない)

(あの美人ベーシストに)

(最初見つけたときは美人さに気を取られて気付かなかったけど、見かけると思い詰めた顔をしてる)

(そして、あの人がベースを叩きつけて壊すと……私は5月3日に目覚める)

(見かけないでもループするみたいで、気がついたら5月3日の朝になってる時もある)

(それと)

(5月9日よりも後に行くことはないから、5月9日に何かあるのかもしれない……)

 

ひとりは、最初の数回こそギターの練習時間が増えることや、社会に出るのが遠のくことを喜んでいたが、だんだん動画投稿や学校で全く同じ作業を行うことに苦痛を感じ始めていた。他人はこのループに気付いていないようなので、だれかに話すわけにもいかない。

 

未来のことを話せば信じてもらえるかもしれないが、それだって数日のことだ。ループを挟む数日後に(または数日"前"に?)また同じ話をしなければならなくなると思えば、他人に話すのも億劫だった。

 

天気も同じ。

ニュースも同じ。

授業も同じ。

休み時間の教室での会話も同じ。

両親との会話も同じ。

オーチューブにつくコメントも同じ。

 

だんだん嫌気がさしてきた。

 

(このままじゃ、いやだ)

(次のループでは……学校の帰りに、あの人を探してみよう)

 

ひとまず、ひとりは見かけたことがある場所を一通り回ってみることにした。

まず、初めて見かけた高校の最寄り駅。名も知らぬ小さな公園。駅から高校への通学路。たまには、と決心して出かけたが入れなかった音楽ショップ付近。バンドに憧れて降りたが実際にはホームから出ることすらなかった下北沢駅。

不思議なことに、探し始めるといない。

 

5月3日。5月4日。5月5日。5月6日。5月7日。5月8日。

5月3日。5月4日。5月5日。5月6日。

5月3日。5月4日。5月5日。5月6日。5月7日。5月8日。5月9日。

5月3日。5月4日。5月5日。5月6日。5月7日。5月8日。

5月3日。5月4日。5月5日。5月6日。5月7日。5月8日。

5月3日。5月4日。5月5日。5月6日。5月7日。5月8日。

 

いない。いない。いない。

もう外出が億劫とか、陽キャオーラがとか、言っていられるような状況ではなくなってきた。ひとりの体感ではこの1週間くらいを3ヶ月以上続けているような気すらする。

 

(ベースがキーだと思って、あと人と会いたくないから、音楽ショップを巡ってたけど……やっぱり、ベーシストの方?)

(だとしたら、拠点はライブハウスかな。渋谷、新宿、下北沢、高円寺……)

(下北沢で見たこともあるから、まずは下北沢にしよう)

 

5月6日。学校帰りに、下北沢で降りて、とりあえず周囲を見渡す。

下北沢エリアは、ライブハウスが何軒もある音楽の街だ。聞き込みでもすれば早いのかも知れないが、ひとりにはハードルが高かった。マップアプリを頼りに、今回の目的地である下北沢STARRYに向かう。

 

その途中。ついに、見つけた。

 

(あの人だ……。笑顔、初めて見たかも)

 

ベースはケースに入れて背負っている。そして、友人であろう金髪の女子高生と会話していた。柔らかな笑みを浮かべており、以前見た思い詰めたような表情は、全く表面に出ていない。じっと見つめていると、友人のほうがこちらに気付いたようだった。

 

「あれ、リョウ、あの子、リョウになんか用事なんじゃないの? ずっと見てるけど?」

「ん……? いや、見たことない子だと思うけど……」

「リョウはファンが多いからねー。ほら、行ってきたら?」

 

金髪の友人さんに促されて、こちらにやってくる。リョウと呼ばれていた、そのベーシスト。

 

「なにか用?」

 

先程までとはうってかわって冷たい表情だったが、困惑しているようでもあった。ひとりは、自分の心臓がかつてないほど早く脈拍しているのを感じていた。この人がこのループにおいてキーの一つであることはもはや間違いない。他人相手なら、どんな失敗や事故をしても、少なくとも今は、いずれ5月3日に戻るから問題ない。しかし、この人相手に失敗したら、もう二度とループできないかも知れないし、逆にループから離脱することができなくなるかもしれない。

 

緊張する。

なんと聞けばよいのか。

ひとりはしばし考え、あえて具体的なことをぼかしながら尋ねることにした。

 

「っあ、あの、5月3日から5月9日のことで……お聞きしたいことが……」

 

その瞬間、ひとりは間違いを悟った。

対面していた人物の顔が、警戒感を露わにし、これ以上ないくらいに不快だと語っているかのように変化したからだ。

 

「あああああの、おおおちおちおちついて……」

 

ひとりは末端から溶け始めた。しばらくすれば人間の形を保っていられなくなるだろう。

しかし、そうはならなかった。

 

「いや、そうか……。まだ、そう(・・)と決まったわけじゃない……」

「もし"その期間"に"何か"あったなら、5月3日の夕方、あそこの喫茶店で会おう。自己紹介とかは、その時にしよう。今は、それ以上言わないでほしい」

 

対面の人物は、すぐに表情に冷静さを取り戻し、小声で何か呟いたあと、近くの喫茶店を指さして言った。ひとりはなんとか人の形を取り戻した。

 

「あっ……はい」

 

ひとりの返事を待ち、ゆっくり頷いて、その人は踵を返した。

 

「虹夏。行こ」

「リョウ、良かったの?」

「うん。まだ勘違いかもしれないから」

「え? どういうこと?」

「今は秘密。ライブが終わったら(・・・・・・・・・)教える」

「えー?」

 

虹夏と呼ばれた金髪の女子高生と、リョウと呼ばれたクールな女子高生が仲良さげに話しながら去っていくのを、ひとりはなぜか目が離せなかった。

 

帰宅し、夕食を済ませて、もう何度目か分からない新作の弾いてみた動画を撮っていたとき……。ひとりは布団から起き上がった。妹が階段を上ってくる音がする。

 

「おねーちゃん! そろそろおきたほうがいいよ! ……あれ、おきてる。おはよう! きょうは休みなのにはやいね!」

「ふたり、おはよう」

「……おねーちゃん、なんか、かおがこわい」

「えっ?  あっ、あ〜〜、寝惚けてたのかな」

 

困惑と、ひとり自身も気がついていない様々な感情が顔に出てしまっていたらしい。続けて、ふたりが尋ねてくる。

 

「へんなゆめでもみたの?」

「そう、かも……」

「ゆめでよかったね!」

 

そうか。

 

そうだ。

 

ひとりは柔らかくふたりに微笑んだ。

 

「うん。ふたり、朝ごはん食べよっか」

「うん!」

 

(夢なんだ。これは)

(あの「リョウ」さんが何を抱えているかは分からないけど)

(私はそろそろ起きて、朝を迎えたい)

 

このネバーランドを終わらせる決意をした、朝。

 

もう何度目か分からない、5月3日の朝。

 

 

普段、休日は一日中ギターを触って過ごすことが多いが、今日のひとりには予定がある。

ジャージをばっちり着込み、下北沢のオシャレな喫茶店へ行くのだ。

 

(そうだ。せっかくだし、ギターも持っていこうかな。この間下北沢行った時、結構バンド女子もいたし、もう私ってほぼ陽キャなんじゃ!?)

(それに、あの人のベースも気になる……。ループの度に叩き壊してるけど、ちらっと見た感じだとちゃんと使ってるみたいだし、やっぱりバンド組んでるのかな……)

(セッションして、ギターヒーローの腕前が世間に広まってチヤホヤ……えへへ)

 

ひとりの脳内では、超満員の武道館で演奏する自らの姿がありありと浮かんでいた。空想の上では容易いことなのだ。

 

「ひとりちゃん、お出かけ?」

「うん。ちょっと、下北沢まで行ってくる」

「まあ! ついにバンドメンバー探し!? いつかな〜と思ってたのよね! 楽しみにしてるわね〜」

 

昼食後、しばらくして出かけるひとりに、ひとりの母、美智代が声をかけた。ひとりは、その言葉を聞いて複雑な気持ちになった。

 

(この母の喜びも、無くなってしまうだなんて)

 

「行ってきます」

「気をつけてね〜」

 

 

下北沢駅付近、リョウ指定の喫茶店。

建物はかなりオシャレな出立ちだったが、ひとりは自らをバンド女子と思い込むことによって、そして話し合いのための決意によって、いつもよりは自信に満ちた表情で、ドアを開けた。

 

「いらっしゃいませ〜。一名さまですか?」

「あっあっ、あ、えと、」

 

表情だけだった。

 

「あ、こっちこっち」

「お連れさまですね。ごゆっくりどうぞ〜」

 

思わぬ助け舟にありがたく乗り、2人がけのテーブル席の空いている側に座った。改めて見ても、やはり精悍な顔つきで、女性からも人気がありそうだとひとりは思った。

 

「こうしてちゃんと話すのは初めましてだよね。私は山田リョウ。下北沢高校2年。"結束バンド"ってバンドで、ベースをやってる」

「あっ、わ、私は、後藤ひとりです。秀華高校の1年で、ば、バンドとかはやってないですけど、ギターはちょっと弾けます。それで、あの」

「聞きたいことがあるのは分かってる。けど、こっちにも色々あってね。先に説明させてもらってもいいかな」

「あ、はい」

 

そして、聞いた。彼女の絶望を。彼女の地獄を。そして、救いを。

 

「というわけでね、うちのバンドではギターを募集中なんだ。ひとりがその気なら、うちのバンドに入ってくれないかな。と言いたいところなんだけど」

「はい……?」

「おそらく、ひとりはこのことを次の5月3日には忘れてしまうんだ」

「えっ……?」

 

そういう契約なんだ、とリョウは言った。

つまり、この超自然的なタイムリープは、悪魔との契約によって成されており、リョウが最も大切にしているモノの一つであるベースを破壊することで稼働しており、

 

他人に指摘されたら終わるのだった。

 

「え、え、まだ私、なにも……」

「いや、前回はギリギリで見逃してくれたけど、今回はダメらしい。ほら」

 

リョウを指差した方では、世界が不自然に歪んでおり、見渡せばそんな場所がいくつもあった。人間が間延びしており、あるいは渦の中に消えかけて半身になっており、"背景"としか言いようがないような真っ白が迫ってきている箇所もあった。

 

「えっ、えっ!?」

 

「ひとり。最後にお願いがある。きみはきっとこのことを忘れてしまうけど。もし、かすかにでも何かを感じたら」

 

静かに語る山田リョウ。ひとりは、体が溶けかけていた。いつものように緊張によってではない。世界の異常によってだった。

 

「5月9日に、STARRYというライブハウスか、その近くに来てくれないかな。私たちのライブがあるんだ」

 

ひとりは返事をしようとしたが、声が出なかった。もう私たち以外の世界は、あの真っ白な背景に沈んでしまっている!

 

「虹夏は、きっとライブハウスの外に出て、サポートギターを探す。それに応じてほしいんだ」

 

まとわりつくように感じるのは、布団か? この世界が、夢の中になってしまうのか?

 

「図々しいお願いだって分かってる」

 

消滅しているはずの全身で、どうやって見ているのかすら分からないが、とにかく、この人を、山田リョウをみつづける。めをはなしたら、そのとたんにいなくなってしまいそうだから。

 

「だけど、もう頼れる相手がいないんだ」

 

きえてしまう。すべて。めのまえのこのひとも……。

 

「だから、どうか、お願いです」

 

うつくしいひと。どうしてないているの?

 

「虹夏を、助けてください」

 

 

ピピピピピピ……

 

「あっ……朝?」

「おねーちゃん! そろそろおきたほうがいいよ! ……あれ、おきてる」

「……ふたり?」

 

ひとりは、体を起こして、静かに涙を流していた。

 

「おねーちゃん、泣いてるの?」

「え?」

 

ひとりは自分が涙を流している自覚がなかったが、手で触れてみると、確かに頬が濡れていた。ふたりは、普段両親や姉にそうされるように、姉の頭を撫でた。

 

「よしよししてあげるね。えらいえらい。よくがんばったね」

 

ひとりは、なぜだが分からないが涙が込み上げてきて、しばらく嗚咽を上げていた。わけもないはずなのに、なんだか悲しかった。

5月3日。火曜日。祝日、憲法記念日の朝だった。

 

 

 

(何かを、しなければならないような気がする)

 

ゴールデンウィークが終わり、5月9日の月曜日。ただの、休み明けの、憂鬱な月曜日のはずだった。

ひとりは昨日の日曜日、新しく動画についていたコメントにあてられて、陽キャになってバンドを組んでやる! と思い立ち、ギターを背負い、ブレスレット、トート、シャツ、全てにバンドグッズを採用して登校した。

 

(今年のゴールデンウィークはなんだか長かったような気がする)

(2日も6日も平日だったせいで、むしろ短かったと思うんだけど)

(6日には数学で抜き打ちの小テストもあって大変だったし)

(でも、なんかギターの腕前が上がってる気がする)

(5日に上げた動画で演奏した曲も、思ったよりかなり上手くできてたし、まだまだ上手くなってるな、私……! )

 

少し浮かれた気分で教室に入ったが、クラスの皆からは一目見られただけで、特に会話などはなく、思っていた反応が得られなかったことにひとりは少し落胆した。

 

(ま、まあ?  まだ来てないクラスメイトもいるし、これからでしょ! )

 

ひとりは楽観的だった。

 

しかし、放課後になる頃には、メンタルがズタズタになったピンク色の生物になってしまっていた。

 

(うう、まさか誰も話しかけてくれないなんて……)

(ちょっと散歩でもしてから帰ろうかな)

 

5月の午後は暑すぎず寒すぎず、インドア派筆頭のような後藤ひとりをして、散歩してみようかと思わせるほど魅力的な陽気だった。

快晴で、少し冷たい風がむしろ心地よい。

たまには、ふらふらと気の向くままに歩くのも悪くない。

 

(それに、なんとなく、こっちの方に行きたい)

 

ひとりは、心の赴くままに歩いているつもりだったが、ある方向に向かっていることはなんとなく自覚していた。周りは住宅地だが、このまま進めば下北沢あたりまで進みそうだ。

下北沢。

恐ろしい陽キャのまちである。ひとりは、陰キャの自分が行ったら石を投げられるに違いないと思った。

 

(どこまで歩いてもいいと思ったけど)

(だんだん疲れてきた)

(荷物も重いし)

(うう、ギターなんて持ってくるんじゃなかったかな……)

 

ひとりはインドア派なので、体力がない。それからしばらく歩いたところに見つけた小さな公園でブランコに腰掛けて休むことにしたのだった。

 

そこに、彼女を見つけた誰かの声が響く。

 

 

「あっ! ギター!! それ、ギターだよね?!」

 

 

運命の歯車は、唐突に噛み合い、回り始めた。

Continue to anime "Bocchi the rock!"....

 

<了>




後日談ですが、内容に問題があったため修正しております。
GW中の完成を目指しておりますが、遅れるかもしれません。すみません。
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