今日のイベントも死屍累々   作:卵のかなっしー

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アンケート

 

 ◆ 街外れの荒野 掘っ建て小屋byリスディス

 

 イベントの後には当然アンケートがある。俺は掘っ建て小屋でリスの被り物を付けた変人と対面していた。

 軽く挨拶を交わすとすぐにアンケートの問答が始まる。

 

「『拝炎祭』はここ最近の僕のイベントで最も多くの参加者を集めることができた。その根本的な理由は『拝炎祭』の仕組みが良かったからだけど、僕はデルゲン君の活躍にも助けられたと思っている。今後のイベントのためにも、是非、デルゲン君の感想が聞きたい」

 

 リスディスに『拝炎祭』のアンケートとして呼び出しを受けた俺は他国への興味を訴えた。正確には『拝炎祭』のキャストに起用されていた狼に触発されて俺の今後の目的が見えてきたと話し、その狼をチョイスしたリスディスのセンスを賞賛した。

 

「ありがとう。ストレートに褒められるというのは気持ちの良いものだね。純粋な自信にも繋がるし、何より次のイベントも頑張ろうという気持ちになれる。感謝の言葉は人と共に生きていく中で重要な要素だ。すっかり忘れてしまっている者も多い中、デルゲン君のように実直な者は珍しい。女王フーラの教育のたまものだね」

 

 女王フーラは俺のマミーに当たる人だ。他国からきた旅人の赤子だった俺を代わりに育ててくれた恩人であり、フーラ国の女王でもあらせられる。

 俺とマミーの関係を知る者は少ない。俺の把握している限りだと知ってるのは女王に近しい立場の者、つまり国内で強い影響力を持つ有力者ぐらいしか知らないはずだ。俺の心に最も浸透しているミルキィですら俺の出自について知らない。

 この状況からして、まるでこの情報がとても重要な秘匿事項に感じられると思うが、何もトップシークレットというわけではない。所詮、俺は他国の人間にすぎず、女王に育てられた程度でしかないので、俺に強力な力はないし権力もない。だから、別にバレても大した問題は無いし、隠してるわけでもない。

 単に言うタイミングが掴めないから言ってないだけだ。

 

 世界で最も偉大な女王の養子なんていうビック情報を日常会話の中で言うのは俺の主義に反する。やっぱりそういうビックな情報を公開するならそれ相応の威光ある舞台が好ましい。誰もが目を見張る輝かしい舞台で、誰もが忘れられない瞬間にこそ公表すべきだ。

 ……などと思っていたら、ついぞ今日までその時を迎えることができなかった。ほとんどの人が俺の出自を知らないのはたったそれだけの理由だ。

 

「話を戻そうか。イベントで狼と戦ったことでデルゲン君は国外への好奇心を刺激されたようだけど、実際に戦っているときはどうだった? 今回はかなり堅牢な付与魔術を付けていたけど、難易度は高過ぎなかったかな? それとも交戦欲求を刺激される良い難しさだったかな?」

 

 難易度に関しては特に問題は無かったな。どうせ戦うのは闇の民ぐらいだし、そんであいつらはどれだけ相手が強くても戦うことをやめたりはしない。途中、全滅させられて俺が萎えてスロットに行っていた時も、あいつらはリスポーンした後に戦っていたようだし。

 

「なるほど、彼らについてはあまり考える必要はないみたいだね。死を許容する彼らの感性は想定外なものが多くて面白いね。色々と遊べそうだ。うん、それじゃあアンケートはこれで終わりだよ。今日はありがとう。とても良い話が聞けた」

 

 リスディスは変人として名高いが、そんじゃそこらの平凡な変人と一括りにするのは正しくない。変人よりもかなりレベルの高い変人だ。天才と言うのが変人と紙一重だと言うのなら、リスディスは天才に片足を突っ込んだ変人だろう。あくまでも天才ではなく変人なのは、リスディスの奇行が度を越しているからに他ならない。

 ……俺は差し出された粗茶を飲むことができなかった。流石の俺と言えど、謎の虫が浮かんだ飲み物を口に入れることはできない。リスディスには悪いが一切口を付けずに帰るとするか。

 

 そう思ったが、俺はリスディスに用があったのを思い出した。

 

「ああ、そうだった。主催者に聞きたいことがあったんだ。今回のイベントは随分と住民の協力を促すような作りをしていたように思うが、お前は何の意味もなく特別な志向性を持たせた作りにしない。狙いはなんだ?」

 

 リスディスは謎の虫が入れられたコップに口を付ける。俺にはゲテモノにしか見えないが実際は美味いのだろうか。そう思った矢先にリスディスが不味そうに顔を歪めた。

 

「やっぱり狂虫は良くないね。…………ガハッ、ゴホッゴホッ」

「は? おいおいどうした? 大丈夫か? って、血が出てるぞ!?」

 

 健康的な人が突然喀血するなんてただ事じゃない。人がそんな簡単に喀血するような身体のつくりをしてたなら、今頃人類は繁栄することなく絶滅している。リスディスの身体に何かとんでもない現象が起きたのは間違いない。

 もし、リスディスへ何らかの攻撃があったなら俺の身も危ない。俺はリスディスの身体をゆすりながら、躍起になって喀血の原因を突き止めようと頭を働かせた。

 

 その最中、リスディスの指がピクリと動き、それに次いで口が動く。

 

「狂虫は、人体への悪影響が大きい……」

 

 虫? 俺はバッとコップに浮かんだ虫を見た。俺のコップに入っている虫とリスディスが飲んでいたコップに入っている虫は同じ種類のようだ。

 背中を虫が這いずるような悪寒がした。

 

「……これがリスディスか。そりゃコンコンが嫌うわけだ」

 

 既に死体となったリスディスをそのままに俺は掘っ建て小屋を後にした。

 馬鹿は死んでも治らないというが、全くもってその通りのようだ。

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