今日のイベントも死屍累々   作:卵のかなっしー

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自爆突撃

 

 現状、街は七割ほどの建物が倒壊している状態にある。これは一般的にフーラの住民が『健康で文化的な最低限度の生活を営む権利』を享受できる水準が五割の建物を使える状態だと言われているため、少々野性的な状態にあるといえるだろう。今のありさまでは例え住民が地下から地上に戻ってきたとしても野宿とあまり変わりない生活を送る羽目になる。

 よって、俺達戦闘員はどうにかして五割の建物が使えるようになる状態まで街を回復させなければならない。

 具体的には倒壊した建物の修復、それと新たに破壊されないようにするための害虫駆除。それが今の俺達に課せられた役目だ。

 

「お、デルゲンようやっと来たか。今の状況は芳しくないが、どうするよ?」

 

 俺が戦場に連れてこられたのを見るや否や戦ってた奴らが颯爽と寄ってきた。意外なことに闇の民だけでなく光の民も何故か寄ってきている。自分で考える頭を持っている光の民も指針を求めているとなると、よっぽど状況は芳しくないようだ。

 とはいえ、俺を頼りにされても困る話。

 

「どうするよって言われてもな。魔蟲を蹴散らせばいい話じゃないのか?」

「それがよぉデルゲン、あの蜂野郎ども何体殺しても次から次へとやってくるんだよ。蜂以外にもカマキリとかイモムシとかまで出てきやがってさぁ。これじゃキリがねぇよ」

 

 現在確認されている限りでは蜂以外にもカマキリ、クモ、イモムシ、ナメクジ、トンボと様々な種類の魔蟲が街を襲ってきている。それは俺も魔蟲と戯れる中で確認した。

 

「キリがないってことはないだろ。これはクズ共が束になって始めた『バグサーカス』だったか?ってイベントだろ? それなら終わりが設定されてるはずだぞ」

「それは、そうなんだが……。まだ『バグサーカス』の終了条件も分かってないからなぁ。魔蟲の殲滅が終了条件に無い場合は、俺達が狩り続ける限り延々と供給される場合もあるぞ」

「流石にそれは……」

 

 俺はクズの意見を馬鹿げてると一蹴しようとしたが、できなかった。

 殺したら殺した分だけ魔蟲を供給するなど馬鹿げた話があるわけがない……のだが、このイベントを起こしたのはそんな馬鹿を糞真面目にやるクズどもだ。可能性として考える余地はあるだろう。

 脳筋戦略では解決しないと見た方が良い。

 

「じゃあまずはイベントの終了条件の解明からか……」

 

 イベントには必ず終了条件が設定されている。ラーディの時のイベント『拝炎祭』を例に挙げると、終了条件は参加者全員に配られた火の種を集めることだった。

 この『バグサーカス』にも何か条件があるはずで、俺達はそれを早急に見つける必要がある。

 とはいえ、

 

「でも、これとは別の選択肢もやっておきたいよな。やっぱ、魔蟲の駆除は積極的にやるべきか」

 

 条件探しに全リソースを注いで、肝心の魔蟲駆除を止めるのは悪手だろう。物事の解決は二正面でやるのがセオリーだ。それに、避難している住民を地上に戻すためにも害虫駆除は優先したい。

 よし、部隊を二つに別けるか。

 

「光の民はイベントの条件探しを頼む。いつもの検証班だ。これが分からないことにはどうしようもないからな」

「俺達はどうする?」

「おまえらは……」

 

 言う内容は決まっているが、俺は言葉を選ぶために数秒黙った。

 が、結局面倒だったので取り繕うことなく言った。

 

「お前らは脳死突撃で自爆してもらう。害虫共に特攻をしかけてくれ」

「そりゃねぇよデルゲンの旦那ァ」

「誰が旦那だ。勝手に俺をお前らの頭にするな」

「でもよぉ、俺らに適切な指示を送れるのはお前だけなんだよ。今回のイベントではパラディンの指揮下に何度か入ったが、あいつらは俺等の扱いがなってねぇ。一々指示が細かくて地味なんだよ。やっぱ俺等の頭はデルゲンの旦那だけだ」

「だったら大人しく俺の言うことに従ってろ。俺はお前らの頭になった覚えはないがな」

 

 人手が足りてないとは聞いてたが、まさか闇の民をパラディンの指揮下に入れないといけなくなるまで足りてないのか。……これはちょっと、いや、かなり厄介かもな。やはり自爆突撃が正解か……。

 あれは良いものだ。あれほど闇の民の性質を活かせる戦術はない。

 俺は闇の民を率いるように背を向けた。

 

「時間が惜しい。さっさと行くぞ」

「え? お前も一緒に行ってくれるのか?」

 

 思いもよらなかったと言わんばかりの顔だ。

 

「お前らは俺を何だと思ってるんだ。他人を死地に送るんだから言い出しっぺの俺も逝くに決まってるだろ」

「で、デルゲンの旦那ァ~」

「誰が旦那だ。ほらさっさと行くぞ。他の奴らにも伝えて回らねぇといけないからな。時間はないぞ」

 

 ったく、これも地下に避難してる人たちを地上に戻すためだ。今日は派手に行くぞ。

 

 ◆

 

 自爆突撃の効果は絶大だった。

 一度死んだら二度と復活してこれない魔蟲に対し、何度死んでも何度でもゾンビのように蘇ってくるフーラの民は、魔蟲からしてみればまさに悪夢を見ているようだっただろう。

 方や一つだけの命を大事にして文字通り必死に生命体で、方や無限の命を捨て駒のようにして戦うゾンビ。どちらがより長く苛烈に戦えるかは火を見るより明らかだ。

 

 闇の民共は己の命を顧みることなく、ただひたすらに命を散らし、ただひたすらに魔蟲を駆除し続けた。

 その結果、俺達は街に蔓延っていた魔蟲の占有地をいくらか奪い返すことに成功した。おかげで当初の目標通りに街にある建物の五割を使用できるまでに街の修復が完了した。これなら避難している人を地上に戻しても良いだろう。

 

「あとは検証班の見解を待つだけだな。あいつらめ、面倒なイベントを持ってきやがって」

 

 現在開催されている『バグサーカス』は闇の民連合とやらが主催しているイベントだ。その内容は闇の民が満足できるような狂ったものになっていることだろう。

 そう考えると頭が痛くなる。

 でも、悪くない。

 俺は魔蟲と闇の民が奏でる断末魔のハーモニーをBGMにしながら、そんな感じで黄昏た。

 

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