カマキリ、クモ、イモムシ、ナメクジ。蜂だけではなく、様々な魔蟲が街を闊歩しては通りすがりの人を殺している。一見すると阿鼻叫喚に見えるが、イベント開始から二日もする頃には既に日常の一幕に溶け込んでしまっていた。
地下への一時的な避難は終了し、今はほとんどの住民が地上で日常を送りながらイベントの風景を堪能している。
アチョーと叫びながら魔蟲退治をするカンフー、楽器を奏でて戦士に魔術を付与する音楽劇団、魔術とは異なる手法で魔蟲を殺す忌み師、獣が混じった者、蟲が混じった者。いつもの街では見られない特別な技能を持った人達もイベントに参加しているのもあって、『バグサーカス』はかなりの盛況を見せていた。
魔蟲との戦闘は安定を見せ、街は騒々しいながらも元の生活を取り戻しかけている。元に戻っていないのは昼夜問わずに戦い続けなければならない戦闘員ぐらいと、他にはこのイベントの主催者側にいる闇の民ぐらいのものだろう。
イベントの主催をしている者達はイベントがスムーズに進むようにイベント開催中は常に動き詰めだ。参加者たちが条件を満たして次のステップに進めるようになった時に、主催が動いていないから次にはいけません、なんてことにならないようにしなくてはいけない。
主催者達に配られた赤い腕章をつけた闇の民たちはあくせくと動きっぱなしだった。
「あれれー、思ったよりも集まらないなぁ。これじゃあこのイベントの終わりまでに花火造れないんだけど」
腕に赤い腕章を付けたガンザイは死体漁りをしながら悪態吐いた。
それもそのはず、もうかれこれガンザイは半日近く死体漁りをしているのに、手元にある袋には少量の戦利品しか入っていないのだ。弱音を吐きたくもなる。
「花火は祭りの終わりに打ち上げるものだってデルゲン君が言ってたから、このイベントの終わりにでも打ち上げようと思ってたんだけどなぁ」
ガンザイはデルゲンと一緒に花火を打ち上げる約束をした。その時にある程度打ち上げの予定を立てていたのだが、どうやらその予定通りに花火は打ちあがりそうにないようだ。
と、ガンザイは落ち込んでいたが、何か気付くことがあったかのように「あっ」と声をあげた。
「別にそれで良いんだ。どうせおまけのイベントがついてくるわけだし、その時までに間に合えば問題ないんだよ。なーんだ。じゃあ材料集めは後回しにできるね。ラッキー。シャルルに追われながら素材集めなんてやってられねーって思ってたところだったんだよね」
ガンザイは現在進行形でパラディンのリーダーであるシャルルに追われていた。この時点で既に何度もシャルルに見つかっては逃げてを繰り返している。材料の集まりが芳しくない原因の半分はこれのせいだ。原因のもう半分は不明だ。何故か分からないがガンザイの眼をもってしても材料が見つからない。……誰かが裏で何かをしているのだろうか。
「ま。こっちの方は何故か順調に行ってるから別に良いか。死の魔力が順調に集まってる。これなら満足な物が作れそうだよ」
言って、ガンザイは赤い腕章を留め直した。