今日のイベントも死屍累々   作:卵のかなっしー

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子狐との逢瀬

 暗く暗く、冷たく冷たく、遠く遠く、寂しく寂しく…………。耐えられないほどの、耐えたくないほどの苦痛。

 でも、とても楽だ。

 何もしないだけでそれら全てを消せるのだから……。

 

 問題を解決するためには動く必要があり、動くためにはエネルギーが必要になる。

 しかし、エネルギーは有限であり、所持するエネルギー以上を欲するのであれば、それには更なるエネルギーが必要になる。

 ……エネルギーを得るためにエネルギーが必要…………?

 そして、それを考えるためにもエネルギーが必要で……?

 

 考えるだけばかばかしい。

 

 だけど、そんなのはここでは通用しない。ここではただ何もせずに沈みゆくだけで全ての問題が解決する。全てを無に帰すことができる。動く必要はなく、エネルギーを消費する必要もない。これに不可欠なものは一つとしてない。

 赤子でも出来るような世界で一番簡単なことだ。

 

 でも、俺は簡単なことが好きでは無かったから、今日も今日とて存在しないはずの腕を天に向かって伸ばした。いつもだったら見えるはずの両腕が今は見えない。だけど、足掻いている内に、エネルギーを絞り出そうとする度に、腕が見えてくる。

 腕の感覚が生まれ、脚の感覚も生まれ、瞳の感覚……視界が明瞭になったような気がして、思考が段々とクリアになっていく。

 そして、俺の身体は再構成された。

 

 ガバッと上体を起こす。

 そこはベッドの上だった。白く綺麗なシーツと毛布に白い壁と天井。あまりに白すぎて頭が痛くなりそうだが、申し訳程度に花が置いてあるおかげで気分はそれほど悪くはない。部屋の模様を決めている人のセンスが良いのだろう。どことなく心地良い。病人のことを良く考えている。おかげで眼を覚ましたばかりの俺の身体の調子はすこぶる良かった。

 流石はミルキィだ。

 そう、俺の記憶が確かなら、ここはミルキィの診療所だ。

 

 だが、おかしい。通常、死んだ人は人目につかない路地裏などの野外でリスポーンするはずだ。なのに、今回俺はガッツリ人目につく屋内でリスポーンしている。それもベッドで寝ている状態で。こんなのは今までで一度もなかったことだ。

 リスポーンの仕様に何か変更でもあったのか? それとも、俺が何か勘違いをしているだけか?

 まあ、話を聞けば良いだけか。

 俺はベッドの隣で寝ているミルキィに目を向けた。俺が一人で考えるよりも、事情を知っていそうなミルキィに聞いた方が早いだろう。このタイミングで俺のすぐそばに居るということは何か知っているはずだ。

 が、しかし、ミルキィはぐっすりと寝ていて、俺の疑問に答えてくれそうにはない。

 テーブルに両腕を重ねて、それを枕に頭を置いている。顔を横向きにしていたのもあって、俺の方からはミルキィの寝顔が良く見えた。

 ……かわいい。まるで天使のようだ。

 普段のしっかりしている風貌とは打って変わって、今は無防備に寝顔を晒しているのが新鮮で特別感がある。ミルキィは俺よりも人として出来たところがあるからいつもは忘れていたが、実際はミルキィと俺はほとんど同年代だ。俺と同じようにまだまだガキな部分、幼い部分が残っている。

 無防備に寝顔を晒しているミルキィからは普段なら見られない可愛らしい要素があった。

 

 随分と疲れているようでミルキィは一向に眼を覚ます様子がない。俺が上体を起こしてからミルキィを眺めることしばらく経っているが、眉一つも瞼一つも動いていない。ただただ呼吸の度に肩が上下するのみだ。

 

 ずっと俺の看病をしていたのだろうか。俺が病床で寝ていて、隣でミルキィが疲れ切って寝ている所を見るとその可能性は高い。

 つくづく凄い人だと思う。

 このフーラで他人の治療にこれほど熱心になれるのは難しい。女王フーラが民にもたらす不死の力が民をそうさせている。

 どれだけ傷ついても、どれだけ死んでも、何事もなく明日を迎えられるのなら、その内に人は他人の治療に無関心になる。関心を示してもリスポーンすることで無かったことに出来るのだから仕方がない。

 多少の心配はされるだろうが、熱心に心配をされるのは極めて稀だ。フーラにおいて身体の負傷はあってないものと同じ扱いと言っても過言ではない。誰もが傷や死を無いものと認識している。

 

 しかし、実体はそうではない。

 傷を受ければ痛いし、死ぬのは恐い。失うものは何もないように見えるが、リスポーンを行うたびに精神的な部分で確実に何かを失っている。何度もリスポーンをしている闇の民の生態を見れば、死という事象を完全になかったことに出来ていないのは明白だ。

 俺達は死を何度も経験することで、死を克服するという影響を受けてしまっている。多分だが、それはあまり良くないことだ。死をほとんど克服した闇の民がそれを証明している。

 痛みに慣れ、死に慣れ、リスポーンによる身体のリセットを乱用するようになるのは精神的に健康的じゃないのは確実だ。でも、それを気にかける者は極々少数だ。死を恐れる光の民でさえリスポーンの弊害を気にかけたりしない。

 

 そんな中、ミルキィは違った。

 ミルキィは他人の傷や死を我が事のように痛むことができ、直ぐにリスポーンに頼る俺達の悪癖を良くないことだと分かっている。

 殺さずに身体を元に戻す治療魔術を使えるのはそのようなミルキィが持つ優しい心の表れだ。

 このフーラでは治療魔術の価値が限りなく低く、覚えるだけ無駄なものだと思われても仕方がないのにも関わらず、それを勉強して物にしたというのは生半可な優しさではできないことだ。誰だって自分が苦労して会得するなら、価値のあるものが良いと思うものだろう。

 それに反して価値の低い技術を会得するのはとても難しいことだ。俺にはできない。

 

 だが、恐らくだが、国に必要なのはこういうミルキィのような人だろう。知識もなければ経験も乏しい俺にはまだ分からないが、多分そうだと思う。

 ミルキィのような人がフーラには、俺には必要なのだ。

 

 俺はそっとミルキィの方へ手を伸ばした。……しかし、伸ばした手を途中で止めた。

 姿勢を正して、視線を部屋の入口に向ける。

 

「フィールか……。もう少し外で待ってても良かったんじゃないか?」

 

 フィールは狐の耳と和服が特徴的な少女だ。コンコンの経営する宿屋の従業員であり、今回俺を殺した元凶の一人でもある。

 俺は俺を殺した女に向かって非難を示すようにガンを飛ばした。

 が、フィールは何ともないように淡々と応じた。

 

「寝ている女性に手を出そうとしているのを見過ごすことはできません。眼を覚まして早々にセクハラだなんて……少しは煩悩を消し去ってみてはどうですか?」

「誤解があるな。俺は別にミルキィにやましいことをしようとしてたわけじゃない。ただ、ミルキィが寒そうだったから毛布でも掛けてあげようと思っただけだ。全てを見ていないのにセクハラ犯扱いは辞めて欲しいな。これはれっきとした冤罪だ」

「なるほど、これは厄介なセクハラ犯ですね。反省の色が見えないどころか、即座に言い訳を思いつく悪知恵が働くだなんて。いかがいたしましょうか」

 

 どうしても俺をセクハラ犯にしたいのかよ。失礼な狐だな。コンコンの教育はどうなってるんだ。

 

「セクハラだの悪知恵だの言いたいことは分からなくもない。寝ている女性と同じ部屋に居たってだけで俺にも多少の責任はあるからな。俺に配慮が足りなかったのは一理あるかもしれない。だが少なくとも、お前には言われたくないな」

 

 不愉快だといわんばかりにフィールが眉を顰める。

 

「……私に何か落ち度があるとでも?」

「そりゃあるだろ。無実の俺を殺した。俺を痛みから解放するとかなんとか言い訳をしながらな」

 

「なッッ!!!!!」

 

 ボンッッと、フィールの顔がりんごのように真っ赤に染まった。冷静さを欠いて急に大声で怒鳴りだす。

 

「あッ、あれは違います!!! あれはそのッッ!!!」

「シーーーーーーーィィィィ」

 

 俺は即座に片手で人差し指を口元に当てながら、もう片手で寝ているミルキィの方を指さし、フィールに対して静かにするように訴えかけた。

 フィールは俺の意図に直ぐに気付いて声を一気に抑えた。真っ赤になった顔を隠すように服の袖で目から下を覆いながら、大声を出した謝罪もなしに焦ったように言い訳を早口で零す。袖で隠しきれていない耳がぴくぴくと動いているのが愛くるしい。

 

「あそこでデルゲンさんを殺したのは、あれは私がしたくてしたことではありません」

「じゃあ何でしたんだよ。メメルンに何か言われてたようだが、それが関係してるのか?」

「………………いえ、メメルンさんは特に関係はしていませんが……」

「が?」

「その……」

 

 歯切れが悪いな。言いたくないことでもあるのか? 俺を殺す理由で言いたくない事情がある……。やけに恥ずかしがってるのも気になるな。感情の機微が耳に出てる。凄い乙女チックというか、ぶっちゃげると可愛い。感情を悟られまいと和服の大きな袖で顔を隠そうとしてるのも、俺に見られたくない心理が見て取れて悪戯心をくすぐられる。こういうのは良いな。

 耳が動くのは獣系にしかなしえない特別な愛嬌だ。俺としてはコンコンにもしてほしいが、あいつは普段パーカーだからなぁ。執拗に耳を隠したがるせいで俺がコンコンの耳を見れる機会は限られてる。俺はそれが悔しくて仕方がない。

 っと、そんなことは今はどうでも良い。今はフィールが俺を殺した理由の方だ。

 いや…………そうだ。コンコンだ。確かコンコンは何か企んでたはずだ。あの時にフィールがそれらしいことをほのめかしていた。これは……話が見えてきたな。

 俺は言い淀むフィールにズバリ言いきった。

 

「俺を殺すようにコンコンに指示をされていた。そうだろ?」

 

 フィールが「えっ?」と予想だにしていないと声をあげる。

 これは図星だな。

 

「あの時フィールが突然出てきたのが不思議だったんだよ。お前ら狐が表に出てきて何かをするのは滅多にないからな。俺を殺すために出てこざるを得なかったと考えるのが自然だ」

「そう……ですかね?」

 

 この期に及んでまだ誤魔化すか……。まあ、そうだろうな。こいつら狐は単なる宿屋の従業員というだけでなく、女将であるコンコンの忠実な手下みたいなところがある。こいつらがコンコンの企みを自らばらしたりはしない。

 この期に及んでまで誤魔化すのは寧ろ潔いと見るべきだ。

 しかし、俺の方でもまだ詰め切れていないのは事実……。俺は偉そうに探偵を気取ってはいるが、ここ最近の流れをほとんど把握できていないんだよな。

 少し揺さぶってみるか。

 

「そうじゃなかったら何のためにわざわざあのタイミングで出てきたんだよ。というか現に俺がお前に殺されたんだから、お前はそのために出てきたって考えるのが普通だろ? それとも俺を殺したのはコンコンの命令じゃなくてお前の判断だったとでも?」

 

 フィールは顔を隠したまま横に逸らした。そのまま消えそうな声で「ノーコメントで」と呟く。

 俺は数十秒粘ってフィールの顔をじーっと見続けたが、結果は変わらず。どこかよそよそしく身じろぐ程度で何ら反応を返してこない。

 チッ、こうなってしまえばこいつらはテコでも動かない。こいつらにとって、コンコンの敷く箝口令はよっぽど重要なようだ。この場は諦めるしかないか。

 寝ているとはいえミルキィの前でみっともない言い合いは避けたいしな。俺はちらりとミルキィを横目に見ると、観念したのが分かりやすいように両手を挙げて降参のポーズをとった。

 

「オーケー、これ以上は聞かないことにする。あとは俺のほうで勝手に情報を集めるよ」

「……それでお願いします」

 

 よし、話がひと段落ついたな。

 さっさとこの狐を追い出してミルキィと二人きりになるぞ。こんな好機は滅多にないんだ。逃してはならん。今日、俺はミルキィとの距離を一気に詰めるんだ。

 俺は急に悪病に襲われたかのように激しい咳を演技でやった。

 

「ゴホッ、ガハッ、ゲホッ。ウエオッホイ!! ……悪い。ちょっと体調が良くないみたいだ。もしかしたら後遺症かもしれない。少し横になろうと思う。しばらくの間、席を外してくれないか?」

 

 俺は上半身を思いっきり動かしてから、ぜぇはぁと荒い息を吐き、如何に俺が苦しい状況にあるのかを訴えた。少しオーバーな演技になっているような気もするが、相手にこちらの状況を伝えるためには多少オーバーなぐらいが丁度良い。

 さて、フィールの反応はどうか……。俺は苦しさに悶えるように顔を俯かせたまま、眼球をぎょっと動かしてフィールの様子を盗み見た。

 

「……辛そうですね。何か食べますか? ずっと寝ていたので体力が衰えているのでしょう。ああ、そうでした。こんなことだろうと思ってリンゴを持ってきていたんでした」

 

 言って、フィールが袋の魔道具に手を突っ込んでごそごそとあさると、中からリンゴを取り出す。赤く熟れた瑞々しいリンゴだ。

 俺の喉がゴクリと鳴る。差し出された餌を前にして、俺は演技を忘れて涎を抑えることしかできなかった。

 

「食べられますか?」

 

 喉を鳴らす俺に向かって、フィールがリンゴを強く差し出してくる。フィールは『食べられますか?』などと疑問形で尋ねてきているが、俺に選択肢などないようなものだ。俺は自分でも気づかぬ内にまるで餌を乞う犬のように涎を垂らして手を伸ばしていた。

 俺はさっさとフィールを追い出してミルキィと二人きりにならないといけないのに、それでも乾ききった俺の喉を潤してくれる果汁を前にしてしまえば、俺は狐に餌付けされる畜生になり下がるしかなかった。

 

「じゃ、じゃあ、貰おうかな……。でも、食べるところを見られるのはあんまり好きじゃないから独りにしてくれると……」

「のどに詰まったら大変ですから一応最後まで診てあげますよ」

 

 フィールの優しさが傷に染みる。今はミルキィのことを忘れてフィールに甘えてしまいたくなる。これは、浮気になるのだろうか。別にミルキィと正式にお付き合いをしているわけではないから、悪いって訳じゃないけど……。

 そう、だな。今日はフィールに甘えさせてもらうか。フィールも俺を世話するのが満更でもないみたいだし。

 

 だが、

 

「んー、んー……。むにゃ……」

 

 ムムッ!? ミルキィの眠りが浅くなっているッ!? この光景を見られたら、いや、そんなのは二の次だ。今は静かにしなければッ!

 俺は最大限の集中力を持って静音を心がけた。何もミルキィに浮気現場を見られたくないから……というわけではない。単にミルキィの睡眠を邪魔したくないだけだ。

 ミルキィは今俺のせいでお疲れ状態で、責任を感じている俺からしてみれば、今はゆっくり寝かせてあげたい。フィールには悪いが、今はミルキィを優先しよう。

 

「どうしたんですか? 食べられませんか?」

 

 フィールの声色が心なしか低く感じる。俺がいつまでもリンゴにかぶりつかないからか苛立っているようだ。誰だってせっかく用意した餌をペットがいつまでも食べなかったならそのような態度になる。それでも声を荒げないのはミルキィを気遣ってのことだろう。いくら俺を餌付けしたいとはいえ、ミルキィに迷惑をかけたくはないらしい。

 となれば俺と意見が合うな。

 俺はリンゴを掴む直前にあった手をビシッと止めて、手のひらを見せるように立てて拒否を示した。

 フィールが眉を顰める。

 

「どういった心の入れ替わりですか?」

「リンゴをかじると音がうるさいだろ? それだとミルキィを起こしてしまうと思ってな。用意してもらっておいてなんだけど、今日は別のものにしてくれないか?」

 

 俺は常識的な理由で拒否をしたつもりだったが、フィールの反応はあまり良いものではなかった。ムッと顔をしかめる。

 

「…………ミルキィさんには随分と気が回るんですね」

「そりゃあな。クズ共なんかとは比べ物にならないぐらいに気を遣ってるつもりだからな」

「そういう意味で言ったわけではないんですが……」

 

 そういう意味ではない?

 

「まあ、せっかくリンゴを持ってきてもらったのにごめんな。何か別のものを──」

「齧り付かなければ音はそこまで出ませんよね?」

「ん? 齧らなければってのは小さくカットでもするのか? それでも多少音は出ると思うが──」

「小さくはなりますよね?」

 

 圧が、圧が凄い……。物理的に迫られてるわけでもないのに、何故か強烈な圧を感じる。何かに意地になっているのは分かるが、それが何なのか見当がつかない。

 俺はただリンゴを持った狐耳の少女と目を合わせているだけで、蛇に睨まれた蛙のように固まってしまった。

 

「そ、そうだな……」

 

 何がフィールをここまで駆り立ててるんだ? たかがリンゴに執着でもあるのか? それとも俺が拒否したのが気に食わなかったのか? ……わからない。

 でも、フィールの精神状態が安定していないのはわかる。そこに何か原因がありそうだが、俺にはフィールが何故ここまで不安定なのか見当がつかない。

 

「では少々お時間を貰いますね。その間、ミルキィさんに指一本でも触れたら、ミルキィさんにバラしますから」

「お、おう……」

 

 最後にそう忠告してフィールはしばらく部屋を出ていった。

 

 ◆

 

 

「はい、あーん」

「あ、あーん……」

 

 シャクシャク……。

 

「どうですか? 美味しいですか?」

「あ、ああ、美味いよ。美味いけど、これ必要か?」

「嫌ですか?」

 

 俺は渋った。

 この待遇は正直なかなか悪くない。この歳になって子狐にあーんをされるのは若干の躊躇いはあるものの、新鮮な体験に心が揺さぶられているのは確かだ。具体的には病人に世話を焼くフィールの母性的な物を間近で見られるのが良い。

 俺とフィールの関係はそこまで深いものではないが、コンコンの可愛い部下となれば色々と関心はある。

 それに、寝ているミルキィの横でフィールといちゃついているのが背徳感があって中々悪くない。純愛教の教徒としてあってはならない感情だが、俺はこの快楽に抗えなかった。

 ぼそっと零す。

 

「……良いんじゃないか?」

 

 あーんをされる現状に恥ずかしさや罪悪感を覚えるのはそうだが、俺は強く拒否をすることなく受け入れた。

 フィールが小気味よく笑い、小金の髪が揺れる。コンコンと同じ色の髪だ。色艶も良い。手入れを良くやっているのだろう。

 

「では、もうひとつ。あーん」

「あーん」

「美味しいですか?」

「うん、美味しい」

 

 こんな妙なやり取りはミルキィが眼を覚ますまで続いた。

 

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