鉄拳ss集 作:出雲おどる
キングオブアイアンフィストトーナメント
キングVSリリ
風間飛鳥へのリベンジに燃えるリリは、こんなところで負けるわけにはいかないとばかりに序盤から猛攻をかける。
「ハァァッ!」
「ガウッ!?」
優雅、それでいて強烈な攻撃が何発もヒットする。
が、キングは倒れない。
「むっ……」
やがてキングがリリの攻撃に対応しはじめた。
あやうく関節技を極められそうになり、リリは慌てて抜け出した。
(ふぅ……危なかったわね)
リリは攻撃を再開した。
スピードでキングを翻弄する。
しかし倒しきれない。
長く攻めているということはそれだけ手の内をさらしているということ。
攻撃のパターンを読まれて捕まってしまう。
「くっ……」
蹴りをキャッチされ寝技に持ち込まれそうになった。
リリはまだ捕まっていない方の足で思い切り蹴りつけ脱出する。
(……普通に攻めてもダメそうね。)
リリは地面に両手をつく。両足を振り上げ、側転。
「ガゥッ!?」
孤を描き地面に向かっていた足がキングの顎に命中した。
ふらっとよろめく男の視界に映ったのはリリの背中。リリは側転にひねりを加えていた。無防備に背中を向けている。好機。男はふらつきながらも前に出た。リリの後頭部に拳を繰り出す。
「かかったわね!」
拳が届く前にリリが跳んだ。バク宙。好機と見て、まんまと前進してきた男にオーバーヘッドキックの要領で蹴りを食らわせた。
「ゥガッ!?」
直撃を受けた男はロープの方へふっとんだ。
ひねりを加えた側転からのオーバーヘッドキック――バックフリップスピニングエッジ。
得意技を炸裂させたリリだが浮かない顔。
男がまだ起き上がってきたのだ。
「タフね。あなたは何発で倒れるのかしら」
いつもはそうやって挑発するのだが、今回は称賛もこめてそのセリフを口にする。
再び打撃戦。
機を見て、リリは再びひねりを加えた側転を披露する。
キングはその攻撃を見切った。バックステップでかわす。
リリは無防備に背中を向けた状態になる。
(カウンターを狙ってるわね?……でも、ここからの攻撃は一つじゃないわよ?)
リリはバク宙はせずに左足を男の方に伸ばした。足を踏みにじりながら右足を振り上げる。
「ガゥッ!?」
顎を蹴り上げられた男はもんどり打って倒れた。
リリはすかさず宙返りを決め、男の上に着地しようとする。
しかし男はコロコロと転がってリングの外に逃げた。
「まだ意識があったなんて。どこまで頑丈なのかしら」
リリは笑みを浮かべた。
自らもリングの外に出た。
場外で殴り合い。
「ひぶゅっ!?」
リリは後頭部を掴まれ、リングサイドと観客席とを隔てる鉄柵に突っ込まされた。
「やったわね……このっ、このぉ!……ふぎゅっ!?」
それでも果敢に立ち向かうが、男のパワーに圧倒される。
殴られ、鉄柵に突っ込まされとボロボロだ。
(悔しいけれど、真正面からの力比べじゃ勝ち目はないわね……ならっ!)
リリは軽やかにリングへ。
張られているロープに飛び乗り、バク宙をきめた。
リングサイドにいる男めがけて落下する。
「ガゥッ!?」
リングにのぼって宙返りで落下してくるまでほんの一瞬のできごと。
リリをキャッチするという選択肢もあったがリリのスピードがその選択肢を排除した。
男は咄嗟に右にかわした。
リリは右腕をのばす。
リリの腋が男の喉に衝突する。
「グホッ!?」
息がつまる。
喉を押され男はのけぞった。
「これで終わりよ!」
リリは落下の勢いも利用して体重をかけた。男とともに倒れ込もうとする。
のけぞっていた男はリリの腋に喉をとらえられたまま倒れ込んでしまった。
男の後頭部がリングサイドに打ちつけられる。リリの体重がかけられるというおまけつき。男の両足がはねあがった。
「うおおっ、すげぇ、リバースDDT!」
「やるじゃねぇかお嬢様!」
観客が大騒ぎする。
「さっきのお返しよ!よくもやってくれたわね!」
男とともに倒れ込んだ格好のリリはすぐさま起き上がり、馬乗りになって肘打ちを食らわせる。
「ウゴッ!?ゴホォッ!?」
「ほらほら、どうかしら!!降参するなら今のうちよ!」
容赦なく肘打ちを連発する。
しかしその攻勢は唐突に打ち切られる。
「きゃあっ!?」
リリは股間を突き上げられた。
男が体をはねあげたのだ。
残酷なまでの体重差、リリはマウントポジションから振り落とされてしまう。
「くっ……まだまだ!!」
それでも諦めずに攻撃する。
しかしその足をつかまれてしまった。
寝技に引きずり込まれそうになる。
「ひっ!?」
リリは慌てて脱出した。
再度攻撃を加えようとするが、キングはすでに起き上がり構えていた。
リングに戻って打撃戦になる。
「くっ……」
またしても蹴りをキャッチされた。
しかしリリはなんとか抜け出す。
「あぁ、あのキングが逃げられるなんて」
「DDTのダメージがまだ残ってんのかな?」
「やかましいですわっ、私がうまく回避したのよ!!」
観客と言い争いながらキングと打ち合う。
しかしまた攻撃をキャッチされてしまう。
「ひぎゅっ!?」
足を絡められ、ぐるんとうつぶせに倒される。
キングは仰向けに倒れ込んだ。うつぶせのリリとその上に仰向けのキングがくの字を描く。この体勢だと反撃を受けるおそれがあったがキングはなりふり構わず技をかけた。
リリの片足が太い腕に抱えられシャチホコのようにねじあげられる。
これまたくの字に曲げられたリリの足の裏が白い衣装の腰についてしまいそうなほど急角度に極められる。
「ぐうぅっ……」
リリは激痛に襲われる。
「降参しろよ、お嬢様」
「歩けなくなっちまうぞ〜?」
「うるさいっ!だまってなさい!!」
観客に怒鳴り返すが、リリは汗びっしょりだった。
足がへし折られてしまうのではないかという激痛と恐怖に襲われている。
じたばたともがくが関節技は外れない。
しかし、キングの顔に腕が当たる。
リリはにやりと笑った。
「ウゴッ!?」
キングの顔にリリの腕が巻きついた。
腋の下につかまえられ揺さぶられる。
「離しなさいっ、このっ、このッ!」
「ガゥッ!?ガウウゥッ!?」
後頭部がリングに何度も打ちつけられる。
そのうえ鼻と口は汗をかいたお嬢様の腋で塞がれて窒息しそうになっている。
キングはたまらず関節技を解いて脱出した。
互いに立ち上がり向かい合う。
キングはふらついていた。
さっき後頭部を何度もリングにぶつけたせいだろう。
(チャンスだわ!一気にきめる!)
真正面から蹴りを打ってもキャッチされる可能性がある。
リリは両手を地面についた。痛みをこらえ、地面を蹴る。ひねりを加えた側転、そこからのオーバーヘッドキック――バックフリップ・スピニングエッジでキングの頭部に連撃を喰らわせ畳みかけようとした。
そこで予想外のことが起こった。
キングが前に出てきたのだ。
体をひねって足をかわし、側転で両足が着地する前、逆立ち状態のリリをキャッチして持ち上げた。
「ひぃっ!?」
お嬢様の尻に男の顔が埋まる。背中はぶ厚い肉体に支えられる。
長い金髪が重力に従って垂れ、前髪で隠れていたお嬢様のおでこが丸出しに。
「くっ……」
側転の着地後、背中を向けた状態からならまだ攻め手はあったのに。
まさか側転の途中でキャッチされてしまうとは思わなかった。
「離してっ!!」
ジタバタともがく。
太い腕が回されているのは白い衣装に包まれたくびれた胴。
手足は自由に動くが、ツームストンパイルドライバーの一歩手前という絶望的な状況。
「ひっ……!?」
男は胴を掴んでいた腕を緩めずり落として、リリを頭から地面に突き刺そうとした。
リリは両手を地面について阻止する。リリは倒立した状態。男はいまは胴ではなく足を掴んでいる。持ち上げて再度頭から落とそうとするが、リリは両手をついて阻止。
男がリリの腕をまたぎ始めた。
「くっ……やめなさいっ……」
またがれる前は自由に動かせた腕と腰を動かしてもがいたが男の屈強な体はビクともせず、男の右足で左腕を
左足で右腕をロックされてしまう。
「ひっ!?いやああああああっ!」
男は前に倒れた。
リリは顔からリングに叩きつけられる。
「ふぎゅうぅっ!?」
自分の体重だけでなく、倒れ込む男の体重までかけられる。
ぐちっと嫌な感触があった。
リリの意識が飛ぶ。
男は両腕をロックしていた足を使って、リリを仰向けにひっくり返す。
白いブーツをはいた美脚をもちあげ、顔の方に倒す。まんぐり返しの体勢。腕は太い足の下敷き。気絶していなかったとしてももう抵抗できないだろう。
「うわ、お嬢様白目剥いてるよ。すげぇ顔」
「高飛車お嬢様のイキ顔、撮っとかないと」
まんぐり返しで固められスカートの中身をさらしたままカウントをとられる。
リリ屈辱のKO負け。
風間飛鳥にリベンジするどころではなくなってしまった。
キングが立ち上がる。
会場はキングコールに包まれた。
「でもまあお嬢様もなかなかやったんじゃないか?」
「結果はKO負けだけどな」
「リベンジする相手が増えちゃったねぇ」
意地悪な観客がリリに嘲笑を送った。